祓い師レイラの日常 〜それはちょっとヤなもんで〜

本見りん

文字の大きさ
10 / 23

残念ながら



「……そして、非常に残念ながらこの『呪い』は生き霊系です。嫌な、ドロドロした女性の嫉妬の念が渦巻いてます」

 レイラは少し眉間に皺を寄せ、明らかに嫌そうな顔でそう言った。

「女性の嫉妬……!? 何故この国の最高位の女性で王妃である母上に嫉妬など……! そして、『残念』だという事は、君にも解呪は無理なのか……。いや、せめて一度試してはくれないか!」

 ヴェルナーはやはりダメかと失望しながらも、縋るようにレイラにそう言った。

 ……すると。

「あ、無理ではないですよ。ただ、私の大嫌いなドロドロ生き霊系だったんで残念だな、って……」

「…………は?」

 余りにサラッと言われたその言葉に、ヴェルナーは何を言われたのか一瞬理解出来なかった。

 『無理ではない』『大嫌いな生き霊系で残念』……。ええ?

 思わずアルフォンスを見たヴェルナーだったが、アルフォンスは肩を震わせて笑っていた。

「くく……ッ。殿下、このような場で……申し訳ない……! しかし……やはりレイラは面白い娘だ」

 ひとしきり笑った後、アルフォンスはレイラに向かって言った。

「……レイラ! 油断するなよ? 我々もこの国で魔力の高い者。お前のサポートをするから見事この『呪い』を解呪してみせよ!」

 レイラはアルフォンスの言葉に一瞬少し嫌そうな顔をしたがすぐに頷いた。

「貴方に指示されるのは癪ですが、コレは一刻を争うので話は後で。ではとりあえず、この部屋に結界を張っていただけますか?」

「「承知した!」」

 ヴェルナーはまだ動揺する気持ちも残ってはいたが、とりあえずは今出来る事をすべきと判断し女官達を隣室に移るよう指示してから2人で王妃の部屋に結界を張った。


 そして、それを確認したレイラは王妃の真横に立つ。

 そこで魔力を展開をし、王妃の身体に絡む呪いを見る。

「……すごい……。これ程の、強い念は初めて見るわ。王妃様への嫉妬、そして……国王陛下への愛……執着? 粘着かしら」

 レイラは王妃の右手の薬指に嵌る指輪を見てから、チラリともう片方の腕を見る。

「だけどやっぱり、コレ、なのよねぇ。今までの『祓い師』が幾ら指輪を解呪しようとしても出来ないはずだわ」

 王妃の左腕にはめられた『魔除け』の腕輪。……イヤ、コレは……。

「ある意味『呪いの腕輪』、よね」

 この腕輪は、何もなければ何も起こさない一見無害なモノだ。しかし、コレは魔力を固定させる……いや、増強させる為のモノだろう。そしてコレがあるが故にメインの『呪いの指輪』は力が増幅し、解呪が難しくなる。

 レイラは呪いの指輪の力を抑えてから、『魔除けの腕輪』の解呪を始めた。

 ……あー、うん。こちらも私の大嫌いな生き霊系。世の中を呪う思いが渦巻いている。

 レイラは自身の持つその大きな魔力でそのドロドロを包み込みながら、丁寧にその絡まった呪いを王妃から優しく解いていく。


 その繊細な金の光の糸に包まれて輝くレイラのその姿を、アルフォンスとヴェルナーは魅入られたかの様に見詰めていた。

「なんと……。このような解呪は初めて見る。美しい……。まるで伝説の聖女の様だ」

 ヴェルナーがそう言えば、アルフォンスも見惚れながらも少し警戒して言った。

「本当ですね。なんと美しい……。殿下、レイラは私が先に見つけたのですから手を出さないでくださいね」

「コレは、先とか後とか関係あるのか? それにお前は先程レイラに断られていたではないか」

 意外に本気で牽制してきたアルフォンスにヴェルナーもついからかい半分で反論した。

「……アレは、照れているのですよ。あんな風にピッタリと掛け合いの出来る相手などそうは居ません。レイラは渡しませんよ。
それになんですか、王子ともあろうお方が先程はレイラに間近に寄られて鼻の下を伸ばしておられましたよね」

