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本編

14:夕食の知らせ

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「エリス様、夕食の準備が整いました」

 ぼんやりと過ごしていたら、扉の外から夕食を知らせる声が聞こえる。

「今、行きます」

 イヴを連れて、迎えにきた侍女の後をついていく。

 案内されたのは、家人用の食堂。長いダイニングテーブルにシャンデリア、大きな暖炉といかにもな内装だった。

 この屋敷、あっちこっちにシャンデリアがあるけど、どれもアンティークっぽくてどうみても価値がある物が多い。

 屋敷を手放せば、借金なんて一発返済! って思っちゃうけど、この屋敷を買える人なんて、うちの実家でも難しそうだ。

 上位貴族でも……どうだろうか? 領地ごと買い上げないといけないからおそらく無理だろう。

 王家であれば、爵位の返上とともに買い上げてくれるかもしれない。

「エリス。少しは休めたかい?」
「あっ……はい、アデル様」

 食堂の入り口でこの屋敷の資産価値と購入できる人を考えていたら、後ろから来たアデル様にちょっとビックリする。

 危ない危ない。何もかもがお金に見えるところだった。

「そう、それならよかった。さあ、立って話すのもなんだから、座ってはなそうか」

 穏やかに微笑むアデル様がそっと手を差し出す。

 こ、これは、エスコートのお誘い! 一日に何度も体験できるなんて!

「はい」

 アデル様のエスコートに内心感激しているのを隠して微笑む。

 短い距離だけど、私の席へと手を引いてくれて、従者が引いた椅子に腰かけるまで手を握ってくれていた。

 そして、今も私の正面で微笑んでいる。なんて夢のような空間なのだろう。

「そういえば、お菓子を食べたようだけど、どうだった? 君のお眼鏡にかなったかな?」

 私がお茶のおともにクッキーを食べた事を聞いていたのかアデル様が尋ねてくる。

 馬車での会話があったとはいえ、お菓子をつまんでいた事を知られている恥ずかしさ……。

 でも、あの美味しさは語らねばなるまい!

「とても美味しかったです! アロガスの小麦も、バターも、蜂蜜も素晴らしい物だと思いました!」

 そこから出るわ出るわクッキーが美味しかった褒め言葉。

 全てがアロガス産の素晴らしさに加え、どれも品質が高くて美味しい事をアピールする。

 もちろんアデル様の領地の物だし、知ってて当たり前な事だろうけど、それでもその美味しさと素晴らしさを伝えたかったのだ。

「ふふふっ、すごく気に入ってもらえたようで嬉しいよ。褒め方がすごく上手だね。自分の領地のものなのに買いたくなってしまったよ」

 くすくすと笑うアデル様にやっちまったーーーーー! と、淑女にあるまじき声をあげたくなるが、アデル様が楽しそうなのが救いか。

 馬車での事といい食いしん坊だと思われてたらどうしよう……いや、もう思われているかもしれない。

 私のバカー!
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