引きこもり☆新婚生活

十 的

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 ジュエルラビットファームからのメールが届いた。
 なんでも頭に宝石がついたジュエルラビットの飼育をしていると、体調と気分が良くなっていくという実験は、順調に成果があがっているらしい。
 更にジュエルラビットはどの個体も、俺の匂いが好きだということがわかった。
 だがジュエルラビットの研究は、更に進んでいた。
 ジュエルラビットの飼育を他の地球人にも挑戦させた結果、見事に何人かの男が、俺と同じような結果をもたらしたらしい。
 それを考察した結果、ジュエルラビットは引きこもりニートの男が好きだということが判明した。
 これにより、ジュエルラビットの宝石の生産性が上昇。更にジュエルラビットを飼いたいという女性も急上昇しているらしい。
 というわけで、引き続き俺はジュエルラビットの飼育を継続。またうさいち達以外の、俺が育てていないジュエルラビット達も、大半が食用に回されず、飼いウサギとして売られるとのことだ。
 良かった。俺、頑張ったかいあったよ。

 次に、ジュエルラビットの宝石の話。
 俺が育てたリンクとうさいちが落とした十センチ宝石。
 それを研究した結果、とんでもないことがわかったらしい。
 まず十センチ宝石から、家一軒あたりの消費電力に相当するエネルギーが手に入ったらしい。
 これはエコだが、これだけでは大した成果ではない気がする。
 だが、十センチ宝石二つを特別な装置で連結させて、電力を引き出した結果、そこから家十件分をまかなう電力を得られたらしい。
 このエネルギー量に、エレガンが養っている研究者達が注目しているという。
 まあ、このまま順調にいけば、リンクやうささん達から更に十センチ宝石が取れるだろう。
 なのでこの研究は、しばらく続くと思われる。
 ジュエルラビットに関する情報は、ここまで。
 後は、永愛式のダメージを癒やすために、ゲームをやろうと思う。
 今はとにかく、何かをしたい気分だったのだ。というか、ぼーっとしてたら自然と永愛式のことを思い出して、嫌だ。
 +ワールドを始めて、ゲームの世界に没入する。
 折角だから、飽きるまでやろう。

 そういえば冒険者ギルドの宿屋で終わったんだったな。
 部屋を出ると、すぐに冒険者ギルドの入ってすぐの場所に来る。そこには、女性がいっぱいいた。
 うっ。永愛式を思い出すっ。
 すぐさま部屋に戻る。ふう。俺一人だ。落ち着く。
 でも、そうか。ゲーム内には人がいっぱいいるのか。
 あれ、俺つんでない?
 周囲の人が気になってたら、俺、ゲームやれないぞ?
 何かないかな。あ、そうだ。こんな時こそチュートリアルを試そう。
「セレクト」
 空中に浮かぶ文字を呼び出して、チュートリアルを選択する。
 すると、俺の体が瞬間移動した。前に見た闘技場っぽい所に来て、女性とも出会う。
 この人も人だけど、一人な分マシだな。
「やあ、何か困ったことがあったかい?」
「人がいっぱいいて遊べないんですけど。一人で静かに遊べる方法って、ありますか?」
「んー。そうだねえ。ストーリークエストや、一人ダンジョンとかは一人で遊べるよ」
「一人ダンジョン?」
 ストーリークエストは、確かお城に行けばやれるんだったか。でも、一人ダンジョンって?
「一人用のダンジョンさ。あまり良いアイテムはもらえないけど、最速クリアを達成したら称号がもらえるよ」
「へえ」
 つまり、他の人が来れない場所ということか。
 それは良い。
「どうやったらいけるんですか?」
「冒険者ギルドの受付嬢に聞いてみな。そしたら行けるぜ」
「ああ、それは無理だ」
 だって、その冒険者ギルドの中ですら無理だったんだもの。
「他の、別の行き方はありませんか?」
「んー。冒険者ギルドの宿屋にいるんだったら、呼び鈴でギルド職員を呼んで頼めるけど、どちらかというと受付嬢を頼ってほしいな。だって、折角の冒険者生活だ。ちゃんと窓口に顔を出してほしいんだ」
「はあ」
 その顔を出すのが無理なんだけど。まあ、いいか。
「ありがとうございます。知りたいことは以上です」
「おお、また何かあったら遠慮なく私を頼りな!」
 女性がそう言うと、俺は元の宿部屋へと戻ってこれた。
「よし。呼び鈴呼び鈴っと」
 俺は呼び鈴を探す。あった。ドアの隣に小さなテーブルがあり、その上に押すタイプの呼び鈴がある。
 俺はすかさずそれを押した。
 チーン。
 するとすぐに、女性が一人部屋に入って来る。
「お呼びでしょうか、冒険者さん?」
 その次の瞬間、目の前に文字がいっぱい現れた。
 銀行の利用。瞬間移動。アイテムオークションの利用。等々。
 その中に、一人ダンジョンの挑戦もあった。
 俺は、それを押す。すると、女性が言った。
「今の冒険者さんが挑戦できる一人ダンジョンは、一人ダンジョンその一のみです。今から挑戦なさいますか?」
「はい」
「それでは、いってらっしゃいませ」
 女性におじぎをされた後、俺の体はワープした。
 気づくとそこは、谷底の道のようだった。左右が高い崖になっていて、目の前には一本道がある。
「よし。ここが一人ダンジョンか。それじゃあ、遊んでみよう」
 腰に携帯している剣を抜いて、歩き出す。すると、突然目の前に敵が現れた。
「ゴブー!」
「ゴブゴブー!」
 緑色の肌、小さい体。手には棍棒を持っている。
 彼らの頭上に、体力ゲージと名前もあった。レベル1。ゴブーン。こいつらを倒せばいいんだな。
「よし。ファインスラッシュ!」
 俺の剣が光る。このままゴブーン一体に攻撃だ!
「ゴブ、ゴブー!」
 だが近づくと、ゴブーン達もこちらに気づいた。ゴブーンは二体がかりで俺に棍棒をふりかぶる。
「え、うわあ!」
 なんとか最初の一撃は当てられたけど、その後はパニック。俺はゴブーンが棍棒を振るだけで、我を忘れた。
 ゴブーンの攻撃は少し衝撃がある程度で、痛くはないのだが、単純に武器で攻撃されるという光景が恐ろしい。俺はやみくもに剣を振り、なんとかゴブーンを一体倒す。
「ゴブー!」
 これで一体は消えてくれた。後は一体。そうだ、技を使おう!
「ファインスラッシュ、ファインスラッシュ!」
「ゴブー!」
 どうにかゴブーン二体目も倒す。けれど俺はそれだけで、荒い息を吐いていた。
「はあ、はあ、はあ」
 だ、ダメだ。戦闘、怖い。
 チュートリアルの時は、それ程でもなかった。けれどそれは、的が手も足もない、ゼリー状の相手だったからだ。
 今回の敵は、武器でおそいかかってくる。もし次の敵が、剣を持っていたらどうする?
 鋭い爪で引き裂かれたら?
 または、大きな牙でかみつかれたら?
 そう思うと、みるみる俺の気持ちが沈んでいった。
「だ、ダメだ。このゲーム。想像以上に合わない」
 皆は、この恐ろしい戦闘を、楽しんでいるのだろうか?
 ひとまず、一人ダンジョンはここまでにしよう。
「ええと、セレクト。でどうにかならないかな」
 そう言うと、すぐに目の前に、ダンジョンから撤退する。の文字が見つかって、一安心。
「ダンジョンから撤退する」
 俺は早々に、戦いから逃げ出した。

「あー。思ったより、きつい」
 宿屋のベッドで横になりながら言う。例えゲームでもこうやってくつろげるのは、良い点だ。
 けど、戦いができないなら、このゲームを楽しみようがないな。後は何かあったっけ。非戦闘職ギルド、あ。
「非戦闘職があった」
 それなら、ひょっとしたら遊べるかも。
 俺は起き上がり、少し考える。
 非戦闘職は、いろいろあった。料理。釣り。木こり。木工。錬金術。
 その中でまず楽しめそうなのは、料理かな。
 だって、釣りとか木こりは、外に出なきゃいけないし。木工や錬金術も、作るのはきっと戦いに役立つものだろう。作ったってあんまり意味がない。
 料理もそうだけど、でもそれ以前に味わえるからね。食べて楽しむ。というのもありだろう。
 あれ、そういえばゲームの中で物を食べても太らないのかな?
 なんか、太らない気がする。お腹もすかないかも。
 じゃあ、食べ放題ということか。
 いや、そんなに食べたいというわけではないけれど、つまり無限に食べて遊べるというわけだな。
「よし。それじゃあ料理に挑戦してみよう」
 確か、料理には食材が必要だったか。
 部屋の呼び鈴を鳴らして、また女性を呼ぶ。そして今度は、アイテム売買を選択した。
 食材の項目を選ぶと、いろんな食材が現れる。バーニングベアの肉百万、アイスボアの肉百万。
 ちょ、ちょっと高くない?
 今の俺の所持金は、1020か。これらの食材は買えそうにないぞ。
 あ、今見ている品は、マーケットアイテムらしい。俺は定価アイテムを見る。
 鶏肉一個25。豚肉一個27。良かった。良心的な値段が出た。
 えっとお。俺が作れる料理といえば、ゆで卵かな。あと、目玉焼きとか。
 卵の項目を見てみる。
 すると、鶏卵一個10。小卵一個8と出た。小卵の方が安いのか。ああでも、その食材では作れません。とか言われたら嫌だから、両方五個買っておくか。
 ひとまず買い物はそれくらいにして、女性を帰らせる。
 それじゃあ、料理開始だ。
「料理をする」
 部屋の中にギリギリ、キッチンが現れる。
「ゆで卵を作る。って言ったら、食材が、出てきそうなのか」
 ただし、目の前に文字が現れた。鶏卵と小卵、どっちを使いますか? という選択肢だ。
「じゃあ、小卵」
 そう決めると、小卵が5個出てきた。鍋の中に入るのは、3個くらいか。それを鍋の中に入れて、水もイン。後は火にかけて、おっと、スキルも使った方が良いかもな。
「効能アップ。効能アップ。効能アップ」
 よし。これでひと煮立ちさせる。すると鍋の上にタイマーが現れて、それがすぐに0になると、ゆで卵が完成した。
 火を止めて、ゆで卵を取り出す。するとその時、声が聞こえた。
「レベルアップしました」
 ああ、そうか。料理人もレベルがあるのか。
「新職業、バトルコックが解放されました」
 ん、バトルコック?
 なんだろう、それは。少し気になる。
 気になるなら、ちょっと聞いてみるか。
「セレクト、チュートリアル」
 俺はキッチンを消滅させて、またチュートリアルに頼った。
「よお、何か用か?」
「バトルコックについて教えてください」
「ああ、構わないぜ。バトルコックは料理人装備で戦う戦闘職さ。その特徴はなんといっても、ファミリーを召喚することだ」
 ファミリーを召喚?
「バトルコックは料理をファミリーにすることができるんだ。ただし、バトルコックのファミリーは一度ゲームをやめたら消滅するし、戦闘で体力を0にしても消滅する。そこのところは気を付けてくれ」
「ファミリーって?」
「同時に三人まで従えられる仲間のことさ。ファミリーはヒッキーと一緒に戦ってくれる。そしてバトルコックはファミリーの後ろから、支援魔法等を使って戦いをするんだ」
「なるほど」
 仲間の背中に隠れて戦う。
 おお、それなら俺でもやれそうな気がするぞ。
「それじゃあまず、これを使ってくれ」
 そう言うと俺の目の前に、アイテム欄が表示され、そこにゆで卵が一つだけあった。
 俺はゆで卵に手を伸ばすと、そこに、ファミリー化。という文字が出る。
 俺はその文字を押すと、アイテム欄が消え、目の前にゆで卵が現れた。
 そのゆで卵は突然光を発し始め、どんどん巨大化。そして、殻付きのゆで卵から、翼と足と顔を出したような鳥の姿をしたモンスターに変わる。
「ピヨー、ピヨー!」
 おお、これがファミリー。よく動く。
「こいつがゆで卵のファミリー、ゆでたま鳥だ。ファミリーは自前のスキルを自分で考えて使う。戦い方もだ。ヒッキーがある程度指示を出すこともできるが、基本は戦いを見ているだけになるな」
「なるほど」
 それは良い。
「そして今ヒッキーは、ファミリー回復魔法だけ使える。さあ、それじゃあ試しにバトルだ。こいつらを倒してみろ!」
 女性がそう言うと、目の前にスライマーが三体現れた。そしてゆでたま鳥はすぐそいつらに目を向けると、攻撃を始めた。
「ピヨー!」
 おお、ゆでたま鳥の体が光って、そのままたいあたりを行う!
 スライマーはその攻撃で、半分以上体力を失った。スライマーは反撃を開始するも、更にゆでたま鳥に追撃され、どんどん体力を減らしていく。
 やがて、スライマーが一体倒れた。
「おお」
「ピヨー!」
 ゆでたま鳥は次のスライマーを攻撃する。おっと、そういえば俺も、魔法が使えるんだったな。
「ファミリー回復」
 そう言うと俺の手が光り、ゆでたま鳥の頭上体力ゲージが少しずつ回復していく。そうしている間に、ゆでたま鳥は二体目のスライマーも倒した。
「ピヨー!」
 三体目のスライマーも、難なく撃破。そこでゆでたま鳥は、光を放って消えた。
「なかなか良い職業だろう?」
 女性にそう言われ、自信がつく。確かに、これなら俺でも戦えそうだ。何より、自分が敵に近付かなくていいのが良い。
「ありがとう。それじゃあ、もう戻るよ」
「ああ。がんばれよ!」
 俺は再び宿部屋に戻って来た。そこでアイテム欄を開いて、ゆで卵に触る。
 しかしそこで選べた項目は、食べる。と、捨てる。のみだった。
「?」
 ファミリー化がない。なぜだ?
 ちょっと考えて、すぐに今、剣を装備していることに気づく。そうか、今の俺はまだ剣士なのか。じゃあ、バトルコックに変わらなきゃ。
「セレクト」
 あった。戦闘職変更。俺はそれを選んで、バトルコックになる。
 すると、腰の剣が無くなり、かわりにフライパンが携帯された。よし、これでバトルコックになれたかな。
 またアイテム欄を開いてみると、ゆで卵をファミリー化できるようになっていた。よし。それじゃあファミリーにしよう。
 一つ選んでみると、目の前にゆで卵が現れ、それがゆでたま鳥になる。よし、成功だ。
「ピヨー!」
 それじゃあ続けて、二体、三体とゆでたま鳥を生み出そう。
 こうして俺の目の前に、ゆでたま鳥が三体現れた。
「ピヨー!」
「ピヨー!」
「ピヨー!」
 ゆでたま鳥達は俺を見つめる。
 うん。可愛いし、すり寄ってこない。ちょっとうるさいけど、まあ許容範囲。なかなか落ち着く。
「じゃあ、俺達でもう一回、一人ダンジョンに挑むか」
「ピヨー!」
「ピヨー!」
「ピヨー!」

 一人ダンジョンにやってきて、最初のゴブーンは難なく突破。三体がかりでの攻撃は火力が違った。
 皆の体力はあまり減ってないので、俺の魔法も少しで済む。そしてちょっとゴブーンを倒すと、俺のレベルが上がった。
 ゴブーンを倒し続けていると、次はジャンプラビットが現れた。
 ジャンプラビットは2レベルのようだ。少し良い勝負をする。
「ピヨー!」
「ピヨー!」
「ピヨー!」
 だがまだゆでたま鳥達はやれる。俺達は経験値をもらいながら先に進んだ。
 続いて翼が生えたネズミ、トブネズミ。見た目ぬいぐるみの犬、ツブライヌを倒すと、そこで難敵が現れた。
 大きなベロを出した、二足歩行のキツネ。ベロギツネ。そいつらは口から光のわっかを吐いて攻撃してきた。
「ピヨー?」
 すると、まずゆでたま鳥の一体が攻撃をやめ、でたらめに歩き出した。
 頭上には変なマークがある。これはひょっとして、混乱、みたいな?
 そして、二体目のゆでたま鳥も混乱してしまう。対してこちらはベロギツネ達を、まだ一体も倒していない。これはひょっとして、まずいんじゃないか?
「て、撤退だ!」
 俺はそう言って逃げる。後ろへ走ると、そこには倒したはずのツブライヌがいた。
「ワンワン!」
「わああ、り、リタイアー!」
 俺はそう言って、思わずダンジョンから撤退する。
 ゆでたま鳥達は全員生き残っていたが、戻ってきた部屋で、俺は一息ついた。

「ふう。どうやら一人ダンジョンは、今のところ攻略できないみたいだな」
 少なくとも、ベロギツネの攻撃をなんとか対処しないと、あれ以上先には進めない。
 けど、それでは俺にどうしろと。
「ん、そういえば、瞬間移動できたな」
 確か、城まで行ければそこで、ストーリークエストが遊べるらしい。
 他にあてはないし、行ってみるか。
 俺はゆでたま鳥達が全回復しているのを確かめてから、また呼び鈴を鳴らした。

 瞬間移動した瞬間、俺は城の中を歩いていた。
 俺の体は、勝手に動く。
 勝手なマネはできないということか。
 でも、一緒にゆでたま鳥達も歩いている。それくらいは見ることができた。
 やがて俺達は、女王様とお姫様用のイスが置いてある、広い部屋につれてこられた。
 そこには、女王様と、お姫様がいた。
「まあ、あなたが冒険者ですわね!」
 お姫様がそう言った。
「ここまで来てくれてご苦労。娘がどうしても冒険者と話をしたいと言ってな。どうか、旅の話の一つや二つ、聞かせやっててくれ」
 女王様がそう言う。
「あなたは今までどんな冒険をしてきたの。どんな体験をしてきたの?」
 お姫様にそう言われた時、突然城の壁が崩れ、大きなモンスターが入ってきた。
「きゃー!」
「な、何事だ!」
 お姫様が叫び、女王様が立ちあがる。
「ふははは。俺は悪いモンスター。姫はいただいていくぞ!」
 モンスターはそう言って、お姫様をつかみ、持ち上げる。
「いやー、助けてー!」
「ふはははは。そうだ、折角だから土産をくれてやる。出てこい、闇の兵士。ここにいるやつらを皆殺しにしておけ!」
 モンスターがそう言うと、周囲に四体の兵士型モンスターが現れた。そして、悪いモンスターはお姫様をつれて逃げる。
「ぼ、冒険者よ。ひとまず戦ってくれ!」
 女王様にそう言われて、俺はやっと自由に動けるようになった。
 でも、俺は戦えない。だから、かわりにゆでたま鳥達がゆく。
「ピヨー!」
「ピヨー!」
「ピヨー!」
 ゆでたま鳥達が、まず一体の敵をリンチにする。
 すると、その敵はあっさりと倒れた。
「ピヨー!」
「ピヨー!」
「ピヨー!」
 ゆでたま鳥達はすかさず、どんどん敵を一体ずつ倒していく。
 すると、簡単に敵は全滅して、俺のレベルが上がった。
 ゆでたま鳥、強い。
 いや、相手が弱かったのか?
 戦闘が終わったら、また自由に動けなくなった。
「助かった、冒険者よ。しかし、私の娘がつれさられてしまった。どうか、あなたの手で娘を助けてくれ。無事つれてかえってきてくれたら、褒美をとらせよう」
 女王様にそう言われる。
 その後、数秒程間が空いて、それから女王様が続けて言った。
「頼んだぞ、冒険者よ。モンスターはおそらく、ここより南の地にいる。一刻も早く倒してくれ」
 ここで俺達はワープ。城の前に立った。そしてここでも、レベルアップ。
 すると、また人通りがある。
 俺は少しびくつくけど、大丈夫。これはゲームだ。現実じゃないし。
 そう思っていると、歩いている人達が俺を見て、何人かが立ち止まった。
「何あれ、可愛い!」
「あんなのいたかなあ?」
「新種のモンスター?」
 ま、まずいまずい。早く移動しよう。
「しゅ、瞬間移動」
 急いで冒険者ギルドまで戻る。するとそこにもやっぱり人がいて、俺はハラハラしながら受付嬢に話しかけ、部屋に戻った。

 ふう。怖かった。
「ピヨ」
「ピヨ」
「ピヨ」
 でも、ゆでたま鳥達のおかげで、ストーリークエストが出来た。ちょっとうれしい。
「よくやったぞ、お前達」
「ピヨ!」
「ピヨ!」
「ピヨ!」
 さて、それじゃあ次は、どうしよう?
 ストーリークエストを続ける? でも女王様は、ここより南に行けって言ってたよな。
 ということは、必然的に歩かないといけないということだろ。
 そんなのできるか? また人ごみの中は嫌だぞ?
 でも、ずっと黙ってひたすら歩いたら、大丈夫か?
 ここは、ゲームの中だし。
 うーん。後は、また料理や、それ以外のことをするっていうのも手だけど、料理って卵料理だろ。それをゆでたま鳥達の前で食べるのは、ちょっとなあ。卵料理以外でもいいかもしれないけど、でもそうした後は、きっともうゲームを終わりにするよな。
 ゆでたま鳥達はゲームを終える時、消滅してしまうらしい。だったら、もうちょっと戦力として使った方が良い気もする。
 それに、実際に移動してみて、それでダメだったら、諦めもつくし。そしたら、このゲームでは料理をしての無限食いしかできないって実証できるし、まずは、頑張って南を目指してみるのもありかもしれない。一応ストーリークエストの続きも気になる。
 お姫様がさらわれて、そのまま終わりにしちゃうっていうのもスッキリしないしね。
 よし、決めた。少し休んだら、南に行ってみよう。
 俺はベッドに座り、ゆでたま鳥達を見る。
「ピヨ」
「ピヨ」
「ピヨ」
 これがゲームかあ。なんだかずっと歩いたり、何かをしたり、なんだか忙しい。
 けど、つまんなくも、悪いとも思わないなあ。なんというか、普通。うん、普通。いや、ちょっとは新鮮?
 まあ、こうして何かしていれば、現実のことも忘れていられるし、今はこういのも、良いかもしれないな。

 瞬間移動を使って町の外まで来た。
 後ろには壁門。目の前にはどこまでも広がる草原。そして緑色を両断する道。
「よし。南へ目指そう」
 きっとそこに、お姫様がいるはず。
 今の所、人の姿はない。ふう、良かった。
 歩いていると、近くにモンスターがいるのがわかった。スライマーが数体、そこいらでぷよぷよしている。
 けど、今の目的はスライマーじゃないし、このまま進む。
「ゴブ!」
「ゴブ」
「ゴブ!」
 少し進むと、ゴブーンが目の前をとおせんぼした。すると俺の後ろにひかえていたゆでたま鳥達が、一斉におそいかかる。
「ピヨー!」
「ピヨー!」
「ピヨー!」
 良かった。ゆでたま鳥達にかかれば、ゴブーン達なんて瞬殺だ。
 ゴブーン達を倒すと、その場に何かが落ちた。俺はそれを拾う。
 ぼろい布を入手しました。くさったパンを入手しました。
 うげ、いらない。
 一瞬捨てようかとも思うが、ひょっとしたら何かに使えるかもしれない。一応そのままにしておこう。
 更に進むと、またゴブーンが現れる。ゆでたま鳥達が倒した後のドロップ品を、俺は悩みながらも拾う。
 そうしていると、次は大きなミミズが現れた。
 名前はファーストワーム。ゆでたま鳥達はこいつも囲んでリンチにしようとするが、しかしファーストワームは強かった。なかなか体力が減らない。そしてファーストワームの攻撃は、重い。
「ファミリー回復!」
 俺は初めて、外の戦闘で魔法を使った。しかしそれでも、ゆでたま鳥達は苦戦した。
 なんとか、ファーストワームを倒す。しかし、ゆでたま鳥達は皆瀕死。これは回復に専念した方が良いな。
 その時だった。
「いやーっ、何これー!」
 突然道を外れた方向から、そんな声がした。
「きゃーっ、助けてー、死にたくなーい!」
 大変だ。誰かが、ピンチなんだ。
 いや、これはゲームだけど。実際にピンチではないはずだけど。
 でも、人は怖いけど、助けを待っている人に背を向ける程、俺は人間やめてない。
「い、いこう。ゆでたま鳥達!」
「ピヨ!」
「ピヨ!」
「ピヨー!」
 ダッシュで声がした方へ行く。
 すると意外と近くに、ファーストワームと戦っている女性がいた。うわ、あの人、体中に白い液体がかかっている。まさか、ミミズにやられたのか?
 いや、今は余計なことを考えている場合じゃない。すぐに戦闘だ!
「ゆ、ゆでたま鳥達、モンスターを倒せー!」
「ピヨー!」
「ピヨー!」
「ピヨー!」
 ゆでたま鳥達はファーストワームを囲む。そして、すぐに返り討ちにあう。
 ああ、しまった。回復が足りなかった!
「よし。今、チャンス!」
 けれど、ファーストワームがゆでたま鳥達を攻撃していた隙に、女性が剣と魔法でファーストワームを仕留めた。
 あれは、片手剣と、魔法を組み合わせているのか。かっこいい。
 と思っていると、女性がこちらへ近づいて来た。
 俺は一瞬、慌てる。でも、逃げるのもどうかと思い、困惑している内に、女性が前に立つ。
「助けてくれてありがとうございました!」
「あ、ああ、うん」
「あ、あの、今は何もできませんが、後で必ずお礼します。ですので、フレンド登録してもらえませんか?」
「え、フ、フレンド?」
 よくわからないけど、きっと俺には荷が重いよ。
「い、いや、そういうのいいから」
「いえいえ、私、ここでお姉さまと別れたらとてもショックを受けます。夜も眠れなくなります!」
「え、ええ?」
「ですから、お願いです。ぜひ私と、フレンド登録してください。ただ握手するだけですから。ね?」
「え、ああ、うん」
 握手だけなら、いいか。
 そしていつの間にか女性にかかっていた白い液体は、全部消えていた。


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