祓い師レイラの日常 〜それはちょっとヤなもんで〜

本見りん

文字の大きさ
12 / 23

王家の人々



「……う、ん……。あぁ……私は……? いったい……」

「王妃殿下が! 目覚められましたぞ!」

 部屋中に歓喜の声が湧き上がる。

「王妃! クリスティーナよ。ああ……無事で良かった」

「母上!」

「お母様ッ!」

 王妃の元に夫である国王陛下や王子達と王女が駆け寄り涙を流して母である王妃の回復を喜んでいる。……感動のシーンだ。


 ……けれど、どうしてこの部屋に私がいる必要があるのかしら?

 王家の人間達が集まるその部屋に、何故かレイラがいた。

 ……呪いの解呪は昨夜無事に終わった。
 王都に着いた早々に『呪い』の解呪に取り掛かる事になったが、事は急を要したし無事解呪出来たのだからそれは良かった。

 ……しかし翌朝王妃殿下の意識が戻りそうだからと、身内ではないレイラまでがこの部屋に呼ばれたのだ……。何故だか意味が分からない。そしてチラと王族の方々のご尊顔を見ながらレイラは思った。

 ……早々に仕事も終わった事だし、王都に観光にでも行こうかと思っていたのに……。


 そう思って少し不満そうな顔をしたレイラに横からアルフォンスが覗き込み、コッソリと言った。

「……顔に出てる。後から私があちこち連れて行ってあげるからもう少し我慢してくれ」

 なんで分かった? 
 レイラは少し慌ててアルフォンスに「結構です」と言い、なんとか顔から不満そうな表情を消し去った。アルフォンスはクスリと笑った。


 そして王妃の前ではヴェルナー王子が王妃や国王、兄妹に向かってこう言った。

「母上。今回国中の誰にも解けなかったこの『呪い』を解いたのは、ここにいる『祓い師』レイラなのです」

 皆の視線が一斉にレイラに向く。

 ……え? 何コワイコワイ! 一応仕事は無事済んだはずなのに、なんなのこの拷問は!

 なにやら好意、疑惑、不信感、……そして憎しみに近いような視線がレイラに集まった。


 レイラがそれらに少し構えていると、その横でアルフォンスが国王達に向かって述べた。

「……叔母上。呪いの解呪とご回復、誠におめでとうございます。そして今ヴェルナー殿下のお言葉の通り、ここにおりますレイラが叔母上の呪いを見事解きましてございます」

 横でペコリとレイラは頭を下げた。

「なんと……! それは誠か……? ヒースは元より他のどんな高名な『祓い師』にも無理だったものが、まさかこのような子供のような……、ああ済まぬ」

 ヴェルナーにギロリと睨まれ、国王はすぐさま謝罪した。


 ……まあ分かってますよ。私の所へ初めて依頼に来る人はまずそう言いますからね。

 だからこそレイラの一族が代々優秀な『祓い師』だと知っている人達ばかりの小さな街でだけは商売は成り立ってきた。大きな街では知っている人たちもおらず、なかなか商売は軌道に乗らなかっただろう。

 そこに王妃の近くにいた王女が涙を拭いてからレイラに言った。

「レイラ……さん? お母様を助けてくださって、本当にありがとう。
そして……ドルトー侯爵家の疑いを晴らしてくださって、本当に感謝しています」

 ドルトー侯爵? 誰だそれ?

