5 / 14
5お前、強くなりたくないか?
しおりを挟む
駆けつけてみると、ヨワイモが体を鳥モンスターにつつかれているところだった。
「(痛い、痛いー!)イモー、イモー!」
「(む、敵ー!)ヒュイー!」
鳥はこっちを向いて警戒している。なら俺も、ここで会った敵モンスターを倒さないとな。
「(くらえ、エレキ射出ー!)エーレー、キュー!」
まずは先制攻撃だ。鳥は距離をとられたら技が当たらなくなる。最初から攻めの姿勢でいこう。
「(ぎゃー!)ヒュイーン!」
すると鳥は、エレキ射出を一発くらって倒れた。あれ、もしかして一撃?
あの鳥弱っ。いや、俺が強くなったのか?
そういえば、アカトカゲ6体を倒してかなりレベルアップしたからな。気がつかない内に、鳥モンスターなら一撃で倒せるくらいに成長していたのかもしれない。それかもしくは、先に鳥がある程度ダメージを負っていたか。
まあ、どっちでもいい。とにかく今は、倒せて良かった。
「大丈夫、ポット!」
ここで、リシェスも来た。うん、急にとびだしちゃってすまなかったけど、無事についてきてくれてありがとう。
「(うう、逃げなきゃ、逃げなきゃー)イモー、イモー」
そして助けたヨワイモは、俺に背を向けてピョンピョンとびはね、また逃げようとしている。見ていて少し痛々しい。
うーん。このまま見逃してもいいけど、それだとまた別の敵にやられて、助けた意味がなくなってしまう可能性もある。
なら、ここは一度声をかけてみようか。幸いリシェスは、回復魔法が使えるんだし。
「(お前、強くなりたくないか?)エレ、エレエレキュー?」
「(へえ?)イモ?」
ヨワイモはビクンとふるえて、ゆっくり俺を見た。
ヨワイモの目には、涙がたまっている。
「(敵と会ったらすぐに逃げて、逃げて、逃げての繰り返し。本当にそれでいいのか。こっちはおそわれてるんだ。なら立ち向かって、返り討ちにした方が、スッキリしないか?)エレ、エレエレ、エレッキュ、エレエレエレッキュー?」
俺の言葉は、しっかりとヨワイモの耳に届いていた。ヨワイモは少しうつむいて、けどすぐに俺を見て、言う。
「(で、でも、ボク、弱いし。怖いし。逃げ出したいし、勝てる気がしないし)イモ、イモイモイモ、イモ、イモイモ、モ」
「(だから、強くなりたくないかって訊いてるんだよ)エレエレー、エレッキュー」
戦いは、強い方が勝って、弱い方が負ける。なら逃げるってのも手の内だ。
けど、最初から逃げるしか選択肢がないというのは、流石に生きづらいだろう。森の中にはおそってくるモンスターがいっぱいいる。だったら、戦うにしても逃げ切るにしても、少なくとも生き延びられるくらい実力がないと、ただ辛いだけだ。そんなのは嫌だ。例えその人生が、俺以外のものでも。
だから、俺は手を差し伸べる。きっとリシェスも、わかってくれる。
「(きっと、俺達と一緒なら、強くなれる。戦える。そして、勝てる。そうしたらお前も、もう逃げなくて済むだろう。なら、そっちの方が良いじゃないか。少なくとも俺は、そう思う。どうだ、お前もそう思わないか。俺はお前を狙わない。そして、一緒に強くなろう。危なくなったら助け合って、そうやって成長していこう。どうだ、この話に、のらないか?)エレキュー?」
「(ボクは、ボクは)イモ、イモ」
ヨワイモは少しの間また下を見ていたけど、やがて俺と向き合って、言った。
「(ボクも、強くなりたい。もう、逃げなくてもいいように。ボクが強くなれるなんて、今も全く思えないけど、けどもしなれるとしたら、なりたい。強く、なりたい!)イモ、イモイモ、イモ、イモ!」
おお、良い返事だ。やっぱり、このヨワイモも本当は勝ちたいんだな。敵を倒せるくらい、強くなりたいんだな。
いいだろう。それを俺が、手助けしてやる。
「(よし、じゃあ決まりだな。来い、ヨワイモ。まずは俺のモンスターテイマーに挨拶だ。彼女、リシェスはやさしい子だ。きっと、お前も快く迎え入れてくれる)エレッキュ、エレッキュエレッキュ、エレキュー」
「(ほ、ほんと?)イ、イモ?」
おそるおそるといった具合に、ヨワイモが俺の隣まで来る。それを確かめた俺は、リシェスを見た。
「(お願い。ボクを、強くして!)イモ、イモ!」
「(俺からも頼む、リシェス。このヨワイモを、俺達の仲間に加えようぜ)エレエレキュー」
「ポット、そのヨワイモと仲良くなったの?」
「(ああ、そうだ)エレキュー」
俺はうなずき、リシェスの前でヨワイモの体をぽんぽんと軽く叩く。リシェスはそれを見て、うなずいた。
「わかった。そのヨワイモを、仲間にしたいのね。ポットがそう望むなら、私も歓迎する。さあ、ヨワイモ。私達と一緒にくるなら、今から私達は仲間よ。一緒にがんばりましょう!」
「(よろしくお願いします!)イモモイモー!」
こうして、ヨワイモが仲間になった。
「さて、それじゃあまずはヨワイモの体を回復させなきゃ。小回復」
リシェスの魔法で、ヨワイモの体が治っていく。するとヨワイモは、驚いた。
「(痛いのがとんでいく。すごい!)イモイモー!」
そう言ってヨワイモは、その場でピョンピョンはねる。俺はうなずいた。
「(ああ、そうさ。リシェスは回復師なんだ。今度からは傷なんて、どれだけ受けてもへっちゃらだ。といっても、ダメージの受けすぎには注意だけどな)エレエレエレッキュー」
「(凄い、凄い、仲間、ありがとう!)イモイモイモー!」
「ポットは、ケガしてないわよね。それじゃあ、後は、ヨワイモに、名前をつけてあげなくちゃね。うーん」
リシェスはその場で考え込む。頼むから、グッドな名前にしてやってくれよ。俺の名前はこのままでいいからさ。
「よし、決めた。あなたの名前はカップ。カップに決まり!」
「(へ?)イモ?」
おおう、これはなんともまあ、どんどん食卓に出てくる物の名前で決まってくぞ。
まあ、リシェスは得意げにしてるから、いいか。本当にいいか?
