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第10章 レイコさんは自重しない
第10章第011話 閑話 帰還報告会と再訓練
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第10章第011話 閑話 帰還報告会と再訓練
Side:ツキシマ・レイコ
はい。久しぶりにファルリード亭で給仕のお手伝い…のつもりではあったのですが。
モーラちゃんにタロウさんのご両親も揃って。家の皆が集まったって事で、旅の報告会をしましょうか…と思っていたところ。まぁ場所はファルリード亭ですからね。たまたま来店していたお客さんたちにも話すような形になってしまいました。
私が大きくなったことは、ファルリード亭界隈では周知でして。初見で気がつかない、または気がついて驚く人は未だに居ますが、まぁ落ち着きました。
ケールさん…影の十一番でダーコラにも一緒に来ていた方ですね、私の近くに来て小声で話してきます。
今でも交代でファルリード亭に詰めてもらっています。ありがたいことですね。
『念のため。交易のことや国家間の具体的な約束事などについてはぼやかすようにお願いいたします。何人か間諜らしき者がおりますので』
「…わかりました、ケールさん」
国交や交易の具体的な内容などは伏せておけ…ってことですね。まぁ大陸まで行くのはけっこう大変ではありますが、東の大陸やその南の大陸の資源の情報が無駄な欲を引っ張り出しかねません。軍船で沿岸の町村を略奪なんてなったら、もう戦争ですよ。
「レイコちゃんの東の大陸冒険譚! 聞きたい者はもう一品頼みなさい! 注文が行き渡ったら始めるよ!」
ミオンさんが号令かけます。いやいや冒険ってほど波瀾万丈じゃなかったですけどね。
本当に別に注文しなければ出て行けというわけでもありませんが。話をしている最中に注文入れられるのも何ですし、今のうちに飲み物とつまみでも追加しておけ程度の話ですね。それでも皆律儀に注文していきます。はい私も注文取りでますよ。
一通り行き渡ったところで。店中の人が注目する中、カウンター席に座って。始めますか。
…いつぞやの怪談を思い出しますね。
まずは出発の日から。蒸気船について簡単に説明。機関車はもう有名ですからね、あれを船に積んだ物で、今までの半分以下の時間でセイホウ王国にたどり着くことが出来ます。
嵐を避けたり、逆に真水確保とお風呂の為に雨に突っ込んだり。毎日の食事とか、途中の島に寄る理由とか。そして見えてきたセイホウ諸島。
この大陸の人々が、元は東の大陸からセイホウ王国を経由してやってきたことは知られていますが。何百年の前の話で、ディテールはかなり失われていますので。王都の港の様子や王宮の様式。王女様について等々。皆興味深く聞いています。
セイホウ王国で起きた地震の話もしました。ネイルコードでもたまに有感地震はあるそうですが、前回は私が来る前だそうです。王女様についての話も、皆興味深げです。
そして。アライさんの一族の情報を得て、更に海を越えて、今はアライさんたちラクーンの国になっている東の大陸へ。
アライさんはファルリード亭の人気者ですからね。東の帝国の跡地にラクーン達が国を作っている…と聞いても、なにかほのぼのとした物を想像している人が多そうです。
そして。ラクーンの国ロトリーの王都で出会った「帝国の魔女」の話に繋がります。
ロトリー国で出会った、千年前に帝国を滅ぼしたとされる帝国の魔女。その正体は、千年前に顕現した私と同じ"赤竜神の巫女"だということ。
魔女が帝国を滅ぼしたというのは、教会がそう言っているわけではありません。皇帝の妃が最後まで生き残ったという伝承から派生したお伽噺のような物です。
ロトリー国のレイコは、あくまで別の巫女ということにして、私と同じ月島玲子の再生だというところは伏せました。まぁ混乱するだけですからね、同じ赤竜神によって降ろされた存在というだけで十分でしょう。
この大陸に現れた初代聖女と帝国の魔女が同一人物だということも伏せときました。赤竜神と共に現れて魔獣を一掃した聖女が当時の巫女だろうとは、一般でも思われているようですが、教会でもその辺は暈かしているようですし。公表するにしても、この辺はリシャーフさんには話をしてからの方が良いでしょう。
千年前。帝国がまだ成立する時代に、東の大陸に降り立った巫女。
