祓い師レイラの日常 〜それはちょっとヤなもんで〜

本見りん

文字の大きさ
7 / 23

王城へ



 馬車の窓から見える、美しい建物に街を歩く綺麗な格好をした生き生きとした人々。
 ……これがレイラが王都の街を見て感じた第一印象だった。

 王都に来るのが初めてで完全なおのぼりさんであるレイラは窓から見える目まぐるしく変わる景色を窓ガラスに張り付くようにして眺めていた。夕方の王都は人々が帰宅途中に夕食などの買い物をして帰るようで結構な賑わいだった。

 すると前からクスリと笑い声が聞こえた。

「……ここまで食い付いて街を見ている人を初めて見るよ。王都が初めての者でも他所者と気取られぬように知ったかぶりをする事も多いようだからね。……依頼が済めば私が街を案内しよう」

「……少し、珍しいだけです。お気になさらず。ご依頼は到着して直ぐに、ですか?」

 レイラはこの油断ならない貴族とこれ以上一緒にいる気はない。確かに初めての街は1人では危険かもしれないが、公爵家嫡男であり自分の住む街の領主であるこの男に街を案内させるなどとんでもない。

 アルフォンスが自分を気に入ったようなのは感じている。そしてレイラは自分がそれなりに人から気に入られるような外見をしているのも分かっている。

 今まで学園時代などでもレイラと付き合いたい、もしくは愛人になどと考える男性は多くいた。
 外見でそう言う目で見られるのは本当に嫌で、そんなのは真っ平御免だった。そして大概そういう男性はレイラの性格を知ると思っていたのと違うと言ってくるのだが。

 ……知らんがな。自分の理想を勝手にこちらに押し付けないで欲しいと心から思う。


 そんな事を考えながら冷めた目でレイラが言うと、アルフォンスは少し残念そうにした。

「……そう? 気が変わったらいつでも言って。
それから到着したら身なりを整えてすぐに依頼者と会って欲しい。あの方があの状況になられてから既に2週間以上経っている。……本当に藁にもすがる気持ちなのだよ」

 最後の真剣な様子に、この我が領主もそれ程心を砕く相手なのかと少し意外に思った。
 

 ……そして、2人が乗った馬車は王城の門の前に到着した。
 
 公爵家の馬車は誰何すいかされる事なく王城の正式な入り口に入った。そしてレイラはアルフォンスに手を取られ馬車から降り、王城の中に入る。


 レイラの大きな薄紫の瞳はこの壮大な王宮を映し出した。

 ……デカイ、広い、凄い、ムダに豪華過ぎるだろう。

 レイラは平然とした様子を取り繕ってはいたが、内心自分の身に起こっているこのあり得ない状況に焦りまくっていた。


 そしてアルフォンスととある一室に入るとそこには数人の女官達が2人を出迎えた。

「……それではここで軽く身だしなみを整えて。30分程したら迎えに来る。
……後は頼む」

 最後の一言は案内されたこの部屋にいる女官達に言ったようだ。

 ……というか、ブレドナー様は30分好きだな!

 なんてレイラが考えているうちに、あれやこれやとそこそこ小綺麗な貴族令嬢のように仕立てられたのだった。
 まあ一泊した先でも綺麗にしてもらっていたので、それを更に王族に会うに相応しく仕上げてもらった感じだ。

 そしてほぼ30分後、アルフォンス ブレドナーは部屋にやって来た。彼も貴族としての正装をしている。
 アルフォンスはレイラを見て嬉しそうに微笑む。

「……うん。とても綺麗だ。これなら私の隣に並んでも全く見劣りしないね」

 ……何故、ブレドナー様の隣にいる事が前提なんだ。そして見劣りってなんだ。

 レイラが不服そうにアルフォンスを軽く睨むと彼は苦笑しつつ腕を差し出した。腕を組め、という事らしい。

「……腕、組む必要ありますか? そもそもが並んで行く必要性も全く感じないのですが……」

 レイラがそう言うと、可笑しそうにアルフォンスは笑った。

「そんな風に言われるのは初めてだよ。レイラ、貴女はとても愉快な女性だね」

「愉快? ですか?」


 レイラのこんな対応に『不快だ』とは言われた事はあるが、『愉快』だなんて言われるのはこちらも初めてだ。

「……私も、そんな風に言われるのは初めてですよ。ブレドナー様は変わったお方ですね」


 そう言うと、アルフォンスは更に楽しそうに笑った。


 
感想 8

あなたにおすすめの小説

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

山猿の皇妃

夏菜しの
恋愛
 ライヘンベルガー王国の第三王女レティーツィアは、成人する十六歳の誕生日と共に、隣国イスターツ帝国へ和平条約の品として贈られた。  祖国に聞こえてくるイスターツ帝国の噂は、〝山猿〟と言った悪いモノばかり。それでもレティーツィアは自らに課せられた役目だからと山を越えて隣国へ向かった。  嫁いできたレティーツィアを見た皇帝にして夫のヘクトールは、子供に興味は無いと一蹴する。これはライヘンベルガー王国とイスターツ帝国の成人とみなす年の違いの問題だから、レティーツィアにはどうすることも出来ない。  子供だと言われてヘクトールに相手にされないレティーツィアは、妻の責務を果たしていないと言われて次第に冷遇されていく。  一方、レティーツィアには祖国から、将来的に帝国を傀儡とする策が授けられていた。そのためには皇帝ヘクトールの子を産む必要があるのだが……  それが出来たらこんな待遇になってないわ! と彼女は憤慨する。  帝国で居場所をなくし、祖国にも帰ることも出来ない。  行き場を失ったレティーツィアの孤独な戦いが静かに始まる。 ※恋愛成分は低め、内容はややダークです

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。

ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。 こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。 (本編、番外編、完結しました)

妾に恋をした

はなまる
恋愛
 ミーシャは22歳の子爵令嬢。でも結婚歴がある。夫との結婚生活は半年。おまけに相手は子持ちの再婚。  そして前妻を愛するあまり不能だった。実家に出戻って来たミーシャは再婚も考えたが何しろ子爵領は超貧乏、それに弟と妹の学費もかさむ。ある日妾の応募を目にしてこれだと思ってしまう。  早速面接に行って経験者だと思われて採用決定。  実際は純潔の乙女なのだがそこは何とかなるだろうと。  だが実際のお相手ネイトは妻とうまくいっておらずその日のうちに純潔を散らされる。ネイトはそれを知って狼狽える。そしてミーシャに好意を寄せてしまい話はおかしな方向に動き始める。  ミーシャは無事ミッションを成せるのか?  それとも玉砕されて追い出されるのか?  ネイトの恋心はどうなってしまうのか?  カオスなガストン侯爵家は一体どうなるのか?  

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

月が隠れるとき

いちい千冬
恋愛
ヒュイス王国のお城で、夜会が始まります。 その最中にどうやら王子様が婚約破棄を宣言するようです。悪役に仕立て上げられると分かっているので帰りますね。 という感じで始まる、婚約破棄話とその顛末。全8話。⇒9話になりました。 小説家になろう様で上げていた「月が隠れるとき」シリーズの短編を加筆修正し、連載っぽく仕立て直したものです。