真夏の館

十 的

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前原清美2

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「はたしてそれはどうかな」
 だがここで、俊二が出張った。
「なによ、俊二。勝った私達に何か言いたいことでも?」
 私が言う。すると俊二がうなずく。
「ああ。一夜はただの前座だ。本番の勝負はこの俺、俊二様とのゲームなのだ」
 俊二が言う。なんで自分で自分のことを様づけしてるんだ。
「そんなこと言われても、もうゲームする意味もないもんね」
 私はそう言って季目を見る。
「え、あ、うーん。まあ、そうかも」
 ほら、季目だって俊二にはつきあわない気だ。
「そんなこと言わずにさあ。俺ともゲームやろうぜえ。一夜と二人で肝試しとか、軽い罰ゲームみたいだろお。俺はこのままじゃ引き下がれねえぜえ」
 俊二が体をくねらせながら言う。
「って、言われても」
 ゲームに勝ったのは私達だ。俊二の言い分はただの泣きの一回の申し込みにすぎない。
「じゃあ、俊二が負けたら、どうするの?」
 そこで、季目がそんなやるみたいなことを言った。
「脱ぎます」
 俊二が言った。
「ふざけんな変態」
 私が言った。
「じゃあイスになる。マットになる。マッサージもつける。これでどうだ。もう一戦してくれ!」
 俊二がそう言っておがみ始める。
「更に変態じゃねえか!」
 私が言った。
「そんなにしてほしいなら、勝負を受けてもいいけど」
 ここで、季目が言う。
「うそ!」
 私が言う。今の要素に、勝負を受けたくなる魅力なんて1つもなかったはずなのに。
「き、季目は、そういうプレイが良いのか?」
 一夢がバカなことを言っている。
「きっと俊二は、負けたら気が済むよ」
 季目が言う。そうか、季目はわざわざ相手の気がすむまでつきあってあげようというのか。まさに天使だ。
「まあ、季目がそこまで言うなら、私は反対しないけど」
 私が言う。
「むっきー。季目のやつもう勝った気でいやがる。だが後でほえ面かくがいい、いや、一緒に幽霊館に来るがいい。最後に笑うのはこの俺だあ!」
 俊二が言う。
「その意気だー俊二、俺のかたきをとってくれー!」
 一夜が言う。
「ああ、任せてくれ!」
 俊二が一夜に力こぶを見せる。
「でも、その前にまずは私が問題を出すよ。それを俊二が9回まで質問して正解してね。それができなかったらその時点で俊二の負け。それができれば、次に俊二が問題を出して、私と質問の少なさを競う。それでいいね?」
 季目がルールを定める。
「おう、全く問題ないぜ!」
 俊二が言う。
「待て。俺の時は清美が正解したんだ。だから今回も俺と俊二が答えを当てていいだろ?」
 一夜が言う。
「まあ、いいよ。それじゃあ、まずは答えを書いておくね」
 季目が自分のノートに何かを書く。なんだろう。私も当ててみようかな。
「ねえ、季目。隣で私も考えてていい。あてはしないから」
 私が言うと、季目はうなずく。
「うん。それじゃあ清美も、問題に挑戦してみてね。もし俊二と一夜が当てられなかったら、清美も答えてみて」
「うん」
「お、俺も、俺も考える!」
 一夢が仲間にしてほしそうにこちらを見た。
「うん。それじゃあ、一夢は清美の次ね。それじゃあ俊二、まずは質問をどうぞ」
 季目がそう言って、ゲームが始まった。さて、季目は答えを何にしたんだろうな。
「それじゃあ季目、それは食べ物か、もしくは飲み物ですか?」
「いいえ」
「それは大きいですか?」
 ああ、俊二。そういう質問をするのか。それで答えがしぼられるなら良いんだけど。ああいや、こちらとしてはまずいんだけど。
「はい」
 おお、どうやら答えは大きいものらしい。でも、その大きさとは、具体的にはどれくらいなんだろう?
「それに人が住めますか?」
 強気な質問がきた。
「いいえ」
 季目が首を横に振る。まだ答えが全然わからないけど、これで質問は3回やった。これは、はたして9回ですむかな?
「人が住めないとしたら、車でもないか」
 俊二が腕をくんで考える。こらこら、車内を勝手に居住圏にするな。
「おいおい俊二。もし答えがバイクやスケボーだったらどうするんだ。まだ乗り物全部を候補から消しはするなよ」
 一夜が言う。
「ああ、そうか。俺としたことが、危ない危ない、うかつだったぜ」
 俊二が言う。
「一夜、助言禁止」
 私が言う。
「はい」
 一夜が言う。
「それじゃあ、それは乗り物ですか?」
 俊二が言う。
「いいえ」
 季目が言う。
「そうか。なら一輪車でもないな。じゃあ、それにはスイッチがありますか?」
 俊二が言う。なぜ、そこを確かめる。
「はい」
 スイッチがあった!
「それは、衣食住にかかわるものですか?」
「いいえ」
「ふうむ。大体わかったぞ」
 俊二が言う。これで質問は6回したけど、確かに、候補を少しはしぼれているはずだ。
 パッと考えただけで、テレビ、パソコン、自動販売機、傘。大きい物らしいけど、ドローンとかラジコンもありかもしれない。
 でも、物の特定とまではいっていない。俊二はあと3回の質問で、答えを導きだしてしまうのだろうか?
「俺はまだ、ヒントがほしいが」
 一夜が言う。
「わかってる。じゃあ、次の質問だ。それは、仕事に使うものですか?」
「いいえ」
「それは、人のかわりになれるものですか?」
「はい」
 人のかわりになる?
 どんな質問だ。そして答えはなんだ。
「よし、俺は答えがわかったぞ。一夜はどうする?」
 俊二が言う。この自信にあふれた表情は、まさか、本当に答えがわかったというのだろうか。にわかには信じられないが。
「うーん。食べ物じゃなくて、大きい物で、住めなくて、乗り物でもなくて、スイッチがあって、衣食住にかかわっていなくて、仕事には使わず、人がかわりになれるもの。うーん、あ」
 そこで一夜は季目を見た。
「そうか、わかったぞ。答えは自動マージャン卓だ」
 その発想はねえよ。
「おお、それがあったか」
 俊二が感心している。
「違います。というか、私の中では自動マージャン卓は仕事道具に入ると思う」
 季目が言う。
「違うかー」
 一夜がうなだれる。
「なんだか一夜が外すと俺も自信が無くなるな。だが、ここでいこう。なぜならもうこれしか考えられないから。それでは俺が今から、ずばり言い当てる。犯人はー」
 俊二がそこで、右手人差し指の先を自分の額にあてる。当てるのは犯人じゃねえよ。
「マッサージチェアだ!」
「正解」
 季目がうなずいた。うそお。
「ちょ、ちょっと見せて」
 私は季目が書いた答えを見る。本当だ、マッサージチェアって書いてある。信じられない。まさかこれを、俊二が言い当てるとは。
「すごい俊二。本当に言い当てた」
 思わずそう言ってしまう。
「へっへーん。どんなもんだい。じゃあ、次は俺が問題を出す番だな。まずは、答えを先に紙に書いてと。ええと、ヒントは何回まで教えていいんだっけ」
 俊二が言う。
「8回だよ。俊二が8回で答えたから」
 季目が言う。8回か。一夜の時より一回分難しくなったな。まあ、答えが簡単ならまた3回程度で済むだろうけど。
 俊二はうなずく。
「わかった。じゃあ俺は8回まで、はいかいいえで答える。今から、ゲームスタートだ。さあ、季目、どっからでも質問してこい!」
 こうして、今度は私達があてる番となった。
「どれどれ、答えは何かな?」
 そこで一夜が俊二の答えを見る。まあ、それはいいだろう。要は、私か季目が答えをあてればいいのだ。
 それでは、早速質問タイムだ。
「じゃあ、それは食べ物、または飲み物ですか?」
 季目がまず、手堅く候補をしぼっていく。
「いいえ」
「それは、手で持って使うものですか?」
「はい」
 おお。これで、かなり答えの幅が狭まったのでは?
「それは、毎日使うものですか?」
「はい」
「それは、皆持っていますか?」
「いいえ」
「それは、常に持ち歩くものですか?」
「いいえ」
「それは、見た目を変えるものですか?」
「いいえ」
 季目がここで考える。けどすぐにまた訊く。
「それは薬、または薬用品ですか?」
「いいえ」
「それは普段家の中にあるものですか?」
「はい。さて、これで8回ヒントを言ったな。それじゃあ季目、清美。ここで答えを言ってみたまえ」
 俊二が偉そうに言う。くっ、少しむかつくが、すぐに言い返せない。
 ヒントは全部で8つ。
 それは食べ物ではない。
 手で持って使う。
 毎日使う。
 しかし皆持っているわけではない。
 常に持ち歩くものではない。
 それで見た目は変わらない。
 それは薬、もしくは薬用品ではない。
 それは普段家の中にあるもの。
 これらの要素を合わせもった物とは。
 うーん。
「私は、新聞」
 ここで、私より先に季目が答えた。
 おお、新聞紙。なるほど。それがあったか。
「ぶー。残念はずれー!」
 けれど俊二がうざくなった。
「いえーい!」
 一夜も態度が悪い。
 ならば、ここは私がかれいに当てるしかないだろう。
 ええと、ええと、うーん、あ、そうだ!
「答えは包丁!」
 どうだ!
 すると。
「いえーい!」
 一夜と俊二が喜んでハイタッチする。この反応は、もしや、まさか。
「ざんねーん正解はコンタクトレンズでしたー!」
 このうれしそうな俊二の顔を、私は見たくなかった。
「コンタクトレンズを、持ち歩かないっていうのは?」
 私が、ここで悔し紛れに言う。
「目につけてるなら、持ってはいないだろ」
「じゃあ、普段家の中にあるっていうのは?」
「使わない時は、大抵家の中にあるだろ。使用者だって家に長くいることもあるし。俺は間違ったことは言っていない!」
「まあ、間違っては、ないけど」
 ちょっと、文句をつけたい内容だった。まあ、はいかいいえだけで答えるんだから、難しいところもあるか。マリトッツォも六文字っぽくないし。
 けどこれで、本当に残念ながら、私と季目も、明日幽霊館に行くことになってしまった。それがゲームに負けた私達の定めだ。が、くやしい。
「よーし、それじゃあ俺が勝ったんだから、皆で肝試ししようぜー」
 俊二がうれしそうに言う。
「う、うん」
 季目が表情をくもらせながら言う。
「そうか。季目も行くのか。なら、絶対俺も行くぞ!」
 一夢も今からやる気をみなぎらせている。
 はあもう、仕方ない。こうなったら肝試しなんてさくっと終わらせて、その後のパーティーを楽しむとしよう。うん、明日の予定はそうなった。
「それじゃあ、ここで勉強に戻ろう」
 私が言う。
「えー」
 男三人から嫌そうな声があがった。
「明日の予定はちゃんと決まったし、後は勉強をちゃんとしないと」
 季目が言う。
「うん。そうだな!」
 一夜がすぐに賛同した。
「仕方ねえ、騒ぐ前にもう一苦行するか」
 俊二が言う。
「ふっふっふ。明日が楽しみだぜ。マイカメラの出番だ!」
 一夜がまだにやついている。
 こうして、私達はまた、勉強に戻った。
 肝試しのことは、ゲームに負けたくやしさと共に一旦忘れておこう。
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