至高の光玉

ホタル

文字の大きさ
8 / 10
一章

黒騎士

しおりを挟む
身体を拭かずに最低限の服だけを着て、素早く部屋に戻った・・・つもりだった。

ドアを開けると寝ていたはずのグイドが仁王立していた。それは、それはもう怖い顔で!!

「ひっ!」
ステフは開けた扉を勢いよく閉めそうになったが・・・なんとか踏みとどまった。


踏みとどまった自分を!自我自賛しても良いですよね!

 だって怖いんですもの!
グイドの顔が!

目が異様にギラギラしていて今にも食べられそうな気持ちになるんだもの。
本当に顔が怖いんですグイドさん……。


「何で!黙って部屋を出たんだ、風呂に入るなら、一言いって行け!心配しただろう‥‥‥。ほら、髪がまだ濡れている」
大股で近付いて来るなりステフからタオルを奪うと叱りながらステフの頭をガシガシと拭き始めた。

心配してくれるのはありがたいが!今は迷惑だった。

男が怖い。


さっきの青年の様に体を触られると思うと震える・・・グイドが近付いても震えないし怖くない?

凄い!新しい発見だ!

どうして?

もっと驚いた事に、頭を拭くグイドを見上げるとグイドが赤い顔をしてステフの視線から逃れた。

更に手に力を入れてステフの髪を拭き出した。


容赦のない力かげんで、頭を拭くのは辞めてほしい、将来ステフは、禿げるのではないかと心配になってくる。

「いっ痛いですよ。グイドさん、痛いです。もっと優しく・・」
余りの痛さに涙目のステフの口から抗議の声が上がる。

「分かった!分かった!ちゃんと髪を乾かしてから風邪をひいたら、大変だ」
こうなると、過保護のグイドは、全然聞いてくれない。
献身的に、僕の世話をしだす。

「何だ髪にゴミが付いているぞ!今度は俺が髪を洗ってやるから、もう一度風呂に行くぞ!」
ステフの髪を拭いているうちに髪に付いている湯の華が取れない事がきになる様で、グイドの口からとんでもない申し出が上がった。

「いっいいです。辞めときます。お断りします」

「どうしてだ背中ぐらい洗ってやるからステフはただ湯に浸かっているだけでいいぞ」
タオルを肩に乗せて行く気満々のグイドをどうやって黙らせるか?ステフの頭はそれでいっぱいになっていた。
「冗談じゃ無い!どうして僕がグイドさんと一緒に風呂に入らなきゃいけないんですか!」
思った事を素直に言ってしまってステフは後悔した。

「男同士風呂に入って何がいけない!」
グイドの目が冷たく光るのがわかった。

「だって・・・」
まずい本当にグイドさんが怒り出した。

「だって?何だ!そこまでして俺とは入りたく無いのか?ステフ」

「だって・・・」

「だってはわかった。どうして俺とは入りたく無いのか聞いているんだ」

「・・・言わない」
言える訳がない。
実は私は女で、出会った時からグイドさんを騙していました。なんて言えない!

今更だけど、グイドさんには嫌われたくない。

「・・・勝手にしろ!」
グイドは言い捨てて、そのまま風呂に行った。

助かった。
ステフは正直ホッとした。
いつかはグイドに本当の事を言わなければいけないと思っていたが、今はその時ではない。

過保護過ぎるグイドに見捨てられるのは、別れの時で良い。



※※   



この宿には、調度品や絨毯、テーブル寝具まで、一流の物が揃っている、金持ちや貴族のお忍用の1室がある。

1階の奥の二間続きの一室には、黒ずくめの男が4人てテーブルを囲んで、何やら会話をしている。
とても楽しそうには見えない。
4人とも、腰に帝国の紋章の入った剣を差している。
全員が、眉間のしわが深くなっている。

4人のうち、1人が口をひらいた。

「最近の殿下は、機嫌が悪いな………」
残りの3人はその言葉に、頷いた。

「あぁ、殿下にも、困ったものだ。」
「だが、どうする………」
「そう簡単に、ガリアン公国の生き残りの皇女なんて見つかるのか?それ以前に生きている事すら疑わしい」
「あぁ…そうだ、何で皇女が生きてる、なんで嘘をついた。」

3人の目線が1人の若い男に集中した。

「嘘じゃありませんよ、僕が信じられませんか?」
若い男は剣の鞘に手をかけた。
その動作に2人の男たちも、剣の鞘にてをかけた。

「止めないか、シュナイダー、リヒター、」

「ですが、ロベルト隊長!」

シュナイダー、リヒターと呼ばれた男達は、声をそろえて言った。

「それから、ロイズ!理由を話せ!」

ロベルトは、ロイズをにらんでいた。

ロイズはため息をついた。

「分かりました、ロベルト隊長、お話ししましょう、僕は見たんです」
「北の砦の街ヴェルダーの殲滅作戦の時、僕は、当時の指揮官の従者でした。その時ですが、なぜ、ヴェルダーの殲滅作戦が決行したと思いますか?」

