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山の上の隣人達
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「おばあちゃん、お待たせ~!わたしも手伝うね」
言いながらダイニングへ入って来た美月は、驚いて足を止めた。
「わーっ!なに、この御馳走?!どうしたの?」
食卓の上には、溢れんばかりに美月の好物の御馳走が並べられている。
美月は歓声を上げて、駆け寄った。
「わあ、おばあちゃん!お赤飯、炊いてくれたの?!わ、かわいい巣ごもり椀!……このうずらの卵、ひょっとして、きいさん家の?あれ、この鶏の治部煮は渡辺さん家?」
並べられた御馳走を一品ずつ見渡せば、どれも一度は御馳走になり、美月が美味しい、好きだと言ったものばかり……。
美月が困惑して祖母の方を見ると、珠子は柔らかい笑みを浮かべた。
「皆さん、今日が美月の入学式と知って、お祝いにと持ってきて下さったのよ」
「……どうして?だって、つい先月にも中学卒業と高校入学の前祝いだ~!って、皆でお祝いしてくれたばかりでしょ?」
「そう、だから、今日は気持ちだけだからって、皆さん、一品ずつ持ってきて下さって、すぐ帰られたわ。美月ちゃんは、明日からも学校で忙しいだろうからって」
美月の瞼の裏に、美月の五月雨学園入学を我が事のように喜び、祝ってくれた山の上に住む人達の顔が浮かんだ。
「……そっか~皆、また来てくれたんだ」
「良かったわね、美月ちゃん」
美月は胸が一杯になって、珠子にこっくりと頷いた。
「……皆さんにとっても、美月は孫のようなものなんですって。ありがたい事ね」
珠子は飾り棚の上にある写真立てに、ちらりと視線を寄越した。
この家には、至る所に家族の写真が飾ってある――祖父の、祖母の、父の、母の、美月とクロの、そして家族全員で写ったかけがえのない、一枚の写真。
「さあ、美月ちゃん、クロちゃん、お腹が空いたでしょう?席について、食べ始めてもいいわよ。おばあちゃん、あとちょっとだけ、揚げ物をするわね。揚げ物は、やっぱり揚げたてが美味しいわよね」
「わたし、手伝う!っていうか、おばあちゃんこそ、座ってて?わ、すごく美味しそう~!これ、揚げればいいの?」
「じゃあ、一緒にぱぱっとやっちゃいましょうか?」
「うん!」
美月と珠子は楽しそうに二人で台所に立ち、手際よく揚げ物を作り、運んでいく。
……クロはそんな二人の邪魔をせぬよう、自分の席で尻尾をぱたぱたと振りながら見守っている。
やがて、豪華な夕食の準備が整い、二人と一匹は席に着き、頂きますと食べ始めた。
「美月ちゃん、今日は入学おめでとう。……学校はどうだった?」
「ありがとう、おばあちゃん!皆にもわたしがすごく喜んでた、ありがとう、と伝える機会があったら、伝えてくれる?もちろん、自分からも言うけどね。――学校?学校はね、さすが五月雨学園、って感じですごかったよ!」
美月はそれから、賑やかに今日の楽しかった出来事を祖母に語りながら、舌鼓を打つ。
……けれども、失敗しちゃった話は内緒。悲しかったこと、心細かったことも。そういう話は、全部クロと――――美月がちらっとクロを見ると、クロは心得た、とばかりにぱたっと尻尾を振る。
クロはわたしの兄弟みたいなものだもん。
子犬の時は、まるで手のかかるやんちゃな弟みたいだったのに、いつの間にか、お兄ちゃんのような保護者のような落ち着きが出て来ちゃって……!
でも、クロは、どんなクロだってわたしの大事な家族――――
美月は心の中で続ける。
天国のおじいちゃん、お父さん、お母さん。
わたしとクロ、そしておばあちゃんは、今日も元気です。
言いながらダイニングへ入って来た美月は、驚いて足を止めた。
「わーっ!なに、この御馳走?!どうしたの?」
食卓の上には、溢れんばかりに美月の好物の御馳走が並べられている。
美月は歓声を上げて、駆け寄った。
「わあ、おばあちゃん!お赤飯、炊いてくれたの?!わ、かわいい巣ごもり椀!……このうずらの卵、ひょっとして、きいさん家の?あれ、この鶏の治部煮は渡辺さん家?」
並べられた御馳走を一品ずつ見渡せば、どれも一度は御馳走になり、美月が美味しい、好きだと言ったものばかり……。
美月が困惑して祖母の方を見ると、珠子は柔らかい笑みを浮かべた。
「皆さん、今日が美月の入学式と知って、お祝いにと持ってきて下さったのよ」
「……どうして?だって、つい先月にも中学卒業と高校入学の前祝いだ~!って、皆でお祝いしてくれたばかりでしょ?」
「そう、だから、今日は気持ちだけだからって、皆さん、一品ずつ持ってきて下さって、すぐ帰られたわ。美月ちゃんは、明日からも学校で忙しいだろうからって」
美月の瞼の裏に、美月の五月雨学園入学を我が事のように喜び、祝ってくれた山の上に住む人達の顔が浮かんだ。
「……そっか~皆、また来てくれたんだ」
「良かったわね、美月ちゃん」
美月は胸が一杯になって、珠子にこっくりと頷いた。
「……皆さんにとっても、美月は孫のようなものなんですって。ありがたい事ね」
珠子は飾り棚の上にある写真立てに、ちらりと視線を寄越した。
この家には、至る所に家族の写真が飾ってある――祖父の、祖母の、父の、母の、美月とクロの、そして家族全員で写ったかけがえのない、一枚の写真。
「さあ、美月ちゃん、クロちゃん、お腹が空いたでしょう?席について、食べ始めてもいいわよ。おばあちゃん、あとちょっとだけ、揚げ物をするわね。揚げ物は、やっぱり揚げたてが美味しいわよね」
「わたし、手伝う!っていうか、おばあちゃんこそ、座ってて?わ、すごく美味しそう~!これ、揚げればいいの?」
「じゃあ、一緒にぱぱっとやっちゃいましょうか?」
「うん!」
美月と珠子は楽しそうに二人で台所に立ち、手際よく揚げ物を作り、運んでいく。
……クロはそんな二人の邪魔をせぬよう、自分の席で尻尾をぱたぱたと振りながら見守っている。
やがて、豪華な夕食の準備が整い、二人と一匹は席に着き、頂きますと食べ始めた。
「美月ちゃん、今日は入学おめでとう。……学校はどうだった?」
「ありがとう、おばあちゃん!皆にもわたしがすごく喜んでた、ありがとう、と伝える機会があったら、伝えてくれる?もちろん、自分からも言うけどね。――学校?学校はね、さすが五月雨学園、って感じですごかったよ!」
美月はそれから、賑やかに今日の楽しかった出来事を祖母に語りながら、舌鼓を打つ。
……けれども、失敗しちゃった話は内緒。悲しかったこと、心細かったことも。そういう話は、全部クロと――――美月がちらっとクロを見ると、クロは心得た、とばかりにぱたっと尻尾を振る。
クロはわたしの兄弟みたいなものだもん。
子犬の時は、まるで手のかかるやんちゃな弟みたいだったのに、いつの間にか、お兄ちゃんのような保護者のような落ち着きが出て来ちゃって……!
でも、クロは、どんなクロだってわたしの大事な家族――――
美月は心の中で続ける。
天国のおじいちゃん、お父さん、お母さん。
わたしとクロ、そしておばあちゃんは、今日も元気です。
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