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一章
親睦なんて上っ面にもならないようで
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「・・・」
「暇ならそこの玉ねぎ切ってくれる?」
「わかった」
言われるがままになすべきことをする。頭の中に巡るのは自分の何がいけなかったのかという疑問ばかり。何が悪かったのだろうか。悪いのは私なのだろうか。
作業していた手を一旦止め玉ねぎから意識を離す。視線の先には日南汰と江川くんがいる。何やらこっちを見ているようで現在進行形で炊いているお米から目を離していた。
私は今の自分を見られているのが嫌で視線を玉ねぎに戻した。
まな板に玉ねぎをおき、上の皮を手でむしり取る。それから包丁を持ち半分に半分に切っていく。玉ねぎを見つめている目はしばしばとし始め、涙がでてくる。
「逢沢さん泣いてるんだけどw」
「そりゃ、玉ねぎ切ってるからね」
本当にそれだけだろうか。いやそれだけであって欲しいからこれ以上考えるのはやめておこう。心が折れそうだから。
「ちょっと目しみるから顔洗ってくる」
他の誰にも顔を見られないようにうつむきながらトイレに向かった。
「逢沢さんどっかいったね」
米が出来上がりすることがなくなった僕たち2人は、手伝いをしに行くのがめんどくさくてその場を動かずにいた。
たびたび、気になって小香花の方を見ていたけれど何を話しているのかまではわからない。もしかしたら僕の考え過ぎなだけかもしれないし。
「日南汰は行かなくていいの?」
うだうだしている僕に照亜紀は一言声をかけた。
「ちょっといってくる」
小香花の方に向かって走った。
彼女を追いかけると、そこはトイレだった。トイレの外の隅っこで1人壁に頭を当て泣いていた。
「小香花」
「日南汰、なんでここにいるの?」
壁の方を向いたまま僕に向かって話しかける。
「心配だったから」
「私なら、なんともないのに」
「それは嘘だよ。なんともない人はこんなところで泣いたりなんかしないよ」
「玉ねぎ切ってたから」
「小香花。ごめんね」
「なんで、なんで謝るの?」
「1人で抱え込むことないよ。僕はいつだって君を裏切りはしないから。」
「もう・・・」
「ごめん、本当にごめん」
「うっ・・・・あ・・・・・・・」
彼女は僕にすがるようにして抱きついてきた。強く力強く服を引っ張って。誰にも見せることができなかった姿。いつもの通り振舞って虚勢をはることは長くは続かない。
彼女はひとしきり泣いた。
「ありがとう日南汰」
まだ顔は赤い。だけど、彼女は何か吹っ切れたような顔をしていた。
「もう大丈夫?」
「なんとかね」
「それならよかった」
「私ね、嫌われるのが怖いんだ。人ってさある時を境にして紐がプツリと途切れたように姿を変えるんだ。そうなると人は凶暴になる。それが私は怖いんだ。どうしようもないくらい惨めになって、自分から何もかもを取られてしまう。」
彼女の話す言葉は真実味を帯びていて説得力があった。今まで間の体験。きっと辛いことがあったんだろう。それを抱えて生きていくのは辛いことだ。脅えながら過ごさないといけない。
「大丈夫。僕は君を嫌わない。1人確かな存在がいるだけで安心できるでしょ?」
「でも、考えたくないけど、裏切らない人なんていない。みんな離れていくんだよ。」
「そんなことはない」
「でも・・・」
「わかった。じゃあ、僕は君と付き合うよ。そうすれば嫌うことはできない。もし嫌ってもそれを許容してやり直していける」
「本当に?」
「うん」
「わかった」
どうやら僕は僕が思っていた以上に彼女のことが気になっていたらしい。
この告白から彼女は彼女らしさを取り戻していった。
「暇ならそこの玉ねぎ切ってくれる?」
「わかった」
言われるがままになすべきことをする。頭の中に巡るのは自分の何がいけなかったのかという疑問ばかり。何が悪かったのだろうか。悪いのは私なのだろうか。
作業していた手を一旦止め玉ねぎから意識を離す。視線の先には日南汰と江川くんがいる。何やらこっちを見ているようで現在進行形で炊いているお米から目を離していた。
私は今の自分を見られているのが嫌で視線を玉ねぎに戻した。
まな板に玉ねぎをおき、上の皮を手でむしり取る。それから包丁を持ち半分に半分に切っていく。玉ねぎを見つめている目はしばしばとし始め、涙がでてくる。
「逢沢さん泣いてるんだけどw」
「そりゃ、玉ねぎ切ってるからね」
本当にそれだけだろうか。いやそれだけであって欲しいからこれ以上考えるのはやめておこう。心が折れそうだから。
「ちょっと目しみるから顔洗ってくる」
他の誰にも顔を見られないようにうつむきながらトイレに向かった。
「逢沢さんどっかいったね」
米が出来上がりすることがなくなった僕たち2人は、手伝いをしに行くのがめんどくさくてその場を動かずにいた。
たびたび、気になって小香花の方を見ていたけれど何を話しているのかまではわからない。もしかしたら僕の考え過ぎなだけかもしれないし。
「日南汰は行かなくていいの?」
うだうだしている僕に照亜紀は一言声をかけた。
「ちょっといってくる」
小香花の方に向かって走った。
彼女を追いかけると、そこはトイレだった。トイレの外の隅っこで1人壁に頭を当て泣いていた。
「小香花」
「日南汰、なんでここにいるの?」
壁の方を向いたまま僕に向かって話しかける。
「心配だったから」
「私なら、なんともないのに」
「それは嘘だよ。なんともない人はこんなところで泣いたりなんかしないよ」
「玉ねぎ切ってたから」
「小香花。ごめんね」
「なんで、なんで謝るの?」
「1人で抱え込むことないよ。僕はいつだって君を裏切りはしないから。」
「もう・・・」
「ごめん、本当にごめん」
「うっ・・・・あ・・・・・・・」
彼女は僕にすがるようにして抱きついてきた。強く力強く服を引っ張って。誰にも見せることができなかった姿。いつもの通り振舞って虚勢をはることは長くは続かない。
彼女はひとしきり泣いた。
「ありがとう日南汰」
まだ顔は赤い。だけど、彼女は何か吹っ切れたような顔をしていた。
「もう大丈夫?」
「なんとかね」
「それならよかった」
「私ね、嫌われるのが怖いんだ。人ってさある時を境にして紐がプツリと途切れたように姿を変えるんだ。そうなると人は凶暴になる。それが私は怖いんだ。どうしようもないくらい惨めになって、自分から何もかもを取られてしまう。」
彼女の話す言葉は真実味を帯びていて説得力があった。今まで間の体験。きっと辛いことがあったんだろう。それを抱えて生きていくのは辛いことだ。脅えながら過ごさないといけない。
「大丈夫。僕は君を嫌わない。1人確かな存在がいるだけで安心できるでしょ?」
「でも、考えたくないけど、裏切らない人なんていない。みんな離れていくんだよ。」
「そんなことはない」
「でも・・・」
「わかった。じゃあ、僕は君と付き合うよ。そうすれば嫌うことはできない。もし嫌ってもそれを許容してやり直していける」
「本当に?」
「うん」
「わかった」
どうやら僕は僕が思っていた以上に彼女のことが気になっていたらしい。
この告白から彼女は彼女らしさを取り戻していった。
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