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ゲーム機は帽子みたいなものだった。側面にソフトを入れる場所があったので、そこにセットする。
ゲーム機を装着して電源を入れると、目の前に文字が現れた。
「意識をゲーム内へ移します」
なんのことだろう。と思っていると、俺はいつの間にか、水色の世界に立っていた。
あれ、座りながらゲームを始めたよな?
と思っていると、目の前に、インターネットや、動画サイト等、いくつもの情報が光の板となって現れる。
その中に、ゲーム、+ワールドをプレイする。という文字もあった。
あった。+ワールド。これをやろうと思っていたんだ。
そう思って、+ワールドという文字に手を伸ばす。
それに触れると、世界が真っ白になり、続いて、昔の闘技場のような場所に来た。
けど、地面は全部石畳だし、それに、目の前にはかっこいい鎧と剣を装備している女性もいる。そして女性は俺を見てうなずいて、話しかけてきた。
「ようこそ。+ワールドへ」
「あ、はい」
「ここは剣と魔法の世界。ここであなたは自由に生き、生きる目的を得る。だが、悪い生き方だけはやめとけよ。やり直しがきかない悪行をしてしまったら、天使に目を突けられる。天使は君のこの世界での生活を許さないだろう。そのことを、しっかり肝に銘じておけ」
「あ、はい」
そうか。この世界には天使がいるのか。注意しよう。
「ではまず、君の本当の姿を確認しよう。やり方はわかるな。脳波を使って鏡に映すんだ」
女性がそう言うと、目の前に鏡が現れた。そして、鏡の中に一人の男が映る。
でも、それははたして人間かと言われたら、うなずけない出来の姿だった。
背丈は俺くらい。でも、鼻が低すぎて、目が小さすぎる。のっぺらぼうの親戚と言われてもうなずける姿だ。
「えっと、脳波だっけ」
この鏡の中の化け物は、おそらくこのゲーム内での、今の俺の姿なのだろう。であるならばきっと、イメージでどうにか変わるはずだ。
まず、鼻はもっと高く。おお、本当に念じるだけでできた。
目はもっと大きく。唇は適度に厚く。
うん。こんなものでいいかな。黒髪の、普通顔の男。
他に変にいじらない内に、この姿を確定してしまおう。
「姿は、これでいいです」
「本当にいいかい?」
「はい」
「よしわかった。もし姿を変更したくなったら、課金すれば変身アイテムが手に入るから、それを使ってくれ。その時、声も変えられる」
「はい」
「よし。それじゃあ、声もこれでいいか決めてくれ」
「これでいいです」
変に変わらない内に、即決めしちゃおう。
「お、いいのかい。なら、次は名前だ。この世界の君の名前はなんだい?」
この世界の俺の名前か。ということは、本名じゃない方が良いんだろうな。
「ええっと、ヒッキーで」
「ヒッキーか。悪くないが、本当にそれでいいのかい?」
「はい」
「よし。ヒッキー。+ワールドへようこそ。それじゃあこれから、戦闘についてのチュートリアルを始めよう。もちろん、全部はやらなくていいぞ。気に入ったのだけ、お試しだ」
「はい」
「チュートリアルは、セレクト画面からまた遊べるぞ。困った時は使ってくれ」
「はい」
「さて。では、何で戦う?」
そう言うと、俺の目の前に剣が現れた。その右奥には杖。左奥には大剣がある。
ええと、よくわからないから、目の前の片手剣を使おう。
「目の前の剣を使う」
「片手剣か。こいつはなかなか強いぞ。まず片手剣は、もう片方の手も使えるというメリットがある。盾、魔法。両手で片手剣を握ってもいい。片手ずつに剣を持ちたい時は、できるようになるまで強くなってくれよ」
「は、はあ」
「さて。それじゃあ、片手剣のどのスタイルで戦う?」
女性がそう言った直後、目の前に、両手で握る。という文字が現れた。
そして右奥には、盾を使う。の文字。左奥には、魔法を使う。の文字。
よくわからないけど、どれでも遊べるなら目の前の両手で握るを選ぼう。
「両手で握るを選ぶ」
「よしきた。それでは早速武器をとれ」
そう言われると、目の前に片手剣が現れた。俺はそれをつかむ。
すると目の前に、何かが現れた。ピンク色の丸いゼリーみたいなやつだ。
「ヒッキー。今目の前に、スライマーが三体現れた。あれを全部倒してみろ!」
「あ、ああ」
俺はひとまず一番近くのスライマーに近づく。そして剣を両手で使う。
えい、振り下ろし!
すると、スライマーの頭上に赤いバーが現れ、それが減った。きっと、スライマーにダメージが通ったんだ。
「そう、その調子!」
女性にそう言われるのと同時に、スライマーがぷよんと変形し、俺を小突く。
う、衝撃がくる!
でも、痛くはない。そして俺の視界下に、緑色のゲージが現れ、減った。
「ヒッキー。今自分の視界に、緑色のゲージが見えるだろう。それが君の体力だ。それが無くなったら、君は倒れる。倒れたら経験値や持ち物、お金がランダムで減る。十分注意しろよ!」
女性がそう言っている間、体が動かなかった。けどスライマーも動かなかったし、おかげで台詞をよく聞くことができた。
そうか。こちらがやられる可能性があるのか。ゲームだもんな。当たり前か。
そしてまた、再び動けるようになる。そしてそのまま、スライマーを斬り続けて、一体倒した。
すると、また動けなくなった。そして女性の声が聞こえる。
「ヒッキー。次は技を使ってみるんだ。緑色の体力の下にある、オレンジ色のゲージが技ゲージだ。今使えるのはファインスラッシュ。さあ、言ってみろ!」
よし。体が再び動く。それじゃあ、言ってみよう。
「ファインスラッシュ!」
そう言うと、剣が光った。これで攻撃すればいいのか?
