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第一部:本編

109:帰還から三日

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 故郷から帰って来て三日が経った。

 半月旅に出ていたから、休息期間ということでまだダンジョンには潜っていない。

 日々、ソルとルナに家事を教えたり、読んでいる本でわからない事を教えながら過ごしていた。

 ただ……。

「マスター。メイドや使用人となんですか?」
「え、ああ……僕らみたいなものかな。僕は奴隷だけど、ヘルトさんに仕えているようなものだし、ソルとルナは僕に仕えてくれているでしょう?」
「なるほど、わかりました」

 ソルに掃除の仕方を教えてるのに、ルナからの質問がソル経由で尋ねられるとちょっと混乱する。

 今やっている事と全く関係ない事を質問されると理解が追いつかない時があるんだよね……。

 そんなソルとルナに振り回されながらも、屋敷での生活に二人とも馴染んできたので安心した。

 ダンジョンで見つけたその日にスタンピードの依頼を受けて、次の日には出発したからね。

 ダンジョンの十一層から戻ってくる時も三泊したし、まだ屋敷に居る時間より旅したり探索している時間の方が長いという事実。

 魔導人形だから疲れ知らずだけど、ようやくゆっくりさせてあげられている気がする。

 まあ、眠らなくてもいいからヘルトさんが与えた自室でずっと本を読んでいるらしいだけど……。

 僕の隣の部屋とその隣の部屋を自室とした二人は、二人で別々の本を同時に読んで同時に理解するから本の消費量は二倍。

 まだ二人の読んでない本の方が多いけど……ヘルトさんは、すでに新しい本を買うか迷っている。

 僕だけではなく、魔導人形の二人にも甘かった。

 散財しそうだったら止めようと思う。

 そんな事を考えながら、ソルに掃除を任せて、昼食を作っていると買い物に行っていたヘルトさんが帰ってきた。

「ただいま。夕飯と明日分の材料買ってきたぞ」
「おかえりなさい。ありがとうございます」
「保存庫にいれとくな」
「お願いします」

 手が空いているなら自分で片づけたんだけど、料理中なのでヘルトさんの言葉に甘える。

 奴隷だし、働かないとという考えはあるけど、素直にヘルトさんの優しさに甘えられるようになったのも成長なのかな? と思う。

「いい匂いだな」
「今日も美味しく出来てますよ」

 僕の肩越しに煮込んでいるスープを覗き込んできたヘルトさんを見上げて笑みを浮かべる。

「ん、楽しみにしてる」

 そんな事を言いながらヘルトさんは僕の額にキスを落とした。

「び、ビックリするから料理中はダメです!」
「悪い悪い」

 キスされた額を手で押さえて抗議すれば、ヘルトさんは面白そうに笑いながら謝ってくる。

 もう! 絶対そんな事思ってないんだから!
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