私と違って、権力闘争や戦争にモロに巻き込まれていった彼女。
彼女を助けてくれた男爵を伴侶として皇帝にまで押し上げ、国を安定化させたところに降り注いた災厄。
それは魔女は関係なく、あくまで天災によるものだったことと、それによる帝国の滅亡の下り。
セイホウ王国は、離島が故に天災の難から逃れた地域であり、ごく少数帝国で生き延びた人も合流しています。そして、東の大陸を避けて西に探索を伸ばした結果、現在のこの大陸にたどり着き、今に至ります。これがだいたい六百年前。
東の大陸に残った巫女は、二百年ほどの眠りの後、北上してきたラクーン達の邂逅し、ロトリー国が建国されたこと。
そして、私達と会った後。赤竜神の一族として迎えられて。神の御座、星の世界への長い旅に旅だったこと。その際、捨てる身体のマナを私がもらったこと…
「…レイコちゃんが大きくなったのって、そういうことだったのね」
「東の大陸って、これって要は俺たちのご先祖様のお話だよな?」
「東の帝国にそんな物語があったのか…」
「帝国の魔女…なんてもう呼んではいけませんな。昇天されて赤竜神と同等の存在になられたとは… というか、私達に話してしまっても良かったのですか? 教会に目を付けられませんかね?この話」
お客さんの一人が心配してます。
「すでにネイルコードにも報告してあることだからね。まぁ皆が知ってしまえば、秘密にもならないでしょ?」
「どうして帝国が滅んだのか、教会はそのことを知っていたのでしょうか?」
セイホウ王国が、帝国の下りと件の聖女のことを隠しているのは、ロトリー国のレイコが健在で、ラクーン達に肩入れしていると知っていたからです。東の大陸を忌避させることで不干渉の姿勢を貫きました。
こちらに渡ってきた赤竜教がそのへんの事情を知らないとは思えないですが。
「最初の教会では知っていたと思うけど。今の教会が知っているかは… 今度リシヤーフさんに聞いてみるわね」
「リシヤーフさんって…正教国のリシャーフ猊下!?」
戴冠式がらみで、近いうちに会うと思いますしね。
たまにお忍びでファルリード亭に泊まりに来ていることは内緒です。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
さて今日は、マーリアちゃんと一緒に貴族街の護衛騎士の訓練場に来ています。
「ダンテ隊長。よろしくお願いします」
訓練用の木刀を互いに持って相対し、礼をします。
普通に動く分にはもう違和感はないですが。身長が伸びたことで、どうにも体捌きに不安が出てきまして。護衛騎士に胸を借りるつもりで、マーリアちゃんと一緒にいろいろ確認しに来ました。
事前に許可は得ていたので。早速、ダンテ隊長自ら相手をしてくれます。いつもはナックルソードサイズの模擬剣でしたが、今回は長さ六十センチほどのショートソードの木剣です。
まずは私が、ダンテ隊長が構えているところに上段から打ち込みますが。剣を横から叩かれて剣筋を反らされます。
上下左右の動きではすぐに見切られてしまうので。前後方向に着いたり離れたりでフェイントを入れつつ、攻撃しますが。…やはり簡単にいなされますね。
もちろんフルパワーでやれば、相手の模擬剣を砕くくらい簡単ですが、模擬戦ですからね。ただ、ダンテ隊長はほとんど動くこと無く往なしていきます。
結果、私の手の所に剣を当てられること三回。
「「ありがとうございました」」
負けを認めて終了です。剣の速度がという以前に、先読みがほんと的確で。当てられたと言うより、隊長の剣の軌道と私の手の軌道が自然と交差したという感じですか。なんともはやです。
マーリアちゃんとも一試合します。
マーリアちゃんは一番おっきなハルバートの木剣を使います。いつもの獲物を振り回して反動を利用するスタイルですね。
マーリアちゃん自身が成長していることもあって、昔よりハルバート自体を振れていますが。ハルバートの狙いも的確な上に、得物から生えたと見紛うばかりに足も出てきます。初見の人は翻弄されるでしょうね。
接近してハルバートの範囲に踏み込まないと一撃が入れられませんが。なかなか間合いに近づけません。
「「ありがとうございました」」
結局。マーリアちゃんのハルバートでお腹を撫でられること二回、私の闇雲同然の刺突で剣先が届いたことが一回。一勝二敗で私の負けですね。内容的には完敗です。
一通り試合させてもらっての考察です。