細かいことは気にしないでおこう。いや、名前は細かいことじゃないか。まあ、気にしないでいこう。いずれ自然としっくりくるようになるさ。
「(とにかく、これからよろしくな、カップ)エレエレッキュ」
「(か、カップって、ボクのこと、え、えー!)イモ、イモイモー!」
うん。カップも喜んでいるみたいだ。良かった良かった。
その後俺達は、また薬草採取に戻った。ちょっと歩いたら、すぐに二つ薬草を見つけた。
「よし、これで薬草5つ、集められた!」
リシェスがそう言って5つ目の薬草の前に来た時、薬草のすぐ隣から、大きなミミズが現れた。土の中から出てきたのだ。
「(敵だー!)ミーミー!」
「きゃあー!」
リシェスがしりもちをつく。危ない、リシェス!
「(くらえ、エレキ射出ー!)エーレー、キュー!」
よし、命中。やったか!
「(なんだそれはー!)ミーミーミー!」
な、そんな。ミミズはまだ元気だ。全然痛がる様子がない。
まさか、エレキ射出が効いていない?
「ダメよ、ポット。土ミミズは土属性。電気属性の攻撃は効かないの!」
リシェスがそう言いながら敵から遠ざかる。そうか、モンスターには相性もあるのか!
「(ボ、ボクも戦う、たいあたりー!)イモモー!」
カップもすかさず攻撃。するとカップとミミズがぶつかりあって、ミミズの注意がカップへと集中する。
「(いてえ、よくもやってくれたなー!)ミミミー!」
今度はミミズがカップへたいあたり。それでカップがふきとばされた。
「(うわー!)イモー!」
「カップ、危ない、小回復!」
リシェスは立ち上がりつつ、カップを回復。すると、カップは強気になった。
「(もう、痛くない。これなら、まだやれる!)イモイモー!」
「(なら俺も、鳴き声!)」
俺はすぐに敵への攻撃に備え、鳴き声を使う。そしてカップはすぐにまた、ミミズへととびかかる。
「(くらえ、たいあたりー!)イモモー!」
「(何をお、たいあたりー!)ミミズー!」
泥臭いまでの、たいあたりとたいあたりのぶつかりあい。両者交互にぶつかりあって、互いに体力を削り合う。
見た感じ、実力はミミズの方が上なのだろう。だが、カップにはリシェスがついている。敵の攻撃を受ける度に使われる小回復が、カップを勝利へと導いていた。
「(たいあたりー!)イモモー!」
「(たいあたりー!)ミミズー!」
「小回復!」
「(たいあたりー!)イモモー!」
「(たいあたりー!)ミミズー!」
「小回復!」
カップはまだまだ元気だ。一方ミミズの方は、だんだん弱っていく。
これは、ひょっとすると、俺の出番はもういらないかもしれないな。
きっとカップは、生まれて初めてこんな激戦をする。これを一人のダメージ量でくぐりぬけられたら、それはきっと大きな自信になるはずだ。
よし、ここは俺は、応援をするぞ!
「(カップ、ここでお前一人がその敵を倒したら、それは自信に変わる。ピンチになったら俺も手を出すから、それまでは一人で戦うんだ。そして、自分の力で勝つんだ!)エレ、エレエレエレキュー!」
「(うおお、ボクは、ボクには、仲間がいる。もう逃げるだけじゃない。戦えるんだ、たいあたりー!)イモイモイモ、イモー!」
何度目かのたいあたりで、ミミズが大きくよろめく。
「(ぐおお、く、こんなやつらに、たいあたり!)ミ、ミミミズー!」
しかしミミズも苦し紛れのたいあたりをかましてきて、カップがまたふきとんだ。でもあともう一度カップがたいあたりを使ったら、きっとこいつに勝てるぞ!
「く、カップ、もう魔力が切れて、回復できない。お願い、耐えて!」
そこで、リシェスがくやしそうに叫んだ。すると、カップの勢いがみるみる消えた。
カップの戦意が簡単に喪失して、今、あろうことか敵の目の前で迷っている。
「(こ、このまままた攻撃を受けたら、今度こそやられちゃう。嫌だ、そんなの嫌だよ。ボク、死にたくない!)イモ、イモー!」
「(チャーンス!)ミミズー!」
あ、いけない。ミミズがカップの隙をついてきた!
「(カップ、戦えー!)エレキュー!」
俺は叫びながら、カップの元へ駆けつける。
「(おらー、たいあたりー!)ミミミー!」
「(う、うわあー!)イ、イモー!」
ミミズのたいあたりが、傷ついたカップをおそう!
だったら俺が、その間に入ってやる!
どかーん!
俺の体は、ミミズのたいあたりを受けてふきとんだ。
けどそのおかげで、ミミズの攻撃は止まった。
よし、今がチャンスだ!
「(ポ、ポットー!)イモイモー!」
カップは今、俺の方を見てしまっているけど、カップ。今見るべきは、俺じゃない。敵だ!
「(カップ、たいあたりだ、決めろっ。それで、勝ちだー!)エレエレキュー!」
俺はカップを激励する。するとカップの瞳の中で、やる気が高まった。
「(ポット、ありがとう。ボク、やるよ、戦う。ボクも、最後まで戦う!)イモ、イモイモー!」
カップが再び走り出す。そして、すぐさまミミズにぶつかる!
「(うおおー、たいあたりー!)イモイモー!」
「(うおお、こんな、バカなー!)ミミーズー!」
すると、その一撃で、ミミズが倒れた。
「(やったな、カップ!)エッレキュー!」
「やった、土ミミズを倒したよ、あれ?」
俺とリシェスが喜ぶ。するとカップは、俺とリシェスの前で、虹色に光り始めた。
その光は、すぐに消える。そのかわりに、カップは、今までと違う姿へと変わった。
緑色の芋から、赤紫色の体へ。
少し、いや大分、大きくなったか。もうその見た目はただの芋じゃない。特大芋だ。
そして何より、ピョンピョンとびはねるだけだった体は今、ずっと空中に浮いていた。
これは、なんだ。どういうことだ。カップの身に、何が起こったんだ?
