玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第10章 レイコさんは自重しない

第10章第040話 赤竜騎士団とマナ研の残党

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第10章第040話 赤竜騎士団とマナ研の残党

Side:ツキシマ・レイコ

 「さて、私たちを呼びつけて何がしたいんですか?」

 レッドさんの力を借りれば、逃げ出すことは簡単ですよというアピールに、マストからレッドさん滑空で降りてきて、先に降りていたマーリアちゃんのところへ戻りました。

 「おいお前、あの登り方出来るか?」
 「いや、片腕でなんて無理だって。両腕でもあんなに速く登れないぞ」
 「やはり巫女様達は普通ではないのか…」
 「逃げ出さなくても…この船の制圧くらい簡単だろ?」

 船員の人達がざわざわしています。

 「巫女様!巫女様っ! 先日は失礼した。リシャイマ国国王、カルポジリ・リシャイマ・ヴィテラだ」

 金糸やら金のゴルゲットやら指輪やらで成金みたいな格好のおっさんが前に出てきました。恰幅が良いですね。
 私たちを捕らえてどうこうとか考えていたのかな? それが無理だと理解して、慌てて取り繕っているように見えます。

 「…一応始めまして。公式の肩書きは地球大使かな、レイコ・ツキシマと申します」
 「…エルセニム国第一王女、マーリア・エルセニム・ハイザートです」
 「ククールックルクルッ!」

 一応、返礼します。
 巫女とは呼ばれていますが、公式のその立場を受け入れたことはありません。…最近はちょっと使いますけどね。
 地球大使もネイルコードからもらっている"立場"ですしね。法的に確立された立場としては、運輸ギルドに登録しているから護衛業でしょうか。
 マーリアちゃんは、エルセニム大使以前に本物の王女ですからね。国王を前にしてもへりくだった言い方はしません。
 レッドさん。…公式には無立場です。ペットと言っちゃかわいそうですが。

 王様の後ろに控えるは、赤い鎧の赤竜騎士団と、神官服の男性。なんか私たちを見てニヤニヤしているというか、品定めするような視線が鬱陶しいですね。

 「これはご丁寧に。まぁ寒空の下では何ですから。中に入りましょう。どうぞどうぞ」

 …まぁ室内に入るのはちょっと警戒するところですが。もしものときは壁ぶち抜けばいいか。
 マーリアちゃんがいざというときに逃げられる動線だけは意識しましょう。


 船尾の露天ブリッジの下の船楼に入ります。普通は士官室や船長室がある所ですが…なんか中が豪華になっていますね。天井が低めなのは仕方ないですが。
 船の中だけに、調度品の固定はしっかりしてあるようですが。まぁ派手な貴族の部屋という感じです。

 お食事中でしたかね? 食べ物とお酒がテーブルいっぱい。
 ちゃっと見るに、奉納案件の料理やネイルコード産のお酒やらも並んでいますね。
 あ。今は動いていないですが、壁にはクーラーに。扇風機も置いてある。

 「巫女様のもたらされたものは何もかも素晴らしいですな、ははは。この五年でここまで太ってしまいましたよ」

 おなかを叩きながら笑う王様。
 美味しい物は体に悪い。栄養学も広めたはずなんですが、そちらは読んでいないんですかね?

 これまた豪華なソファーに座らされて。
 キリルロクさんが、部屋で待機していたらしい青年を紹介します。

 「こちらはポシュガ・リシャイマ・ヴィテラ殿下。リシャイマ国の王太子であらせられます」

 王太子なら、キリルロクさんの兄だと思うんですけど。他人行儀というか。こんなもんなんですかね?

 「ポシュガ・リシャイマ・ヴィテラと申します。よろしくお願いします、巫女様、エルセニム王女殿下」

 礼をするポシュガ殿下。礼を返しておきます。
 着ている物は身分なりに上等ですが。貴族や騎士というよりは。学生と言った雰囲気ですね。教育は受けているけど鍛えていない感じです。服装を除けば、ペーパープラン研にいそうな感じ。

 「それで巫女様、まぁ話は簡単でしてな。巫女様をぜひ!リシャイマ国にお招きしたいっ!」

 …これが拉致でなければ、まだ友好的な勧誘の雰囲気ではあるのですけども。

 「リシャイマに来ていただければ、ネイルコードよりさらなる栄達をお約束できますぞ!」

 素晴らしい提案でしょう!という雰囲気のカルポジリ国王ですが。

 「無理ですね」

 「はい?」

 「あなたたちでは無理だと言ったんです。鉄道説明会に出た上で、私を囲おうなんて発想になること自体が証明です」

 「なっ? ななっ!」

 拒否されるとは思っていなかったと、理解出来ないという様子ですが。
 王様は、鉄道説明会には出ていなかったような。ん? 参加していたのはこの赤竜騎士団の人の方だったかなと。さすがに会議場に鎧は着てきませんか。もしかしたらゴルゲットに赤竜騎士団のロゼットくらいつけていたかもですが。教都ですからね、気づかなかったでしょう。

 「例えば、あなたが欲しがったネイルコードの新造船。私がリシャイマにいたとして、どうやって作るんですか?」

 「え?いや、巫女様がご存じなのでは? あれに積まれている蒸気機関。教都でも展示されていた蒸気機関車。あれらはレイコ様の英知で成し遂げられた物では?」

 「いくら蒸気機関の仕組みを知っていても、鉄がなければ作れませんよ。鉱山の開発はどうなっていますか?大量生産できるほど鉄が作れますか?」

 「いや…その」

 ユルガルム以外にも鉱山はあることは把握していますが。それはリシャイマ国ではありません。

 「職人の教育は? 設計図を渡しただけできちんと動く物を作れます? 職人であるのなら、読み書きは当然として、計算だって出来ないといけませんし、職人の数も必要ですよ。庶民の教育の機会を増やして才能を掘り出す努力はしています?」

 「それは…職人が自らすべきことだろう?」

 まぁこれは、リシャイマ国が特別遅れているというわけではありません。正教国から奉じられた王位と、王が担保した貴族位。それらを中心とした封建社会。それが大陸国家群の現状でもあります。

 「ネイルコードでは、私が来る前からそういう基本的な部分が進んでいたんですよ。だから、私の知識を生かせて物を作ることが出来たんです。何もないところから始めるというのなら、私の囲い込みよりはネイルコードに人をやって学ばせるべきです」

 正論にぐぬぬっとなるカルポジリ王。
 ネイルコードに憧憬を懐くのは良いんですけど。上っ面だけまねようとしても無理があります。


 「まぁまぁ。ここでいきなり詰めた話をしても、意見の応酬になるだけでしょう。日も暮れてそろそろ良い時間。晩餐の支度をさせますので、お二人…と小竜神様は、別室でお休みください」

 神官服を着た人が取りなします。
 誰だこいつ…と、どう返事したもんかと考えていると。

 「失礼しました。私たちも自己紹介を」

 目線で赤竜騎士に促します。

 「ミストール・フマーンと申す。見ての通り赤竜騎士団の騎士を拝命している」

 「赤竜騎士団はもう無くなりましたが」

 「各国に居た団員を集めて、栄光の赤竜騎士団を再建したのだっ!」

 各国に派遣されていた赤竜騎士団員は回収されたものと思ってましたが。こんなところで燻ってましたが。

 「そして私、ラーサル・ストマルトと申します。昔は正教国で祭司をしていました。…マナ研に務めていた…と言えば、わかるでしょうか?」

 マーリアちゃんの眉間に皺が寄ります。

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