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しおりを挟む「そうよ。あの子も流石に離婚となると動揺していたから字も乱れているようだけれど、確かに沙良が書いたものよ。そして出来るならこのまま貴方がこれにサインしたら自分にはもう会わずに帰って欲しいって、そう涙ながらに言っていたわ」
伯母は字が乱れている理由を勝手に付けて動揺する拓人を納得させた。
「そんな……! ……僕は信じない! それに沙良に会えるまでは絶対に帰りません!」
「そうは言っても、本人が会いたくないって言っているのよ? 諦めの悪い男は嫌われるわよ」
「……なんと言われても、沙良ときちんと話をするまでは、僕は諦める訳にはいきません!」
「……そう、それなら仕方がないわね。……せっかくチャンスをあげたのに馬鹿な子ね。貴方まで処分しなければならなくなっちゃったじゃない」
「…………は? 何を言って……、え?」
ガタンッ……!
何かが倒れた音がした。
「な……? すみません、何か急に力が入らなく、なって……?」
「……いいのよ。だって私が貴方を動けなくさせたんですもの。暫くは痺れて動けないはずよ」
「……なっ!? いったいどうして……! ッ! ……沙良は? 沙良はどうしたんだ!?」
「ふふ、そういえば会えるまで諦めないって言っていたものね。……沙良!」
そう言っておばさまは私のいる小部屋の扉を開け、私を見て上機嫌でニコリと笑った。そして私の腕を掴み隣のリビングに放り投げるように連れ出した。
「ほぉーら、感動のご対面!」
口を塞がれ手も縛られた私の状態を見て拓人は驚いていた。拓人も椅子から倒れ込み立ち上がれないようだった。
「沙良……! 大丈夫か……!? アンタ……いったい沙良に何をしたんだ……!」
「んーーっ!」
私も伯母に何か言いたかったのだけれど、やはり声が出せない。そして拓人は先程のお茶におそらく薬か何かを盛られたのだ。彼も思うように身体を動かせず大声も出しにくいようだった。
「なぁに? 約束通りに会わせてあげたでしょう。そうね……貴方は逃げた妻を探し出して会えたのは良いけれど、妻に離婚を切り出されて激昂して妻を殺しちゃうの! その後に絶望して自ら命を断つ……。所謂無理心中ね! ……あら。そうしたらこんな事件のあった家には私、もう住みたくないわねぇ。……そうだ! 貴方が新たに買っていたあの高級マンション! あそこに住む事にするわ!」
「……いったい……何を言ってるんだ……? ……ダメだ、力が……!」
伯母は拓人に薬を飲ませて抵抗出来なくして、2人共に殺そうとしている……?
「……ふふ。元々この高木家は私のものですもの。いわば私は自分のものを返してもらうだけなのよ? そもそも一年前貴方が勝手に沙良の病室に入り込んだから話がややこしくなったのよ。せっかく和臣が入れるように手筈を整えていたのに」
……え?
伯母の顔を見上げた私を見て伯母は言った。
「沙良が記憶を失ったと聞いて、私は和臣と沙良が感動の出逢いが出来るようにお膳立てしてあげたのよ。……それなのに! この男がちょうどそれに割り込んできて……!」
私は眼を見開いて驚く。
誠司おじさまが話していた、『家族以外面会禁止』にしていたのに何故か病室に案内されたという拓人の話。……あれは、おばさまが関係していたの!?
「驚いた? ……この男のせいで全て狂ってしまったの。その後幾ら貴女を狙ってもこの男はそれを邪魔して来て……! 本当に鬱陶しいったら!」
そう言って伯母は憎々しげに拓人を見た。拓人もそれを睨み返すけれど、薬のせいで立ち向かう力が出ないようだ。
「……だから、この男が手を下したように見せかけて、あの鬱陶しい直人と奈美子を事故に遭わせたの。……死ぬとは思わなかったけど、この家からあの子達を追い出せたからまあいいわ。だけど結局この男のせいに出来ずに『事故』で片付いちゃったのよねぇ」
…………え。
私は何を言われたのか理解出来ずに伯母の顔を見る。
「あの日、奈美子達がこの男と沙良の家に行くって言うから、薬を持たせたの。栄養薬だって言ってね。薬は飲まないって聞いてたけど、その時2人は随分と疲れていたから直人さんに飲ませてあげるようにって奈美子に言ったのよ。彼が過労で死んだら貴女のせいよって言ったらあの子慌ててたわ。馬鹿な子よね」
なんて……? なんて、言ったの?
まさか、この人がお父さんとお母さんを!? お母さんはこの人の妹じゃないの!
「ッんーーーっ!!」
私は精一杯声を出してこの人を問い詰めようとしたけれど、声が出ないし腕の縛りも外れない。
「そしてその後、この男と沙良が結婚したことは最も計算外だった。あれで沙良に手を出すことが出来なくなった。そうしたら高木家の財産はこの男にいっちゃうものね。
それでとりあえず沙良をあの家から炙り出そうとしてたんだけど、引越ししちゃうんだもの。新しいマンションはセキュリティーがしっかりしていて益々手を出せなくなったわ。……だから、沙良が階段の事故か何かでこうして外に出るようになったのは好都合だったわね」
この伯母が、両親を殺した。……そして、私は拓人にある意味守られていた? そして階段の事故は本当にただの事故だったという事なの?
「……ああ、お喋りが過ぎたわね。私はマンションに住むし、この家はもう要らないからあなた達が心中した後に燃やす事にするわ」
そう言って伯母は、キッチンから我が家の包丁を取り出した。
「……まずは、沙良からね」
そう言って伯母は用意してあったのだろう手袋とレインコートを着用し笑いながら私に向かって来た。
私はゴクリと息を呑む。
拓人は薬と震えで動けないようだった。
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