「ひょっとして、変態?」
リシェスが言う。
「(え、モンスターって変態するの!)エ、エレッキュウー!」
なんてこった。まさか、モンスターにこんな秘密が隠されていたとは。
というか、これ進化だよな。早っ。
「(やった、やったよ、ボク、強くなれた!)イモ、イモイモイモー!」
新しい姿に生まれ変わったカップは、喜んでいる。
「あれは、カルイモ。ヨワイモの、速度特化変態」
へえ。更に速くなったのか、あいつ。なら、この先、頼もしく活躍してくれそうだな。
カップの勝利と同時に、変態か。これは凄い。凄い良い展開だ。
「(おめでとう、カップ)エレ、エレキュー」
「(ありがとう、ポット、リシェス。ボクだって戦える。ボクだって勝てる。うおお、ボク、やるぞー!)イモ、イモイモイモ、イモー!」
こうして、リシェスの二体目のテイムモンスターは、テイムして早々に変態したのだった。
カップの勝利&変態にはしゃいだ後。
「よいしょっと。よし、この土ミミズ、まだ息がある。きっと回復したら、良い土を生むに違いないわ」
なんと薬草五個目を採取し終えたリシェスが、倒したミミズを抱きしめ始めた。俺としては、これも衝撃的な展開だ。
「(え、リシェスそれ、持って帰るの?)エレ、エレエレーキュ?」
「(え、何々、どういうこと?)イモモイモイモ?」
「ポット、カップ。土ミミズはね、食べて排泄した土を、すっごく良い土に変えるの。持って帰れば良質な肥料がわりとして、ちょっと良い値段で買い取ってもらえるわ。それできっと、カップの首輪代が手に入る。これはとってもラッキーな獲物よ。でかした、ありがとうカップ!」
リシェスはそう、うれしそうに説明してくれた。
そう、お金になるならいいけど。でも、薬草だけじゃ足らないのか?
倒した後とはいえ大きなミミズを持たれるのは、ちょっと心配だ。
「(ボク、ボクがんばった!)イモ、イモ!」
「それと、ポットも最後のカップをかばった姿、とってもかっこよかった。ありがとうね、ポット!」
「(うん。まあ大したことなかったぜ)エレエレッキュ」
たいあたり一回くらいは耐えられる自信があったからな。それよりも、あの後カップがすぐにミミズを倒せたのが良かった。
「さあ、それじゃあ帰ろう、皆!」
「(おー)エレー」
「(うん!)イモ!」
それじゃあ、後は帰り道のリシェスの護衛だけだな。
思わぬ収入も手に入ったみたいだし、テイマー初日は成功といっていいのではないだろうか。
「(あ、敵だー!)イモモー!」
村の入り口まで戻って来ると、そこにいた門番の男を見て、カップが警戒心をあらわにした。
いやいや、敵じゃない。カップ。人を見てそう思うのは、とっても危険だぞ。悪いやつは注意しないといけないが、あの人は良い人だ。
「(おちつけ、カップ。あの人は敵じゃない。仲間、みたいなものだ)エレッキュ、エレッキュ」
慌ててカップに説明する。するとカップは、まだよくわからなさそうに首をかしげた。
「(仲間、みたいなもの?)イモ?」
「(リシェス達人間は、皆で支え合って生きているんだ。あの人はただ、俺達以外の危険なモンスターが村の中に入らないように見張っているだけだ。だから、俺達は安心してここを通れる。あの人は、俺達の仲間みたいなものなんだ)エレッキュエレキュー」
「(本当?)イモ?」
「(ああ、本当だとも。村の中にも人はたくさんいるから、全然気にしなくていいぞ。けど、その人達に悪さはするなよ。もしそんなことをしたら、リシェスに迷惑がかかるからな)エレキューキュー、エレキュー」
「(わ、わかった。皆、仲間みたいなもの、なんだ)イモ、イモー」
カップがそわそわしていると、門番がカップに目を止める。
「お帰り、リシェス。その土ミミズは見事にぐったりしているが、しかしこっちのカルイモは、どうしたんだ?」
「ただいま、ハースンさん。このカルイモはですね、カップって言って、私の新しい仲間なんです。早くテイムモンスター用の首輪をつけてあげないと!」
ああ、そうか。カップにも首輪が必要なんだな。首輪、首輪?
イモの体に、首輪がつけられるのか?
いや、でも首輪が必要なら、つけるしかないだろう。大丈夫、きっとなんとかなる。そう信じよう。
とにかく、ハースンはリシェスの言葉に、うなずいた。
「なんだ、そうなのか。しかし、エレキュウをつれてきたと思ったら今度はカルイモか。凄いな、リシェスは。こんなこと初めてだ」
「えへへ、二人共とっても良い子なんです!」
そんな感じで門番とカップの面通りも済み、俺達は村の中に戻る。
そして畑で土ミミズをお金に変えたリシェスは、次にギルドに戻り、薬草を納品した後、カップの名前をテイムモンスター届けの書類に加える。
そこですぐに買った首輪をカップにつけて、リシェスは笑顔になった。
「はい、カップ。首輪、とっても似合ってるわ!」
「(わーい、わーい!)イーモ、イーモ!」
カップは喜んでいる。良いことだ。リシェスもそれを見て喜んでいる。俺の時も、もっと喜んでおけば良かったか?