「ッ!? 伸ばしてなどおらぬ! まあ、美しいなと少し見入ってしまったのは認めるが……」

 しまった、アルフォンスにはお見通しだったか。ヴェルナーは少し居心地の悪い気持ちになった。

「しかし、周囲からうるさく『結婚せよ』と言われる我らですが、これで私は先に相手を見つけました。これからはヴェルナー殿下お1人が令嬢達からの集中砲火を受けますよ」

「うわ……。嫌な事を言わないでくれ」


 などと2人が言い合っていると、外からこの結界に干渉してくる者がいる。

「……来たか!」

「……来ましたね」

 アルフォンスとヴェルナーは目を見合わして頷く。

 今、王妃の『呪い』の解呪を行うこの部屋この結界に干渉してくる者。その者こそが今回の『呪い』の首謀者、という事になる。


 今、レイラは『呪い』の解呪に集中している。彼女の邪魔は決してさせない!

「……私が行く。母上をこの様な目に合わせた犯人を許す訳にはいかない。母上を、レイラを頼むぞ! アルフォンス!」

「承知いたしました。……ご武運を!」


 2人はしっかりと頷き合い、そしてヴェルナーはこの結界から抜けそれに干渉する相手と対峙した。



感想 8

あなたにおすすめの小説

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

山猿の皇妃

夏菜しの
恋愛
 ライヘンベルガー王国の第三王女レティーツィアは、成人する十六歳の誕生日と共に、隣国イスターツ帝国へ和平条約の品として贈られた。  祖国に聞こえてくるイスターツ帝国の噂は、〝山猿〟と言った悪いモノばかり。それでもレティーツィアは自らに課せられた役目だからと山を越えて隣国へ向かった。  嫁いできたレティーツィアを見た皇帝にして夫のヘクトールは、子供に興味は無いと一蹴する。これはライヘンベルガー王国とイスターツ帝国の成人とみなす年の違いの問題だから、レティーツィアにはどうすることも出来ない。  子供だと言われてヘクトールに相手にされないレティーツィアは、妻の責務を果たしていないと言われて次第に冷遇されていく。  一方、レティーツィアには祖国から、将来的に帝国を傀儡とする策が授けられていた。そのためには皇帝ヘクトールの子を産む必要があるのだが……  それが出来たらこんな待遇になってないわ! と彼女は憤慨する。  帝国で居場所をなくし、祖国にも帰ることも出来ない。  行き場を失ったレティーツィアの孤独な戦いが静かに始まる。 ※恋愛成分は低め、内容はややダークです

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。

ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。 こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。 (本編、番外編、完結しました)

妾に恋をした

はなまる
恋愛
 ミーシャは22歳の子爵令嬢。でも結婚歴がある。夫との結婚生活は半年。おまけに相手は子持ちの再婚。  そして前妻を愛するあまり不能だった。実家に出戻って来たミーシャは再婚も考えたが何しろ子爵領は超貧乏、それに弟と妹の学費もかさむ。ある日妾の応募を目にしてこれだと思ってしまう。  早速面接に行って経験者だと思われて採用決定。  実際は純潔の乙女なのだがそこは何とかなるだろうと。  だが実際のお相手ネイトは妻とうまくいっておらずその日のうちに純潔を散らされる。ネイトはそれを知って狼狽える。そしてミーシャに好意を寄せてしまい話はおかしな方向に動き始める。  ミーシャは無事ミッションを成せるのか?  それとも玉砕されて追い出されるのか?  ネイトの恋心はどうなってしまうのか?  カオスなガストン侯爵家は一体どうなるのか?  

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。