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しおりを挟む……ビンポーン……。
玄関のチャイムが鳴った。
伯母はナイフを持ったままチラリと玄関を見たけれど、無視する事にしたのか此方に向き直る。
ピンポーン、ピンポーンピンポーン……
チャイムが連打された。
伯母は嫌そうに顔を顰めたけれど、行ってしまうのを待つ事にしたのかジッと耳を澄ましている。私や拓人は動こうとするけれど、どうにもならない。
チャイムが止まり、客人は行ってしまったようだった。
……どうしよう。このままじゃ本当に……!
そう思った瞬間、リビングの前の庭から声が聞こえた。
「宮野真里子さん! アンタ、人んちで何をしてるんだ! それにそれ……ナイフか!? いったい……」
これは、多分清本刑事さんの声だわ!
私はハッとして何とか顔を上げる。すると、リビングのガラス戸の向こうからも私の姿が見えたようだった。
「ッ沙良さん!! ……ぅぉおおおっ!!」
ドガシャーーーンッ!!
清本刑事はまるで昔見たカンフー映画の使い手のように、ガラス戸を蹴り破った。
「ぎゃあああッ! な、何を……、何を人の家を壊してるのよ!! ああ! 土足で入って来ないでぇ! 警察を呼ぶわよッ!」
伯母は錯乱したかのように叫び続け、近くにある物を投げ出した。
けれど清本さんは風のように早かった。
ガラス戸を蹴破った後、そのまま疾風のように中に駆けて伯母が投げる物を避け、そしてナイフを持つ伯母の手を捻り上げた。
「宮野真里子! 傷害及び殺人未遂で逮捕する!」
そして素早く手錠をかけた。
私と拓人はそのあまりの鮮やかさにポカンとしていると、遅れて鈴木さんもやって来た。
「良かったですな。宮野さん。お待ちかねの警察ですよ。呼ぶまでもなかったようですな」
そう言っている鈴木さんに伯母を引き渡し驚いた様子の鈴木さんをおいて、清本さんはすぐに私の側に駆け寄った。
「沙良さん! 大丈夫ですか!?」
彼は丁寧に私の顔のガムテープを外してくれた。私は肩の力が抜け心からホッとして、彼に微笑んだ。
「清本さん。……ありがとうございます……」
私はさっきまで口を塞がれながらも叫んでいたので声が少しおかしかったけれど、清本さんはとても嬉しそうに微笑み返してくれた。
「沙良さん……。無事で本当に良かった……。跡、すぐに取れるといいんですが……、ッ? もしかして、叩かれたんですか!?」
清本さんはそう言ってガムテープを貼ってあった私の頬をジッと見てそっと撫でる。すると至近距離で目が合ってしまい、清本さんも私も少し照れくさくなって顔を逸らした。
「えーと……、あ、後ろも外しますね」
清本さんは少し顔を赤らめながら私の後ろに回り、そちらも丁寧に外し始める。
その時、金切り声が響いた。
「ちょっと……! コレはいったいなんなのよ!! なんで私が逮捕されるの!? 捕まえるならコイツでしょう!!」
突然の警察の乱入に呆然としていた伯母だったが、やっと我に返ったのかまた自分勝手な事を言い出した。
鈴木さんは伯母に冷たく言った。
「私達はナイフを持ってこの2人に危害を加えていた犯人を現行犯で逮捕しただけですが?」
「私は何もしていないわッ! この男が私達に危害を加えて来たのよ! 私はこの男からナイフを取り上げただけなの!」
伯母はなんとも信じ難い苦しい言い訳を主張し続けた。
それを誰も信じるはずはないとは思ったけれど、私は事実を述べておく。
「……拓人は伯母に身体が痺れる薬か何かを飲まされたんです。だから彼がナイフを持って襲うなんて事は出来ません。おそらくその机の上のカップにその成分が残ってる筈です。私はさっきまで隣の小部屋で縛られて動けなかったのですが……」
「……そうです! このお茶を飲んで暫くしたら急に動けなくなって……。そうしたらこの人が、高木家は元々自分のものだとか言って沙良を襲おうとしたんです……! 夫の俺も殺して心中に見せかけ財産を手に入れようと……!」
当然ながら拓人もその事実を主張した。
すると伯母はまるで般若のような顔をして叫ぶ。
「……嘘おっしゃい! いったい何を言ってるの! 貴方今までずっと沙良を監禁しておいて盗人猛々しいわね! ……この飲み物はこの男が用意した物です! 沙良と私を殺して財産を手に入れようとしてたんですわ!」
そのめちゃくちゃな論理に皆呆れていたのだけれど、尚も1人喚き続ける伯母。
だけど、私はどうしても言いたい事があった。
「……おばさま。どうしてですか。……どうして、お父さんとお母さんを……、両親を、殺したんですか!? お母さんは貴女の妹なのに……! たった2人の姉妹だしおばさまの事が好きだって、そう言っていたのに……!」
私の言葉に鈴木さんと清本さんは驚き真里子伯母を見た。
「……は? 何言ってるの? あの子はずっと私の事を羨んで妬んでたのよ。だから大人になってちょっと自分の家が裕福になったからって私を見下しだしたのよ!」
私は伯母の言い分に驚きつつ、反論しようとしたが……。
「……その人はね。自分は人より上にいると信じてるんだ。特に自分より下と思っていた人間が実は上だなんて事が、最も気に入らない事なんだよ」
渋みのある声でそう言いながらゆっくりと裏庭から入って来たのは、真里子おばさまの夫である宮野雅彦さんだった。
「宮野のおじさま……」
何故おじさままでここに?
そう疑問に思って見ていると、おじさまは鈴木刑事さんを見て言った。
「すみません。跡を、追って来てしまいました。……私にとってもとても重要な事でしたので」
それを聞いた鈴木さんは頷く。
「それは、まあそうでしょうな……。しかし、真里子さんのこれまでの罪を覆す事はもう出来ませんよ」
「それは勿論です。……いえむしろ私は……」
宮野のおじさまが何かを言いかけた時、真里子おばさまはおじさまに向かって声をあげた。
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