カップの首輪は、どっちかっていうと腹にベルトを巻いてる感じだ。なんだかんだ似合っている。一目見て野生のモンスターとは思えないし、きっと皆そんなに警戒しないだろう。
「(ポットとおそろいだー!)イモモー!」
「(まあ、そういう見方もあるな)エレーキュー」
「よし、それじゃあまだ時間もあるし、一度ご飯を食べた後、また森に行って新しい依頼をこなすわよ。今度の依頼は、ファイト花を8つ納品。がんばろうね!」
「(おー!)エレー!」
「(おー!)イモー!」
また納品か。けど、薬草じゃないってことは、その分難しいのかな。とにかく、まずは飯だ。食べよう。
そして俺達が来た場所は、八百屋。リシェスは俺がスープを食べることを知っているが、カップのことはまだ知らない。なので、きっと食べるなら野菜か果物がいいだろうとの判断だ。それに俺も野菜か果物でいい。
「皆の食べ物って、きっと野菜とか、果物でいいよね。もし生肉とかだったら、嫌だけど」
安心しろ、リシェス。俺も流石に生肉はパスした。
けど、カップはどうなんだろう。これで肉食とか言われたら嫌だな。なんにしろ、ここではっきりしておかなければ。
「(カップはどうだ、今まで何食べてきたんだ?)エレエレキュー?」
「(ボクは、そのへんの草食べて生きてきた)イモイモイモ」
おおう、ワイルド。やっぱり野生って過酷だよな。俺は木の実を見つけられただけマシだったようだ。
「(安心しろ、カップ。リシェスはもっと良い物食べさせてくれるぞ)エレエレッキュ」
俺はそう言って、カップと共にリシェスの足元で待機。それを見たリシェスは、八百屋の人に声をかけた。
「あの、すみませーん。お野菜手に取っても良いですかー?」
「ああ、いいよ。どれも新鮮だよ」
「はーい。じゃあ、まずは、トットトトマトからいこうかな」
リシェスはそう言って、ミニトマトを手に取って俺達に見せた。
「はい、ポット、カップ。これは、食べられそう?」
「(何それ、凄く美味しそう!)イモイモー!」
カップが目を輝かせている。俺も、トマトくらいならいけそうかな。ピーマンとかナスの生はちょっとパスかな。
「(俺も、それで良い)エッレッキュ」
リシェスに親指を見せる。
「ふふ、ポットもカップも、凄く喜んでる。良かった、じゃあトットトトマトはオーケーそうね。それじゃあ次はー」
今度はリシェスは、黄色い実を俺達に見せた。
「はい、キキンカン。どう、食べられそう?」
「(わあ、それも凄く美味しそうー!)イモイモー!」
「(俺も、たぶん大丈夫だ)エッレッキュ」
リシェスに親指を見せる。たぶんこれ、キンカンだよな。初めて食べるけど、きっとおいしいよな?
「よし、それじゃあ決まりね。お姉さーん、トットトトマトとキキンカンをくださーい!」
「はーい。量はどのくらいにする?」
「両方二百グラムルずつください」
「わかったよ。まあ、そのモンスター達は、安全な子達なのかい?」
「はい。私のテイムモンスターなんです。まだ仲間にしたばかりで、何を食べるか分からなくて、まずはトットトトマトとキキンカンをあげてみようと思って」
「(そうなんだよ。よろしく)エレッキュ」
「(よろしく!)イモ!」
俺とカップが声をかけたら、八百屋の人はニッコリ笑顔となった。
「あら、そうなのかい。じゃあ、サービスしとくよ。どっちも二十グラムルずつおまけしておくから」
「いいんですか、ありがとうございます!」
リシェスはお金を払い、商品が入った二つの紙袋を受け取る。そして次にパン屋に行って、ナッツパンを1つ買うと、一度ギルドに戻り、料理屋スペースで俺達にごはんをくれた。
「はい、二人ともー。まずは、トットトトマトだよー」
うん、見たまんまトマトだ。甘かったら良いな。
「(ありがとう、リシェス。いただきまーす)エッレキュー」
リシェスの手から受け取る。俺は一つずつ両手でいただいて、カップはそのまま口で食べ始める。
「(ぱくぱく、美味しい、これ美味しいよー!)イモ、イモー!」
「(うん。ちょっとくせと甘みが強い、トマトだな)エッレキュー」
俺もカップも、美味しい物を食べれて喜ぶ。すると、リシェスも笑顔になる。
「良かった。ポットもカップも、喜んでるみたい。それじゃあ、パンも、食べる?」
「(んー、くんくん。それはいらない)イモー」
「(俺も、パンはいいや)エッレッキュー」
流石に、パンを一つしか買ってないところを見ているので、俺は遠慮する。ごはんが果物だけっていうのもなんだか偏ってる気がするけど、まあモンスターだし問題ないだろう。
だから、そのパンはリシェスが食べてくれ。
「そう。今度からも、野菜か果物をあげていれば良さそうね。ポット、カップ。これ食べたら、また頑張ろう!」
俺達にそう言って、リシェスもナッツパンを食べる。俺は肉系もたまに食べたくなるけど、まあ、モンスターだし、選り好みできないよな。ベジタリアンで満足だ。
ごはんを終えたら次は依頼。さあ、がんばるぞー。
午後からはファイト花の採取依頼だ。俺達は、北の森へと向かった。
「(敵だー!)テリー!」
「(敵だー!)アオー!」
すると、森に入ってすぐに、アーモンドモンスターと青い亀と戦った。リシェスの知識によると、アーモンドモンスターはミステリーシード。亀モンスターはアオタートルと呼ぶらしい。
現れる敵はどれもすぐ倒せるが、それは俺のレベルが上がっているからというだけではない。カップの攻撃もあるからだ。やっぱり仲間がいると凄く戦いやすいな。頼もしいともいう。
しかし、心なしか、西より北の方がモンスターが多い気がする。ひょっとしたら、長い間北の森にいるのは危険かもしれない。カップとリシェスがいてくれるから、大変さは半減しているけど、体力の消耗具合にも注意しておかないとまずそうだ。
「やった、ファイト花二つ目。この調子でいこうね、ポット、カップ!」
リシェスが笑顔で、二つ目のファイト花を採取する。
「(そうだな。あと六つか)エレッキュ」
「(よくわからないけど、リシェスがうれしいならボクもうれしい!)イモイモモー!」
ファイト花は、オレンジ色と白色の二色の、大きな花だった。なかなか見つからなかったが、特徴的な形なのでかなり見つけやすい。
この調子で、どんどん集めよう。最低でも、日が暮れる前には帰らないとな。
よーし、この勢いでどんどん見つけるぞー。
「(痛い、痛いー!)イモー、イモー!」
「(む、敵ー!)ヒュイー!」
鳥はこっちを向いて警戒している。なら俺も、ここで会った敵モンスターを倒さないとな。
「(くらえ、エレキ射出ー!)エーレー、キュー!」
まずは先制攻撃だ。鳥は距離をとられたら技が当たらなくなる。最初から攻めの姿勢でいこう。
「(ぎゃー!)ヒュイーン!」
すると鳥は、エレキ射出を一発くらって倒れた。あれ、もしかして一撃?
