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君が恋しい8
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月明かりが照らす食堂の入り口で二人の重なる影とピチャピチャと卑猥な水音が響く。
ひと通りが少ないと言っても宿の入り口で口付けをする二人を通りがかる人々は好奇の目で通り過ぎる。
マリアは口付けに夢中になり目の前のクロードに翻弄されていた。
「あらあら情熱的です事・・・」
「これはこれは大胆ですな・・・」
「最近の若い人って・・・」
中には揶揄する言葉をかけてくる人も男女問わずいた。
マリアの微かに残る理性が耳の奥に口付けのリップ音の他に揶揄する声を拾うと、自分が宿の入り口でクロードと抱き合い口付けを交わしている事に気が付いた。
「クッ・・クロード・・やッ・やめ・・・」
「・・・・・・」
慌ててマリアがクロードから離れようとしてももクロードがマリアの腰から手を離すどころか更に逃がさないと断言する様にマリアの腰を抱く手に力が入る。
クロードは決してマリアの言葉を聞くことは無く、己が満足するまで口付けは続いた。
クロードがマリアから唇を離す頃にはマリアは息をするのがやっとで立っていられずその場に崩れる様に座り込むと、放心しているマリアを抱きかかえて宿の中に入っていった。
宿の中は月の光がかろうじて窓から入ってくるだけで、窓の近くのテーブルの位置がわかるくらいだった。
クロードは食堂を見渡すと近くのをテーブルの上にマリアを座らせる。
マリアの顔がクロードより少し高い位置になりクロードを見下ろす。
意識がハッキリしてくるとクロードが何かを訴えている様な視線でマリアを見上げていた。
二人の視線が一瞬交差する。
クロードを見下ろすマリアの顔は真っ赤に染まった。
たった一瞬、目があっただけ。
それだけでマリアには何時間も見つめられてる様な錯覚に陥ってクロードに愛されていると勘違いをしそうになる。
クロードの指がマリアの胸の谷間に有る赤い痣に触れた。
「マリア・・・俺に言う事はない?」
上から見下ろすマリアは下を向いているクロードの表情が見えない。ただ分かるのは感情を抑えた声。
「・・・・」
離婚した元妻に何を求めているの?泣いて捨てないでと言えば良いの?クロード。
「・・・俺なんかに話す気が無い?」
マリアがどう答えて良いか迷っているとマリアの沈黙を肯定ととった。
「イッ」
クロードは爪で胸の痣をえぐり引っ掻いた。
「痛い?マリア。俺も・・・痛いよ。いつから?いつから、そんな関係になったの?」
クロードの声が震えている。
「クロード・・・関係ってどう言う事?それに痛いってどこかぶつけた?」
痛いとの言葉にマリアは怪我でもしたのかと心配した。
「はぐらかすんだ」
マリアを見上げたクロードの顔が歪んでいた。
クロードにはマリアの言葉は心に届いていなかった。
マリアはこんなクロードを見た事が無かった。
クロードはいったいどうしてしまったの?マリアの頭の中は疑問だらけになった。
まさか離婚がクロードを変えてしまったのだろうか?
まさかそんな事は無い。だってマリアとの結婚はアナベルとのカモフラージュではないか。
クロードはそんなにアナベルとの事を秘密にしたいのか?
義理で結婚した私とは違うのだから、堂々とアナベルに求婚すれば良いではないか!
やり場の無い怒りがマリアの心を黒く染め上げていく。
友達のままだったら、心から祝福出来たのに、クロードを好きになってしまった今となっては醜い感情しか溢れてこない。
クロードを憎まないと、一歩が踏み出せない。
マリアは知らずにクロードを睨んでいた。
さっきクロードには合わないと決めたはずなのに、会った途端に心が震え、口付けに嬉しくなり夢中になってクロードの口付けに答えた。
口内を自分以外の舌が動き回る事が不自然に感じるが、嫌悪していない事に驚いて『この時間がもっと続けば良い』とさえ思う自分の浅ましさに怖くなった。
そんな自分も嫌い。
「大っ嫌い」
マリアは無意識に呟いた。
マリアの口から一番聞きたく無い言葉がクロードの心を砕いた。
目を見開いて瞬きせず見つめるクロードの視線に居た堪れずマリアは顔を背けると、クロードは何かを言おうとして口を開いて直ぐに閉じ、クロードの手がマリアの首を掴みグッと引き寄せる。
啄む様な口付けではなく最初からダイレクトにマリアの唇を貪り始めた。
唇が離れるとクロードは言った。
「心が手に入らないのならばせめて体だけでも手に入れる」と。
ひと通りが少ないと言っても宿の入り口で口付けをする二人を通りがかる人々は好奇の目で通り過ぎる。
マリアは口付けに夢中になり目の前のクロードに翻弄されていた。
「あらあら情熱的です事・・・」
「これはこれは大胆ですな・・・」
「最近の若い人って・・・」
中には揶揄する言葉をかけてくる人も男女問わずいた。
マリアの微かに残る理性が耳の奥に口付けのリップ音の他に揶揄する声を拾うと、自分が宿の入り口でクロードと抱き合い口付けを交わしている事に気が付いた。
「クッ・・クロード・・やッ・やめ・・・」
「・・・・・・」
慌ててマリアがクロードから離れようとしてももクロードがマリアの腰から手を離すどころか更に逃がさないと断言する様にマリアの腰を抱く手に力が入る。
クロードは決してマリアの言葉を聞くことは無く、己が満足するまで口付けは続いた。
クロードがマリアから唇を離す頃にはマリアは息をするのがやっとで立っていられずその場に崩れる様に座り込むと、放心しているマリアを抱きかかえて宿の中に入っていった。
宿の中は月の光がかろうじて窓から入ってくるだけで、窓の近くのテーブルの位置がわかるくらいだった。
クロードは食堂を見渡すと近くのをテーブルの上にマリアを座らせる。
マリアの顔がクロードより少し高い位置になりクロードを見下ろす。
意識がハッキリしてくるとクロードが何かを訴えている様な視線でマリアを見上げていた。
二人の視線が一瞬交差する。
クロードを見下ろすマリアの顔は真っ赤に染まった。
たった一瞬、目があっただけ。
それだけでマリアには何時間も見つめられてる様な錯覚に陥ってクロードに愛されていると勘違いをしそうになる。
クロードの指がマリアの胸の谷間に有る赤い痣に触れた。
「マリア・・・俺に言う事はない?」
上から見下ろすマリアは下を向いているクロードの表情が見えない。ただ分かるのは感情を抑えた声。
「・・・・」
離婚した元妻に何を求めているの?泣いて捨てないでと言えば良いの?クロード。
「・・・俺なんかに話す気が無い?」
マリアがどう答えて良いか迷っているとマリアの沈黙を肯定ととった。
「イッ」
クロードは爪で胸の痣をえぐり引っ掻いた。
「痛い?マリア。俺も・・・痛いよ。いつから?いつから、そんな関係になったの?」
クロードの声が震えている。
「クロード・・・関係ってどう言う事?それに痛いってどこかぶつけた?」
痛いとの言葉にマリアは怪我でもしたのかと心配した。
「はぐらかすんだ」
マリアを見上げたクロードの顔が歪んでいた。
クロードにはマリアの言葉は心に届いていなかった。
マリアはこんなクロードを見た事が無かった。
クロードはいったいどうしてしまったの?マリアの頭の中は疑問だらけになった。
まさか離婚がクロードを変えてしまったのだろうか?
まさかそんな事は無い。だってマリアとの結婚はアナベルとのカモフラージュではないか。
クロードはそんなにアナベルとの事を秘密にしたいのか?
義理で結婚した私とは違うのだから、堂々とアナベルに求婚すれば良いではないか!
やり場の無い怒りがマリアの心を黒く染め上げていく。
友達のままだったら、心から祝福出来たのに、クロードを好きになってしまった今となっては醜い感情しか溢れてこない。
クロードを憎まないと、一歩が踏み出せない。
マリアは知らずにクロードを睨んでいた。
さっきクロードには合わないと決めたはずなのに、会った途端に心が震え、口付けに嬉しくなり夢中になってクロードの口付けに答えた。
口内を自分以外の舌が動き回る事が不自然に感じるが、嫌悪していない事に驚いて『この時間がもっと続けば良い』とさえ思う自分の浅ましさに怖くなった。
そんな自分も嫌い。
「大っ嫌い」
マリアは無意識に呟いた。
マリアの口から一番聞きたく無い言葉がクロードの心を砕いた。
目を見開いて瞬きせず見つめるクロードの視線に居た堪れずマリアは顔を背けると、クロードは何かを言おうとして口を開いて直ぐに閉じ、クロードの手がマリアの首を掴みグッと引き寄せる。
啄む様な口付けではなく最初からダイレクトにマリアの唇を貪り始めた。
唇が離れるとクロードは言った。
「心が手に入らないのならばせめて体だけでも手に入れる」と。
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