ロイズは、ロベルト、シュナイダー、リヒターを順に見渡した。 

「あぁ・・・俺も気になっていたんだ、なぜ、あんな辺境の、何もない街を消し去るのかと……」
ロベルトが答えると、残りの男たちも頷いた。

「陛下のもとに、一つの情報がもたらされました。ヴェルダーの領主からではなく、当時、隠密行動をしていた僕の兄から、木こりの老夫婦が、赤い髪の1人の少女を保護したと・・・普通なら、そんな事では誰も動きませんよね?」
「でもその話には、陛下を動かすには十分な理由があったのです・・・少女は〈至高の光玉〉のペンダントを持っていると・・・」
「陛下はそんな眉唾物の為に、ヴェルダーの人々を皆殺しにしたのか?ロイズ!」

ロイズは頷いた。

「えぇ、そうです。陛下にとっては、それだけで十分でした。何せ、我が兄は、陛下の懐刀と言われていますからね、信頼も厚い」

「それじゃぁ、その時の指揮官も堪ったもんじゃ無いな、俺だったら………騎士を辞めてる……」
ロベルトが心痛な趣で答える。
その場にいた全員も頷いた。

「えぇ、殲滅作戦の後、その時の指揮官は、帝国を去りましたよ…」

「だろうな・・・」
ロベルトは目を瞑った。

沈黙が数秒流れた。

「良く………陛下が許したな……」
沈黙を破って、リヒターが口を開いた。

「それなんですが、彼は先の大戦の英雄ですから、陛下にとっては『目の上のたん瘤』、『渡りに船』だったんじゃないですかね」

「それでは、指揮官と言うのは………」
英雄と言う言葉に弱い、シュナイダーの目が輝いた。

「シュナイダーの想像通りです、その時の指揮官は、グイド・スペクター、前皇帝の時の、宰相のクロフォード・スペクター公爵のご子息です」

「それで?………、話はそこまででは無いだろう、本題に戻るぞ」
ロベルトはロイズを促した。

「えぇ、指揮官は、見事に街を殲滅しましたよ、烏合の衆とはいえ、街の殲滅ですからね、大変でしたよ」

「部隊の本陣は、精霊の森、ヴェルターの北東にある森に構えました。森の中は、木こりの老夫婦が住んでいる小屋もあり、隠密の僕の兄の言った通りに、長い髪の赤毛の少女が居ました。僕と指揮官は、偵察を兼ねて、木こりの家に様子を見に行きました。」

「………少女は老夫婦に、こき使われていました。食事も満足に食べさせて貰えなかった用でした」

「その少女が、生き残りという確証はどこにあるんだ?」
ロベルトはロイズを問いただした。
「髪の色と、目の色は王家の者では無い、いでたちですが、彼女の胸には、確かに〈至高の光玉〉がありました。それは僕と指揮官が確認済みです」

「ただ、殲滅の前日に、少女のの姿は消えていました」
「僕は指揮官が、食料を少女に渡しているのを見ています………」

「そう……か…、分った、お前の言葉を信じよう!」
ロベルトは頷くと、残りの2人の頷いた。

「当面は、その赤毛の少女を探せば良いのだな?」
「はい」とロイズは頷く。


話がひと段落すると、部屋に金髪の碧眼の青年が入ってきた、一斉に、男たちは立ち上がり金髪の青年に、深々と頭を下げた。
「今すぐに、この宿に泊まっている、赤い髪の女を探し出せ!」
「ハッ、グリフィス殿下」
「赤い髪の女ですか………?」
「あぁそうだ、赤い髪の女だ!!」

上機嫌に言う、グリフィスに、一同は困惑した。

『『『また、赤い髪の女か?』』』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~

ささゆき細雪
恋愛
五年前、内乱の混乱のなかで姿を消した最愛の妃・白瑤華(はくようか)。 彼女を失った皇帝・景玄耀(けいげんよう)は、その後ただ一人を想い続けながら執務に追われていた。そんなある日、書類に彼女の名前を発見し、居ても立っても居られなくなる。 ――死んだはずの彼女が、生きている? 同姓同名かもしれないが確かめずにいられなくなった彼は地方巡察を決行。そこで、彼によく似た幼子とともに彼女と再会、地方官吏として働く瑤華と、珠児(しゅじ)を見て、皇帝は決意する――もう二度と、逃がさないと。 「今さら、逃げ道があると思うなよ」 瑤華を玄耀は責めずに、待ちの姿勢で包み込み、囲い込んでいく。 秘された皇子と、選び直した愛。 三人で食卓を囲む幸福が、国をも動かすことになるなんて――?    * * * 後宮から逃げ出して身を引いたのに、皇帝の溺愛は止まらない――これはそんな、中華風異世界ロマンス。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...