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一章
待つ勇気
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柔らかい陽射しがカーテンの隙間から入り込み朝を運ぶ。暑さを感じさせない澄んだ空気は、少しずつ秋の訪れを予感させていた。
「・・・・・起きるか」
気だるげな体を起こし、しばらくぼけっとその辺を見つめる。やがて思い立ったように不意にベッドから立ち上がると、制服に着替え、荷物を持ってリビングへ降りて行った。
気乗りしない足取りの中、いくら遅くても歩けば学校に着く。
小香花に謝らないと。
このことだけが頭を巡って、血と一緒に全身を駆け巡る。
しかし、放課後になっても小香花とは会わなかった。学校を1日休んでいて話すことができなかった。
なんとしてでも今日伝えないと。
話し合うまで捨てきれないいろんな不安要素を抱えて、小香花の家まで走って行った。
「この前ごめん」
小香花の母親に家に入れてもらい、今は小香花の部屋にいる。
「もう大丈夫だから・・・」
淋しそうに、吐き捨てるように言ったその言葉はどう考えても言葉通りには聞こえなかった。
「いつまででも待つから。小香花が話してくれるのを。僕もさ、人には言えないことがある。そのことを知られるのが怖くて深く関わらないで生きてきた。でもさ、小香花にあってこういうのも楽しいなって思えたんだ。だからさ、いつか言える日が来たら聞かせてよ、その時に僕も君に秘密を話すから。」
黙って聞いている彼女の目にはうっすらと涙が。
「う・・・うっ・・・」
「小香花?」
「怖かった。怖かった。」
「ごめん小香花。」
「ありがとう」
僕たちはそれ以上何かいうことはなかった。小香花が泣き止むまで。何分たったのかわからない。ただ泣く小香花を前にして頭を撫でていた。
「う・・・・・・」
「もう平気?」
「・・・・・うん」
日焼けした空をよそにひとり家路に着く。言っておかなければいけないことは言ったと思う。あとは今まで通り生活して行くだけだ。焦らずゆっくりと。
思い返してみれば突然の連続だったように思う。小香花にあったのも、付き合うことになったのも。それでいてこれだけ僕と小香花が仲良くできてるのはひとえに小香花のおかげなんだろうなと思う。
人生に想いを老けるように、いろんなことを思い出しながら、とほとほと歩く。
もう家は目の前。
玄関のドアを開け、今日も母親の第一声を聞く。
「おかえりなさい」
「ただいま」
僕は安堵の表情で明るく返事をした。
「・・・・・起きるか」
気だるげな体を起こし、しばらくぼけっとその辺を見つめる。やがて思い立ったように不意にベッドから立ち上がると、制服に着替え、荷物を持ってリビングへ降りて行った。
気乗りしない足取りの中、いくら遅くても歩けば学校に着く。
小香花に謝らないと。
このことだけが頭を巡って、血と一緒に全身を駆け巡る。
しかし、放課後になっても小香花とは会わなかった。学校を1日休んでいて話すことができなかった。
なんとしてでも今日伝えないと。
話し合うまで捨てきれないいろんな不安要素を抱えて、小香花の家まで走って行った。
「この前ごめん」
小香花の母親に家に入れてもらい、今は小香花の部屋にいる。
「もう大丈夫だから・・・」
淋しそうに、吐き捨てるように言ったその言葉はどう考えても言葉通りには聞こえなかった。
「いつまででも待つから。小香花が話してくれるのを。僕もさ、人には言えないことがある。そのことを知られるのが怖くて深く関わらないで生きてきた。でもさ、小香花にあってこういうのも楽しいなって思えたんだ。だからさ、いつか言える日が来たら聞かせてよ、その時に僕も君に秘密を話すから。」
黙って聞いている彼女の目にはうっすらと涙が。
「う・・・うっ・・・」
「小香花?」
「怖かった。怖かった。」
「ごめん小香花。」
「ありがとう」
僕たちはそれ以上何かいうことはなかった。小香花が泣き止むまで。何分たったのかわからない。ただ泣く小香花を前にして頭を撫でていた。
「う・・・・・・」
「もう平気?」
「・・・・・うん」
日焼けした空をよそにひとり家路に着く。言っておかなければいけないことは言ったと思う。あとは今まで通り生活して行くだけだ。焦らずゆっくりと。
思い返してみれば突然の連続だったように思う。小香花にあったのも、付き合うことになったのも。それでいてこれだけ僕と小香花が仲良くできてるのはひとえに小香花のおかげなんだろうなと思う。
人生に想いを老けるように、いろんなことを思い出しながら、とほとほと歩く。
もう家は目の前。
玄関のドアを開け、今日も母親の第一声を聞く。
「おかえりなさい」
「ただいま」
僕は安堵の表情で明るく返事をした。
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