17 / 25
その後
しおりを挟む
あの日の出来事から2ヶ月程経った。あれ以来、彼女の身に何か起きたということはなかった。変わったことといえば、あの日を境に少し距離が縮まったということだろうか。いわゆる吊り橋効果ってやつなのだろう。多分。
季節は秋になった。もう冬といってもいいのかもしれない。布団から起き上がるまでの時間が少しずつ長くなっていき、その度に冬が近づいたのだと実感する。夏とは違い、外が晴れていても気温がそれほど高くなるわけでもなく、乾燥した空気を風が走るたびに、骨まで染み入るほどの寒さを覚える。自転車通学ともなると、なおさら風は冷たく感じる。まだ、つけるのには早いかと手袋をつけ惜しみした手はハンドルを握るほかなく、完全無防備な状態で風にさらされる。この風に我慢ならなくなっていると、ちょうどよく目の前に彼女がいるので、自転車を降りて一緒に歩くことにする。
「おはよう」
0.000000247
僕はさりげなく、彼女の顔を確認しながら挨拶した。
「おはよう。それにしても相変わらずねあなたは。」
「そんなこと言われてもしょうがなくない?」
彼女が言っているのはきっと、毎度のようにその日初めて会う時に彼女の顔を、もっといえば目を確認することだろう。
「それで、どうなのよ?」
「まぁどうということもないというか、いつも通りというか・・・」
「その感じなら今日も大丈夫なのね」
そして、彼女もいつも僕がこっそり目を覗いたあと、こうして確認を取る。僕は何とか表情に出すまいとしているけど、どうしても口調とか、言葉の選び方とか、仕草とかでバレてしまうらしい。これを何とかしたいと思っているのだけれど、未だ解決策は見いだせていない。
「僕の挙動で判断するのやめてもらっていいですかね?」
「それは無理よ。だってばればれなんだもの。だったらもっと隠す努力をしたほうがいいわね」
「そんなに出してるつもりはないんだけどな」
こうやって、毎日似たような会話をしながら学校に行くのが日課になっていた。
今日は2人とも朝一で同じ講義なので、途中で別れることなく同じ講義室まで行く。
「ちょっとトイレ行ってくるわね」
決まっているわけではないが、だいたい毎回使っている場所に荷物を置くと、トイレ宣言をして教室を出て行った。
最近、彼女は少しいなくなる時にはこうやっていく場所を伝えてくるようになった。これは言うまでもなく僕への配慮なのだろう。自分ではそのつもりはないのだが、おそらく、彼女がいなくなる時に、何か反応してしまうのだろう。それに気づいてから気を利かせてこうやって宣言してくれてるのだと思う。
気づけば教授が入ってきて、授業が始まった。しかし、まだ彼女は戻ってきていない。
授業は彼女不在の間にもどんどん進んでいく。そして、1限目の終わりまで遂に彼女は姿を現さなかった。
季節は秋になった。もう冬といってもいいのかもしれない。布団から起き上がるまでの時間が少しずつ長くなっていき、その度に冬が近づいたのだと実感する。夏とは違い、外が晴れていても気温がそれほど高くなるわけでもなく、乾燥した空気を風が走るたびに、骨まで染み入るほどの寒さを覚える。自転車通学ともなると、なおさら風は冷たく感じる。まだ、つけるのには早いかと手袋をつけ惜しみした手はハンドルを握るほかなく、完全無防備な状態で風にさらされる。この風に我慢ならなくなっていると、ちょうどよく目の前に彼女がいるので、自転車を降りて一緒に歩くことにする。
「おはよう」
0.000000247
僕はさりげなく、彼女の顔を確認しながら挨拶した。
「おはよう。それにしても相変わらずねあなたは。」
「そんなこと言われてもしょうがなくない?」
彼女が言っているのはきっと、毎度のようにその日初めて会う時に彼女の顔を、もっといえば目を確認することだろう。
「それで、どうなのよ?」
「まぁどうということもないというか、いつも通りというか・・・」
「その感じなら今日も大丈夫なのね」
そして、彼女もいつも僕がこっそり目を覗いたあと、こうして確認を取る。僕は何とか表情に出すまいとしているけど、どうしても口調とか、言葉の選び方とか、仕草とかでバレてしまうらしい。これを何とかしたいと思っているのだけれど、未だ解決策は見いだせていない。
「僕の挙動で判断するのやめてもらっていいですかね?」
「それは無理よ。だってばればれなんだもの。だったらもっと隠す努力をしたほうがいいわね」
「そんなに出してるつもりはないんだけどな」
こうやって、毎日似たような会話をしながら学校に行くのが日課になっていた。
今日は2人とも朝一で同じ講義なので、途中で別れることなく同じ講義室まで行く。
「ちょっとトイレ行ってくるわね」
決まっているわけではないが、だいたい毎回使っている場所に荷物を置くと、トイレ宣言をして教室を出て行った。
最近、彼女は少しいなくなる時にはこうやっていく場所を伝えてくるようになった。これは言うまでもなく僕への配慮なのだろう。自分ではそのつもりはないのだが、おそらく、彼女がいなくなる時に、何か反応してしまうのだろう。それに気づいてから気を利かせてこうやって宣言してくれてるのだと思う。
気づけば教授が入ってきて、授業が始まった。しかし、まだ彼女は戻ってきていない。
授業は彼女不在の間にもどんどん進んでいく。そして、1限目の終わりまで遂に彼女は姿を現さなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる