玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第10章 レイコさんは自重しない

第10章第044話 お迎えが来ました

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第10章第044話 お迎えが来ました

Side:ツキシマ・レイコ

 「それで。その研究とやらには、いくら出せば良いのですか?巫女様」

 「えっ?」

 「教都のマナ研が金食い虫だったのは有名でしたが。その不老不死の研究、巫女様が参加されれば完成させられる…と伺っていますぞ」

 というか、今の話聞いていました? 今までの論点が良く分かっていないのか、カルポジリ王が騒ぎますが。
 鉄道会議でごねたのは、マナ研でやっていた研究の資金確保も目的でしたか? それで私たちをさらって一挙両得とか?。

 「父上。巫女様は、マナによる不老不死には意味が無い…という話をされていたのですが…」

 王太子のポシュガ殿下には、きちんと私の会話が理解出来ていたようですが。

 王様を誑かしたらしい当人達は「それでは意味が無い」「それでも意味があるのでは」と思考のループに陥っているようです。

 「我には、そういう天上の価値観を推し量ることは難儀だがな。ただ、必ず死ぬということくらいは理解している。人があまねく持つその恐怖、その恐怖を忘れさせる手段なら何でも良い。気がつかぬうちに入れ替わっているのならなおさら良い。いろいろ巫女様は語られたが、要は死ぬよりはマシということであろう?」

 本人次第とは言いましたが。この人はそちらに取りましたか。
 …いや。ある意味賢察とも言えます。なんかよく分からない人ですね。

 「ふむ。まぁ腹も満ちたことですし、朝にはリシャイマに向けて出航となりますので。続きは向こうに着いてからにいたしましょう」

 お開きにしようとする王様ですが。

 「ク? ククク… クゥーッ!!」
 「…あ。セレブロさんだっ」

 っと。残念ながら会談もここまでのようです。
 レッドさんからメッセージです。セレブロさんのマナを検知したそうです。マーリアちゃんもセレブロさんに気がついたようです。

 扉を開けて甲板に…と、兵士が止めようとしましたが、女性に触れるのをためらったのか扉を開けさせないようにするだけでした。けど私の力に勝てるわけもなく。

 甲板では。夜空では月と神の御座が見下ろし、照らされた島影がくっきりと。
 それでも夜ですからね、この辺での航海は危険かと思いますが。

 セレブロさんが近くまで来ているのが、マナ探知にかかります。
 ただ。当たり前ですがセレブロさんが一匹で泳いで来れるわけもなく。すなわち船で来ているということでしょう。しかし、船影は見えません。探知の方向からして島影の向こうのようです。

 高空に雲がかかってるのも見えます。そこを目指して、レイコガン! レイコバスターではなく、マイクロ波の方ですね。

 パンッ!

 …ん~。夜なら何かしら光るかな?と期待したのですが。雲に穴が開いただけで光らず。さらに上空っぽいところがちょろっと赤く光ってますが。ほとんど見えないし、ちょっと高すぎてここの位置が分からないかも?

 甲板で見張りをしていた船員が驚いた顔でこちらを見ていますが、制止しようとする人はいません。何やら得体の知れないものを見せられて制止できるわけが無い…と思っているのかもしれませんが。

 今度は、近くの岩のてっぺんを狙って撃ってみます。ここからはちょっと上向き、貫通しても向こう側への影響はないでしょう。

 パンッ!
 バカンッ!

 岩のてっぺんが吹き飛びます。小さな爆炎がパッと出ますが、すぐ散ってしまいました。うーん、向こうから見えたかな?
 大きい方の島の木に火を着ければ…とも思うけど、なるべく燃やしたくないなぁ。なにかしら生き物が住んでいるだろうし。ちなみに、工事の時も最初に一発小さく撃つようにしています。動物が逃げ出せるように。