「まぁなんて言うかな。身長が人並みになった事と、重心が上がったことで。むしろこちらとしては読みやすいと言うか、捌きやすいというか…」
「レイコの以前の攻撃は、全部下から来てたからね。衝撃で持ち上げられると踏ん張れないから、あれけっこうやっかいだったわよ。あと、ちょっと遅くなった?」
やっぱりそうですか。
はい。前より弱くなった理由ははっきりしています。身長が伸びたせいと…毎度の摩擦様ですね。
加速の為に踏ん張るには腰を…重心を落とす必要がありますが。いくら力持ちでも重心の下がる速度はニュートンに支配されているわけで。例えばこれまでは三十センチ落とせば良かったところが背が伸びて四十五センチに。その落ちる時間分、隙が増えることになります。体重が増えたことで必要なグリップも増え、足が滑りやすくなり。トップスピードはともかく、動作の加速がいちいち悪くなっています。スパイク付き靴でも地面を刮ぐだけ。
また、リーチが長くなったとは言え、体重がまだまだ足りず。剣を横に払われたら踏ん張れません。
マーリアちゃんなんかは、重たい武器を振り回したりぶつけたりすることで逆にその反動を利用していたのですが。…私の力で獲物をたたきつけると、地面を耕すか獲物を壊すかしてしまいそうで。
要は、パワーが増すのならコンパクトの方が強い…そういえば漫画でも、強くなると小さくなるパターンが多かったな。
「まぁ筋は良いのだから。普通の剣技を習得していけばいいと思いますな」
こうなってくると、ダンテ隊長のような騎士の修練が必要になってくる…という結論ですか。
「レイコのフルパワーなら、相手の防御毎粉砕できるのだから、修練要らないんじゃない?」
「そりゃ、必要なときはそうするけど…」
…脳筋ですね。
速度と力はあるのだから、日本刀のような切ることに特化したような剣を作ってもらって…ってのも考えたのですが。別に人を一刀両断したいわけではありません。そんな武器を持ったら、逆に攻撃を躊躇ってしまうでしょう。
まぁ、こりゃダメだという相手の骨を折ったりはしますけど。出血は基本無しで、打撲骨折で済む程度にしたいとは思っています。あくまで制圧のための武技です。
背が伸びたのなら得物もそれに合わせて…とか思ったのですが。やっぱ私には、ナックルソードの方が合っているようです。今の手に合った新しいのを作ってもらいましょう。
…脳筋で決定ですね。
Side:ツキシマ・レイコ
はい。久しぶりにファルリード亭で給仕のお手伝い…のつもりではあったのですが。
モーラちゃんにタロウさんのご両親も揃って。家の皆が集まったって事で、旅の報告会をしましょうか…と思っていたところ。まぁ場所はファルリード亭ですからね。たまたま来店していたお客さんたちにも話すような形になってしまいました。
私が大きくなったことは、ファルリード亭界隈では周知でして。初見で気がつかない、または気がついて驚く人は未だに居ますが、まぁ落ち着きました。
ケールさん…影の十一番でダーコラにも一緒に来ていた方ですね、私の近くに来て小声で話してきます。
今でも交代でファルリード亭に詰めてもらっています。ありがたいことですね。
『念のため。交易のことや国家間の具体的な約束事などについてはぼやかすようにお願いいたします。何人か間諜らしき者がおりますので』
「…わかりました、ケールさん」
国交や交易の具体的な内容などは伏せておけ…ってことですね。まぁ大陸まで行くのはけっこう大変ではありますが、東の大陸やその南の大陸の資源の情報が無駄な欲を引っ張り出しかねません。軍船で沿岸の町村を略奪なんてなったら、もう戦争ですよ。
「レイコちゃんの東の大陸冒険譚! 聞きたい者はもう一品頼みなさい! 注文が行き渡ったら始めるよ!」
ミオンさんが号令かけます。いやいや冒険ってほど波瀾万丈じゃなかったですけどね。
本当に別に注文しなければ出て行けというわけでもありませんが。話をしている最中に注文入れられるのも何ですし、今のうちに飲み物とつまみでも追加しておけ程度の話ですね。それでも皆律儀に注文していきます。はい私も注文取りでますよ。
一通り行き渡ったところで。店中の人が注目する中、カウンター席に座って。始めますか。
…いつぞやの怪談を思い出しますね。
まずは出発の日から。蒸気船について簡単に説明。機関車はもう有名ですからね、あれを船に積んだ物で、今までの半分以下の時間でセイホウ王国にたどり着くことが出来ます。
