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第10章 レイコさんは自重しない
第10章第001話 弔報
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第10章第001話 弔報
Side:ツキシマ・レイコ
カーラさんが亡くなった。
帰ったら。あの家で、皆で、お土産話で盛り上がるんだとばかり思っていました。
マーリアちゃんも呆然としています。
連絡船が海峡を進む間。
余りに現実離れ感のある知らせに。不思議と涙も出てきません。
隣に座っているマーリアちゃんが、私の手を握ってきました。それを握り返します。
マーリアちゃんの様子に、セレブロさんも心配しているようです。アライさんも、私の反対側の袖を掴んで離しません。
今日は雲が多めで。エイゼル市のところどころに日が差しているのが見えます。波はおだやかで。船を漕ぐ船員さん達のかけ声が響きます。多分、何事も無ければウキウキする光景だったのでしょうが。心証でここまで重たくなるもんなんだ…とぼやっと考えてしまいます。
「御危篤ということなら、無茶にも協力していたんだがね…」
連絡艇に乗る前に、オレク司令が打ち明けてくれました。
この連絡が、連絡船に乗るこのタイミングになった理由は。昨晩のうちに知らされたところで、私達がカーラさんに出来ることはもう何も無く。次の日まで悶々とした時間を過ごさせるのが酷だったから…だそうです。
教えてくれれば、自分で漕いででもエイゼル市に渡るのに…と瞬刻思ったのは確かですが。言われてみれば、今急いだところですでに詮無く。夜の渡海の危険性やら、エイゼル市やファルリード亭への連絡やら、周囲に迷惑しかかからなかったでしょう。
むしろ。私とマーリアちゃんが気落ちするだろう知らせを今朝まで隠してくれていたネタリア外相とオレク司令に感謝するところでしょうか…
こういうことは、船乗りにとっては、ままある事なのだそうです。
「…酷な話ではあるのだが、船乗りにはどうしても死に目に会えない者が出ることがあってな。レイコ殿やマーリア殿の驚きと悲しみは十分理解するところなのだが。すでにその悲しみを乗り越えているだろう者達の所に新しく悲しんでいる者が加わると、雰囲気がどうしてもな。…すぐには無理かもしれないが、すでにそれらを受け入れた者らへの配慮を心に留めておいて欲しい。私の経験談だ」
オレク司令自身、そういう経験があったのかもしれません。
カーラさんが亡くなったのは、二ヶ月以上前です。日本で言うのなら四十九日も過ぎていて。すでに、カヤンさん達もアイリさん達も子供達も、心の整理はついているはずです。
そこで私達が嘆いても… まぁ理解はするのですが。
…胸に穴が開いたような…虚無感が襲ってきます。
海軍基地からの連絡船は、ボルト島のリゾートとの連絡船とは違い、帆付きカッターといった感じの小さめの船です。
セレブロさんが大きいので。連絡船には、漕ぎ手と操舵の船員さん達の他には、私とマーリアちゃんとアライさんとレッドさんしか乗っていません。ロトリー国の王族より先に渡ることになってしまいましたが。事情を知ったネイト殿下が順番を譲ってくれました。
荷物も、手持ちの物以外は置いてきました。後で送ってくれるそうです。
エイゼル市側の港に着き。桟橋に皆で降りたところ。近くに止まっていたアイズン伯爵家の馬車から懐かしい人達が。
ターダ君を抱っこしているアイリさんとタロウさん、それにハルカちゃんが、降りてきました。ただ、カヤンさんらファルリード亭の面々は見当たりません。
あと、クラウヤート様がバール君と来ています。衛兵と護衛騎士達も多人数で警備しているようですが。これはロトリー国使節の為でしょうね。…一便待たせることになって申し訳ない気分です。
「…えっ!? もしかしてレイコちゃん?」
「しばらく見ないうちに大きくなった…って、ちょっとおかしいよね? その成長っ」
「レイコママ。背なら私も伸びたよっ! マーリアママもアライママもお帰り!」
ランドゥーク親娘は変わらず。すぐにマーリアちゃんには気がついた皆ですが。私に目を留めつつ、周囲を伺って、また視線が私に戻ってきました。