あの鳥弱っ。いや、俺が強くなったのか?
そういえば、アカトカゲ6体を倒してかなりレベルアップしたからな。気がつかない内に、鳥モンスターなら一撃で倒せるくらいに成長していたのかもしれない。それかもしくは、先に鳥がある程度ダメージを負っていたか。
まあ、どっちでもいい。とにかく今は、倒せて良かった。
「大丈夫、ポット!」
ここで、リシェスも来た。うん、急にとびだしちゃってすまなかったけど、無事についてきてくれてありがとう。
「(うう、逃げなきゃ、逃げなきゃー)イモー、イモー」
そして助けたヨワイモは、俺に背を向けてピョンピョンとびはね、また逃げようとしている。見ていて少し痛々しい。
うーん。このまま見逃してもいいけど、それだとまた別の敵にやられて、助けた意味がなくなってしまう可能性もある。
なら、ここは一度声をかけてみようか。幸いリシェスは、回復魔法が使えるんだし。
「(お前、強くなりたくないか?)エレ、エレエレキュー?」
「(へえ?)イモ?」
ヨワイモはビクンとふるえて、ゆっくり俺を見た。
ヨワイモの目には、涙がたまっている。
「(敵と会ったらすぐに逃げて、逃げて、逃げての繰り返し。本当にそれでいいのか。こっちはおそわれてるんだ。なら立ち向かって、返り討ちにした方が、スッキリしないか?)エレ、エレエレ、エレッキュ、エレエレエレッキュー?」
俺の言葉は、しっかりとヨワイモの耳に届いていた。ヨワイモは少しうつむいて、けどすぐに俺を見て、言う。
「(で、でも、ボク、弱いし。怖いし。逃げ出したいし、勝てる気がしないし)イモ、イモイモイモ、イモ、イモイモ、モ」
「(だから、強くなりたくないかって訊いてるんだよ)エレエレー、エレッキュー」
戦いは、強い方が勝って、弱い方が負ける。なら逃げるってのも手の内だ。
けど、最初から逃げるしか選択肢がないというのは、流石に生きづらいだろう。森の中にはおそってくるモンスターがいっぱいいる。だったら、戦うにしても逃げ切るにしても、少なくとも生き延びられるくらい実力がないと、ただ辛いだけだ。そんなのは嫌だ。例えその人生が、俺以外のものでも。
だから、俺は手を差し伸べる。きっとリシェスも、わかってくれる。
「(きっと、俺達と一緒なら、強くなれる。戦える。そして、勝てる。そうしたらお前も、もう逃げなくて済むだろう。なら、そっちの方が良いじゃないか。少なくとも俺は、そう思う。どうだ、お前もそう思わないか。俺はお前を狙わない。そして、一緒に強くなろう。危なくなったら助け合って、そうやって成長していこう。どうだ、この話に、のらないか?)エレキュー?」
「(ボクは、ボクは)イモ、イモ」
ヨワイモは少しの間また下を見ていたけど、やがて俺と向き合って、言った。
「(ボクも、強くなりたい。もう、逃げなくてもいいように。ボクが強くなれるなんて、今も全く思えないけど、けどもしなれるとしたら、なりたい。強く、なりたい!)イモ、イモイモ、イモ、イモ!」
おお、良い返事だ。やっぱり、このヨワイモも本当は勝ちたいんだな。敵を倒せるくらい、強くなりたいんだな。
いいだろう。それを俺が、手助けしてやる。
「(よし、じゃあ決まりだな。来い、ヨワイモ。まずは俺のモンスターテイマーに挨拶だ。彼女、リシェスはやさしい子だ。きっと、お前も快く迎え入れてくれる)エレッキュ、エレッキュエレッキュ、エレキュー」
「(ほ、ほんと?)イ、イモ?」
おそるおそるといった具合に、ヨワイモが俺の隣まで来る。それを確かめた俺は、リシェスを見た。
「(お願い。ボクを、強くして!)イモ、イモ!」
「(俺からも頼む、リシェス。このヨワイモを、俺達の仲間に加えようぜ)エレエレキュー」
「ポット、そのヨワイモと仲良くなったの?」
「(ああ、そうだ)エレキュー」
俺はうなずき、リシェスの前でヨワイモの体をぽんぽんと軽く叩く。リシェスはそれを見て、うなずいた。
「わかった。そのヨワイモを、仲間にしたいのね。ポットがそう望むなら、私も歓迎する。さあ、ヨワイモ。私達と一緒にくるなら、今から私達は仲間よ。一緒にがんばりましょう!」
「(よろしくお願いします!)イモモイモー!」
こうして、ヨワイモが仲間になった。
「さて、それじゃあまずはヨワイモの体を回復させなきゃ。小回復」
リシェスの魔法で、ヨワイモの体が治っていく。するとヨワイモは、驚いた。
「(痛いのがとんでいく。すごい!)イモイモー!」
そう言ってヨワイモは、その場でピョンピョンはねる。俺はうなずいた。
「(ああ、そうさ。リシェスは回復師なんだ。今度からは傷なんて、どれだけ受けてもへっちゃらだ。といっても、ダメージの受けすぎには注意だけどな)エレエレエレッキュー」
「(凄い、凄い、仲間、ありがとう!)イモイモイモー!」
「ポットは、ケガしてないわよね。それじゃあ、後は、ヨワイモに、名前をつけてあげなくちゃね。うーん」
リシェスはその場で考え込む。頼むから、グッドな名前にしてやってくれよ。俺の名前はこのままでいいからさ。
「よし、決めた。あなたの名前はカップ。カップに決まり!」
「(へ?)イモ?」
おおう、これはなんともまあ、どんどん食卓に出てくる物の名前で決まってくぞ。
まあ、リシェスは得意げにしてるから、いいか。本当にいいか?