嵐を避けたり、逆に真水確保とお風呂の為に雨に突っ込んだり。毎日の食事とか、途中の島に寄る理由とか。そして見えてきたセイホウ諸島。
この大陸の人々が、元は東の大陸からセイホウ王国を経由してやってきたことは知られていますが。何百年の前の話で、ディテールはかなり失われていますので。王都の港の様子や王宮の様式。王女様について等々。皆興味深く聞いています。
セイホウ王国で起きた地震の話もしました。ネイルコードでもたまに有感地震はあるそうですが、前回は私が来る前だそうです。王女様についての話も、皆興味深げです。
そして。アライさんの一族の情報を得て、更に海を越えて、今はアライさんたちラクーンの国になっている東の大陸へ。
アライさんはファルリード亭の人気者ですからね。東の帝国の跡地にラクーン達が国を作っている…と聞いても、なにかほのぼのとした物を想像している人が多そうです。
そして。ラクーンの国ロトリーの王都で出会った「帝国の魔女」の話に繋がります。
ロトリー国で出会った、千年前に帝国を滅ぼしたとされる帝国の魔女。その正体は、千年前に顕現した私と同じ"赤竜神の巫女"だということ。
魔女が帝国を滅ぼしたというのは、教会がそう言っているわけではありません。皇帝の妃が最後まで生き残ったという伝承から派生したお伽噺のような物です。
ロトリー国のレイコは、あくまで別の巫女ということにして、私と同じ月島玲子の再生だというところは伏せました。まぁ混乱するだけですからね、同じ赤竜神によって降ろされた存在というだけで十分でしょう。
この大陸に現れた初代聖女と帝国の魔女が同一人物だということも伏せときました。赤竜神と共に現れて魔獣を一掃した聖女が当時の巫女だろうとは、一般でも思われているようですが、教会でもその辺は暈かしているようですし。公表するにしても、この辺はリシャーフさんには話をしてからの方が良いでしょう。
千年前。帝国がまだ成立する時代に、東の大陸に降り立った巫女。
私と違って、権力闘争や戦争にモロに巻き込まれていった彼女。
彼女を助けてくれた男爵を伴侶として皇帝にまで押し上げ、国を安定化させたところに降り注いた災厄。
それは魔女は関係なく、あくまで天災によるものだったことと、それによる帝国の滅亡の下り。
セイホウ王国は、離島が故に天災の難から逃れた地域であり、ごく少数帝国で生き延びた人も合流しています。そして、東の大陸を避けて西に探索を伸ばした結果、現在のこの大陸にたどり着き、今に至ります。これがだいたい六百年前。
東の大陸に残った巫女は、二百年ほどの眠りの後、北上してきたラクーン達の邂逅し、ロトリー国が建国されたこと。
そして、私達と会った後。赤竜神の一族として迎えられて。神の御座、星の世界への長い旅に旅だったこと。その際、捨てる身体のマナを私がもらったこと…
「…レイコちゃんが大きくなったのって、そういうことだったのね」
「東の大陸って、これって要は俺たちのご先祖様のお話だよな?」
「東の帝国にそんな物語があったのか…」
「帝国の魔女…なんてもう呼んではいけませんな。昇天されて赤竜神と同等の存在になられたとは… というか、私達に話してしまっても良かったのですか? 教会に目を付けられませんかね?この話」
お客さんの一人が心配してます。
「すでにネイルコードにも報告してあることだからね。まぁ皆が知ってしまえば、秘密にもならないでしょ?」
「どうして帝国が滅んだのか、教会はそのことを知っていたのでしょうか?」
セイホウ王国が、帝国の下りと件の聖女のことを隠しているのは、ロトリー国のレイコが健在で、ラクーン達に肩入れしていると知っていたからです。東の大陸を忌避させることで不干渉の姿勢を貫きました。
こちらに渡ってきた赤竜教がそのへんの事情を知らないとは思えないですが。
「最初の教会では知っていたと思うけど。今の教会が知っているかは… 今度リシヤーフさんに聞いてみるわね」
「リシヤーフさんって…正教国のリシャーフ猊下!?」
戴冠式がらみで、近いうちに会うと思いますしね。
たまにお忍びでファルリード亭に泊まりに来ていることは内緒です。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
さて今日は、マーリアちゃんと一緒に貴族街の護衛騎士の訓練場に来ています。
「ダンテ隊長。よろしくお願いします」
訓練用の木刀を互いに持って相対し、礼をします。