「クーッ?クッ」
背中からレッドさんも答えます。ロトリー国のレイコが持っていた冬服の一つを改造して、レッドさんの入れるフードを付けています。重たくなったので、リュックのショルダーベルトの様な構造を仕込んでますけどね。
「あれ?、なんかレッドちゃんまで大きくなっている! ……。 …まぁ巫女様だからそういうこともあるのか」
スンと、なんか納得してしまったアイリさん。まぁ顛末については追々話しますが。
…大きくなったと言えば。アイリさんのお腹ちょっと大きくありませんか? 太ったとかでは無くて…
「ハルカちゃんとターダ君、半年でもやっぱ大きくなるわね。あとアイリさん…もしかして」
マーリアちゃんも気がつきます。
「うん、三人目。五ヶ月ってところかな」
「おめでとうっ! アイリさん、タロウさん」「クーッ!ククック」
「ありがとう。そうね、レッドちゃんにはまだ診察お願いするわ」
春とは言え、港は海風で冷えますからね。アイリさんを気遣って馬車で待機していたんですね。
ハルカちゃんは早速、アライさんに抱きついています。その頭を懐かしそうになでるアライさん。
「ん~。アライママ、帰ってきてくれた。なんか海の香りがする」
「たたいまハルカちゃん。すっと船の上てしたからね、長い旅てした」
ロトリー国使節が遅れることを把握したクラウヤート様が、護衛騎士に指示をして。こちらに来ました。
「レイコ殿、マーリアさん。無事のご帰還、何よりです」
「バウッバウッ」
クラウヤート様とバール君が挨拶してきます。
「ただいま、クラウヤート様、バール君」
「お出迎えありがとうございます、クラウヤート様」
「おじいさまと父上は丁度、王都の方に出張っていてね。電信で連絡は取れたけど、陛下の名義で"無事の御帰還祝着なり"って返信が来ていたよ」
アイズン伯爵とブライン様はそろってお仕事で王都ですか。
電信の用紙を恭しく見せてくれました。鉄道と一緒に敷設した電信は、活用されているようです。
「あとね… 手紙も今朝方早馬で届いたんだけど。もろもろ落ち着いたら、いちど王城の方に来ていただきたい…と。これ、レイコ殿に。あと、カーラさんについても、お悔やみ申し上げると伝えて欲しいと…。」
と、王家の印で封じられた手紙を渡されました。
電信で遅れないことも無いですが。長文で他の電信を邪魔することを避けたのでしょう。
ともかく。ファルリード亭の方に移動することになりました。
アイリさん達がここに来るのにも、伯爵家の方で馬車を出してくれたそうです。
カヤンさん達はファルリード亭でお仕事中です。急に店を休みにするわけにも行かないですし、そこまでされても申し訳ないですからね。あと、モーラちゃんは今、王都のランドゥーク商会の方に出かけているそうです。
馬車にて、先に王宮からの手紙に目を通します。
航海の無事帰還を言祝ぐ言葉のあとに。今回の旅の成果や、航海の間にネイルコードであったことや国政に関わる部分でいろいろ話がしたいそうです。王族との会談では無く、御前会議への出席要請ですね。
最後に。色々手を尽くしたがカーラさんを救えなかった事への謝罪が書かれています。…流行病ではどうしようもないとは思うのですが。
クラウヤート様が当時の状況を教えてくれました。
「毎年風邪は冬に流行る物だけど。これでもここ数年はずいぶん減っているんだ。レイコ殿の提唱された、加湿、マスク、うがい、手洗いだね。ただ…それでもゼロには出来ない」
「…そこは、しかたないです」
地球のインフルエンザみたいな病気が、冬の乾燥する時期に流行るのは、この世界でも同じです。
地球でも、明確に効くという薬が少なく、対処療法で回復するのを待つのがほとんどなのですが。医療がまだ未熟なこの世界では、どうしても子供やお年寄りに被害が出ます。
「…カーラさんがね、六六の知り合いが罹ったからって、診療所の方に看病の手伝いに出たのよ」
六六の診療所では風邪対策も啓蒙していたので、カーラさんもマスクと手洗いとうがいと従っていたそうですが。…運が悪くと言えばそれまでですけど。
六六で感染したのでしょう。カーラさんは、発病してから三日ほどで肺炎の症状を起こして昏睡となり。そのまま亡くなってしまったそうです。