二体目のスライマーを斬ると、腕が勝手に動くような感じがして、スライマーに大ダメージを与えた。そして技ゲージも減る。
「よし。良い調子だ。技ゲージが無くなれば技は使えないから、注意しろよな!」
よし。この勢いでまたファインスラッシュだ。
「ファインスラッシュ!」
よし。二回の技発動で二体目のスライマーを倒せた。後残るは一体だ。
「よし。その調子で最後の一体を倒せ!」
女性に言われるままに、スライマーを攻撃する。
「ファインスラッシュ!」
技を当てるが、これで技ゲージが無くなってしまった。あとは普通に攻撃するしかない。
幸いスライマーの反撃は弱く、体力を半分以上残したまま勝つことができた。すると、女性が拍手する。
「よし。それまで。両手握りは技の威力が高まるんだ。気に入ったのなら、その戦闘スタイルを貫いてみな!」
そう言われる。まあ、確かにこれで勝てるなら、これでいいのだろう。
「さて。他に気になる戦い方はあるかい?」
また俺の前に、両手で握る。盾を使う。他の武器に戻る。等の選択肢が出てくる。
「もう、ここはいいや」
俺は、次に進む。を見つけて、それに触れた。
すると、女性はうなずく。
「よし。戦い方はわかったな。なら次は、非戦闘についてだ。いろいろあるぞ。何について知りたい?」
そう言われると、俺の前に新たな選択肢が出てくる。料理。釣り。伐採。錬金術等、本当にさまざまだ。
でも、ゲームで料理って、できるのか?
俺はまず、料理を選択した。
「料理か。じゃあまず、料理をする。と言ってくれ」
「料理をする」
すると俺の目の前に、キッチンやフライパンが現れた。
「料理は設備をアップグレードしたり、装備を整えたりすることで、出来栄えが上がっていくぞ。それに、料理をするには材料も必要だ。材料は自分で探すんだ。いいな?」
「はい」
「今回は、ゆで卵を作ってみよう。卵はもう用意してある。ゆで卵を作る。と言うか、キッチンの上にあるレシピを手にして、見つけてごらん」
「レシピ?」
ああ、本当だ。目の前にレシピが置かれてある。めくってみれば、確かにゆで卵の作り方がのっている。
そしてレシピのページの、ゆで卵を作る。の文字を押すと、キッチンの上に、鍋や卵が出現した。
「料理の手順を説明しますか?」
そして、突然そんな声が聞こえてくる。
「いいえ」
俺は、そう答えた。流石にゆで卵くらい、作り方はわかる。
鍋に水をはって、その中に卵を入れる。
その時、俺の動きが止められた。
「おっと、ヒッキー。料理をしている時は、白いスキルゲージが許す限り、料理スキルを使うことができるんだ。料理スキルがどういうものかは、レシピに書いてあるぜ」
そう言われると、俺の視界に白いゲージが見えるようになった。そして、言われた通りにレシピを見てみると、確かに一番後ろにスキルという文字があった。
スキル。効能アップ。料理を食べた時の能力上昇値が上がる。
よし、使ってみよう」
「効能アップ。効能アップ。効能アップ」
俺は、スキルゲージが許す限りスキルを使った。
後は、コンロにかけて沸騰するのを待つ。
すると、数秒で水が沸騰し、鍋の上にタイマーマークが現れた。それが0になると、タイマーマークがOKマークに変わる。
「オーケー!」
しかも、効果音も聞こえた。
俺は火を止め、ゆで卵を手に入れる。そして食べてみると、それは確かにゆで卵だった。
「凄い」
白身も黄身も、しっかりと味わえる。これがゲームの中だとは、到底思えなかった。
しかも、水もいらない。食感がちゃんとあるのに、口の中がパサパサにならなかった。これは、楽でもある。
そして完食したら、俺の体が光って、更に視界に文字が現れた。
ゆで卵を食べました。物理防御力が4上がります。
きっとこれが、料理を食べた効果なのだろう。
「どうだい。料理は楽しめたかい?」
「は、はい」
調理時間は短かったし、ゆで卵はちゃんと味がしたし、食べることで強くなれることがわかった。きっとこれは、ゲームに使える職業なんだろうな。
「よし。それじゃあ後他に、気になる非戦闘職はあるかい?」
「えっと、じゃあ」
俺は試しに、一つ一つ非戦闘職を試した。
そうすると、あっという間に時間が過ぎていった。
非戦闘職のチュートリアルを一通りこなすと、女性はうなずいた。すると、次の指示が送られる。
「よし。それじゃあ次は、ステータスポイントとスキルポイントについて説明するぜ。まず、セレクト、ステータスと言ってみろ」
「セレクト、ステータス」
おうむ返しに言うと、俺の目の前にステータス欄が表示される。
「レベルアップすると、ステータスポイントとスキルポイントが5ずつもらえる。そして今ヒッキーは、それぞれ10ポイントずつ持っている。まずはスタータスポイントを使ってみな。その後はスキルポイントだ」
そう言われてステータスのところを見ると、体力、魔力、技力、物理攻撃力、魔法攻撃力、物理防御力、魔法防御力、素早さの能力値の横に、矢印ボタンがあった。その矢印ボタンを操作すると、今手持ちの10ポイントを割り振れるようだ。
「うーん」
まず、技を使ったら強い。だから、技力を伸ばした方が良いだろう。
でも、攻撃力と防御力も大事だと思う。体力も忘れてはいけない。だから今の所は、体力、技力、物理攻撃力、物理防御力、魔法防御力に2ずつ割り振ろう。
最後に矢印ボタン下の決定を押すと、ポイントの割り振りが完了した。
「どうやらステータスポイントを振り分けたようだね。次は、スキルポイントだ。表示欄の端にある、スキル習得を選んでみな」
言われた通り、スキル習得を押すと、さまざまなスキルが表示された。
通常攻撃強化、技強化、魔法強化等。いろいろある。
「スキルを習得した後は、スキルポイントでスキル強化もできる。まあ、後で考えるから今はやめておくっていうのも手だぜ」
なるほど。じゃあ、もう結構長い間ゲームをしている気がするから、今はやめておこう。
「これでやめます」
そう言うと、目の前の表示画面が消えた。そして、女性がうなずく。
「よし。じゃあ次にいこう」
すると次の瞬間、俺と女性がワープする。
一瞬後には、俺達は大きな建物の前にいた。
「最後に、主要な施設だけ紹介しておく。ここは冒険者ギルド。君達冒険者が仕事を依頼する時に使う場所だ。まあ、依頼はここだけにあるわけじゃないが、ここが拠点だと思っていい。なお、この中には宿屋もある」
そこまで言うと、またワープ。今度は色が違う建物の前に来た。
「ここが非戦闘職ギルドだ。こっちにも依頼が出たりしている。あと作った物の出品もできる。非戦闘職をこなしていくには、必要不可欠な場所だ」
次に俺達は、大きな城の前に来る。
ああいや、今の俺達の住居や、エレガンの屋敷からすると、ちょっと大きな城、かな?