細かいことは気にしないでおこう。いや、名前は細かいことじゃないか。まあ、気にしないでいこう。いずれ自然としっくりくるようになるさ。
「(とにかく、これからよろしくな、カップ)エレエレッキュ」
「(か、カップって、ボクのこと、え、えー!)イモ、イモイモー!」
うん。カップも喜んでいるみたいだ。良かった良かった。
その後俺達は、また薬草採取に戻った。ちょっと歩いたら、すぐに二つ薬草を見つけた。
「よし、これで薬草5つ、集められた!」
リシェスがそう言って5つ目の薬草の前に来た時、薬草のすぐ隣から、大きなミミズが現れた。土の中から出てきたのだ。
「(敵だー!)ミーミー!」
「きゃあー!」
リシェスがしりもちをつく。危ない、リシェス!
「(くらえ、エレキ射出ー!)エーレー、キュー!」
よし、命中。やったか!
「(なんだそれはー!)ミーミーミー!」
な、そんな。ミミズはまだ元気だ。全然痛がる様子がない。
まさか、エレキ射出が効いていない?
「ダメよ、ポット。土ミミズは土属性。電気属性の攻撃は効かないの!」
リシェスがそう言いながら敵から遠ざかる。そうか、モンスターには相性もあるのか!
「(ボ、ボクも戦う、たいあたりー!)イモモー!」
カップもすかさず攻撃。するとカップとミミズがぶつかりあって、ミミズの注意がカップへと集中する。
「(いてえ、よくもやってくれたなー!)ミミミー!」
今度はミミズがカップへたいあたり。それでカップがふきとばされた。
「(うわー!)イモー!」
「カップ、危ない、小回復!」
リシェスは立ち上がりつつ、カップを回復。すると、カップは強気になった。
「(もう、痛くない。これなら、まだやれる!)イモイモー!」
「(なら俺も、鳴き声!)」
俺はすぐに敵への攻撃に備え、鳴き声を使う。そしてカップはすぐにまた、ミミズへととびかかる。
「(くらえ、たいあたりー!)イモモー!」
「(何をお、たいあたりー!)ミミズー!」
泥臭いまでの、たいあたりとたいあたりのぶつかりあい。両者交互にぶつかりあって、互いに体力を削り合う。
見た感じ、実力はミミズの方が上なのだろう。だが、カップにはリシェスがついている。敵の攻撃を受ける度に使われる小回復が、カップを勝利へと導いていた。
「(たいあたりー!)イモモー!」
「(たいあたりー!)ミミズー!」
「小回復!」
「(たいあたりー!)イモモー!」
「(たいあたりー!)ミミズー!」
「小回復!」
カップはまだまだ元気だ。一方ミミズの方は、だんだん弱っていく。
これは、ひょっとすると、俺の出番はもういらないかもしれないな。
きっとカップは、生まれて初めてこんな激戦をする。これを一人のダメージ量でくぐりぬけられたら、それはきっと大きな自信になるはずだ。
よし、ここは俺は、応援をするぞ!
「(カップ、ここでお前一人がその敵を倒したら、それは自信に変わる。ピンチになったら俺も手を出すから、それまでは一人で戦うんだ。そして、自分の力で勝つんだ!)エレ、エレエレエレキュー!」
「(うおお、ボクは、ボクには、仲間がいる。もう逃げるだけじゃない。戦えるんだ、たいあたりー!)イモイモイモ、イモー!」
何度目かのたいあたりで、ミミズが大きくよろめく。
「(ぐおお、く、こんなやつらに、たいあたり!)ミ、ミミミズー!」
しかしミミズも苦し紛れのたいあたりをかましてきて、カップがまたふきとんだ。でもあともう一度カップがたいあたりを使ったら、きっとこいつに勝てるぞ!
「く、カップ、もう魔力が切れて、回復できない。お願い、耐えて!」
そこで、リシェスがくやしそうに叫んだ。すると、カップの勢いがみるみる消えた。
カップの戦意が簡単に喪失して、今、あろうことか敵の目の前で迷っている。
「(こ、このまままた攻撃を受けたら、今度こそやられちゃう。嫌だ、そんなの嫌だよ。ボク、死にたくない!)イモ、イモー!」
「(チャーンス!)ミミズー!」
あ、いけない。ミミズがカップの隙をついてきた!
「(カップ、戦えー!)エレキュー!」
俺は叫びながら、カップの元へ駆けつける。
「(おらー、たいあたりー!)ミミミー!」
「(う、うわあー!)イ、イモー!」
ミミズのたいあたりが、傷ついたカップをおそう!
だったら俺が、その間に入ってやる!
どかーん!
俺の体は、ミミズのたいあたりを受けてふきとんだ。
けどそのおかげで、ミミズの攻撃は止まった。
よし、今がチャンスだ!
「(ポ、ポットー!)イモイモー!」
カップは今、俺の方を見てしまっているけど、カップ。今見るべきは、俺じゃない。敵だ!
「(カップ、たいあたりだ、決めろっ。それで、勝ちだー!)エレエレキュー!」
俺はカップを激励する。するとカップの瞳の中で、やる気が高まった。
「(ポット、ありがとう。ボク、やるよ、戦う。ボクも、最後まで戦う!)イモ、イモイモー!」
カップが再び走り出す。そして、すぐさまミミズにぶつかる!
「(うおおー、たいあたりー!)イモイモー!」
「(うおお、こんな、バカなー!)ミミーズー!」
すると、その一撃で、ミミズが倒れた。
「(やったな、カップ!)エッレキュー!」
「やった、土ミミズを倒したよ、あれ?」
俺とリシェスが喜ぶ。するとカップは、俺とリシェスの前で、虹色に光り始めた。
その光は、すぐに消える。そのかわりに、カップは、今までと違う姿へと変わった。
緑色の芋から、赤紫色の体へ。
少し、いや大分、大きくなったか。もうその見た目はただの芋じゃない。特大芋だ。
そして何より、ピョンピョンとびはねるだけだった体は今、ずっと空中に浮いていた。
これは、なんだ。どういうことだ。カップの身に、何が起こったんだ?
「ひょっとして、変態?」
リシェスが言う。
「(え、モンスターって変態するの!)エ、エレッキュウー!」
なんてこった。まさか、モンスターにこんな秘密が隠されていたとは。
というか、これ進化だよな。早っ。
「(やった、やったよ、ボク、強くなれた!)イモ、イモイモイモー!」
新しい姿に生まれ変わったカップは、喜んでいる。
「あれは、カルイモ。ヨワイモの、速度特化変態」
へえ。更に速くなったのか、あいつ。なら、この先、頼もしく活躍してくれそうだな。
カップの勝利と同時に、変態か。これは凄い。凄い良い展開だ。
「(おめでとう、カップ)エレ、エレキュー」
「(ありがとう、ポット、リシェス。ボクだって戦える。ボクだって勝てる。うおお、ボク、やるぞー!)イモ、イモイモイモ、イモー!」
こうして、リシェスの二体目のテイムモンスターは、テイムして早々に変態したのだった。
カップの勝利&変態にはしゃいだ後。
「よいしょっと。よし、この土ミミズ、まだ息がある。きっと回復したら、良い土を生むに違いないわ」
なんと薬草五個目を採取し終えたリシェスが、倒したミミズを抱きしめ始めた。俺としては、これも衝撃的な展開だ。
「(え、リシェスそれ、持って帰るの?)エレ、エレエレーキュ?」
「(え、何々、どういうこと?)イモモイモイモ?」
「ポット、カップ。土ミミズはね、食べて排泄した土を、すっごく良い土に変えるの。持って帰れば良質な肥料がわりとして、ちょっと良い値段で買い取ってもらえるわ。それできっと、カップの首輪代が手に入る。これはとってもラッキーな獲物よ。でかした、ありがとうカップ!」
リシェスはそう、うれしそうに説明してくれた。
そう、お金になるならいいけど。でも、薬草だけじゃ足らないのか?
倒した後とはいえ大きなミミズを持たれるのは、ちょっと心配だ。
「(ボク、ボクがんばった!)イモ、イモ!」
「それと、ポットも最後のカップをかばった姿、とってもかっこよかった。ありがとうね、ポット!」
「(うん。まあ大したことなかったぜ)エレエレッキュ」
たいあたり一回くらいは耐えられる自信があったからな。それよりも、あの後カップがすぐにミミズを倒せたのが良かった。
「さあ、それじゃあ帰ろう、皆!」
「(おー)エレー」
「(うん!)イモ!」
それじゃあ、後は帰り道のリシェスの護衛だけだな。
思わぬ収入も手に入ったみたいだし、テイマー初日は成功といっていいのではないだろうか。
「(あ、敵だー!)イモモー!」
村の入り口まで戻って来ると、そこにいた門番の男を見て、カップが警戒心をあらわにした。
いやいや、敵じゃない。カップ。人を見てそう思うのは、とっても危険だぞ。悪いやつは注意しないといけないが、あの人は良い人だ。
「(おちつけ、カップ。あの人は敵じゃない。仲間、みたいなものだ)エレッキュ、エレッキュ」
慌ててカップに説明する。するとカップは、まだよくわからなさそうに首をかしげた。
「(仲間、みたいなもの?)イモ?」
「(リシェス達人間は、皆で支え合って生きているんだ。あの人はただ、俺達以外の危険なモンスターが村の中に入らないように見張っているだけだ。だから、俺達は安心してここを通れる。あの人は、俺達の仲間みたいなものなんだ)エレッキュエレキュー」
「(本当?)イモ?」
「(ああ、本当だとも。村の中にも人はたくさんいるから、全然気にしなくていいぞ。けど、その人達に悪さはするなよ。もしそんなことをしたら、リシェスに迷惑がかかるからな)エレキューキュー、エレキュー」
「(わ、わかった。皆、仲間みたいなもの、なんだ)イモ、イモー」
カップがそわそわしていると、門番がカップに目を止める。
「お帰り、リシェス。その土ミミズは見事にぐったりしているが、しかしこっちのカルイモは、どうしたんだ?」
「ただいま、ハースンさん。このカルイモはですね、カップって言って、私の新しい仲間なんです。早くテイムモンスター用の首輪をつけてあげないと!」
ああ、そうか。カップにも首輪が必要なんだな。首輪、首輪?
イモの体に、首輪がつけられるのか?
いや、でも首輪が必要なら、つけるしかないだろう。大丈夫、きっとなんとかなる。そう信じよう。
とにかく、ハースンはリシェスの言葉に、うなずいた。
「なんだ、そうなのか。しかし、エレキュウをつれてきたと思ったら今度はカルイモか。凄いな、リシェスは。こんなこと初めてだ」
「えへへ、二人共とっても良い子なんです!」
そんな感じで門番とカップの面通りも済み、俺達は村の中に戻る。
そして畑で土ミミズをお金に変えたリシェスは、次にギルドに戻り、薬草を納品した後、カップの名前をテイムモンスター届けの書類に加える。
そこですぐに買った首輪をカップにつけて、リシェスは笑顔になった。
「はい、カップ。首輪、とっても似合ってるわ!」
「(わーい、わーい!)イーモ、イーモ!」
カップは喜んでいる。良いことだ。リシェスもそれを見て喜んでいる。俺の時も、もっと喜んでおけば良かったか?
カップの首輪は、どっちかっていうと腹にベルトを巻いてる感じだ。なんだかんだ似合っている。一目見て野生のモンスターとは思えないし、きっと皆そんなに警戒しないだろう。
「(ポットとおそろいだー!)イモモー!」
「(まあ、そういう見方もあるな)エレーキュー」
「よし、それじゃあまだ時間もあるし、一度ご飯を食べた後、また森に行って新しい依頼をこなすわよ。今度の依頼は、ファイト花を8つ納品。がんばろうね!」
「(おー!)エレー!」
「(おー!)イモー!」
また納品か。けど、薬草じゃないってことは、その分難しいのかな。とにかく、まずは飯だ。食べよう。
そして俺達が来た場所は、八百屋。リシェスは俺がスープを食べることを知っているが、カップのことはまだ知らない。なので、きっと食べるなら野菜か果物がいいだろうとの判断だ。それに俺も野菜か果物でいい。
「皆の食べ物って、きっと野菜とか、果物でいいよね。もし生肉とかだったら、嫌だけど」
安心しろ、リシェス。俺も流石に生肉はパスした。
けど、カップはどうなんだろう。これで肉食とか言われたら嫌だな。なんにしろ、ここではっきりしておかなければ。
「(カップはどうだ、今まで何食べてきたんだ?)エレエレキュー?」
「(ボクは、そのへんの草食べて生きてきた)イモイモイモ」
おおう、ワイルド。やっぱり野生って過酷だよな。俺は木の実を見つけられただけマシだったようだ。
「(安心しろ、カップ。リシェスはもっと良い物食べさせてくれるぞ)エレエレッキュ」
俺はそう言って、カップと共にリシェスの足元で待機。それを見たリシェスは、八百屋の人に声をかけた。
「あの、すみませーん。お野菜手に取っても良いですかー?」
「ああ、いいよ。どれも新鮮だよ」
「はーい。じゃあ、まずは、トットトトマトからいこうかな」
リシェスはそう言って、ミニトマトを手に取って俺達に見せた。
「はい、ポット、カップ。これは、食べられそう?」
「(何それ、凄く美味しそう!)イモイモー!」
カップが目を輝かせている。俺も、トマトくらいならいけそうかな。ピーマンとかナスの生はちょっとパスかな。
「(俺も、それで良い)エッレッキュ」
リシェスに親指を見せる。
「ふふ、ポットもカップも、凄く喜んでる。良かった、じゃあトットトトマトはオーケーそうね。それじゃあ次はー」
今度はリシェスは、黄色い実を俺達に見せた。
「はい、キキンカン。どう、食べられそう?」
「(わあ、それも凄く美味しそうー!)イモイモー!」
「(俺も、たぶん大丈夫だ)エッレッキュ」
リシェスに親指を見せる。たぶんこれ、キンカンだよな。初めて食べるけど、きっとおいしいよな?
「よし、それじゃあ決まりね。お姉さーん、トットトトマトとキキンカンをくださーい!」
「はーい。量はどのくらいにする?」
「両方二百グラムルずつください」
「わかったよ。まあ、そのモンスター達は、安全な子達なのかい?」
「はい。私のテイムモンスターなんです。まだ仲間にしたばかりで、何を食べるか分からなくて、まずはトットトトマトとキキンカンをあげてみようと思って」
「(そうなんだよ。よろしく)エレッキュ」
「(よろしく!)イモ!」
俺とカップが声をかけたら、八百屋の人はニッコリ笑顔となった。
「あら、そうなのかい。じゃあ、サービスしとくよ。どっちも二十グラムルずつおまけしておくから」
「いいんですか、ありがとうございます!」
リシェスはお金を払い、商品が入った二つの紙袋を受け取る。そして次にパン屋に行って、ナッツパンを1つ買うと、一度ギルドに戻り、料理屋スペースで俺達にごはんをくれた。
「はい、二人ともー。まずは、トットトトマトだよー」
うん、見たまんまトマトだ。甘かったら良いな。
「(ありがとう、リシェス。いただきまーす)エッレキュー」
リシェスの手から受け取る。俺は一つずつ両手でいただいて、カップはそのまま口で食べ始める。
「(ぱくぱく、美味しい、これ美味しいよー!)イモ、イモー!」
「(うん。ちょっとくせと甘みが強い、トマトだな)エッレキュー」
俺もカップも、美味しい物を食べれて喜ぶ。すると、リシェスも笑顔になる。
「良かった。ポットもカップも、喜んでるみたい。それじゃあ、パンも、食べる?」
「(んー、くんくん。それはいらない)イモー」
「(俺も、パンはいいや)エッレッキュー」
流石に、パンを一つしか買ってないところを見ているので、俺は遠慮する。ごはんが果物だけっていうのもなんだか偏ってる気がするけど、まあモンスターだし問題ないだろう。
だから、そのパンはリシェスが食べてくれ。
「そう。今度からも、野菜か果物をあげていれば良さそうね。ポット、カップ。これ食べたら、また頑張ろう!」
俺達にそう言って、リシェスもナッツパンを食べる。俺は肉系もたまに食べたくなるけど、まあ、モンスターだし、選り好みできないよな。ベジタリアンで満足だ。
ごはんを終えたら次は依頼。さあ、がんばるぞー。
午後からはファイト花の採取依頼だ。俺達は、北の森へと向かった。
「(敵だー!)テリー!」
「(敵だー!)アオー!」
すると、森に入ってすぐに、アーモンドモンスターと青い亀と戦った。リシェスの知識によると、アーモンドモンスターはミステリーシード。亀モンスターはアオタートルと呼ぶらしい。
現れる敵はどれもすぐ倒せるが、それは俺のレベルが上がっているからというだけではない。カップの攻撃もあるからだ。やっぱり仲間がいると凄く戦いやすいな。頼もしいともいう。
しかし、心なしか、西より北の方がモンスターが多い気がする。ひょっとしたら、長い間北の森にいるのは危険かもしれない。カップとリシェスがいてくれるから、大変さは半減しているけど、体力の消耗具合にも注意しておかないとまずそうだ。
「やった、ファイト花二つ目。この調子でいこうね、ポット、カップ!」
リシェスが笑顔で、二つ目のファイト花を採取する。
「(そうだな。あと六つか)エレッキュ」
「(よくわからないけど、リシェスがうれしいならボクもうれしい!)イモイモモー!」
ファイト花は、オレンジ色と白色の二色の、大きな花だった。なかなか見つからなかったが、特徴的な形なのでかなり見つけやすい。
この調子で、どんどん集めよう。最低でも、日が暮れる前には帰らないとな。
よーし、この勢いでどんどん見つけるぞー。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる