失った記憶が戻り、失ってからの記憶を失った私の話

本見りん

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 ……ここ、亡くなったおばあちゃんの部屋だったわよね。すごく可愛い部屋にリフォームされてるけど……。


 私は綾子伯母様に案内してもらった部屋のベットで目を覚まし、ここが元は祖母の部屋だと気が付いた。
 そしてやはり、随分と体力が落ちている。この一年は殆ど身体を動かしていなかったということだろう。


 昨日は伯父様たちから、母方の伯母真里子の一家が高木家から『出入り禁止』となっていた話を聞いた。
 和臣さんの受験期から疎遠となってしまったのだと思っていたから驚きだった。


 けれど真里子おばさんが和臣さんと私の結婚話を我が家に持って来ていたなんて知らなかった。
 確かに小さな頃から和臣さんには良くしてもらったけれど、それはあくまで親戚のお兄さんとして、だった。
 

「あの頃は和臣さんと仲が良かったから、おばさまは勘違いしてそんな申し出をしてきたのかしら……」


 だけど当時高3と中3の、義理とはいえイトコを結婚させようだなんて確かにちょっと時代錯誤だし変わっている。
 私をとても可愛がってくれたお父さんがそれを断る気持ちも分かる。



 私は色々と考えつつ身支度を整えて、リビングに行った。

 そこでは伯母が朝食の支度をしていた。

「沙良ちゃん、おはよう! 気分はどう? まだ寝ていて良いのよ」


「おばさま。おはようございます」


 そう言って私は以前のように伯母のお手伝いをする。昔はここに母も居て、女3人話をしながら料理をしたものだった。


「……なんだか、懐かしいわね。嬉しいわ、また沙良ちゃんとこんな風に過ごせて」


 伯母が少し目を潤ませながら私を見て言った。

「……おばさま……」


 私もなんだか切なくなって伯母を見る。


「おはよう。……綾子、朝から湿っぽいのはナシだよ。コレを持って行ったら良いかい?」


 伯父がやって来て自然に伯母の手伝いをする。私はこんな2人の関係が好きだ。


 そして光樹さんも起きて来て、皆で朝食をいただく。
 

「沙良。……今日はこの家に刑事さん達が来てくれるそうなんだ。今まで熱心に直人夫婦の事故の件を調べてくれているんだ。沙良も協力してくれるかい?」


「はい。……今の私に分かることしか話せませんが、少しでも両親の事件の解決になれば」


「刑事さんが来るの!? それなら俺も……」


 光樹さんは目を輝かせて自分も刑事さんとの話に加わろうとしたが……。


「お前は大学があるだろう」


 父親の有無を言わさぬ態度に光樹さんはガックリと肩を落とした。



 ◇


「ご無沙汰しております。今日はこちらに沙良さんがいらしているとお聞きまして……」


 三森家にやって来たのは、先日病院に来た鈴木さんと清本さんだった。


「鈴木さん! お世話になっております。そうなんです、沙良本人から連絡が来ましてこうして無事に保護出来た次第です。さあどうぞ、お上がりください」


 伯父はにこやかに2人の刑事を出迎えた。
 前に鈴木さんが言っていた『伯父に何度も捜査を頼まれた』という話は本当だったんだろう。

 私は2人にペコリとお辞儀をした。私を見た2人は少し困ったように礼を返してくれ、刑事さんと伯父夫婦と私が応接間に揃った。


「……こちらにいらっしゃると伺い驚きましたよ。失礼ですが、ご主人……『松浦拓人』氏はこの事をご存知で?」


 鈴木さんが私を探るように見て言った。


「……いいえ。彼は知りません。先日刑事さんとお話ししてから、伯父に連絡をしたんです。そして伯父の主治医の先生に診ていただく事になり転院して検査を受けまして、その後ここに。転院をする段階で、拓人さんとは連絡を絶っている状態です」


 私の横で伯父が満足げに頷いている。


「これもお2人のお陰ですよ。沙良に私の事を話してくださったんでしょう? 今回も松浦氏は『夫』という立場で沙良を囲っていたものですから、沙良自らこちらに来てくれたので大変助かりました」


「いえ、直接三森氏の事を沙良さんにお話しした訳では……」


 前回沙良の所に来た時には最初ダンマリだった鈴木氏だが、三森伯父とは打ち解けているらしい。今日は案外饒舌じょうぜつだった。


 そして私は彼らにまだこの一年の記憶は戻っていない事を話し、伯父と昨日話していた内容を説明した。


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