君の瞳に映るのは希望か絶望か

撫でたココ

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私の話

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 私は小さい時、とある事故を目撃した。

 その日はお父さんとお母さんと3人で遊園地に行くところだった。目的地までは電車を乗り継ぎながら向かった。私は電車の中で、この先起こるであろう楽しいことを想像しながら、胸を躍らせた。遊園地に着いたらまず、あれに乗りたいとか、その後にはあれがいいなとか、そんなことを行きの電車でお父さんとお母さんに対して、嬉しそうに話していた。

 目的地に近づくたびに少しずつ車内の人は増えていった。少なくとも1回乗り換えがあるにもかかわらず、その車内にはきらきらと目を輝かせた子供達と、その両親で7割ほどを占めていた。その子どもたちもまた、私と同じように、あそこに行きたいなとか、あれを見るのが楽しみとか、そんな幸せな気持ちでいっぱいだった。

 私があれこれ話してる間に、乗り換えの駅に着き、父親は私の手を握り、私は促されるように電車をでた。乗り換えの電車のホームに行くまでも、父は私の手を引き、私の歩幅に合わせながら歩いてくれた。私はその間にも、あるれるほどの楽しみさを声に出して語った。

 周りの子どももそうだったと思う。みんな浮かれ気分で、騒がしい駅のホームだった。ある瞬間を除いては。

 そして、その瞬間は図らずもやってきた。「まもなく電車が到着します」駅のアナウンスが流れた。この電車に乗って降りればもう目の前にはみんなが楽しみにしていた楽園がある。そう心待ちにしていた。

 電車が来る直前、混雑し合う駅のホームで事は起きた。先頭に立っていた女の人が、通行人に当たった反動で前に倒れた。きっとほとんどの人が、その瞬間を目にはしていなかっただろう。だけど私は、その瞬間を見た。押したのは男の子だった。もっとも、故意ではなかっただろうから、押してしまったのは男の子だったであろう。その女の人は、ホームから投げ出された。

 私が見たのはここまでだ。この後、どうなったのかはわからない。

 でも、この瞬間の事を私はずっと覚えている。偶然に起きた事故を偶然に目にしただけだ。ただ、その重なり合った偶然は子どもであった私にはなにか強烈で、特別なことのように思えた。こんなにも身近に死が存在するんだということを子どもながらに思い知った。

 この事故の後のことは詳しくは覚えてない。遊園地に行ったのかどうかすらも曖昧だ。私の記憶は電車のホームで途切れてしまっているのだ。

 そんな事をたまにふと思い出す。こんな事を思い出したのはきっと、彼のせいだろう。

「死ぬかもしれない、なんて」

 そんな事あるわけがない。

 でも一度、死を身近に感じてしまった私はどうしても死ぬわけないという事実を捨て切ることができない
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