14 / 38
本編
14:夕食の知らせ
しおりを挟む
「エリス様、夕食の準備が整いました」
ぼんやりと過ごしていたら、扉の外から夕食を知らせる声が聞こえる。
「今、行きます」
イヴを連れて、迎えにきた侍女の後をついていく。
案内されたのは、家人用の食堂。長いダイニングテーブルにシャンデリア、大きな暖炉といかにもな内装だった。
この屋敷、あっちこっちにシャンデリアがあるけど、どれもアンティークっぽくてどうみても価値がある物が多い。
屋敷を手放せば、借金なんて一発返済! って思っちゃうけど、この屋敷を買える人なんて、うちの実家でも難しそうだ。
上位貴族でも……どうだろうか? 領地ごと買い上げないといけないからおそらく無理だろう。
王家であれば、爵位の返上とともに買い上げてくれるかもしれない。
「エリス。少しは休めたかい?」
「あっ……はい、アデル様」
食堂の入り口でこの屋敷の資産価値と購入できる人を考えていたら、後ろから来たアデル様にちょっとビックリする。
危ない危ない。何もかもがお金に見えるところだった。
「そう、それならよかった。さあ、立って話すのもなんだから、座ってはなそうか」
穏やかに微笑むアデル様がそっと手を差し出す。
こ、これは、エスコートのお誘い! 一日に何度も体験できるなんて!
「はい」
アデル様のエスコートに内心感激しているのを隠して微笑む。
短い距離だけど、私の席へと手を引いてくれて、従者が引いた椅子に腰かけるまで手を握ってくれていた。
そして、今も私の正面で微笑んでいる。なんて夢のような空間なのだろう。
「そういえば、お菓子を食べたようだけど、どうだった? 君のお眼鏡にかなったかな?」
私がお茶のおともにクッキーを食べた事を聞いていたのかアデル様が尋ねてくる。
馬車での会話があったとはいえ、お菓子をつまんでいた事を知られている恥ずかしさ……。
でも、あの美味しさは語らねばなるまい!
「とても美味しかったです! アロガスの小麦も、バターも、蜂蜜も素晴らしい物だと思いました!」
そこから出るわ出るわクッキーが美味しかった褒め言葉。
全てがアロガス産の素晴らしさに加え、どれも品質が高くて美味しい事をアピールする。
もちろんアデル様の領地の物だし、知ってて当たり前な事だろうけど、それでもその美味しさと素晴らしさを伝えたかったのだ。
「ふふふっ、すごく気に入ってもらえたようで嬉しいよ。褒め方がすごく上手だね。自分の領地のものなのに買いたくなってしまったよ」
くすくすと笑うアデル様にやっちまったーーーーー! と、淑女にあるまじき声をあげたくなるが、アデル様が楽しそうなのが救いか。
馬車での事といい食いしん坊だと思われてたらどうしよう……いや、もう思われているかもしれない。
私のバカー!
ぼんやりと過ごしていたら、扉の外から夕食を知らせる声が聞こえる。
「今、行きます」
イヴを連れて、迎えにきた侍女の後をついていく。
案内されたのは、家人用の食堂。長いダイニングテーブルにシャンデリア、大きな暖炉といかにもな内装だった。
この屋敷、あっちこっちにシャンデリアがあるけど、どれもアンティークっぽくてどうみても価値がある物が多い。
屋敷を手放せば、借金なんて一発返済! って思っちゃうけど、この屋敷を買える人なんて、うちの実家でも難しそうだ。
上位貴族でも……どうだろうか? 領地ごと買い上げないといけないからおそらく無理だろう。
王家であれば、爵位の返上とともに買い上げてくれるかもしれない。
「エリス。少しは休めたかい?」
「あっ……はい、アデル様」
食堂の入り口でこの屋敷の資産価値と購入できる人を考えていたら、後ろから来たアデル様にちょっとビックリする。
危ない危ない。何もかもがお金に見えるところだった。
「そう、それならよかった。さあ、立って話すのもなんだから、座ってはなそうか」
穏やかに微笑むアデル様がそっと手を差し出す。
こ、これは、エスコートのお誘い! 一日に何度も体験できるなんて!
「はい」
アデル様のエスコートに内心感激しているのを隠して微笑む。
短い距離だけど、私の席へと手を引いてくれて、従者が引いた椅子に腰かけるまで手を握ってくれていた。
そして、今も私の正面で微笑んでいる。なんて夢のような空間なのだろう。
「そういえば、お菓子を食べたようだけど、どうだった? 君のお眼鏡にかなったかな?」
私がお茶のおともにクッキーを食べた事を聞いていたのかアデル様が尋ねてくる。
馬車での会話があったとはいえ、お菓子をつまんでいた事を知られている恥ずかしさ……。
でも、あの美味しさは語らねばなるまい!
「とても美味しかったです! アロガスの小麦も、バターも、蜂蜜も素晴らしい物だと思いました!」
そこから出るわ出るわクッキーが美味しかった褒め言葉。
全てがアロガス産の素晴らしさに加え、どれも品質が高くて美味しい事をアピールする。
もちろんアデル様の領地の物だし、知ってて当たり前な事だろうけど、それでもその美味しさと素晴らしさを伝えたかったのだ。
「ふふふっ、すごく気に入ってもらえたようで嬉しいよ。褒め方がすごく上手だね。自分の領地のものなのに買いたくなってしまったよ」
くすくすと笑うアデル様にやっちまったーーーーー! と、淑女にあるまじき声をあげたくなるが、アデル様が楽しそうなのが救いか。
馬車での事といい食いしん坊だと思われてたらどうしよう……いや、もう思われているかもしれない。
私のバカー!
12
あなたにおすすめの小説
狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。
汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。
元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。
与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。
本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。
人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。
そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。
「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」
戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。
誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。
やわらかな人肌と、眠れない心。
静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。
[こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!
たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。
なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!!
幸せすぎる~~~♡
たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!!
※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。
※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。
短めのお話なので毎日更新
※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。
※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。
《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》
※他サイト様にも公開始めました!
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。
石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。
ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。
そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。
真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
冬薔薇の謀りごと
ono
恋愛
シャルロッテは婚約者である王太子サイモンから謝罪を受ける。
サイモンは平民のパン職人の娘ミーテと恋に落ち、シャルロッテとの婚約破棄を望んだのだった。
そしてシャルロッテは彼の話を聞いて「誰も傷つかない完璧な婚約破棄」を実現するために協力を申し出る。
冷徹で有能なジェレミア公爵やミーテも巻き込み、それぞれが幸せを掴むまで。
ざまぁ・断罪はありません。すっきりハッピーエンドです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる