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赤い着物の女性に道を尋ねるも、
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「……さて、と、これからどうするかな?」
普通一般のトイレの個室より広く、居心地の良い空間とはいえ、用が済んだのならばあまり長居はしたくない。
ましてや、今はテストの時間が迫っている。
出来れば、一刻も早くテスト会場へと向かいたい美月であった。
そして、閉じ込められたショックによるパニックから抜け出しつつあった美月は、助けを待つだけではなく、今自分に出来ることはないか、と周りを見渡す。
すると、半ばパニック状態にあった先程では、目に入らなかったことに気がつく。
このトイレの扉、上の方に隙間がある――?
これ、このごみ箱に乗って、ここに足をかけて扉の上に手を掛けたら、上から出られるんじゃない――?!
思いついたなら、すぐにやってみたくなる美月である。
助けを待たずにカバンを斜め掛けし、トイレ内の備品を壊さぬよう注意しながら、慎重に体重を分散させつつも、見事扉の上へとよじ登った。
しかし、やったー!脱出、成功!と、美月が喜んだ瞬間、思わぬ天井の出っ張りに頭をぶつけてしまう。
そして、その衝撃で眼鏡が吹っ飛んだ――――
扉の上部にまたがり、両手で身体を支えた状態の美月は、吹っ飛ばされた眼鏡が床へと叩きつけられ、割れて壊れるのを呆然と見守るしかなかった。
きゃあ~!わたしの、お守り眼鏡が…………!
美月は慌てて残った片足をまわし、両足を扉の反対側にそろえて床へと飛び降りた。
そして、無事トイレの個室から脱出出来た喜びもそこそこに、美月は扉の外に散らばった眼鏡の残骸をかき集める。
眼鏡の成れの果て全てを丁寧にハンドタオルへ包み、カバンに仕舞った美月は、手を洗いながらしょんぼりと項垂れた。
お母さんに貰った、お守りの眼鏡、壊れちゃった……。
鏡の中の美月は、半泣きである。
またしても、後悔先に立たず――――けれども、次の瞬間、美月ははっと我に返った。
「今、何時?!うわっ、あと五分でテストが始まる――!でも、今なら、全力で走れば……?!」
会場に入ってすぐ行動に移れるよう、手早く美月はカバンから必要な書類一式の入った薄緑色の封筒を取り出して、バトンのように丸めて手に持つ。
そして、カバンの長紐を肩から斜めにかけた後、ぎゅっと抱え、猛スピードでトイレを飛び出した。
さっき、翠ちゃんと一緒に場所の確認をしておいて良かった~!
密かに安堵しつつ、北東に伸びる小道を全力で走る。
しかし、皆既に会場入りをしているのか、辺りに人気は全くない。
心細さに、美月は山道で鍛え上げた脚力を生かし、別館を目指してさらに加速する――
けれども、どれだけ懸命に美月が走ろうとも、別館は影も形も見えてこない……。
流石の美月も何かがおかしいと感じ、不安に思った時、前方に人影が――――!
「すみません!ちょっといいですか?」
美月が食い気味にものを尋ねると、呼び止められた赤い着物を着たその女性は、少し目を見開いた後、艶やかに微笑んだ。
「おや、妾が視えるのかえ?……良いぞ、何でも尋ねるがよい」
「ありがとうございます!あの、テスト会場は、別館への道はこのまま、真っすぐでいいんですか?!」
美月の問いを少し首を傾げながら聞いたその女性は、美月の手に持った封筒をちらりと見て、にこやかに首を振った。
「妾に会えて運が良かったな、其方は。其方の求める試験会場への道は、それ、そこの小道じゃ」
赤い着物に映える白い指先が指し示したその先には、木立に紛れて上へと向かう遊歩道のような小道があった。
「助かりました!わたし、テストに遅れそうなので、これで失礼します」
ぺこりとお辞儀をし、ありがとうございました~!と言いながら、懸命に細い丸太で作られた階段を駆け上っていく美月。
その姿を眺めながら、その女性は呟いた。
「なんの、なんの~お安い御用。迷いなくこの道を選択し、この妾を視る能力――試しの場へ行くのに何の問題もあるまい。妾と知り合った縁に免じ、若干、手助けで直通の道は開いてやったがな。……しかし、はて、本年度に特別修練者が出たとは、特に今まで聞いてはおらなんだが。ま、良かろう。何がともあれ、楽しみなことじゃ」
普通一般のトイレの個室より広く、居心地の良い空間とはいえ、用が済んだのならばあまり長居はしたくない。
ましてや、今はテストの時間が迫っている。
出来れば、一刻も早くテスト会場へと向かいたい美月であった。
そして、閉じ込められたショックによるパニックから抜け出しつつあった美月は、助けを待つだけではなく、今自分に出来ることはないか、と周りを見渡す。
すると、半ばパニック状態にあった先程では、目に入らなかったことに気がつく。
このトイレの扉、上の方に隙間がある――?
これ、このごみ箱に乗って、ここに足をかけて扉の上に手を掛けたら、上から出られるんじゃない――?!
思いついたなら、すぐにやってみたくなる美月である。
助けを待たずにカバンを斜め掛けし、トイレ内の備品を壊さぬよう注意しながら、慎重に体重を分散させつつも、見事扉の上へとよじ登った。
しかし、やったー!脱出、成功!と、美月が喜んだ瞬間、思わぬ天井の出っ張りに頭をぶつけてしまう。
そして、その衝撃で眼鏡が吹っ飛んだ――――
扉の上部にまたがり、両手で身体を支えた状態の美月は、吹っ飛ばされた眼鏡が床へと叩きつけられ、割れて壊れるのを呆然と見守るしかなかった。
きゃあ~!わたしの、お守り眼鏡が…………!
美月は慌てて残った片足をまわし、両足を扉の反対側にそろえて床へと飛び降りた。
そして、無事トイレの個室から脱出出来た喜びもそこそこに、美月は扉の外に散らばった眼鏡の残骸をかき集める。
眼鏡の成れの果て全てを丁寧にハンドタオルへ包み、カバンに仕舞った美月は、手を洗いながらしょんぼりと項垂れた。
お母さんに貰った、お守りの眼鏡、壊れちゃった……。
鏡の中の美月は、半泣きである。
またしても、後悔先に立たず――――けれども、次の瞬間、美月ははっと我に返った。
「今、何時?!うわっ、あと五分でテストが始まる――!でも、今なら、全力で走れば……?!」
会場に入ってすぐ行動に移れるよう、手早く美月はカバンから必要な書類一式の入った薄緑色の封筒を取り出して、バトンのように丸めて手に持つ。
そして、カバンの長紐を肩から斜めにかけた後、ぎゅっと抱え、猛スピードでトイレを飛び出した。
さっき、翠ちゃんと一緒に場所の確認をしておいて良かった~!
密かに安堵しつつ、北東に伸びる小道を全力で走る。
しかし、皆既に会場入りをしているのか、辺りに人気は全くない。
心細さに、美月は山道で鍛え上げた脚力を生かし、別館を目指してさらに加速する――
けれども、どれだけ懸命に美月が走ろうとも、別館は影も形も見えてこない……。
流石の美月も何かがおかしいと感じ、不安に思った時、前方に人影が――――!
「すみません!ちょっといいですか?」
美月が食い気味にものを尋ねると、呼び止められた赤い着物を着たその女性は、少し目を見開いた後、艶やかに微笑んだ。
「おや、妾が視えるのかえ?……良いぞ、何でも尋ねるがよい」
「ありがとうございます!あの、テスト会場は、別館への道はこのまま、真っすぐでいいんですか?!」
美月の問いを少し首を傾げながら聞いたその女性は、美月の手に持った封筒をちらりと見て、にこやかに首を振った。
「妾に会えて運が良かったな、其方は。其方の求める試験会場への道は、それ、そこの小道じゃ」
赤い着物に映える白い指先が指し示したその先には、木立に紛れて上へと向かう遊歩道のような小道があった。
「助かりました!わたし、テストに遅れそうなので、これで失礼します」
ぺこりとお辞儀をし、ありがとうございました~!と言いながら、懸命に細い丸太で作られた階段を駆け上っていく美月。
その姿を眺めながら、その女性は呟いた。
「なんの、なんの~お安い御用。迷いなくこの道を選択し、この妾を視る能力――試しの場へ行くのに何の問題もあるまい。妾と知り合った縁に免じ、若干、手助けで直通の道は開いてやったがな。……しかし、はて、本年度に特別修練者が出たとは、特に今まで聞いてはおらなんだが。ま、良かろう。何がともあれ、楽しみなことじゃ」
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