暑い景色と冷たい温もり

撫でたココ

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一章

上っ面も広い心で受け止めれば

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 この遠足で100日あった壁は自らの力を持って内側から破壊してしまった。なんて恐ろしい力なのだろう。嫌々ながら彼女のお芝居に付き合っていたという建前でいたのだが、建前は建前でしかないらしく元気のない彼女を見て突飛なことをしてしまった。

 自分がこんなにも行動的だったなんて思わなかった。

「とりあえずみんなのとこに戻ろうか」

「う、うん」

「大丈夫だよ。いつも通りいれば」

「・・・わかった」

 元来た砂利道をガシャガシャと踏んでいく。僕の服を後ろで小さく握る小香花。子供みたいでなかなかに可愛らしかった。

 班員のところへ戻ると、あらかたの作業は終わっていてカレーをグツグツと煮ているところだった。照亜紀はすでに女子2人のところに合流していたようで

「おかえり日南汰と逢沢さん」

「遅くなった」

「また2人でいたの~?」

「ラブラブ~~」

「・・・」

「いや~トイレ行くタイミングがかぶってね。2人で行って帰ってきたとこだね。」

「・・・待たせてごめんね。涙止まらなくってさ~、玉ねぎで泣いたところを日南汰に見られるなんて恥ずかしい。」

 うん。それで大丈夫。いつも通りで。勇気を出して踏み出した一歩は小香花からすれば大きな一歩だった。

「まぁ、しょうが、ないよね。それよりもう少しだし準備でもしておきますか」

「そう、だね。それがいい、かな。」

「じゃあそうしようか」

 そう言いながらこっちを見た照亜紀は後ろの女子に見られないようにビシッと親指を立ててニコッと笑った。

 カレーを無事に作りみんなで顔を合わせて食べる。自分たちで作ったものはよく聞く通り美味しかった。女子の切っていた野菜の大きさもちょうどよかったし、ご飯も普通に炊けていた。非を挙げるとすれば小香花を抜いた女子2人の顔が険しかったくらいだろうか。

 昼ごはんを食べ終えつかの間の休息。他のものは散り散りに川に行ったり散歩に行ったりする中、僕はまだテーブルの前に座っていた。そこにいるのは僕と小香花だけだった。

「日南汰?」

「どうした?」

「ありがとね」

「へいへい」

「何よ、その適当な返事は」

「かしこまった小香花は空が飛べるペンギンみたいだね」

「どういうこと?」

「変だってことだよ」

「なによ~~」

 今にして調子を取り戻してきた小香花。遠足も終盤だというのに。まぁ始めから飛ばし気味でも困るのは確かなのだけど。

「そういやさ、お願いというか頼みがあんだけど」

「なに?」

「あの2人とも仲良くしてやって欲しいんだが」

 こんなことを言うのは酷かもしれない。少しの間でも仲間はずれにされ嘲笑われていたのだから。でも

「もちろんそうするつもりだよ。あの子たちのおかげで日南汰が彼氏になったわけだし~~」

 それもそうか。

「それに、いじめてた奴に仲良くされるのってなんか惨めじゃん?ちょっとは息苦しさを感じてもらわないとね!」

 そう言い放つ小香花の微笑みは、小悪魔のような魔女こような不気味な笑みだった。

 
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