「ここは城だ。大体ここでは、王様が困っている。大筋のストーリーをこなすなら、ここに来い。ストーリークエストをこなさないといけない場所もあるぞ!」
次に俺達は、大きな門の前に来る。
「ここは壁門。ここから町の外へ行ける。外にはモンスターがいっぱいいる。そいつらを倒したり、捕まえたりして、この世界を楽しめ!」
「え、モンスターって捕まえられるの?」
「ああ。そうだぞ。メスは倒すだけだが、オスはな。そして、その後は。ぐふふ。まあ、お楽しみってやつだ!」
女性はそう言って笑顔で言う。お楽しみって。ああ、そういえばこのゲーム、オールガール星人しかやってないんだったな。基本。
そしてオスしか捕まえられないって、まあ、いいや。考えないようにしよう。
「さて。私が説明するのはここまでかな。だが、ヒッキー。何か質問はあるか?」
「あ、あの。ゲームを終了するにはどうしたらいい?」
「ああ、それはな。セレクトと言って、その時出た表示の、ゲーム終了。を押せばいいんだよ」
「なるほど」
「だが、ゲーム内にはゲームが終了できない場合があるし、安全にゲームを終了できない場所も存在している。だから、ゲームを終了する時は、ちゃんとギルド内にある宿屋か、フィールド内にある死角にまで行くんだぞ」
「はい」
「よし。他に何か質問はあるか?」
「いいえ、ないです」
「わかった。それじゃあ、ようこそ。+ワールドへ。私達はヒッキーを歓迎するぜ!」
そう言うと、女性はいなくなった。そして次の瞬間、周囲に人が現れる。
門の近くを歩く人、人、人。皆女性だ。あ、門から町に入って来る人もいる。
「これがゲーム。へえ、凄いなあ」
俺はひとまず、冒険者ギルドを目指そうと思った。
あ、冒険者ギルドってどこにあるんだろう?
「セレクト」
何か使える機能はないかと思っていると、セレクト機能の中に、瞬間移動。という項目があった。
「瞬間移動か」
そう言うと、セレクト画面の表示が消え、新たな文字が現れる。
どちらに移動しますか?
冒険者ギルド。
非戦闘職ギルド。
城。
「冒険者ギルド」
俺がそう宣言すると、すぐに冒険者ギルドへ瞬間移動した。
ギルド内へと入ると、突然周囲の人が消え、喧噪も消えた。
「あ、冒険者さーん!」
そして、受付嬢に呼ばれる。
俺は招かれるまま近づくと、受付嬢は深くお辞儀をして、笑顔を見せた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。初めて訪れる方ですよね?」
「はい」
「ではまず、設備のご説明をいたします!」
そう言って受付嬢が、俺の後ろに手を伸ばした。
「あちらにあるのが、クエストボードになります。現在冒険者さんが選べるクエストを確認し、受けることができます!」
なるほど。あの大きな掲示板がクエストボードなんだな。
「一方クエストボードの隣にある、豪華で小さいボードの方が、パーティボードになります。あそこでパーティを募集、登録できますよ。そこで仲間を見つけるのも手です!」
仲間、かあ。ちょっと俺には敷居が高いかなあ。
「そして反対側が食事スペースとなっています。また、食事スペースのボードには冒険者の料理人が作った料理、また他の冒険者が売りに出している装備等を確認、買取することができます。あ、冒険者さんがアイテムを売り込むこともできますよ!」
なるほど。ここには食事スペースもあるらしい。
「そしてこちら、つまり私に話しかけると、特別クエストの確認、アイテムの納品、銀行の利用、宿屋への移動等ができます。他にも何かありましたら、私共へとお声掛けください!」
笑顔でそう言う受付嬢。というか、この笑顔もゲームで作ってるんだよな。ゲーム、凄い。
「以上でギルドの説明を終わりにします。何か聞いておきたいことはありますか?」
「宿屋に行かせてください」
「はい。かしこまりました。では冒険者さんを宿部屋へと案内します。転送!」
次の瞬間、俺は狭い個室にいた。
ベッドと鏡、椅子と机がある。でもまずは、ゲーム終了だな。
「ゲーム終了」
そう言うと、目の前にゲームを終了しますか。という文字が浮かんだ。
「はい」
そう言うと、ゲームの世界が消え、また水色の世界に戻った。
そして俺はそこで選べる項目の中で、現実に戻る。を見つける。
それを選んで押すと、俺の意識は現実に戻った。
「ふう」
ゲーム機を頭から外して下を見ると、ウサギ達が俺の足にわらわらと集まっていた。
「おい清太、もっとなでろよー」
「すーはー、くんかくんか。やっぱり足の匂いはかぐわしいたい」
「トイレトイレー、クソしたいー」
「おっと、トイレはまずい。ウサギ用のトイレは、もう結構たまってるな」
俺はすぐさまウサギ用トイレを掃除する。
そしてその時、あまり時間が経っていないことに気づいた。
「おかしいな。ゲームを結構やっていたはずなのに」
あ、あと、ゲームを長時間やっていたはずなのに、体が疲れているとか、そういう感覚は全くない。
「まあ、いいか」
ひとまず今は、ウサギ達のことだな。
「なでろー」
「なでろなでろー」
「はいはい。わかったよ」
夜。俺はネーリ、エレガン、オーハと一緒にごはんを食べる。
ただ、俺、ネーリ、オーハはブロッコリーと鶏肉を焼いただけのもので、エレガンだけステーキとフルーツの盛り合わせだ。
別にうらやましくはない。ただちょっと、ステーキとフルーツの香りが気になったりするぐらい。
「ああ、そうそう。エレガン。株を買った会社から届いたゲーム、やったよ」
「あら、そうですか。どうでしたか?」
「面白かった、と思う。つまんなくはなかったよ」
「私とゲーム、どっちがいい?」
唐突にネーリにそう言われた。エレガンとオーハも、俺を見る。
「ネ、ネーリの方が良いなあ」
「やったあ!」
「わ、私はどうですか、清太様!」
「私はどうかな、清太!」
「ああ、エレガンとオーハも、良いよ。とっても」
「いやったあですわ!」
「うれしい。清太、好き!」
ああ、どうして本当にこうなったんだろう。俺はネーリの夫だったはずなのになあ。
まあ、俺が誘拐されたのがいけないんだろうけどさ。
「それじゃあゲームなんか、いらないね!」
ネーリがそう、断言する。
「う、うん。そうかもね」
「まあ、貰い物ですし、一度遊べばいいのではないのですか?」
エレガンにもそう言われる。
「うん。そうかも。あ、ところで皆、というかネーリ。俺達、結婚式はあげないの?」
「え、何それ?」
ネーリにそう言われてしまった。ううん、俺もよくわからないけど。
「確か、結婚したらあげる式、だったかな?」
「何それ。私それ知らなーい」
ああ、ネーリはオールガール星人だから、結婚式を本当に知らないのか。
「ああ、ひょっとしたら、永愛式のようなものでは?」
その時、エレガンがそう言った。
「永愛式?」
「女同士気に入ったパートナーが出来たら、皆で集まって彼女達の長い愛情を祈る式です。ケーキを切ったり、花束を投げたりして。オールガール星人は皆女ですので、女同士での式はあるんですのよ」
「なるほど。この星ではそうなっているのか」
「私清太と永愛式やりたーい!」
ネーリが元気よく言った。
「私も清太と永愛式やるー!」
オーハもそう言った。
「お待ちなさい。それでしたら私もやりますわ!」
エレガンも言った。
「皆、ありがとう。でも、結婚式は男と女がやるものだったから、永愛式も二人だけが主賓なんじゃないの?」
「ううん。永愛式はたくさんの女同士でやってもいいんだよ。いっぱいモテる女の人もいるから」
オーハがそう、あっけらかんと言う。
「そ、そうなんだ。でも、永愛式って難しそうだなあ。俺なんかができるかな?」
「簡単だよ。一緒に楽しめばいいんだから!」
ネーリがそう言うけど、俺にはプレッシャーにしかならない。
「それとも、清太は、私との永愛式、嫌?」
「うっ」
そう言われると、素直に嫌とは言えない。
「わ、わかったよ。じゃあ、時間ができたらね」
「やったー!」
「私、早速式の予約をしておきますわ!」
「私も永愛式の準備するー!」
エレガンとオーハの二人もやる気だ。
「はあ」
俺は気まずくなりながらも、残りのブロッコリーを食べる。
「それじゃあ、永愛式といえば、永愛旅行だよね!」
更にネーリが、とんでもないことを言いだす。
「い、いや、俺は引きこもりだから、これ以上は無理。絶対」
「そうですか。まあ、清太様ですからね。仕方ありません」
「えーそんなー。しょんぼりー」
「永愛旅行、ちょっと楽しみだったんだけどなあ」
エレガン、ネーリ、オーハはそう言ってくれるが、どうやら永愛式はやる雰囲気。
ああ、余計なことを言わなければ良かった。
けど、妻になってくれたネーリと結婚式をやってないのも事実。
それが済めば、はれてひきこもり生活をエンジョイできる。
心残りは、無い方が良いよね。
そう前向きに思い直しながら、今晩も三人と一緒のひと時を過ごした。
その後、やって来た永愛式。
ネーリは、純白のウエディングドレスを着ていた。
「じゃーん! 清太。どう。私きれいでしょ!」
「う、うん。きれいだよ。ネーリ」
「やったー!」
正直俺は、式本番直前になった今、かなり緊張と羞恥心を感じまくっているんだけど。
「清太様。私はどうですか?」
「うん。エレガン。きれいだよ」
「うふふ。うれしい!」
「清太、私はどう?」
「オーハ、きれいだ」
「やったあ!」
「けどさあ」
「うん?」
みんなしてそう言いながら、俺の方を見る。
「なんで俺も、ウエディングドレスを着ているの?」
そう。俺はなぜか、ウエディングドレスを着せられていた。
しかも、皆と一緒にブーケまで持たされている。
「だって、永愛式は女同士の式だったはずだから」
そして三人同時に、そう言われる。
「聞いてないよお」
だがそう思っても、後の祭り。
「そんなこと言わないで。清太、似合っているよ?」
ネーリにそう言われても、ショックを受けるだけである。
「清太様。大丈夫。私がついていますわ!」
エレガンにそう言われても、全く安心できない。
「大丈夫。私だけを見つめていれば、すぐに終わるよ!」
オーハにそう言われるが、当然そういうわけにもいかない。
「はあ、胃が痛い。頭が痛い」
「大丈夫、清太、お医者さん呼ぶ?」
「いや、そういうことじゃない」
ネーリを心配させてしまいながらも、永愛式は始まった。
俺達が会場に入ると、待っていた客達が一斉に拍手する。
その数、数千、いや、数万?
初めて見る大人数。しかもそれが、俺達を見ている。
「どうしてこうなった?」
「えへへ。私の仲間のボクサー達が、皆来たいって!」
「私と仕事上の付き合いがある者達が、皆出席していますわ」
「私の組の者もいるよ。清太、ちょっと多くてごめんね?」
ああ、意識が遠くなりかける。俺今、なんで踵が高いヒールをはいているんだろう?
なんとか決められた位置まで来ると、その後はもうてんやわんやだった。
写真撮影。ブーケトス。三人とキス。指輪をはめる。ケーキ入刀。花火。祝いのダンス。ライオンの火の輪くぐり。
心身ともに疲れ果てた後、やっと式場から離れることができた。
後は自宅で普段着に着替えて、しばらく一人にさせてもらう。
ああ、つかれた。しんどい。もう寝たい。というか死にたい。
思わずウサギ達に囲まれてぶっ倒れていたら、その後、三人が俺の所へやってきてこう言った。
「清太。永愛式のムービーよく撮れてたよ!」
「あ、ああ。そう」
「これは家宝になりますわ。もちろん親にも、そして清太様の親にも送りましょう!」
「え、え?」
「清太のお母さん、きっとこの清太を見たらびっくりするよ。感動しすぎて泣いちゃうかも!」
「え、あ、ちょっと待って。本当、待って」
「え、何が?」
三人にそう言われる。
「やめてええええええええええええええええええ!」
この時俺は、人生で一番大きな声を出した。
ていうかあれを家族に見られるのは、本当やめてください。
ゲーム機を装着して電源を入れると、目の前に文字が現れた。
「意識をゲーム内へ移します」
なんのことだろう。と思っていると、俺はいつの間にか、水色の世界に立っていた。
あれ、座りながらゲームを始めたよな?
と思っていると、目の前に、インターネットや、動画サイト等、いくつもの情報が光の板となって現れる。
その中に、ゲーム、+ワールドをプレイする。という文字もあった。
あった。+ワールド。これをやろうと思っていたんだ。
そう思って、+ワールドという文字に手を伸ばす。
それに触れると、世界が真っ白になり、続いて、昔の闘技場のような場所に来た。
けど、地面は全部石畳だし、それに、目の前にはかっこいい鎧と剣を装備している女性もいる。そして女性は俺を見てうなずいて、話しかけてきた。
「ようこそ。+ワールドへ」
「あ、はい」
「ここは剣と魔法の世界。ここであなたは自由に生き、生きる目的を得る。だが、悪い生き方だけはやめとけよ。やり直しがきかない悪行をしてしまったら、天使に目を突けられる。天使は君のこの世界での生活を許さないだろう。そのことを、しっかり肝に銘じておけ」
「あ、はい」
そうか。この世界には天使がいるのか。注意しよう。
「ではまず、君の本当の姿を確認しよう。やり方はわかるな。脳波を使って鏡に映すんだ」
女性がそう言うと、目の前に鏡が現れた。そして、鏡の中に一人の男が映る。
でも、それははたして人間かと言われたら、うなずけない出来の姿だった。
背丈は俺くらい。でも、鼻が低すぎて、目が小さすぎる。のっぺらぼうの親戚と言われてもうなずける姿だ。
「えっと、脳波だっけ」
この鏡の中の化け物は、おそらくこのゲーム内での、今の俺の姿なのだろう。であるならばきっと、イメージでどうにか変わるはずだ。
まず、鼻はもっと高く。おお、本当に念じるだけでできた。
目はもっと大きく。唇は適度に厚く。
うん。こんなものでいいかな。黒髪の、普通顔の男。
他に変にいじらない内に、この姿を確定してしまおう。
「姿は、これでいいです」
「本当にいいかい?」
「はい」
「よしわかった。もし姿を変更したくなったら、課金すれば変身アイテムが手に入るから、それを使ってくれ。その時、声も変えられる」
「はい」
「よし。それじゃあ、声もこれでいいか決めてくれ」
「これでいいです」
変に変わらない内に、即決めしちゃおう。
「お、いいのかい。なら、次は名前だ。この世界の君の名前はなんだい?」
この世界の俺の名前か。ということは、本名じゃない方が良いんだろうな。
「ええっと、ヒッキーで」
「ヒッキーか。悪くないが、本当にそれでいいのかい?」
「はい」
「よし。ヒッキー。+ワールドへようこそ。それじゃあこれから、戦闘についてのチュートリアルを始めよう。もちろん、全部はやらなくていいぞ。気に入ったのだけ、お試しだ」
「はい」
「チュートリアルは、セレクト画面からまた遊べるぞ。困った時は使ってくれ」
「はい」
「さて。では、何で戦う?」
そう言うと、俺の目の前に剣が現れた。その右奥には杖。左奥には大剣がある。
ええと、よくわからないから、目の前の片手剣を使おう。
「目の前の剣を使う」
「片手剣か。こいつはなかなか強いぞ。まず片手剣は、もう片方の手も使えるというメリットがある。盾、魔法。両手で片手剣を握ってもいい。片手ずつに剣を持ちたい時は、できるようになるまで強くなってくれよ」
「は、はあ」
「さて。それじゃあ、片手剣のどのスタイルで戦う?」
女性がそう言った直後、目の前に、両手で握る。という文字が現れた。
そして右奥には、盾を使う。の文字。左奥には、魔法を使う。の文字。
よくわからないけど、どれでも遊べるなら目の前の両手で握るを選ぼう。
「両手で握るを選ぶ」
「よしきた。それでは早速武器をとれ」
そう言われると、目の前に片手剣が現れた。俺はそれをつかむ。
すると目の前に、何かが現れた。ピンク色の丸いゼリーみたいなやつだ。
「ヒッキー。今目の前に、スライマーが三体現れた。あれを全部倒してみろ!」
「あ、ああ」
俺はひとまず一番近くのスライマーに近づく。そして剣を両手で使う。
えい、振り下ろし!
すると、スライマーの頭上に赤いバーが現れ、それが減った。きっと、スライマーにダメージが通ったんだ。
「そう、その調子!」
女性にそう言われるのと同時に、スライマーがぷよんと変形し、俺を小突く。
う、衝撃がくる!
でも、痛くはない。そして俺の視界下に、緑色のゲージが現れ、減った。
「ヒッキー。今自分の視界に、緑色のゲージが見えるだろう。それが君の体力だ。それが無くなったら、君は倒れる。倒れたら経験値や持ち物、お金がランダムで減る。十分注意しろよ!」
女性がそう言っている間、体が動かなかった。けどスライマーも動かなかったし、おかげで台詞をよく聞くことができた。
そうか。こちらがやられる可能性があるのか。ゲームだもんな。当たり前か。
そしてまた、再び動けるようになる。そしてそのまま、スライマーを斬り続けて、一体倒した。
すると、また動けなくなった。そして女性の声が聞こえる。
「ヒッキー。次は技を使ってみるんだ。緑色の体力の下にある、オレンジ色のゲージが技ゲージだ。今使えるのはファインスラッシュ。さあ、言ってみろ!」
よし。体が再び動く。それじゃあ、言ってみよう。
「ファインスラッシュ!」
そう言うと、剣が光った。これで攻撃すればいいのか?
二体目のスライマーを斬ると、腕が勝手に動くような感じがして、スライマーに大ダメージを与えた。そして技ゲージも減る。
「よし。良い調子だ。技ゲージが無くなれば技は使えないから、注意しろよな!」
よし。この勢いでまたファインスラッシュだ。
「ファインスラッシュ!」
よし。二回の技発動で二体目のスライマーを倒せた。後残るは一体だ。
「よし。その調子で最後の一体を倒せ!」
女性に言われるままに、スライマーを攻撃する。
「ファインスラッシュ!」
技を当てるが、これで技ゲージが無くなってしまった。あとは普通に攻撃するしかない。
幸いスライマーの反撃は弱く、体力を半分以上残したまま勝つことができた。すると、女性が拍手する。
「よし。それまで。両手握りは技の威力が高まるんだ。気に入ったのなら、その戦闘スタイルを貫いてみな!」
そう言われる。まあ、確かにこれで勝てるなら、これでいいのだろう。
「さて。他に気になる戦い方はあるかい?」
また俺の前に、両手で握る。盾を使う。他の武器に戻る。等の選択肢が出てくる。
「もう、ここはいいや」
俺は、次に進む。を見つけて、それに触れた。
すると、女性はうなずく。
「よし。戦い方はわかったな。なら次は、非戦闘についてだ。いろいろあるぞ。何について知りたい?」
そう言われると、俺の前に新たな選択肢が出てくる。料理。釣り。伐採。錬金術等、本当にさまざまだ。
でも、ゲームで料理って、できるのか?
俺はまず、料理を選択した。
「料理か。じゃあまず、料理をする。と言ってくれ」
「料理をする」
すると俺の目の前に、キッチンやフライパンが現れた。
「料理は設備をアップグレードしたり、装備を整えたりすることで、出来栄えが上がっていくぞ。それに、料理をするには材料も必要だ。材料は自分で探すんだ。いいな?」
「はい」
「今回は、ゆで卵を作ってみよう。卵はもう用意してある。ゆで卵を作る。と言うか、キッチンの上にあるレシピを手にして、見つけてごらん」
「レシピ?」
ああ、本当だ。目の前にレシピが置かれてある。めくってみれば、確かにゆで卵の作り方がのっている。
そしてレシピのページの、ゆで卵を作る。の文字を押すと、キッチンの上に、鍋や卵が出現した。
「料理の手順を説明しますか?」
そして、突然そんな声が聞こえてくる。
「いいえ」
俺は、そう答えた。流石にゆで卵くらい、作り方はわかる。
鍋に水をはって、その中に卵を入れる。
その時、俺の動きが止められた。
「おっと、ヒッキー。料理をしている時は、白いスキルゲージが許す限り、料理スキルを使うことができるんだ。料理スキルがどういうものかは、レシピに書いてあるぜ」
そう言われると、俺の視界に白いゲージが見えるようになった。そして、言われた通りにレシピを見てみると、確かに一番後ろにスキルという文字があった。
スキル。効能アップ。料理を食べた時の能力上昇値が上がる。
よし、使ってみよう」
「効能アップ。効能アップ。効能アップ」
俺は、スキルゲージが許す限りスキルを使った。
後は、コンロにかけて沸騰するのを待つ。
すると、数秒で水が沸騰し、鍋の上にタイマーマークが現れた。それが0になると、タイマーマークがOKマークに変わる。
「オーケー!」
しかも、効果音も聞こえた。
俺は火を止め、ゆで卵を手に入れる。そして食べてみると、それは確かにゆで卵だった。
「凄い」
白身も黄身も、しっかりと味わえる。これがゲームの中だとは、到底思えなかった。
しかも、水もいらない。食感がちゃんとあるのに、口の中がパサパサにならなかった。これは、楽でもある。
そして完食したら、俺の体が光って、更に視界に文字が現れた。
ゆで卵を食べました。物理防御力が4上がります。
きっとこれが、料理を食べた効果なのだろう。
「どうだい。料理は楽しめたかい?」
「は、はい」
調理時間は短かったし、ゆで卵はちゃんと味がしたし、食べることで強くなれることがわかった。きっとこれは、ゲームに使える職業なんだろうな。
「よし。それじゃあ後他に、気になる非戦闘職はあるかい?」
「えっと、じゃあ」
俺は試しに、一つ一つ非戦闘職を試した。
そうすると、あっという間に時間が過ぎていった。
非戦闘職のチュートリアルを一通りこなすと、女性はうなずいた。すると、次の指示が送られる。
「よし。それじゃあ次は、ステータスポイントとスキルポイントについて説明するぜ。まず、セレクト、ステータスと言ってみろ」
「セレクト、ステータス」
おうむ返しに言うと、俺の目の前にステータス欄が表示される。
「レベルアップすると、ステータスポイントとスキルポイントが5ずつもらえる。そして今ヒッキーは、それぞれ10ポイントずつ持っている。まずはスタータスポイントを使ってみな。その後はスキルポイントだ」
そう言われてステータスのところを見ると、体力、魔力、技力、物理攻撃力、魔法攻撃力、物理防御力、魔法防御力、素早さの能力値の横に、矢印ボタンがあった。その矢印ボタンを操作すると、今手持ちの10ポイントを割り振れるようだ。
「うーん」
まず、技を使ったら強い。だから、技力を伸ばした方が良いだろう。
でも、攻撃力と防御力も大事だと思う。体力も忘れてはいけない。だから今の所は、体力、技力、物理攻撃力、物理防御力、魔法防御力に2ずつ割り振ろう。
最後に矢印ボタン下の決定を押すと、ポイントの割り振りが完了した。
「どうやらステータスポイントを振り分けたようだね。次は、スキルポイントだ。表示欄の端にある、スキル習得を選んでみな」
言われた通り、スキル習得を押すと、さまざまなスキルが表示された。
通常攻撃強化、技強化、魔法強化等。いろいろある。
「スキルを習得した後は、スキルポイントでスキル強化もできる。まあ、後で考えるから今はやめておくっていうのも手だぜ」
なるほど。じゃあ、もう結構長い間ゲームをしている気がするから、今はやめておこう。
「これでやめます」
そう言うと、目の前の表示画面が消えた。そして、女性がうなずく。
「よし。じゃあ次にいこう」
すると次の瞬間、俺と女性がワープする。
一瞬後には、俺達は大きな建物の前にいた。
「最後に、主要な施設だけ紹介しておく。ここは冒険者ギルド。君達冒険者が仕事を依頼する時に使う場所だ。まあ、依頼はここだけにあるわけじゃないが、ここが拠点だと思っていい。なお、この中には宿屋もある」
そこまで言うと、またワープ。今度は色が違う建物の前に来た。
「ここが非戦闘職ギルドだ。こっちにも依頼が出たりしている。あと作った物の出品もできる。非戦闘職をこなしていくには、必要不可欠な場所だ」
次に俺達は、大きな城の前に来る。
ああいや、今の俺達の住居や、エレガンの屋敷からすると、ちょっと大きな城、かな?
「ここは城だ。大体ここでは、王様が困っている。大筋のストーリーをこなすなら、ここに来い。ストーリークエストをこなさないといけない場所もあるぞ!」
次に俺達は、大きな門の前に来る。
「ここは壁門。ここから町の外へ行ける。外にはモンスターがいっぱいいる。そいつらを倒したり、捕まえたりして、この世界を楽しめ!」
「え、モンスターって捕まえられるの?」
「ああ。そうだぞ。メスは倒すだけだが、オスはな。そして、その後は。ぐふふ。まあ、お楽しみってやつだ!」
女性はそう言って笑顔で言う。お楽しみって。ああ、そういえばこのゲーム、オールガール星人しかやってないんだったな。基本。
そしてオスしか捕まえられないって、まあ、いいや。考えないようにしよう。
「さて。私が説明するのはここまでかな。だが、ヒッキー。何か質問はあるか?」
「あ、あの。ゲームを終了するにはどうしたらいい?」
「ああ、それはな。セレクトと言って、その時出た表示の、ゲーム終了。を押せばいいんだよ」
「なるほど」
「だが、ゲーム内にはゲームが終了できない場合があるし、安全にゲームを終了できない場所も存在している。だから、ゲームを終了する時は、ちゃんとギルド内にある宿屋か、フィールド内にある死角にまで行くんだぞ」
「はい」
「よし。他に何か質問はあるか?」
「いいえ、ないです」
「わかった。それじゃあ、ようこそ。+ワールドへ。私達はヒッキーを歓迎するぜ!」
そう言うと、女性はいなくなった。そして次の瞬間、周囲に人が現れる。
門の近くを歩く人、人、人。皆女性だ。あ、門から町に入って来る人もいる。
「これがゲーム。へえ、凄いなあ」
俺はひとまず、冒険者ギルドを目指そうと思った。
あ、冒険者ギルドってどこにあるんだろう?
「セレクト」
何か使える機能はないかと思っていると、セレクト機能の中に、瞬間移動。という項目があった。
「瞬間移動か」
そう言うと、セレクト画面の表示が消え、新たな文字が現れる。
どちらに移動しますか?
冒険者ギルド。
非戦闘職ギルド。
城。
「冒険者ギルド」
俺がそう宣言すると、すぐに冒険者ギルドへ瞬間移動した。
ギルド内へと入ると、突然周囲の人が消え、喧噪も消えた。
「あ、冒険者さーん!」
そして、受付嬢に呼ばれる。
俺は招かれるまま近づくと、受付嬢は深くお辞儀をして、笑顔を見せた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。初めて訪れる方ですよね?」
「はい」
「ではまず、設備のご説明をいたします!」
そう言って受付嬢が、俺の後ろに手を伸ばした。
「あちらにあるのが、クエストボードになります。現在冒険者さんが選べるクエストを確認し、受けることができます!」
なるほど。あの大きな掲示板がクエストボードなんだな。
「一方クエストボードの隣にある、豪華で小さいボードの方が、パーティボードになります。あそこでパーティを募集、登録できますよ。そこで仲間を見つけるのも手です!」
仲間、かあ。ちょっと俺には敷居が高いかなあ。
「そして反対側が食事スペースとなっています。また、食事スペースのボードには冒険者の料理人が作った料理、また他の冒険者が売りに出している装備等を確認、買取することができます。あ、冒険者さんがアイテムを売り込むこともできますよ!」
なるほど。ここには食事スペースもあるらしい。
「そしてこちら、つまり私に話しかけると、特別クエストの確認、アイテムの納品、銀行の利用、宿屋への移動等ができます。他にも何かありましたら、私共へとお声掛けください!」
笑顔でそう言う受付嬢。というか、この笑顔もゲームで作ってるんだよな。ゲーム、凄い。
「以上でギルドの説明を終わりにします。何か聞いておきたいことはありますか?」
「宿屋に行かせてください」
「はい。かしこまりました。では冒険者さんを宿部屋へと案内します。転送!」
次の瞬間、俺は狭い個室にいた。
ベッドと鏡、椅子と机がある。でもまずは、ゲーム終了だな。
「ゲーム終了」
そう言うと、目の前にゲームを終了しますか。という文字が浮かんだ。
「はい」
そう言うと、ゲームの世界が消え、また水色の世界に戻った。
そして俺はそこで選べる項目の中で、現実に戻る。を見つける。
それを選んで押すと、俺の意識は現実に戻った。
「ふう」
ゲーム機を頭から外して下を見ると、ウサギ達が俺の足にわらわらと集まっていた。
「おい清太、もっとなでろよー」
「すーはー、くんかくんか。やっぱり足の匂いはかぐわしいたい」
「トイレトイレー、クソしたいー」
「おっと、トイレはまずい。ウサギ用のトイレは、もう結構たまってるな」
俺はすぐさまウサギ用トイレを掃除する。
そしてその時、あまり時間が経っていないことに気づいた。
「おかしいな。ゲームを結構やっていたはずなのに」
あ、あと、ゲームを長時間やっていたはずなのに、体が疲れているとか、そういう感覚は全くない。
「まあ、いいか」
ひとまず今は、ウサギ達のことだな。
「なでろー」
「なでろなでろー」
「はいはい。わかったよ」
夜。俺はネーリ、エレガン、オーハと一緒にごはんを食べる。
ただ、俺、ネーリ、オーハはブロッコリーと鶏肉を焼いただけのもので、エレガンだけステーキとフルーツの盛り合わせだ。
別にうらやましくはない。ただちょっと、ステーキとフルーツの香りが気になったりするぐらい。
「ああ、そうそう。エレガン。株を買った会社から届いたゲーム、やったよ」
「あら、そうですか。どうでしたか?」
「面白かった、と思う。つまんなくはなかったよ」
「私とゲーム、どっちがいい?」
唐突にネーリにそう言われた。エレガンとオーハも、俺を見る。
「ネ、ネーリの方が良いなあ」
「やったあ!」
「わ、私はどうですか、清太様!」
「私はどうかな、清太!」
「ああ、エレガンとオーハも、良いよ。とっても」
「いやったあですわ!」
「うれしい。清太、好き!」
ああ、どうして本当にこうなったんだろう。俺はネーリの夫だったはずなのになあ。
まあ、俺が誘拐されたのがいけないんだろうけどさ。
「それじゃあゲームなんか、いらないね!」
ネーリがそう、断言する。
「う、うん。そうかもね」
「まあ、貰い物ですし、一度遊べばいいのではないのですか?」
エレガンにもそう言われる。
「うん。そうかも。あ、ところで皆、というかネーリ。俺達、結婚式はあげないの?」
「え、何それ?」
ネーリにそう言われてしまった。ううん、俺もよくわからないけど。
「確か、結婚したらあげる式、だったかな?」
「何それ。私それ知らなーい」
ああ、ネーリはオールガール星人だから、結婚式を本当に知らないのか。
「ああ、ひょっとしたら、永愛式のようなものでは?」
その時、エレガンがそう言った。
「永愛式?」
「女同士気に入ったパートナーが出来たら、皆で集まって彼女達の長い愛情を祈る式です。ケーキを切ったり、花束を投げたりして。オールガール星人は皆女ですので、女同士での式はあるんですのよ」
「なるほど。この星ではそうなっているのか」
「私清太と永愛式やりたーい!」
ネーリが元気よく言った。
「私も清太と永愛式やるー!」
オーハもそう言った。
「お待ちなさい。それでしたら私もやりますわ!」
エレガンも言った。
「皆、ありがとう。でも、結婚式は男と女がやるものだったから、永愛式も二人だけが主賓なんじゃないの?」
「ううん。永愛式はたくさんの女同士でやってもいいんだよ。いっぱいモテる女の人もいるから」
オーハがそう、あっけらかんと言う。
「そ、そうなんだ。でも、永愛式って難しそうだなあ。俺なんかができるかな?」
「簡単だよ。一緒に楽しめばいいんだから!」
ネーリがそう言うけど、俺にはプレッシャーにしかならない。
「それとも、清太は、私との永愛式、嫌?」
「うっ」
そう言われると、素直に嫌とは言えない。
「わ、わかったよ。じゃあ、時間ができたらね」
「やったー!」
「私、早速式の予約をしておきますわ!」
「私も永愛式の準備するー!」
エレガンとオーハの二人もやる気だ。
「はあ」
俺は気まずくなりながらも、残りのブロッコリーを食べる。
「それじゃあ、永愛式といえば、永愛旅行だよね!」
更にネーリが、とんでもないことを言いだす。
「い、いや、俺は引きこもりだから、これ以上は無理。絶対」
「そうですか。まあ、清太様ですからね。仕方ありません」
「えーそんなー。しょんぼりー」
「永愛旅行、ちょっと楽しみだったんだけどなあ」
エレガン、ネーリ、オーハはそう言ってくれるが、どうやら永愛式はやる雰囲気。
ああ、余計なことを言わなければ良かった。
けど、妻になってくれたネーリと結婚式をやってないのも事実。
それが済めば、はれてひきこもり生活をエンジョイできる。
心残りは、無い方が良いよね。
そう前向きに思い直しながら、今晩も三人と一緒のひと時を過ごした。
その後、やって来た永愛式。
ネーリは、純白のウエディングドレスを着ていた。
「じゃーん! 清太。どう。私きれいでしょ!」
「う、うん。きれいだよ。ネーリ」
「やったー!」
正直俺は、式本番直前になった今、かなり緊張と羞恥心を感じまくっているんだけど。
「清太様。私はどうですか?」
「うん。エレガン。きれいだよ」
「うふふ。うれしい!」
「清太、私はどう?」
「オーハ、きれいだ」
「やったあ!」
「けどさあ」
「うん?」
みんなしてそう言いながら、俺の方を見る。
「なんで俺も、ウエディングドレスを着ているの?」
そう。俺はなぜか、ウエディングドレスを着せられていた。
しかも、皆と一緒にブーケまで持たされている。
「だって、永愛式は女同士の式だったはずだから」
そして三人同時に、そう言われる。
「聞いてないよお」
だがそう思っても、後の祭り。
「そんなこと言わないで。清太、似合っているよ?」
ネーリにそう言われても、ショックを受けるだけである。
「清太様。大丈夫。私がついていますわ!」
エレガンにそう言われても、全く安心できない。
「大丈夫。私だけを見つめていれば、すぐに終わるよ!」
オーハにそう言われるが、当然そういうわけにもいかない。
「はあ、胃が痛い。頭が痛い」
「大丈夫、清太、お医者さん呼ぶ?」
「いや、そういうことじゃない」
ネーリを心配させてしまいながらも、永愛式は始まった。
俺達が会場に入ると、待っていた客達が一斉に拍手する。
その数、数千、いや、数万?
初めて見る大人数。しかもそれが、俺達を見ている。
「どうしてこうなった?」
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「清太。永愛式のムービーよく撮れてたよ!」
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