ウエディングベルは幸せの足音と聞いていましたが、私には破滅の足音に聞こえます。

ホタル

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手のひらの道化師4

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・・・ここは・・・どこだ?
周りを見ると、どこまでも続く岩と平原が目の前に広がっていた。

クロードの目指すのは遠くにある光の奥!
暖かいあの光に行かないと。
そして、一歩踏み出すと・・・。

ピューーーーーーッ!

っと、冷たい風と雪がクロードを襲う。
まるで、光の方へと行かせたく無いように冷たい風が襲う。
余りの寒さと冷たさに動きが止まる。
寒い・・・凍えてしまいそうだ・・・。

進まないと!光の場所に帰らないと・・・。
あの場所に行けば全て救われる。

また一歩進むと。
雪とは名ばかりの小さな氷がクロードを風と一緒に叩きつける。

風と同時に声が聞こえる。

『行かないで!戻って来て』と。
声が頭の中に響く度に風が強くなり。
その風の強さと、身を切るような氷の冷たさにクロードは膝をおる。

もう一歩も動けない・・・。
風が強すぎて一歩も前に行く事が出来ない。

風が吹く度に『行かないで』と頭の中に響いてくる声、どうして邪魔をする。あの暖かな光が呼んでいるんだ、頼むから邪魔をしないで欲しいマリア。

・・・マリア?

・・・この風はマリアなのか?

冷たい風がマリアだと分かると『正解』と言う様に今までの冷たさが嘘の様に暖かい風へと変化した。

「マリア?ここでじっとしていれば良いのか?」
クロードの周りを柔らかい風が『信じて』と言っている様に思えたクロードは風の言う通りにその場に腰を下ろした。

時折心臓が止まりそうになる位の痛みが襲うが、このままここに居ても良いと思える程、マリアを近くに感じる。

でも一向に体は寒くて堪らない。
然も痛みも増して行く。
苦しくて体が小刻みに震え、無意識に手を伸ばすとさっきまで何も無い場所にマリアが座って居た。

クロードは伸ばした手でマリアを掴むと、マリアの唇がクロードの唇に触れた。
クロードの冷え切った唇にマリアの熱が伝わってくる様に、じんわりと暖かくそしてマリアの口からは熱い何かが体内に入って来た。

熱い!体が熱い!
これは堪らない。この熱さは尋常じゃ無い!
胸が焼ける様に苦しくて耐えられない。
いつの間にか抱きしめて居たはずのマリアは腕の中から消えて居た。

暗闇に1人。
だが、マリアが近くにいるのは分かる。
体の痛みは依然としてあるが、心地良い幸福がクロードを包んでいた。


「クロード・・・クロード・・・」
微かに聞こえる掠れたマリアの声にびくんと反応し!そしてゆっくりと目を開けると、真っ赤な目をしたマリアの顔が一番初めに飛び込んで来た。

「・・・良かった・・・クロード良かった」
マリアが泣いている・・・勝気なマリアが、人目を気にしないで泣いていた。
それに少し痩せたか?

「・・・・」
クロードは声を出したつもりが、声どころか音すら出た来なかった。

マリアは真っ赤な目を更に大きくして、医者を呼ぶと直ぐに医者は駆けつけ、クロード喉を見た。
直ぐにコップ一杯の水でクロードの声は戻り、マリアはホッとしたのか床へ座り込んだ。

クロードはまだ喉の乾きが収まらず。
「・・・喉が渇いた・・・もう一杯・・」
この一言でメイド達がクロードの世話を始めた。
体が重く言う事を聞かないので正直助かる。

メイド達にもう一杯の水を手渡され一気に飲み干すと!丁度家令とマリアが部屋を出て行く所だった。

「・・・マリア・・・ここへ・・・」
「クロードごめんなさい、これからお医者様と・・・」
マリアの消え入りそうな微笑みがどうもきになり、マリアの声を遮った。
「今のマリアの仕事は医者と話す事じゃ無いはずだ。妻として私の世話をする事だ。違うか?話は誰かに聞いて貰え」
「・・・そうね・・妻として・・・貴方のお世話を優先しないとね・・・」
更に寂しそうに笑うマリアに違和感がある膨れ上がったが、高熱のせいで今はどうでもいい。

今はメイド達に世話をして貰うよりもマリアに側に居て欲しかった。
メイド達を下がらせるとマリアと二人っきりになった。

心なしかマリアの顔が赤くなって見えるのは、願望だろうか?

然も、うつむいているから表情までは分からないもしかして嫌がっているのだろうか?

「・・・世話をしてくれないの?マリア」
「・・・そうねクロード、寝巻きを交換しましょうね、ついでに体も拭きましょうか」
マリアの裏返った声で帰って来た。

「・・・えっ?大丈夫?マリア」
「なっ、何を言うの?大丈夫に決まっているでしょう?早く服を脱いで!ほら」
「・・・分かった・・・けど、マリア!どうしてこっちを見ないんだ?」
クロードはシャツを脱いで上半身になるといつまでたってもクロードを見ないマリアを訝しんだ。

同時に微かに希望が湧いていた。
クロードが目が覚めた時のマリアの目!そしてチラチラと見ては顔を赤くする顔!トドメは、裏返った声!

期待して良いんだろうか?
いや!これは!期待して良いだろう!
あんな女の子っぽいマリア見た事がない!

もしかして!もしかすると!

かも?
だと良い?


「・・・今着替えとお湯を・・・」
「待ってマリア、顔を見せて」
クロードの側から離れるマリアの腕を掴んで無理矢理マリアの顎を掴んで振り向かせようとした。
体がだるくてもマリアの体の自由を奪うのは簡単だった。
「嫌!クロード手を離して」
ますます赤い顔になるマリアをもっと見たい!もっと見たい!

「マリア!こっち・・・頼む・・・」

「クロード!病み上がりなんだから!いい加減にして!」
マリアの握り拳がクロードの顎にクリーンヒットした。

「・・・・」
クロードは顎を抑えてそのまま蹲った。

「クロード!大丈夫?ごめんなさい!痛かった?でもクロードも悪いのよ!私に意地悪するから!でも私がヤッパリ悪いの?クロード?ねえ!ごめね!クロード!」

クロードの体が揺れている。
どうしよう?また具合が悪くなった?
「クロード!今お医者を呼んで・・・」

「ぶッ!!待って!待って!マリア!」
目に涙を溜めているクロードを初めて見た。

まさか、まさか、笑いをこらえているクロードを見れるとは思わなかったが!なんか!ひどくね?
毒で体力が無いから腫れ物に触れる様に接して来たけど!ここは一発殴ってもいいよね?


「・・・クロード・・・どうして笑うのかな?」
未だに肩を震わせて笑っているクロードに詰め行った。

クロードは笑い終わると今までの見たことの無い笑顔で!
「やっと分かったよ。マリアは俺が好きだろ?」
「・・・・・」
クロードの一言にマリアは固まった。
図星を突かれ言葉が出ない。

口をパクパクしてもう一度クロードを見るやはり嬉しいそうに笑っていた。

これは、完敗だと悟った。

「・・・そうね、負けたわ!降参!」

「それで?奥様?他に言う事があるでしょう?」

「・・・悔しいけど!クロードが好きよ」
「・・・やっと、やっと、手に入れた」
クロードはマリアの唇にキスをして気を失った。

「クロード!!!!」

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