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ホタル

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2章

囮りの娘2

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暗闇でも分かるくらい。ミズキの指差した木は、幹が太くジェリドが登っても木の葉一枚揺れそうに無いくらいしっかりと根付いていた。更にその木は、困った事に足を掛ける場所が見当たらない。

良い感じにすべすべしていて、裸足で登れるかと問えは、『否』の判定がミズキの中で決定した。

まったく誰ですかこの木に登ろうとしたのは‥‥って、私ですよ。

わ・た・し・私です!

だって一番大きかったんだもの。登って見たかったんだもの!

ふん!いいもん!頑張って登ってやるもん。

大木を見上げながらどうやって木に登ろうかと数分考えてピカン!とミズキの頭に電球が閃いた。そしてミズキは獲物を見る様な目でジェリドを見上げた。

「‥‥‥ジェリドさん」

「‥‥‥」

ジェリドは露骨に嫌な顔をした。
更にミズキが声を掛けるとジェリドは視線をそらす。

当然の結果ですが負けません!
ジェリドの視界に入る位置にミズキは動く。

観念したようにジェリドはミズキを見下ろす。

そんなジェリドをミズキはニコニコと悪魔の笑顔で言う「おんぶ」と。


「おんぶ?ふざけるな‥‥自力で頑張れ」

「おんぶ、おんぶ、おんぶ!それが嫌なら肩車!ねえ?お母さん?」

「肩車って、お前は何歳だ!それにお母さんだと?」
忌々しくミズキに問うと

「ピッチピチの23歳よジェリドさん知らなかった?それにこの世界ではジェリドさんは私のお母さんよ!うれしい?」

ケラケラと楽しそうに何よ今更と胸を張ってミズキが答える始末。

その笑顔にジェリドの心は凍てつく。
無邪気に笑ってジェリドの心をえぐる事をミズキは平気でする。

ジェリドの気も知らないミズキの傍若無人な言葉にジェリドの眉間シワがさらに深くなる。

惚れた女に男としてみて貰えない事だけで無く、母親扱い、そしていつまでたっても子供の様な振る舞いに、怒りが湧いてくる。

ミズキは気がつかないのだろうか?目の前にいる男は、力も体力もミズキより上回る男だという事を。その事を少しでも理解していれば、お母さんだ、おんぶだ、肩車だなんて言えるわけが無い。

それだけミズキの目の前にいる男は危険なんだ。


頼むからこれ以上俺を追い詰めないでほしい。


たのむから・・・・。


「ねえ、お母さん聞いてる?」
可笑しそうにクスクスと笑いながら言う。

ジェリドが怒りを分散させていると、ミズキが俺の顔を除きながら地雷を踏んだ。


よりにもよってお母さんと。


ミズキの言葉が痛くてたまらない。
たまらなくて苦しい。
それなのに・・・・ミズキが愛しくてどうしようもない。
だが、この仕打ちにジェリドは怒りに任せてしまいそうになる。

今すぐ彼女を犯して。ジェリドの一途な想いをミズキの体に何度も思い知らせ、ベッドの中でグズグズに甘やして、善がらせて、自分は非力な女なんだと、今抱かれている男の庇護されるべき女なんだと解らせたい。

そうすれば、少しは男としての俺を見てくれるだろう。目の前の男の怖さを理解できるだろう。同時に、男としてのジェリドに怯え、目の前からミズキは逃げ出すだろう。

ジェリドの口からため息がこぼれる。

ちらりとミズキを見ると、安心しきってジェリドを見るミズキと目が合う。

「なあに?」
目の前の男が一番危険な事を知らない。

ジェリドを信じきっているその顔が歪むのを見てみたい。

見てみたいが‥‥そんなこと出来るわけがなかった。

ずっとミズキの肌に触れたいと思っていた・・・、求めている肌はいつもミズキの柔肌だけでそれ以を求めようとするのはいけない事何だろうか。

毎夜、夢の中で何度ミズキを汚して己の欲を誤魔化してきた。

いい加減我慢の限界だった。

いい加減にしてくれ何の拷問だと叫びたくなる。



無心になってミズキを肩車をしてやれる程、ジェリドは人間が出来ているわけでもない。ミズキの柔らかそうな太ももに顔を挟まれたらきっと今までの我慢は無駄に終わる。あの柔らかそうで弾力のある身体を今すぐに味わいたい気持ちが抑えられない。今ですらギリギリの所で踏ん張っているのだから。

「聞いてる?ジェリドお母さ~~ん」
ミズキの言葉にジェリドの怒りが限界を超えた。


ジェリドはミズキを抱き寄せミズキの唇を奪った。


前にも一度ミズキの唇を味わったが、改めて思う。物凄く柔らかくて暖かい。
そしてこんなにも甘い。
もっと味わいたい。
もうお母さんなんて言わせないつもりで唇を奪ったが歯止めが効かなくなる。
もっと、もっと、もっと!願いがエスカレートして欲望が止まらない。


駄目だ、駄目だ、これ以上ミズキに無体な事をしたら、本当にミズキに逃げられる。

それだけは嫌だった。
目の前から彼女が居なくなったらと・・・。

震える程の恐怖はジェリドの理性を取り戻す事に成功した。

かろうじてジェリドの理性が勝ったお陰で唇を離す事が出来た。



ジェリドと唇が離れるとミズキの瞳が潤い頬を赤く染めていた。まるで恋する乙女の様に暗闇でも分かるくらいだった。



途中暴走しそうになったが、俺が母親でない事を思い知らせる事は出来たと思う。そのつもりだったが‥‥ミズキのこの反応はどういう事だ。


まさかミズキは俺の事を‥‥好いているのか?

ジェリドの頭に希望が湧く。

そうであって欲しい。ではなく、ミズキは俺を好いていると。

そしてミズキはジェリドを1人の男として頬を染めて見ていた。
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