「王都や貴族街からも医者が来てくれて、尽力してくれたんだけど…」
カーラさんは身分的には平民ですので。これは特別扱いといっていい配慮です。…私の関係者と言うことで優遇してくれたのでしょう。六六の診療所を拠点にして、六六での診療活動しながらも、日に何度も通いで診てくれたそうです。
さらに、看病していたミオンさんも感染。次に二人を看病していたモーラちゃんも感染と、けっこう大変なことになったそうですが。この二人は無事寛解したそうです。
ミオンさんは懐妊中ということもあり。医師の指示もあって、子供達と一緒に一時タロウさんの実家に避難したそうです。感染を懸念して、お見舞いもさせてもらえなかったそうです。まだ感染症に対してそこまで徹底する風潮は無い時代ですが、多分正解だったでしょう。
カーラさんに付き添えなかった子供達が、かなり落ち込んでいたそうですが。もう二ヶ月経って。皆、平常な生活に戻っているそうです。
「僕はこれから、ロトリー国使節の出迎えがあるんだ。エイゼル領の領主一族で今ここにいる最高位は僕って事だからね。…本当はファルリード亭の方に一緒に行きたかったけど」
「お気遣いありがとうございます。クラウヤート様」
「近く、セレブロさんと一緒に伯爵邸に行くから、またその時にでも。バール君もまたね」
見送りに応えつつ。領庁側で用意してくれた馬車で、とりあえずファルリード亭に向かいます。
セレブロさんは走りで並走です、ごめんね。マーリアちゃん曰く、「久しぶりだから気持ちいい。懐かしい匂い」だそうです。馬車の馬が驚かないのは凄いですね。
カヤンさんがファルリード亭を開いていると言うことは、皆はすでに立ち直って、普段の生活をしていると言うことでしょう。
「アイリさん、タロウさん、お出迎えありがとう。お仕事とか大丈夫?」
「ふふふ。宿や食堂と違ってずらせる仕事だから。気にしなくても良いわよ」
「だな。レイコちゃん達のお出迎えを優先だ」
「ん。ほんとありがとう」
カーラさんのことは…悲しくてしょうがないですが。
どういう心持ちでファルリード亭に入れば良いのか… オレク司令の言っていたことが心に乗っかかっていますが。アイリさん達に会って、少し落ち着いてきました。
皆の配慮に救われた思いです。
Side:ツキシマ・レイコ
カーラさんが亡くなった。
帰ったら。あの家で、皆で、お土産話で盛り上がるんだとばかり思っていました。
マーリアちゃんも呆然としています。
連絡船が海峡を進む間。
余りに現実離れ感のある知らせに。不思議と涙も出てきません。
隣に座っているマーリアちゃんが、私の手を握ってきました。それを握り返します。
マーリアちゃんの様子に、セレブロさんも心配しているようです。アライさんも、私の反対側の袖を掴んで離しません。
今日は雲が多めで。エイゼル市のところどころに日が差しているのが見えます。波はおだやかで。船を漕ぐ船員さん達のかけ声が響きます。多分、何事も無ければウキウキする光景だったのでしょうが。心証でここまで重たくなるもんなんだ…とぼやっと考えてしまいます。
「御危篤ということなら、無茶にも協力していたんだがね…」
連絡艇に乗る前に、オレク司令が打ち明けてくれました。
この連絡が、連絡船に乗るこのタイミングになった理由は。昨晩のうちに知らされたところで、私達がカーラさんに出来ることはもう何も無く。次の日まで悶々とした時間を過ごさせるのが酷だったから…だそうです。
教えてくれれば、自分で漕いででもエイゼル市に渡るのに…と瞬刻思ったのは確かですが。言われてみれば、今急いだところですでに詮無く。夜の渡海の危険性やら、エイゼル市やファルリード亭への連絡やら、周囲に迷惑しかかからなかったでしょう。
むしろ。私とマーリアちゃんが気落ちするだろう知らせを今朝まで隠してくれていたネタリア外相とオレク司令に感謝するところでしょうか…
こういうことは、船乗りにとっては、ままある事なのだそうです。
「…酷な話ではあるのだが、船乗りにはどうしても死に目に会えない者が出ることがあってな。レイコ殿やマーリア殿の驚きと悲しみは十分理解するところなのだが。すでにその悲しみを乗り越えているだろう者達の所に新しく悲しんでいる者が加わると、雰囲気がどうしてもな。…すぐには無理かもしれないが、すでにそれらを受け入れた者らへの配慮を心に留めておいて欲しい。私の経験談だ」
