(あやかし御用達)民泊始めます~巫女になれ?!無理です!かわりに一泊いかが?

岬野葉々

文字の大きさ
20 / 80

山の上の隣人達

しおりを挟む
「おばあちゃん、お待たせ~!わたしも手伝うね」

 言いながらダイニングへ入って来た美月は、驚いて足を止めた。

「わーっ!なに、この御馳走?!どうしたの?」

 食卓の上には、溢れんばかりに美月の好物の御馳走が並べられている。
 美月は歓声を上げて、駆け寄った。

「わあ、おばあちゃん!お赤飯、炊いてくれたの?!わ、かわいい巣ごもり椀!……このうずらの卵、ひょっとして、きいさん家の?あれ、この鶏の治部煮は渡辺さん家?」

 並べられた御馳走を一品ずつ見渡せば、どれも一度は御馳走になり、美月が美味しい、好きだと言ったものばかり……。
 美月が困惑して祖母の方を見ると、珠子は柔らかい笑みを浮かべた。

「皆さん、今日が美月の入学式と知って、お祝いにと持ってきて下さったのよ」
「……どうして?だって、つい先月にも中学卒業と高校入学の前祝いだ~!って、皆でお祝いしてくれたばかりでしょ?」
「そう、だから、今日は気持ちだけだからって、皆さん、一品ずつ持ってきて下さって、すぐ帰られたわ。美月ちゃんは、明日からも学校で忙しいだろうからって」

 美月の瞼の裏に、美月の五月雨学園入学を我が事のように喜び、祝ってくれた山の上に住む人達の顔が浮かんだ。

「……そっか~皆、また来てくれたんだ」
「良かったわね、美月ちゃん」

 美月は胸が一杯になって、珠子にこっくりと頷いた。

「……皆さんにとっても、美月は孫のようなものなんですって。ありがたい事ね」

 珠子は飾り棚の上にある写真立てに、ちらりと視線を寄越した。

 この家には、至る所に家族の写真が飾ってある――祖父の、祖母の、父の、母の、美月とクロの、そして家族全員で写ったかけがえのない、一枚の写真。


「さあ、美月ちゃん、クロちゃん、お腹が空いたでしょう?席について、食べ始めてもいいわよ。おばあちゃん、あとちょっとだけ、揚げ物をするわね。揚げ物は、やっぱり揚げたてが美味しいわよね」
「わたし、手伝う!っていうか、おばあちゃんこそ、座ってて?わ、すごく美味しそう~!これ、揚げればいいの?」
「じゃあ、一緒にぱぱっとやっちゃいましょうか?」
「うん!」

 美月と珠子は楽しそうに二人で台所に立ち、手際よく揚げ物を作り、運んでいく。
 ……クロはそんな二人の邪魔をせぬよう、自分の席で尻尾をぱたぱたと振りながら見守っている。

 やがて、豪華な夕食の準備が整い、二人と一匹は席に着き、頂きますと食べ始めた。

「美月ちゃん、今日は入学おめでとう。……学校はどうだった?」
「ありがとう、おばあちゃん!皆にもわたしがすごく喜んでた、ありがとう、と伝える機会があったら、伝えてくれる?もちろん、自分からも言うけどね。――学校?学校はね、さすが五月雨学園、って感じですごかったよ!」

 美月はそれから、賑やかに今日の楽しかった出来事を祖母に語りながら、舌鼓を打つ。
 ……けれども、失敗しちゃった話は内緒。悲しかったこと、心細かったことも。そういう話は、全部クロと――――美月がちらっとクロを見ると、クロは心得た、とばかりにぱたっと尻尾を振る。

 クロはわたしの兄弟みたいなものだもん。
 子犬の時は、まるで手のかかるやんちゃな弟みたいだったのに、いつの間にか、お兄ちゃんのような保護者のような落ち着きが出て来ちゃって……!
 でも、クロは、どんなクロだってわたしの大事な家族――――

 美月は心の中で続ける。

 天国のおじいちゃん、お父さん、お母さん。
 わたしとクロ、そしておばあちゃんは、今日も元気です。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...