「……王女殿下は、ドルトー侯爵のご嫡男に降嫁されている。ドルトー侯爵が隣国で謎の貴族に持たされた『指輪』によって王妃殿下がこのような事態になり、王女殿下も大変心を痛められていたのだ」

 「?」な顔をしたレイラにアルフォンスが補足をいれてくれた。
 
 ナルホド……。それは王女殿下も気が気じゃなかっただろう。

 しかし今回の『呪い』の首謀者はとんでもない罠を張ってきたのね。王女様の嫁ぎ先まで巻き込んで、話の本幹を誤魔化そうとしていたのだから。
 そう考えつつレイラは元王女に向き合う。

「王妃殿下がお目覚めになられたこと、心よりお喜び申し上げます。……そして私は自分の仕事をさせていただいただけですので、そのようにお気になさらないでください」

 あくまでレイラがした事はただの仕事。『祓い師』であるからその役割を果たしただけの事なのだ。決して王妃殿下を助ける慈悲の思いからした事ではない。

 だからそのような過分な感謝は必要ない、と言ったつもりだったのだが……。

「……まあ! 昨今珍しいなんと清らかな心の持ち主なのかしら! お父様お母様! 是非このレイラに十分な褒美を与えてくださいませ! 勿論ドルトー侯爵家としても貴女には心からの感謝と褒美を取らせますわ」

「王家から褒美を取らせるのは当然の事だ。成功報酬に加えて、其方の望みを一つ叶えようではないか」

 国王陛下も大盤振る舞いを約束した。……イヤ、いいのか? そんな安請け合いしてしまって。
 レイラは少しこの国の未来が心配になった。


「……陛下。私からもレイラさんに御礼を言いたいわ。……レイラさん。貴女には感謝をしても仕切れません」


 まだ体調も優れないだろうに王妃殿下はそう言ってレイラを見詰め、静かに微笑んだ。……ベッドの枕を立ててなんとか座っている姿が痛々しい。


「畏れ多いことにございます。王妃殿下」


 レイラも落ち着いた様子で王妃に答えたのだった。

感想 8

あなたにおすすめの小説

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

山猿の皇妃

夏菜しの
恋愛
 ライヘンベルガー王国の第三王女レティーツィアは、成人する十六歳の誕生日と共に、隣国イスターツ帝国へ和平条約の品として贈られた。  祖国に聞こえてくるイスターツ帝国の噂は、〝山猿〟と言った悪いモノばかり。それでもレティーツィアは自らに課せられた役目だからと山を越えて隣国へ向かった。  嫁いできたレティーツィアを見た皇帝にして夫のヘクトールは、子供に興味は無いと一蹴する。これはライヘンベルガー王国とイスターツ帝国の成人とみなす年の違いの問題だから、レティーツィアにはどうすることも出来ない。  子供だと言われてヘクトールに相手にされないレティーツィアは、妻の責務を果たしていないと言われて次第に冷遇されていく。  一方、レティーツィアには祖国から、将来的に帝国を傀儡とする策が授けられていた。そのためには皇帝ヘクトールの子を産む必要があるのだが……  それが出来たらこんな待遇になってないわ! と彼女は憤慨する。  帝国で居場所をなくし、祖国にも帰ることも出来ない。  行き場を失ったレティーツィアの孤独な戦いが静かに始まる。 ※恋愛成分は低め、内容はややダークです

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。

ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。 こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。 (本編、番外編、完結しました)

妾に恋をした

はなまる
恋愛
 ミーシャは22歳の子爵令嬢。でも結婚歴がある。夫との結婚生活は半年。おまけに相手は子持ちの再婚。  そして前妻を愛するあまり不能だった。実家に出戻って来たミーシャは再婚も考えたが何しろ子爵領は超貧乏、それに弟と妹の学費もかさむ。ある日妾の応募を目にしてこれだと思ってしまう。  早速面接に行って経験者だと思われて採用決定。  実際は純潔の乙女なのだがそこは何とかなるだろうと。  だが実際のお相手ネイトは妻とうまくいっておらずその日のうちに純潔を散らされる。ネイトはそれを知って狼狽える。そしてミーシャに好意を寄せてしまい話はおかしな方向に動き始める。  ミーシャは無事ミッションを成せるのか?  それとも玉砕されて追い出されるのか?  ネイトの恋心はどうなってしまうのか?  カオスなガストン侯爵家は一体どうなるのか?  

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。