オレク司令自身、そういう経験があったのかもしれません。
カーラさんが亡くなったのは、二ヶ月以上前です。日本で言うのなら四十九日も過ぎていて。すでに、カヤンさん達もアイリさん達も子供達も、心の整理はついているはずです。
そこで私達が嘆いても… まぁ理解はするのですが。
…胸に穴が開いたような…虚無感が襲ってきます。
海軍基地からの連絡船は、ボルト島のリゾートとの連絡船とは違い、帆付きカッターといった感じの小さめの船です。
セレブロさんが大きいので。連絡船には、漕ぎ手と操舵の船員さん達の他には、私とマーリアちゃんとアライさんとレッドさんしか乗っていません。ロトリー国の王族より先に渡ることになってしまいましたが。事情を知ったネイト殿下が順番を譲ってくれました。
荷物も、手持ちの物以外は置いてきました。後で送ってくれるそうです。
エイゼル市側の港に着き。桟橋に皆で降りたところ。近くに止まっていたアイズン伯爵家の馬車から懐かしい人達が。
ターダ君を抱っこしているアイリさんとタロウさん、それにハルカちゃんが、降りてきました。ただ、カヤンさんらファルリード亭の面々は見当たりません。
あと、クラウヤート様がバール君と来ています。衛兵と護衛騎士達も多人数で警備しているようですが。これはロトリー国使節の為でしょうね。…一便待たせることになって申し訳ない気分です。
「…えっ!? もしかしてレイコちゃん?」
「しばらく見ないうちに大きくなった…って、ちょっとおかしいよね? その成長っ」
「レイコママ。背なら私も伸びたよっ! マーリアママもアライママもお帰り!」
ランドゥーク親娘は変わらず。すぐにマーリアちゃんには気がついた皆ですが。私に目を留めつつ、周囲を伺って、また視線が私に戻ってきました。
「クーッ?クッ」
背中からレッドさんも答えます。ロトリー国のレイコが持っていた冬服の一つを改造して、レッドさんの入れるフードを付けています。重たくなったので、リュックのショルダーベルトの様な構造を仕込んでますけどね。
「あれ?、なんかレッドちゃんまで大きくなっている! ……。 …まぁ巫女様だからそういうこともあるのか」
スンと、なんか納得してしまったアイリさん。まぁ顛末については追々話しますが。
…大きくなったと言えば。アイリさんのお腹ちょっと大きくありませんか? 太ったとかでは無くて…
「ハルカちゃんとターダ君、半年でもやっぱ大きくなるわね。あとアイリさん…もしかして」
マーリアちゃんも気がつきます。
「うん、三人目。五ヶ月ってところかな」
「おめでとうっ! アイリさん、タロウさん」「クーッ!ククック」
「ありがとう。そうね、レッドちゃんにはまだ診察お願いするわ」
春とは言え、港は海風で冷えますからね。アイリさんを気遣って馬車で待機していたんですね。
ハルカちゃんは早速、アライさんに抱きついています。その頭を懐かしそうになでるアライさん。
「ん~。アライママ、帰ってきてくれた。なんか海の香りがする」
「たたいまハルカちゃん。すっと船の上てしたからね、長い旅てした」
ロトリー国使節が遅れることを把握したクラウヤート様が、護衛騎士に指示をして。こちらに来ました。
「レイコ殿、マーリアさん。無事のご帰還、何よりです」
「バウッバウッ」
クラウヤート様とバール君が挨拶してきます。
「ただいま、クラウヤート様、バール君」
「お出迎えありがとうございます、クラウヤート様」
「おじいさまと父上は丁度、王都の方に出張っていてね。電信で連絡は取れたけど、陛下の名義で"無事の御帰還祝着なり"って返信が来ていたよ」
アイズン伯爵とブライン様はそろってお仕事で王都ですか。
電信の用紙を恭しく見せてくれました。鉄道と一緒に敷設した電信は、活用されているようです。
「あとね… 手紙も今朝方早馬で届いたんだけど。もろもろ落ち着いたら、いちど王城の方に来ていただきたい…と。これ、レイコ殿に。あと、カーラさんについても、お悔やみ申し上げると伝えて欲しいと…。」
と、王家の印で封じられた手紙を渡されました。
電信で遅れないことも無いですが。長文で他の電信を邪魔することを避けたのでしょう。