普通に動く分にはもう違和感はないですが。身長が伸びたことで、どうにも体捌きに不安が出てきまして。護衛騎士に胸を借りるつもりで、マーリアちゃんと一緒にいろいろ確認しに来ました。
事前に許可は得ていたので。早速、ダンテ隊長自ら相手をしてくれます。いつもはナックルソードサイズの模擬剣でしたが、今回は長さ六十センチほどのショートソードの木剣です。
まずは私が、ダンテ隊長が構えているところに上段から打ち込みますが。剣を横から叩かれて剣筋を反らされます。
上下左右の動きではすぐに見切られてしまうので。前後方向に着いたり離れたりでフェイントを入れつつ、攻撃しますが。…やはり簡単にいなされますね。
もちろんフルパワーでやれば、相手の模擬剣を砕くくらい簡単ですが、模擬戦ですからね。ただ、ダンテ隊長はほとんど動くこと無く往なしていきます。
結果、私の手の所に剣を当てられること三回。
「「ありがとうございました」」
負けを認めて終了です。剣の速度がという以前に、先読みがほんと的確で。当てられたと言うより、隊長の剣の軌道と私の手の軌道が自然と交差したという感じですか。なんともはやです。
マーリアちゃんとも一試合します。
マーリアちゃんは一番おっきなハルバートの木剣を使います。いつもの獲物を振り回して反動を利用するスタイルですね。
マーリアちゃん自身が成長していることもあって、昔よりハルバート自体を振れていますが。ハルバートの狙いも的確な上に、得物から生えたと見紛うばかりに足も出てきます。初見の人は翻弄されるでしょうね。
接近してハルバートの範囲に踏み込まないと一撃が入れられませんが。なかなか間合いに近づけません。
「「ありがとうございました」」
結局。マーリアちゃんのハルバートでお腹を撫でられること二回、私の闇雲同然の刺突で剣先が届いたことが一回。一勝二敗で私の負けですね。内容的には完敗です。
一通り試合させてもらっての考察です。
「まぁなんて言うかな。身長が人並みになった事と、重心が上がったことで。むしろこちらとしては読みやすいと言うか、捌きやすいというか…」
「レイコの以前の攻撃は、全部下から来てたからね。衝撃で持ち上げられると踏ん張れないから、あれけっこうやっかいだったわよ。あと、ちょっと遅くなった?」
やっぱりそうですか。
はい。前より弱くなった理由ははっきりしています。身長が伸びたせいと…毎度の摩擦様ですね。
加速の為に踏ん張るには腰を…重心を落とす必要がありますが。いくら力持ちでも重心の下がる速度はニュートンに支配されているわけで。例えばこれまでは三十センチ落とせば良かったところが背が伸びて四十五センチに。その落ちる時間分、隙が増えることになります。体重が増えたことで必要なグリップも増え、足が滑りやすくなり。トップスピードはともかく、動作の加速がいちいち悪くなっています。スパイク付き靴でも地面を刮ぐだけ。
また、リーチが長くなったとは言え、体重がまだまだ足りず。剣を横に払われたら踏ん張れません。
マーリアちゃんなんかは、重たい武器を振り回したりぶつけたりすることで逆にその反動を利用していたのですが。…私の力で獲物をたたきつけると、地面を耕すか獲物を壊すかしてしまいそうで。
要は、パワーが増すのならコンパクトの方が強い…そういえば漫画でも、強くなると小さくなるパターンが多かったな。
「まぁ筋は良いのだから。普通の剣技を習得していけばいいと思いますな」
こうなってくると、ダンテ隊長のような騎士の修練が必要になってくる…という結論ですか。
「レイコのフルパワーなら、相手の防御毎粉砕できるのだから、修練要らないんじゃない?」
「そりゃ、必要なときはそうするけど…」
…脳筋ですね。
速度と力はあるのだから、日本刀のような切ることに特化したような剣を作ってもらって…ってのも考えたのですが。別に人を一刀両断したいわけではありません。そんな武器を持ったら、逆に攻撃を躊躇ってしまうでしょう。
まぁ、こりゃダメだという相手の骨を折ったりはしますけど。出血は基本無しで、打撲骨折で済む程度にしたいとは思っています。あくまで制圧のための武技です。
背が伸びたのなら得物もそれに合わせて…とか思ったのですが。やっぱ私には、ナックルソードの方が合っているようです。今の手に合った新しいのを作ってもらいましょう。
…脳筋で決定ですね。
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