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第一部:本編
77:オーク
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気を引き締めながら十一層を探索していると、ついにオークと遭遇した。
「次の曲がり角からオークが来る。五匹だ、やれるか?」
「はい」
ヘルトさんが僕の動きを制し、認識したオークの数を告げてくれるので頷く。
魔力を練りながら、オークの群れが僕でも視認できる距離まで来るのを待った。
やがて、薄暗いダンジョンの中、曲がり角から緑色の大柄な鬼が現れる。
あれが、オーク……。
ゴブリンの上位種などと呼ばれるモンスターだが、その真偽は不明だ。子供のように小柄のゴブリンの二倍の身長があり、おそらくヘルトさんより身長は高いだろう。
殴られたら確かにひとたまりも無さそうだ。
そんなオークがヘルトさんの言葉通り五匹現れると、僕らを認識すると同時に武器である棍棒を威嚇するように振り上げ、雄叫びをあげた。
「グォオオオオ!」
その雄叫びに鼓膜が揺れるが、まだ距離はある。そして、そこは僕の魔法の射程範囲だ。
「多重展開。対象、前方オーク五匹。断ち切れ! 不可視の盾!」
「グオッ……オ?」
射程と範囲を決めて、障壁魔法を展開すれば雄叫びをあげていたオーク達が困惑した表情を浮かべながら、首から上と下で崩れ落ちていく。
床に広がる血と転がる首。自分でやっててちょっと容赦ないなと思った。
「十一層に到達しても、お前の魔法の威力は衰えないな。ゴブリンやコボルト比べたら魔法耐性高い方なんだぜ」
地面に転がるオークの死骸にヘルトさんが少し呆れを混じらせながら笑う。
「魔法だけならもう俺以上だな。才能は、あると踏んでたが……三ヶ月未満でここまでやられると師匠としての顔がねぇわ」
「そ、そんな!僕一人じゃまだまだですよ!ヘルトさんが、隣に居てくれないと……きっと、オークどころか……ゴブリンにだって怯んで魔法使うどころじゃありません……」
僕が魔法を放てるのは、隣にヘルトさんが居るからだ。
もし、魔法をはずしてもヘルトさんが助けてくれる。何とかしてくれると信じているから、モンスターに怯むことなく魔法を撃てるのだ。
「……そうか」
ヘルトさんが僕の頭を撫でて微笑む。
「その考えは大事だぞ。お前は、火力はあるが、耐久力はない。火力だけに頼って、慢心した魔法士がパーティーメンバーへ高慢に振る舞って、ダンジョンで見捨てられる事例もある。だから、お前みたいな謙虚さは大事だ。もちろん、俺もお前の火力を信じているから、命をかけてでも守る。その一撃が俺達を生き残らせる鍵になるだろうからな。でも、ちゃんと自分で気づけててえらいぞ」
「……はい」
ダンジョンであった前例を交えながら、褒められた。
褒められて嬉しいが、それと同時にその様な前例もあるのかと驚く。
確かにいろいろ魔法でできるようになって自信はついた。でも、僕はヘルトさんのように斥候役もできないし、治癒魔法も練習中だけど上手くつかえない。
だから、その様に慢心できる人がわからない。なんでも一人でできたって、なにがあるかわからないんだから。
自信があるのは、いいことだけど……謙虚さも大事だと思う。
「さて、ここからは魔石も全部回収してくか」
一通り褒めてもらえた頃。ヘルトさんが剥ぎ取り用のナイフを取り出す。
十層までは、ゴブリンやコボルトの中でも魔石の大きいマジシャンやプリーストからしか魔石を回収しなかったけど、オークの魔石は役職のないオークでも大きめなのだろう。
「手伝います」
「いい、いい。お前には、まだまだ活躍してもらうんだから雑用くらいはやるさ」
……僕の方が雑用奴隷のはずなんだけどな?
