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第一部:本編

92:出発

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 スタンピードへの応援要請を受けた翌日。

 僕達は、ギルドの用意した馬車で故郷へと向かっていた。

 僕らに用意された馬車は、特急馬車で小さい馬車を四頭の馬が引いている。

 小さい馬車のおかげか速度は特急馬車の名前に恥じないもので、馬車の手綱はヘルトさんが握っている。

 そして、僕ら以外の他のパーティーも同じように各々特急馬車に乗り込み、目的地へと急いでいた。

「ヘルトさん、御者で疲れてませんか?」

 僕らしか乗っていない馬車。速度が出ているから他の馬車とも距離を開けているから周りを気にする事もなく話せる。

「大丈夫だ。それよりソルとルナの装備は決まったか?」
「はい、互いに戦闘タイプとは逆の武器を選ぶそうです」

 魔導人形ではなく、冒険者として振る舞う事になった二人にヘルトさんは、僕のように装備を渡すと判断した。

 防具は自前でなんとかできるが、武器は仕込み型でしか発動出来なかったためだ。

「そうか。どれでもいいから好きなもの好きなだけ持たせとけ」
「わかりました」

 ヘルトさんの言葉に頷き、馬車の中でアイテムバッグに貯蔵されていた武器を吟味する二人へと視線を向ける。

 その表情は、まったくの無表情だが真剣みを感じた。

「ヘルトさんがどれ使ってもいいって」
「「はい、マスター」」

 ヘルトさんの言葉を伝えれば、あれやこれやと武器を選んでは、ローブの中へと隠していく。

 ……仕込み武器好きなのかな?

 一通り武器を選び、一つだけ常備する武器を持ったソル達はどことなく満足そうだった。

「それじゃあ、今のうちに魔力も注いどこうか」
「「お願いします」」

 これからどれだけの戦いになるかわからない。

 故郷に到着するまで時間があるから、僕の魔力の余剰分を二人に注いでおく事になったのだ。

 どうやら僕って魔力の回復力も早いらしいから、魔力回復速度上昇のポーションを使わなくても、日々魔力が余っている体質らしい。

 使った方が魔力の成長も早いというから、二人の存在はこちらの意味でもありがたかった。
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