君の瞳に映るのは希望か絶望か

撫でたココ

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その後

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 あの日の出来事から2ヶ月程経った。あれ以来、彼女の身に何か起きたということはなかった。変わったことといえば、あの日を境に少し距離が縮まったということだろうか。いわゆる吊り橋効果ってやつなのだろう。多分。

 季節は秋になった。もう冬といってもいいのかもしれない。布団から起き上がるまでの時間が少しずつ長くなっていき、その度に冬が近づいたのだと実感する。夏とは違い、外が晴れていても気温がそれほど高くなるわけでもなく、乾燥した空気を風が走るたびに、骨まで染み入るほどの寒さを覚える。自転車通学ともなると、なおさら風は冷たく感じる。まだ、つけるのには早いかと手袋をつけ惜しみした手はハンドルを握るほかなく、完全無防備な状態で風にさらされる。この風に我慢ならなくなっていると、ちょうどよく目の前に彼女がいるので、自転車を降りて一緒に歩くことにする。

「おはよう」

 0.000000247

 僕はさりげなく、彼女の顔を確認しながら挨拶した。

「おはよう。それにしても相変わらずねあなたは。」

「そんなこと言われてもしょうがなくない?」

 彼女が言っているのはきっと、毎度のようにその日初めて会う時に彼女の顔を、もっといえば目を確認することだろう。

「それで、どうなのよ?」

「まぁどうということもないというか、いつも通りというか・・・」

「その感じなら今日も大丈夫なのね」

 そして、彼女もいつも僕がこっそり目を覗いたあと、こうして確認を取る。僕は何とか表情に出すまいとしているけど、どうしても口調とか、言葉の選び方とか、仕草とかでバレてしまうらしい。これを何とかしたいと思っているのだけれど、未だ解決策は見いだせていない。

「僕の挙動で判断するのやめてもらっていいですかね?」

「それは無理よ。だってばればれなんだもの。だったらもっと隠す努力をしたほうがいいわね」

「そんなに出してるつもりはないんだけどな」

 こうやって、毎日似たような会話をしながら学校に行くのが日課になっていた。

 今日は2人とも朝一で同じ講義なので、途中で別れることなく同じ講義室まで行く。

「ちょっとトイレ行ってくるわね」

 決まっているわけではないが、だいたい毎回使っている場所に荷物を置くと、トイレ宣言をして教室を出て行った。

 最近、彼女は少しいなくなる時にはこうやっていく場所を伝えてくるようになった。これは言うまでもなく僕への配慮なのだろう。自分ではそのつもりはないのだが、おそらく、彼女がいなくなる時に、何か反応してしまうのだろう。それに気づいてから気を利かせてこうやって宣言してくれてるのだと思う。

 気づけば教授が入ってきて、授業が始まった。しかし、まだ彼女は戻ってきていない。

 授業は彼女不在の間にもどんどん進んでいく。そして、1限目の終わりまで遂に彼女は姿を現さなかった。
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