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第5章 クラーレスカ正教国の聖女
第5章第033話 信仰の目的、赤竜神の目的
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第5章第033話 信仰の目的、赤竜神の目的
・Side:ツキシマ・レイコ
アライグマ人類…とでも呼べば良いのでしょうか、セネバルの街で保護したキュルックルさん。
「キュルックルってのは、ちと呼び辛いですね」
『違う。私は"キュルックル"です。』
…ごめんなさい、どう違うのか分らないけど。なにか発音や抑揚に細かいこだわりがあるようです。
『あなたの名前は人には難しい。簡単な名前を作っても良いですか?』
『肯定』
はい/いいえと、肯定/否定は、言葉としてきちんと分けられているようですね。むしろ、単なる相づちが"了解"と"肯定"の両方の意味を持って日常的に使っている日本語の方が、世界的に見て変だったわけですが。
日本人は答え方が曖昧とか、アメリカ人ははっきり物を言うとか言われてましたけど。まずこの辺の語感の違いが原因だ…とお父さんが言ってました
さて。この子の名付けですか。
…だめだ。ラスカルとかアライって名前しか出てこない。
アライグマみたいだから、アライさんでいいか。そういえば、レッドさんを名付けた時にも、赤井さんに突っ込まれていたなぁ。
『"アライ"でいいですか?』
『どう言う意味ですか?』
アライグマ…ではあるけど。熊は失礼かな? "洗い"でいいか。
『洗う人って意味ですね』
『はい、"アライ"でいいです。キュルックルは綺麗好きです。だから、あそこはちょっと辛かった』
普段からできるだけ身ぎれいにはしていたようですが。あの店の店主はこの子に服を着せるという考えがなかったようです。
犬小屋にぼろきれ一枚では、辛かったでしょう。
「というわけで。アライさんとなりました」
「どう言う意味?」
「地球にはアライグマって、似た雰囲気の生き物が居てね。食べ物を洗ってから食べる習性があったので、洗うという意味の"アライ"って名前が付いたのよ」
「洗ってから食べるの? 賢いわね」
日本語の動詞の語尾の変化は置いときます。"アライ"ってのが日本で普通に名字に使われていてなじみがあるってのもありますが、こちらの言葉でないのでこれも置いときます。
「オス?メス?…ってのは失礼か… 男性?女性?」
ああリシャーフさん、重要ですよねそこ。
『あなたは男ですか? 女ですか?』
『私は女です。しかし、私達は子供を産むまで、見た目も働きも男と変わりません』
「女性だって。ただ、子供を生むまで男女の差が大してない社会だったみたいね」
「なるほど…」
女性で騎士のみなさんには、共感するところがあるようです。
『あなたはなんと呼べば良いですか? "ご主人様"?』
"ご主人様"の部分はこの国の言葉ですね。ここでそう教えられたのでしょう。
『私のことは"レイコ"と呼んでください。この髪が白い子はマーリア。こちらがリシャーフ、タルーサ、トゥーラ。大きな狼はセレブロ。この赤い子はレッド』
『レーコ、マーリン、リッシャフ、タラサ、トウラ、セーブ、レド』
覚えられないというよりは、発音しづらいといったところでしょうが。復唱して覚えようとしています。
名前を呼ばれたトゥーラさんがニコニコしています。動物好きですね、ほんと。
とりあえず。女性が手ぬぐい一枚だけの状態は、女性軍としてはちと許せませんので。古着屋に寄ってあつらえることにしました。
通りを一本ずれて、天幕が張られた店が並んでいる一角へ。こういう場所はエイゼル市の市場と似た雰囲気ですね。
古着屋のおばさんに、アライさんを前に出してこの子に着れる服をと言ったら、面食らってましたけど。アライさんが私と会話しているのを見て、訳あり以上ってのは察してくれたようです。
トゥーラさんが、店のあちこちからいろんな服を持ってきて、アライさんに合わせています。張り切ってますね。
…そのスカートはあまり似合わないと思いますよ…
幸い、少年用の半ズボンに半袖の上着がちょうどいい感じでした。
自分で脱ぎ着できるアライさん見て、店のおばさんもびっくりしていますね。
季節柄、陽射しも強くなってきていますので。麦わら帽子も付けましょう。うん、良い感じですかわいい。
『ありがとう。おちついた』
だそうです。
アライさんは背が人より低いですし、普通に服着てつばの広い帽子を被ると、連れて歩いてもあまり目立ちませんね。
トゥーラさんがアライさんの手を引いて歩いています。
アライさんがお腹空いているそうなので、屋台が並んでいるところにきて昼食です。
あの店ではきちんとご飯は出して貰っていましたけど。生野菜が多くてたまにパンが着く程度だそうで。飢えはしませんでしたが味気なかったそうです。
アライさんとレッドさんが並んでサンドを食べてます。トゥーラさんが甲斐甲斐しくお世話しています。
「レイコ。これから教都に行くのに、アライさん連れてって良いの?」
「うーん。赤井さん…赤竜神の目的ってのが神様捜しって話はしたっけ?」
「赤竜神は別に神じゃないってことは聞いた」
「えぇっ?! そうなのですかっ?!」
リシャーフさん達が驚いています。いまさらですか?
神に出来ること出来ないこと、赤竜神に出来ること出来ないこと。まぁ普通の人からすれば大して差が無いように思うのでしょうが。メンター視点では、ここには明確な線引きがされています。
赤竜神はこの世界の人からすれば神にも等しい能力は持っていますけど、神ではなく技術が発達しただけの存在だと言うこと。あちこちの星で同じように人の済む星をあつらえて、そこで発生した文明が本物の神に接触できることを期待していると言うこと。この辺をかいつまんで説明しました。
「お日様の線がマナを作っているところだという話よりは、まだ飲み込みやすいかな?」
「…私はもう、信仰とはなんだか分らなくなりました」
「エイゼル市のザフロ祭司にもお話ししたけど。祭司としてやるべき事は変わらないって飄々としてましたよ?」
「叔父様がですか…確かに、神に祈る前に為政者としてやるべき事はありますし、聖職者であっても民のために出来ることをしていくしかないのでしょうね…」
リシャーフさん達も、信仰に関してはいろいろ思うところはあるようです。
「その辺を履き違えている人が多いのよね」
「で。それがアライさんとどう言う関係が?」
「将来アライさんたちが、赤竜神が求めている神を人より先に見つけるかもしれないでしょ?」
五人してアライさんを見ます。何事?と首をかしげるアライさん、かわいいです。
「可能性を増やすって意味で、知性の多様性って凄く貴重なのよ。まぁ何千年も先の話かもしれないけど、彼ら…彼女らには人と同じ価値があります」
彼らの未来の可能性。わかりますか? 進化論的な人類の発生とか知らないと、ピンとこないかもしれませんね。
「うん、他にもアライさんの仲間がこちらに流れて来ていないか調べてもらわないと行けないし。いつかアライさんの国にもいかないと行けないわね。そのまえに、彼らが人と同等であると宣言しないといけないわよね。…巫女の立場なんて使いたくないけど。地球大使より効果あるかしら? 権威付け兼ねて、アライさんをネイルコードのお城にも連れて行かないと」
まぁメンターの神探しは、私にとってはあまり興味の無かった話なのですが。こうして人類以外の知性体が現れてくるとなると、脳神経学を専攻していた身としては、たぎってくる物がありますね。
「というわけで。この子の保護も最優先となりました。ネイルコード国に連れて行きますので、それまでよろしく」
「…やはりレイコ殿はネイルコードに帰られますか?」
「赤竜神が神ではないって知ったんだから、もう私は用済みでしょ?」
「正教国の腐敗については認めます。けども、周辺国の安定や民の心の安寧には、やはり赤竜教が、なにかしら宗教は必要だと思います。ザフロ祭司もそう仰っておられましたし…」
「…私も宗教が不必要だなんて考えてはいませんよ。ただ、この国はねぇ…」
「…はい。そこはもう全力で取り組ませていただきますっ!」
「こちらに赤竜神の巫女様がおられると伺ったのだがっ! おお、そこにおわすは聖女リシャーフ様っ!」
宿屋にチェックインするにはまだちょっと早く。アライさんが居ては強行軍は無理ですからね、それなりにペース下げようと食休みしてますと、なんか着飾った祭司が護衛を連れてやって来ました。先ほどの金貨のやり取りを見た人がご注進したようですね。
着飾っていると言っても、侮られない程度の威厳という感じで、ぶくぶく太っているわけでもありません。まぁ。セーフかな?
「…私達は明日朝には教都に向けて発ちますよ?」
色々先回りして結論をたたき付けますが。
「いやいや、せっかくこの街に来られたのですから、是非ともこの街の教会で饗応を受けて頂きたくっ!」
「…そこな祭司さん、なぜ私がこの正教国に来たのかご存じで?」
「え? いえ… え? 正教国が赤竜教の総本山だから…なのでは?」
まぁ、カリッシュがネイルコード国でやらかした情報なんて、私達より先に届くのは難しいでしょうね?
「ネイルコードにやってきた正教国の祭司が私を正教国に呼ぶためと称して私の常宿に火を付けたんで、これから教都に抗議に行くんです。場合によっては、教会を文字通り破壊することになりますけど。あなたたち、代わりに抗議受けてくれますか?」
「な…なんでそんなことになっているのですかっ?! …いえ…そんなことは…お、お怒りはごもっともですが…」
祭司さん、汗が噴き出してしどろもどろです。
少なくとも、観光とかお参りとかの楽しい理由で来たのではないと理解してくれたようですね。
「レイコ殿。もともとこの街で一泊の予定でしたし。この方達が抗議を受けるかはともかくとして、この方達にも話を聞いてもらうのは良いことではないかと愚考いたしますが」
リシャーフさんが私のマネージャーモードです。…この街の祭司を説得して味方に付けろってことですか? 祭司さん達も、とりあえず聖女様と私が懇意に見えるのが、教会と巫女の関係がまだ致命的決裂では無い証拠と思ったのか、ホッとしています。
関に入るときには一悶着ありましたが、一応この街の治安は普通のようには見えます。まぁ赤い鎧の人が居ないってだけのようにも思いますけど。
この街では、商会らの力が教会が無視できないほどには強いそうです。腐った祭司とか赤竜騎士団も、商会を相手にしては分が悪い…と言うことで、この街は素通りするそうで。
まぁ教都に近いですので教会の力が弱いわけでも無いようですが。商会を敵に回した場合…正確には商会の金儲けを邪魔した場合、教都の教会の上の方からお叱りが降ってくる…という仕組みだとか。
離れたところにいる権威にお金渡して近くで権威を振りかざす人を牽制する…むしろコネの正しい作り方と使い方かな?
この街の教会、祭司さんの装いと建物はエイゼル市貴族街の教会に負けないくらいは立派ですが、祭司さん下卑た感じはしません。商業税からお金回してもらえば喜捨集めに必死にならなくても良い…という余裕が信仰には必要なんですかね? 道中の関や街の祭司と違って、まともに見えます。
マーリアちゃんとセレブロさんを見て驚き。アライさんを見て驚き。ネイルコードと道中の話を聴いて驚き。けっこう真摯に話を聞いてもらえました。
民を日々の不安から癒やすことが宗教の役目。不安を煽ったり脅したりして金儲けするなんてのは論外。
書けば簡単ですが、教会が今までやって来たこととの齟齬も多いようで、その辺に心を痛めている祭司も多いようです。…極端に走るとカリッシュみたいになるので、油断は出来ませんが。
それでも、私が理想としている教会のあり方についてはおぼろげに理解してくれたようです。
まぁそもそもとして、最初から金儲けのために祭司や教会の騎士になったという人の方が少数のようですから。改めてこの道に進んだときの青雲の志を思い出してほしいものです。
「…と言うことは。これから巫女様は教都の教会を破壊しに赴かれるのですか?」
完全に破壊神扱いですね、私。リシャーフさん、ちょっと脅かしすぎです。
「…何をどの程度壊すのかは、行ってみてからですが。今後の正教国が、今までと同じということにはならないでしょうね。犯罪者以外の奴隷と非信徒の迫害は私は認めませんので、これらの撤廃は譲れません。今の内に対処を初めておいてください」
「…承知いたしました。この街の商会の方々には、今の内にダーコラ国での新施政について調べて対処するよう、布告しておきましょう」
・Side:ツキシマ・レイコ
アライグマ人類…とでも呼べば良いのでしょうか、セネバルの街で保護したキュルックルさん。
「キュルックルってのは、ちと呼び辛いですね」
『違う。私は"キュルックル"です。』
…ごめんなさい、どう違うのか分らないけど。なにか発音や抑揚に細かいこだわりがあるようです。
『あなたの名前は人には難しい。簡単な名前を作っても良いですか?』
『肯定』
はい/いいえと、肯定/否定は、言葉としてきちんと分けられているようですね。むしろ、単なる相づちが"了解"と"肯定"の両方の意味を持って日常的に使っている日本語の方が、世界的に見て変だったわけですが。
日本人は答え方が曖昧とか、アメリカ人ははっきり物を言うとか言われてましたけど。まずこの辺の語感の違いが原因だ…とお父さんが言ってました
さて。この子の名付けですか。
…だめだ。ラスカルとかアライって名前しか出てこない。
アライグマみたいだから、アライさんでいいか。そういえば、レッドさんを名付けた時にも、赤井さんに突っ込まれていたなぁ。
『"アライ"でいいですか?』
『どう言う意味ですか?』
アライグマ…ではあるけど。熊は失礼かな? "洗い"でいいか。
『洗う人って意味ですね』
『はい、"アライ"でいいです。キュルックルは綺麗好きです。だから、あそこはちょっと辛かった』
普段からできるだけ身ぎれいにはしていたようですが。あの店の店主はこの子に服を着せるという考えがなかったようです。
犬小屋にぼろきれ一枚では、辛かったでしょう。
「というわけで。アライさんとなりました」
「どう言う意味?」
「地球にはアライグマって、似た雰囲気の生き物が居てね。食べ物を洗ってから食べる習性があったので、洗うという意味の"アライ"って名前が付いたのよ」
「洗ってから食べるの? 賢いわね」
日本語の動詞の語尾の変化は置いときます。"アライ"ってのが日本で普通に名字に使われていてなじみがあるってのもありますが、こちらの言葉でないのでこれも置いときます。
「オス?メス?…ってのは失礼か… 男性?女性?」
ああリシャーフさん、重要ですよねそこ。
『あなたは男ですか? 女ですか?』
『私は女です。しかし、私達は子供を産むまで、見た目も働きも男と変わりません』
「女性だって。ただ、子供を生むまで男女の差が大してない社会だったみたいね」
「なるほど…」
女性で騎士のみなさんには、共感するところがあるようです。
『あなたはなんと呼べば良いですか? "ご主人様"?』
"ご主人様"の部分はこの国の言葉ですね。ここでそう教えられたのでしょう。
『私のことは"レイコ"と呼んでください。この髪が白い子はマーリア。こちらがリシャーフ、タルーサ、トゥーラ。大きな狼はセレブロ。この赤い子はレッド』
『レーコ、マーリン、リッシャフ、タラサ、トウラ、セーブ、レド』
覚えられないというよりは、発音しづらいといったところでしょうが。復唱して覚えようとしています。
名前を呼ばれたトゥーラさんがニコニコしています。動物好きですね、ほんと。
とりあえず。女性が手ぬぐい一枚だけの状態は、女性軍としてはちと許せませんので。古着屋に寄ってあつらえることにしました。
通りを一本ずれて、天幕が張られた店が並んでいる一角へ。こういう場所はエイゼル市の市場と似た雰囲気ですね。
古着屋のおばさんに、アライさんを前に出してこの子に着れる服をと言ったら、面食らってましたけど。アライさんが私と会話しているのを見て、訳あり以上ってのは察してくれたようです。
トゥーラさんが、店のあちこちからいろんな服を持ってきて、アライさんに合わせています。張り切ってますね。
…そのスカートはあまり似合わないと思いますよ…
幸い、少年用の半ズボンに半袖の上着がちょうどいい感じでした。
自分で脱ぎ着できるアライさん見て、店のおばさんもびっくりしていますね。
季節柄、陽射しも強くなってきていますので。麦わら帽子も付けましょう。うん、良い感じですかわいい。
『ありがとう。おちついた』
だそうです。
アライさんは背が人より低いですし、普通に服着てつばの広い帽子を被ると、連れて歩いてもあまり目立ちませんね。
トゥーラさんがアライさんの手を引いて歩いています。
アライさんがお腹空いているそうなので、屋台が並んでいるところにきて昼食です。
あの店ではきちんとご飯は出して貰っていましたけど。生野菜が多くてたまにパンが着く程度だそうで。飢えはしませんでしたが味気なかったそうです。
アライさんとレッドさんが並んでサンドを食べてます。トゥーラさんが甲斐甲斐しくお世話しています。
「レイコ。これから教都に行くのに、アライさん連れてって良いの?」
「うーん。赤井さん…赤竜神の目的ってのが神様捜しって話はしたっけ?」
「赤竜神は別に神じゃないってことは聞いた」
「えぇっ?! そうなのですかっ?!」
リシャーフさん達が驚いています。いまさらですか?
神に出来ること出来ないこと、赤竜神に出来ること出来ないこと。まぁ普通の人からすれば大して差が無いように思うのでしょうが。メンター視点では、ここには明確な線引きがされています。
赤竜神はこの世界の人からすれば神にも等しい能力は持っていますけど、神ではなく技術が発達しただけの存在だと言うこと。あちこちの星で同じように人の済む星をあつらえて、そこで発生した文明が本物の神に接触できることを期待していると言うこと。この辺をかいつまんで説明しました。
「お日様の線がマナを作っているところだという話よりは、まだ飲み込みやすいかな?」
「…私はもう、信仰とはなんだか分らなくなりました」
「エイゼル市のザフロ祭司にもお話ししたけど。祭司としてやるべき事は変わらないって飄々としてましたよ?」
「叔父様がですか…確かに、神に祈る前に為政者としてやるべき事はありますし、聖職者であっても民のために出来ることをしていくしかないのでしょうね…」
リシャーフさん達も、信仰に関してはいろいろ思うところはあるようです。
「その辺を履き違えている人が多いのよね」
「で。それがアライさんとどう言う関係が?」
「将来アライさんたちが、赤竜神が求めている神を人より先に見つけるかもしれないでしょ?」
五人してアライさんを見ます。何事?と首をかしげるアライさん、かわいいです。
「可能性を増やすって意味で、知性の多様性って凄く貴重なのよ。まぁ何千年も先の話かもしれないけど、彼ら…彼女らには人と同じ価値があります」
彼らの未来の可能性。わかりますか? 進化論的な人類の発生とか知らないと、ピンとこないかもしれませんね。
「うん、他にもアライさんの仲間がこちらに流れて来ていないか調べてもらわないと行けないし。いつかアライさんの国にもいかないと行けないわね。そのまえに、彼らが人と同等であると宣言しないといけないわよね。…巫女の立場なんて使いたくないけど。地球大使より効果あるかしら? 権威付け兼ねて、アライさんをネイルコードのお城にも連れて行かないと」
まぁメンターの神探しは、私にとってはあまり興味の無かった話なのですが。こうして人類以外の知性体が現れてくるとなると、脳神経学を専攻していた身としては、たぎってくる物がありますね。
「というわけで。この子の保護も最優先となりました。ネイルコード国に連れて行きますので、それまでよろしく」
「…やはりレイコ殿はネイルコードに帰られますか?」
「赤竜神が神ではないって知ったんだから、もう私は用済みでしょ?」
「正教国の腐敗については認めます。けども、周辺国の安定や民の心の安寧には、やはり赤竜教が、なにかしら宗教は必要だと思います。ザフロ祭司もそう仰っておられましたし…」
「…私も宗教が不必要だなんて考えてはいませんよ。ただ、この国はねぇ…」
「…はい。そこはもう全力で取り組ませていただきますっ!」
「こちらに赤竜神の巫女様がおられると伺ったのだがっ! おお、そこにおわすは聖女リシャーフ様っ!」
宿屋にチェックインするにはまだちょっと早く。アライさんが居ては強行軍は無理ですからね、それなりにペース下げようと食休みしてますと、なんか着飾った祭司が護衛を連れてやって来ました。先ほどの金貨のやり取りを見た人がご注進したようですね。
着飾っていると言っても、侮られない程度の威厳という感じで、ぶくぶく太っているわけでもありません。まぁ。セーフかな?
「…私達は明日朝には教都に向けて発ちますよ?」
色々先回りして結論をたたき付けますが。
「いやいや、せっかくこの街に来られたのですから、是非ともこの街の教会で饗応を受けて頂きたくっ!」
「…そこな祭司さん、なぜ私がこの正教国に来たのかご存じで?」
「え? いえ… え? 正教国が赤竜教の総本山だから…なのでは?」
まぁ、カリッシュがネイルコード国でやらかした情報なんて、私達より先に届くのは難しいでしょうね?
「ネイルコードにやってきた正教国の祭司が私を正教国に呼ぶためと称して私の常宿に火を付けたんで、これから教都に抗議に行くんです。場合によっては、教会を文字通り破壊することになりますけど。あなたたち、代わりに抗議受けてくれますか?」
「な…なんでそんなことになっているのですかっ?! …いえ…そんなことは…お、お怒りはごもっともですが…」
祭司さん、汗が噴き出してしどろもどろです。
少なくとも、観光とかお参りとかの楽しい理由で来たのではないと理解してくれたようですね。
「レイコ殿。もともとこの街で一泊の予定でしたし。この方達が抗議を受けるかはともかくとして、この方達にも話を聞いてもらうのは良いことではないかと愚考いたしますが」
リシャーフさんが私のマネージャーモードです。…この街の祭司を説得して味方に付けろってことですか? 祭司さん達も、とりあえず聖女様と私が懇意に見えるのが、教会と巫女の関係がまだ致命的決裂では無い証拠と思ったのか、ホッとしています。
関に入るときには一悶着ありましたが、一応この街の治安は普通のようには見えます。まぁ赤い鎧の人が居ないってだけのようにも思いますけど。
この街では、商会らの力が教会が無視できないほどには強いそうです。腐った祭司とか赤竜騎士団も、商会を相手にしては分が悪い…と言うことで、この街は素通りするそうで。
まぁ教都に近いですので教会の力が弱いわけでも無いようですが。商会を敵に回した場合…正確には商会の金儲けを邪魔した場合、教都の教会の上の方からお叱りが降ってくる…という仕組みだとか。
離れたところにいる権威にお金渡して近くで権威を振りかざす人を牽制する…むしろコネの正しい作り方と使い方かな?
この街の教会、祭司さんの装いと建物はエイゼル市貴族街の教会に負けないくらいは立派ですが、祭司さん下卑た感じはしません。商業税からお金回してもらえば喜捨集めに必死にならなくても良い…という余裕が信仰には必要なんですかね? 道中の関や街の祭司と違って、まともに見えます。
マーリアちゃんとセレブロさんを見て驚き。アライさんを見て驚き。ネイルコードと道中の話を聴いて驚き。けっこう真摯に話を聞いてもらえました。
民を日々の不安から癒やすことが宗教の役目。不安を煽ったり脅したりして金儲けするなんてのは論外。
書けば簡単ですが、教会が今までやって来たこととの齟齬も多いようで、その辺に心を痛めている祭司も多いようです。…極端に走るとカリッシュみたいになるので、油断は出来ませんが。
それでも、私が理想としている教会のあり方についてはおぼろげに理解してくれたようです。
まぁそもそもとして、最初から金儲けのために祭司や教会の騎士になったという人の方が少数のようですから。改めてこの道に進んだときの青雲の志を思い出してほしいものです。
「…と言うことは。これから巫女様は教都の教会を破壊しに赴かれるのですか?」
完全に破壊神扱いですね、私。リシャーフさん、ちょっと脅かしすぎです。
「…何をどの程度壊すのかは、行ってみてからですが。今後の正教国が、今までと同じということにはならないでしょうね。犯罪者以外の奴隷と非信徒の迫害は私は認めませんので、これらの撤廃は譲れません。今の内に対処を初めておいてください」
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