莉子は早く卒業したい〜小学校編

岬野葉々

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プロローグ〜前夜

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「お引越ししてから、もう1年が経ったねー、莉子」

「この1年、何か困ったことはなかった? 莉子ちゃん」


 明日は大原木小学校の始業式。
 楽しかった春休みの最終日の夜、パパとママに聞かれたの。

 わたし、天童莉子、現在11歳。
 転勤族のパパとママの3人家族。
 ううん、明日から小学校の最終学年、6年生になるんだから、もうお父さんとお母さんって言わなくちゃ!

「大丈夫! パパとママ、……じゃなくて、お父さんとお母さんがしっかり選んでくれたから、良いところだと思う。前のところと比べると、とっても過ごしやすい」

「あら、もうママじゃないの?」

「ずっとパパでも良いんだぞー!」

 涙目で訴える2人を全力でスルー。
 だって流石にもう、周りのお友達はほとんどパパママ呼びはしてないんだもん。

「でもまあ、莉子が大丈夫そうなら良かった!」

「そうはいってもこの1年、色々あったのよ、パパ。転勤してから1年経つまでは、なかなか勝手が分からないものなの。……莉子ちゃんは小学校高学年の女子で難しいお年頃なのに、よく頑張ったわ~」

「パパだってお仕事、頑張ってる」にハイハイと受け流す2人を見ながら、アレっと思う。
 2人共、お互いのパパママ呼びを止めない……まあいいや、そのうち統一されるはず。

「前のところよりマシって、前は何かあったのか?」
 
「ソレはホラ、パパが駅近が良い! って、勝手に決めちゃうから!!」

 うわぁ~お母さんの目がつりあがってる?!
 ヤバい、止めないと――

「うん、ちょっとね。駅は近かったけど、前の小学校は遠かったし、人数も少なくてみんなガッチリ知り合いで固まってたからね~。あと中学受験組が多くて……」

「そうよね、教育熱心なのは良いけど、小4ううん小3の冬にガラッと雰囲気変わって、ママもビックリしたわ~。関東は中学受験組が多い、とは聞いていたけど……」

 天童家は両親共に公立派。
 というか、中学受験を欠片も意識したことがない。
 だから、あの中学受験に対する熱い想いに戸惑ってしまう。
 中学受験には気力・体力・財力・時の運と必要なものがたくさんあるみたいなのだ。

 わたしだって、中学受験のためにたくさん勉強する子はすごいなー、と初めは応援していたの。
 でも、長い登下校時に塾で教わったことを自慢されたり、優越感を持って見下されたりすると、イヤになってくる。
 そんな子ばかりじゃないけど、今考えるに塾で下の方な子ほど、中学受験をしない子に絡んできたみたいだ。
 成績重視な塾だと、成績順に席が決まったりするからね。
 ではソコで下位の者はどうするか。
 塾に通ってない者を自分の下扱いするしかなかったのかな。
 う~ん、迷惑。

「クラス内は良かったけど、登下校時に何かストレスなのか、絡んできたり、ヤな遊びしたりする子がいて、面倒だったー!」

「そうだったのか……」

「だけど、今の大原木小学校はスッゴく良い感じ! 先生も分かりやすく何でも教えてくれるし、中学受験する子もいるけど、ソレはソレって全然威張ったりしない子がほとんどだよ」

「ほとんど……やっぱりいるのか?」

「そりゃあね、少しは。でも、デキる子ほど、そんなことしないし。それにわたし、威張ってる子なんかに負けないもん!」

「ハハ……流石莉子だな!」

「前の学校の先生、授業もやりにくかったと思うわ~塾で先取りしてソレを吹聴する子が多いとね。その点、大原木小学校は教育熱心で転勤族も多い学区だから、莉子ちゃんには合ってたみたいね。何よりよ。しっかり選んで転入して良かったわ!」

「うん! お友達もたくさん出来たし、明日のクラス発表楽しみだなぁー。明日に備えて、早く寝なくちゃ!」

「ソレが良いね。お休み、莉子」

「お休みなさい、莉子ちゃん」

 挨拶を交わして、お布団に入る。

 どうか5年生で仲良くなったお友達と、1人でも良いから同じクラスになりますように――

 祈りながら眠りについたわたしの耳元で、クスクスと笑う声がきこえた。
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