暑い景色と冷たい温もり

撫でたココ

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一章

それから

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 気づけば夏も終わり、季節の中で一番の情緒ある秋がやってきている。夏と冬の間でしかないと思われる秋だけど僕は秋が一番好きだ。寂寥感のある赤く色付いた紅葉も、夏が過ぎ一気に肌寒くなるあの感覚も。秋にはどことなく惹かれる魅力がある。

 そんな秋。僕たち二年生には修学旅行がある。

 旅行先は沖縄。2泊3日でホテルに泊まることになっている。2日目にはタクシーでの沖縄観光。そのほか、バーベキューがあったり、レクリエーションがあったり。

 11月15日。天気は晴れ。現在地、空の上。

「沖縄といったらなんくるないさーだよね~」

「いやいや、めんそーれでしょ」

「意味わかってないでしょ?」

 あはは、と笑い声が聞こえる機内。周りに友達しかいない状況の中、小さな教室とも呼べる飛行機は着々と沖縄に向かっていた。

「日南汰。お菓子いる?」

 あの一悶着から無事元通りに戻った僕たちは、相変わらずおままごとでもしているかのようだ。

 窓から外が見える位置に小香花が座り、真ん中に僕、通路側に照亜紀が座っている。

「じゃあもらう」

「あーん」

「・・・・・ん」 

 僕は軽く開けた口に入れられたクッキーを黙って食べ、ペットボトルに入ったお茶を一口飲んだ。

 この修学旅行、学校に通うだけの日常を抜け出した非日常の中では良くも悪くも、いつも通りには行かないわけで。

 2日目の夜。ご飯を食べ、入浴も済ませたところで自由時間となった僕たちは部屋にいることに飽き、ホテル内を散歩していた。

「明日で終わりだね」

「そうだね」

「なんか終わりって聞くと寂しいな」

「思い出になるってそういうもんじゃない?」

「まぁ~ね~」

 東京とは違う沖縄の涼しいくらいの風を受けながら、修学旅行が終盤だということに寂しさを覚える。今いるのは本館の別館の間。本館と別館は完全に分かれていて、行き来するのに毎回外に出る必要がある。僕たちはその間にあるベンチに座っていた。

「なんにも起きなかったよね」

「悲劇を期待するな」

「私と日南汰って班違うのにすごい長い時間一緒にいるよね」

「おかげで若干班に居づらくあるけどな」

「それはしょうがないね」

 なんでこんなにも感傷的なんだろうか。

「ねぇ日南汰」

「なに?」

「いいよね」

「「・・・・・・」」

 気づけば僕の唇は柔らかい感触に包まれていた。柔らかくほんのり甘い、そして異様に冷たいその感触に。
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