勇者さまは私の愚弟です。

ホタル

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私の彼は、愚弟でした

ラヴィニスの思惑と誤算

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目の前に突然、一花が現れた。
ヤッパリ!
必ず、悠馬の元に現れると確信があった。
だから悠馬を手元に置いておいた。
一花が愛おしくてたまらない。そして俺から逃げ出す一花が憎くてしょうがない。だが、どちらの一花も愛している。この気持ちは、はっきりしている。
ここまで俺の心を蝕んで虜にしたのだから、責任は取ってもらわないと一花。
逃げ出した一花を見つけたらどうしてくれようかと、一花が消えてからずっと考えていたが、実際に一花を目の前にすると、どうしようもな位くらいに一花に触れたくなって一花の腕を掴んだ。
だが力加減が出来なくて、一花の歪んだ顔を見ても一花の腕を握り気が付かなかった。

セドリックが声をかけなかったら、一花の腕をへし折っていただろう。

一花に触れると今までなかった睡魔が俺を襲ってきた。
眠い・・・・非常に眠い。
久々の睡魔に俺は勝てず、だからといって一花を手放す事も出来ず一花をそのまま連れて、ベッドに入って一花を抱きしめて眠った。
一花は戸惑っていたようだが、今は一花を抱きしめて眠ることにした。

一花の首元に顔をうずめ息を吸うと、一花の香りが俺の肺まで一杯になる。
とても落ち着く。
一花俺の前から消えてことは許すからずっとそばに居てくれ、もうどこにも行かないでくれ・・・・。
そのまま、俺の意識は遠のいた。

・・・・目が覚めた時、どうか夢で有りませんように。


遠くの東屋に、母ニースと一花が楽しそうに笑っている。
ああ・・・ここは庭にある東屋か?お母様も一花も何をそんなに楽しそうに話をしているのだろうか?
二人は終始笑顔で話をしているのが遠くに居る俺でも分る位に楽しそうだ。

「お母様、一花何がそんなに楽しいのですか?」
「「こっちよ」」
「「こっちにいらっしゃいラビニス」」
俺は思わず二人に声をかけると、二人は俺を見て笑顔で手招きをしてきた。
とても幸せな気分だ。
こんな日が来るなんて・・・。
「ええ、喜んで・・・」
ゆっくり歩いて近付いたつもりだったが、俺はいつの間にか走って母と一花の許に急いだ。
だが、走っても走っても、母と一花に近付く事すらできなかった。

笑顔で手を振る、お母様と一花は手を振りながらだんだんと遠くに吸い込まれるように、消えて行った。
そして暗闇の中にポツンと独りぼっちになっていた。
「一花ーーーーーーー!行くなーーー、一花ーーーどうしてーーーー離れて行くなーーーー」
何度叫んでも返事は無く、俺の叫ぶ声ですら木霊しなかった。

「・・・ラヴィニス?どうしたの?」
一花の声に、俺の意識は覚醒する。
目を開けると、目の前に一花が居た・・・・良かった。
とても心配そうな目で俺を見ている一花にホッとすると同時に、又睡魔が襲って来る。
まだ眠いんだ、もう少し眠らせて、一花。


目を瞑ると今度は、「・・・ラヴィニス!ねえ!ラヴィニス!」と一花が、俺の体を揺さぶって起こしてきた。

何たと眠い目を凝らして一花を見ると。
「・・・トイレに行きたいから腕を放して」一花は目が覚めてばかりの俺に、頬を染めながらかわいらしくお願いをしてくるので、「わかった・・・・一緒に行く」と言ってトイレに一緒に行くことにした。

更に真っ赤になって拒否する一花が可愛くて、悪戯心と、もしかして一花は消えるのではないかと言う不安から一花ら離れるという選択肢はなくなっていた。

風呂場だろうが、トイレだろうが一花から目を放すつもりは無い。
一花の居ない生活は二度と御免だ。
一花を失わない様に嘘でも何でもいい、何か引き留める物は無いか?

ふと気付いたのは、一花の事だから俺が記憶喪失と知れば又側に居てくれると。根拠の無い自信が俺の中に湧いてきた。
セドリックには口裏を合わせればいいだけの事。

そうだ。そうしよう。
さっきまで一花に背を向けていたが、今は一花を見下ろしていた。
ホッとしたように便器に座った一花が、目線を上げると俺と目が合い、見る見る真っ赤になっていく一花のなんて可愛い事か。

まさか、一花だけ記憶が無いのを逆手にとって、異世界転送魔法陣の中央に一花がいるのを見るまで俺は、計算ミスをしていた。

とっくに一花の心は俺から離れていた事に気付くべきだった。

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