ウエディングベルは幸せの足音と聞いていましたが、私には破滅の足音に聞こえます。

ホタル

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君が良い

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ジゼルはやっぱりクロードの頼みを断ろうとした。
クロードの言い分からないでもないが、正直カルバンを相手にどこまでやれるか自信が無い。

これが恩があるマリアの頼みならと考えてしまう。
なにせ相手が悪すぎる。
正面切って喧嘩を売れるのはクロードしか居ないと正直思う。

ジゼルは溜息交じりに二階に居るはずのカルバンとマリアの居る部屋の方を見上げた。

「さて行きますか」


「おじさま酷いわ!クロードを殴らなくても良いじゃない」
部屋に入るなりマリアはカルバンに詰め寄った。

「マリアこんな夜更けにいくら元夫だからってあんな所で二人っきりでいる事自体が間違っているんだよ」

「それとこれとは違うでしょ?おじさま」

「お前を不幸にする奴の肩を持つ必要はない」
カルバンにしてはマリアに対して強い口調になっていた。

「だからって殴る事はないわ」

「良い加減にしなさいライラお前は騙されているんだよ」

えっ?ライラ?
聞き間違い?

「なんで騙されると思うのおじさま」

「あの男はダメだ!ライラお前の娘を殺そうとしただろう?やっぱりあの時無理矢理にでも連れ去っていれば・・・」

「何を言っているの?おじさま?私は子供もいないしライラじゃ無いわ」
マリアの背筋が寒くなる様な感覚に見舞われた。

そしてマリアはまだ本能が警鐘を鳴らしていることに気が付いた。

マリアは見誤っていた。

本能の警鐘はクロードにでは無くマリア自身だったのだ。

「・・・おじさま?・・・変だわ」

「変じゃない!どれだけ心配させるんだライラ」
カルバンはイライラとマリアに向かって声を荒げた。


おじさま?私とライラを混同している。

マリアはなんとかしようと考え始めた途端にカルバンの唇がマリアの唇を塞いだ。

この状況に驚いたマリアはカルバンの頬を叩く。

バチンとこぎみ良い音と共にカルバンの表情はマリアを睨んだが、見る見るうちに青くなっていった。

マリアとカルバンは無言のまま見つめ合っている。

最初に声を出したのはカルバンだった。
「・・・済まないマリア・・・俺は一体何って事を・・・」

「・・・」
マリアはショックで声も出なかった。

そんなマリアをどうすれば良いか分からずカルバンはディアスの言葉を思い出した。

『マリアが可愛いのならマリアに関わるな!お前が見ているのはマリアじゃ無い・・・どうして分からないんだ!』

ディアスの言葉が今更ながらカルバンの心に重くのしかかる。

そうか俺はマリアを見ていたと思っていたはずが、マリア母親ライラを見ていたという事か!

マリアに頬を叩かれるまで気が付かなかったなんて、叔父失格だな。

マリアとの距離を推し量っていると、ドアがコンコンと叩く音がした。

「カルバンさんまだ起きていますか?」

カルバンに取って救いの手が伸びた事に安堵する。

「ああ起きているが何か用か?ジゼル」

「すげー!カルバンさんは俺の声覚えていたのかよ」

「偶然だよ!偶然」と言ってドアを開けた。

「それにしても無駄に大きくなったなジゼル」

「カルバンさんが年取って縮んだんじゃ無いですか?」
「相変わらず口の減らない」
「そうですか?おっ!そこにいるのはマリアじゃないか?久しぶりだな~元気そうで何より」

「・・・」
マリアはカルバンのキスがショックで何も言えないでいた。

「ん?マリア?」
反応のないマリアに違和感を覚えたジゼルはマリアを注意深く見つめた。

「そういえばどうしたんだこんな夜更けに誰も居ない宿に来るなんて」
やましい気持ちでいっぱいのカルバンはマリアを背に隠すとジゼルの訪問の動機を聞く。

「そうそうここね、俺の叔母さんの宿なんですよ!それでねせっかくカルバンさんが泊まっているんだったら飲みに行かないかな?っておもって声をかけたんですけど!どうやらお取り込み中だったみたいで・・・」

「いや!そんな事は無い!ジゼル飲みにでも行くか?マリアはもう遅いから寝なさい!いいね!・・・俺は今日は帰って来ないから誰が来てもドアを開けちゃダメだよ」
カルバンはマリアを見ずに言うとジゼルを引きずる様に部屋を出ていった。

カルバンが出て行ってから少し経ってから正気に戻った。

マリアはこの時理解した。

「1人ぼっちだったんだ」

マリアの心はズキンと鈍い痛んだが涙1つ溢れなかった。

涙が溢れない代わりに乾いた笑いがマリアの口から溢れた。


・・・疲れた。

本当に疲れた。

マリアは何もかもがどうでも良くなった。

まずは寝ようもう朝起きてからこれからのことを決めよう。

マリアはベッドに入ろうとし視線を感じて振り向くとクロードがジッとマリアを見つめていた。

「ク、クロード!どうしてここに?帰ったんじゃ無いの?それより頬が腫れているわ!早く冷やさないと」

マリアは慌ててクロードに近付くとクロードはマリアを抱きしめた。

「どうして?こんな事するの?」
マリアは困惑する。

「うん、なんだかマリアが泣きたいのに泣けない様に見えたから違う?」

マリアはカッと頬が赤くなった。

マリアの表情を見ただけで気持ちが分かるクロードは今までどれだけマリアを見てきたのか。

「・・・どうして?・・・どう・・して?」

言葉が続かなかった。
言葉の代わりにマリアの口から嗚咽が漏れた。

「やっぱりマリアが良いんだ、どうしても諦め切れないんだ・・・小さい頃からマリアが好きだったんだ」


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