僕が魔法でモンスターを一掃できるようになってからヘルトさんは、こうやって剥ぎ取りなどの雑用をしてくれるようになった。
ここまで、主人と奴隷の役割が逆転する事ある? って、思うけど……ヘルトさん楽しそうなんだよなぁ……。
なんて、ちょっと複雑になりながらもヘルトさんが剥ぎ取り終わるのを待つのだった。
「次の曲がり角からオークが来る。五匹だ、やれるか?」
「はい」
ヘルトさんが僕の動きを制し、認識したオークの数を告げてくれるので頷く。
魔力を練りながら、オークの群れが僕でも視認できる距離まで来るのを待った。
やがて、薄暗いダンジョンの中、曲がり角から緑色の大柄な鬼が現れる。
あれが、オーク……。
ゴブリンの上位種などと呼ばれるモンスターだが、その真偽は不明だ。子供のように小柄のゴブリンの二倍の身長があり、おそらくヘルトさんより身長は高いだろう。
殴られたら確かにひとたまりも無さそうだ。
そんなオークがヘルトさんの言葉通り五匹現れると、僕らを認識すると同時に武器である棍棒を威嚇するように振り上げ、雄叫びをあげた。
「グォオオオオ!」
その雄叫びに鼓膜が揺れるが、まだ距離はある。そして、そこは僕の魔法の射程範囲だ。
「多重展開。対象、前方オーク五匹。断ち切れ! 不可視の盾!」
「グオッ……オ?」
射程と範囲を決めて、障壁魔法を展開すれば雄叫びをあげていたオーク達が困惑した表情を浮かべながら、首から上と下で崩れ落ちていく。
床に広がる血と転がる首。自分でやっててちょっと容赦ないなと思った。
「十一層に到達しても、お前の魔法の威力は衰えないな。ゴブリンやコボルト比べたら魔法耐性高い方なんだぜ」
地面に転がるオークの死骸にヘルトさんが少し呆れを混じらせながら笑う。
「魔法だけならもう俺以上だな。才能は、あると踏んでたが……三ヶ月未満でここまでやられると師匠としての顔がねぇわ」
「そ、そんな!僕一人じゃまだまだですよ!ヘルトさんが、隣に居てくれないと……きっと、オークどころか……ゴブリンにだって怯んで魔法使うどころじゃありません……」
僕が魔法を放てるのは、隣にヘルトさんが居るからだ。
もし、魔法をはずしてもヘルトさんが助けてくれる。何とかしてくれると信じているから、モンスターに怯むことなく魔法を撃てるのだ。
「……そうか」
ヘルトさんが僕の頭を撫でて微笑む。
「その考えは大事だぞ。お前は、火力はあるが、耐久力はない。火力だけに頼って、慢心した魔法士がパーティーメンバーへ高慢に振る舞って、ダンジョンで見捨てられる事例もある。だから、お前みたいな謙虚さは大事だ。もちろん、俺もお前の火力を信じているから、命をかけてでも守る。その一撃が俺達を生き残らせる鍵になるだろうからな。でも、ちゃんと自分で気づけててえらいぞ」
「……はい」
ダンジョンであった前例を交えながら、褒められた。
褒められて嬉しいが、それと同時にその様な前例もあるのかと驚く。
確かにいろいろ魔法でできるようになって自信はついた。でも、僕はヘルトさんのように斥候役もできないし、治癒魔法も練習中だけど上手くつかえない。
だから、その様に慢心できる人がわからない。なんでも一人でできたって、なにがあるかわからないんだから。
自信があるのは、いいことだけど……謙虚さも大事だと思う。
「さて、ここからは魔石も全部回収してくか」
一通り褒めてもらえた頃。ヘルトさんが剥ぎ取り用のナイフを取り出す。
十層までは、ゴブリンやコボルトの中でも魔石の大きいマジシャンやプリーストからしか魔石を回収しなかったけど、オークの魔石は役職のないオークでも大きめなのだろう。
「手伝います」
「いい、いい。お前には、まだまだ活躍してもらうんだから雑用くらいはやるさ」
……僕の方が雑用奴隷のはずなんだけどな?
僕が魔法でモンスターを一掃できるようになってからヘルトさんは、こうやって剥ぎ取りなどの雑用をしてくれるようになった。
ここまで、主人と奴隷の役割が逆転する事ある? って、思うけど……ヘルトさん楽しそうなんだよなぁ……。
なんて、ちょっと複雑になりながらもヘルトさんが剥ぎ取り終わるのを待つのだった。
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