 探知に集中していたマーリアちゃんが、レッドさんを抱っこして船室から出てきました。

 「クッククックッ!」
 「レイコ。セレブロさん達、こちらを見つけたっぽいわ。向きを変えたみたいだから」

 向こうは、あの爆発でこちらを見つけてくれたようですね。
 カルポジリ王たちも船室から出てきましたが。

 「何をされているのですか? なんですか?あの音は? 巫女様。危ないですから船室の方へ」

 「いえ、私たちの迎えが来たようですので、そろそろお暇したいと思いまして」

 「いやいや、夜にこの船が見つかるわけがないでしょう」

 「そんなことないですよ?」

 この船が隠れるように停泊していた小島。ここは良く船が通る航路からは見えない場所ですが。それを迂回してやってくる船見えました。あちこちに灯りをともしていますね。照らされた旗はネイルコードのものです。
 風も潮流もものともせず、最適な接近を狙ってやってきます。
 月明かりで、船から白い蒸気が昇るのが見えます。蒸気捨て弁からの排出、過負荷で蒸気機関を回しているようですね。いくら明るめの夜とはいえ、最高速で飛ばしてきたようです。無茶しますね。でも、ちょっとうれしいです。

 「船が接近してきます! ネイルコードの最新型です!」

 見張員にも識別できる距離まで来ました。

 「な…なんでここが分かるんだ?」

 船内から兵士たちが出てきます。騎士もいるかもですが、船上での重装備は命取りになりかねませんので、一般兵士とあまり区別つきません。

 「出航用意! ここから離れるぞ!」

 「風が足りませんっ! すぐには無理です!」

 キリルロクさんが指示を出しますが。帆船なんてすぐに動けるものではありません。まぁ帆船で逃げ切れるわけもないのですが。
 その混乱の間にも、船首方向から回り込んできたネイルコードの船がこちらに向かってきます。
 横を通り過ぎるか?というタイミングで急速に減速するネイルコード船。スクリューを逆回転させたんでしょう。ぶつかるように…というより、こちらの左舷に擦りつけてきました。

 ドンッ ガリガリガリッ。

 勢いでこちらの船が傾きます。
 ああ、新造船に傷が…なんて考えていると。
 ネイルコード船の船上からは、水兵たちが舫いをこちらの係留フックや、ともかく引っかかるところに投げてきます。

 「舫いを切れ! 取り付かせるなっ!」

 こちらの船の船員達が、舫いを切るために甲板に備え付けの斧を持ちだしました。
 しかし。ネイルコードの船から飛び出してきた白い影が、その船員を弾き飛ばします。
 それは、リシャイマ国の船の甲板に降り立つと。

 「私は、ネイルコード国バッシュ・エイゼル・アイズン伯爵が孫、クラウヤート・エイゼル・アイズンである!」

 セレブロさんに跨がっているクラウヤート様っ!
 巨大な銀狼と、ちょっと派手なデザインの白銀の鎧を着た青年。まるで白馬の王子様です。
 …ってか。海の上で全身金属鎧って正気ですか?クラウヤート様!

 「ガルルルルッッ!!!」

 セレブロさんも姿勢を低くしての、牙むき出しにしての最大級の威嚇ポーズ。リシャイマ国側の兵士がびびってます。

 「婦女子を拐かして会議を有利に誘導しようなど不届きこの上なし! このまま素直に降伏するのならよし! さもなくば、ネイルコード国一国だけでもリシャイマ国に宣戦する! 国力を上げて討ち滅ぼすぞ!」

 え?その口上、いいんですか?
 と、ネイルコードの船を見ると。甲板にはクライスファー陛下。さすがにローザリンテ殿下やアインコール陛下は連れてきていませんか。あ、カステラード殿下は来ていますね。
 ブリッジから満足そうに頷いています。…ああ了承済みなんですね。

 「ああっマーリアさんっっ!!! …それにレイコ殿!!小竜神様! ご無事でしたかっ!」

 クラウヤート様が私たちを見つけて。セレブロさんから降りて駆け寄ってきます。…見つけたときの呼びかけ、マーリアちゃんの方が先でしたね。
 鬼のような表情から一転してほっとした表情に…と思ったら。

 「どぅわ~~~~っ!」
 「陛下~っ!」
 ボシャンっ

 聞こえてくる悲鳴。
 船の反対側から海に落ちたのは、カルポジリ王でした。

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