ともかく。ファルリード亭の方に移動することになりました。
アイリさん達がここに来るのにも、伯爵家の方で馬車を出してくれたそうです。
カヤンさん達はファルリード亭でお仕事中です。急に店を休みにするわけにも行かないですし、そこまでされても申し訳ないですからね。あと、モーラちゃんは今、王都のランドゥーク商会の方に出かけているそうです。
馬車にて、先に王宮からの手紙に目を通します。
航海の無事帰還を言祝ぐ言葉のあとに。今回の旅の成果や、航海の間にネイルコードであったことや国政に関わる部分でいろいろ話がしたいそうです。王族との会談では無く、御前会議への出席要請ですね。
最後に。色々手を尽くしたがカーラさんを救えなかった事への謝罪が書かれています。…流行病ではどうしようもないとは思うのですが。
クラウヤート様が当時の状況を教えてくれました。
「毎年風邪は冬に流行る物だけど。これでもここ数年はずいぶん減っているんだ。レイコ殿の提唱された、加湿、マスク、うがい、手洗いだね。ただ…それでもゼロには出来ない」
「…そこは、しかたないです」
地球のインフルエンザみたいな病気が、冬の乾燥する時期に流行るのは、この世界でも同じです。
地球でも、明確に効くという薬が少なく、対処療法で回復するのを待つのがほとんどなのですが。医療がまだ未熟なこの世界では、どうしても子供やお年寄りに被害が出ます。
「…カーラさんがね、六六の知り合いが罹ったからって、診療所の方に看病の手伝いに出たのよ」
六六の診療所では風邪対策も啓蒙していたので、カーラさんもマスクと手洗いとうがいと従っていたそうですが。…運が悪くと言えばそれまでですけど。
六六で感染したのでしょう。カーラさんは、発病してから三日ほどで肺炎の症状を起こして昏睡となり。そのまま亡くなってしまったそうです。
「王都や貴族街からも医者が来てくれて、尽力してくれたんだけど…」
カーラさんは身分的には平民ですので。これは特別扱いといっていい配慮です。…私の関係者と言うことで優遇してくれたのでしょう。六六の診療所を拠点にして、六六での診療活動しながらも、日に何度も通いで診てくれたそうです。
さらに、看病していたミオンさんも感染。次に二人を看病していたモーラちゃんも感染と、けっこう大変なことになったそうですが。この二人は無事寛解したそうです。
ミオンさんは懐妊中ということもあり。医師の指示もあって、子供達と一緒に一時タロウさんの実家に避難したそうです。感染を懸念して、お見舞いもさせてもらえなかったそうです。まだ感染症に対してそこまで徹底する風潮は無い時代ですが、多分正解だったでしょう。
カーラさんに付き添えなかった子供達が、かなり落ち込んでいたそうですが。もう二ヶ月経って。皆、平常な生活に戻っているそうです。
「僕はこれから、ロトリー国使節の出迎えがあるんだ。エイゼル領の領主一族で今ここにいる最高位は僕って事だからね。…本当はファルリード亭の方に一緒に行きたかったけど」
「お気遣いありがとうございます。クラウヤート様」
「近く、セレブロさんと一緒に伯爵邸に行くから、またその時にでも。バール君もまたね」
見送りに応えつつ。領庁側で用意してくれた馬車で、とりあえずファルリード亭に向かいます。
セレブロさんは走りで並走です、ごめんね。マーリアちゃん曰く、「久しぶりだから気持ちいい。懐かしい匂い」だそうです。馬車の馬が驚かないのは凄いですね。
カヤンさんがファルリード亭を開いていると言うことは、皆はすでに立ち直って、普段の生活をしていると言うことでしょう。
「アイリさん、タロウさん、お出迎えありがとう。お仕事とか大丈夫?」
「ふふふ。宿や食堂と違ってずらせる仕事だから。気にしなくても良いわよ」
「だな。レイコちゃん達のお出迎えを優先だ」
「ん。ほんとありがとう」
カーラさんのことは…悲しくてしょうがないですが。
どういう心持ちでファルリード亭に入れば良いのか… オレク司令の言っていたことが心に乗っかかっていますが。アイリさん達に会って、少し落ち着いてきました。
皆の配慮に救われた思いです。
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