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7ごはんはお家で、そろって食べるよ
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無事ファイト花8つを納品して、ギルドで報酬を得る。空はもうすっかり暗くなった。
そしてまた八百屋でトマトとキンカンを買い、よだれをたらすカップをガマンさせながら、帰路につく。
「二人共、ごはんはお家で、皆揃って食べるよ!」
「(はーい!)エレッキュ!」
「(はあーい)イモモー」
残念そうにしているカップ。見るからに食い意地がはっているな。けどこれだけリシェスに素直なら、安心だ。
そうしてリシェス家に帰ると、先に帰っていた父母がカップを見て言った。
「お帰り、リシェス。今日はカルイモを見つけてくれたのか。とっても美味しそうだね」
「お帰り、リシェス。まあ、そのカルイモは、どうしましょう。焼くか、煮るか、どっちにする?」
「(えー!)イモー!」
ドキリとするカップ。俺もちょっとドキッとする。リシェスは、本気ではないけど怒った顔をした。
「もう、お父さん、お母さん、冗談はやめて。カップは私の仲間なの。絶対食べちゃダメだよ!」
「ああ、そうなのか。へえ、カップっていうのか、可愛いね」
「まあ、カルイモが仲間なんて、不思議な気分だわ。ごめんね、カップちゃん。これからは、イモ料理は出さないようにするわね」
「(ボ、ボクって、ごはんにされるの?)イ、イモー?」
「(安心しろ、カップ。お前のことは何があっても俺とリシェスが守るから、心配するな)エレエレキュー」
どうやら、ヨワイモ、カルイモは食料とみなされるらしい。
とにかく、イモ泥棒には注意しないとな。
それから、ごはんタイム。
皆はパンとスープで、更に俺の分まで用意してくれていた。その俺の分を、更にカップの分にと分ける。
「いただきまーす」
「(もぐもぐ。パンは、やっぱりあんまり美味しくない。スープは、あちっ、熱すぎ。飲めない)イモイモー」
どうやら、カップは普通の料理が苦手なようだ。食べるなら生の野菜、果物が良いらしい。
「(だったら、パンとスープを俺にくれよ。そのかわり、トマトとキンカンをあげるよ)エレキュー」
「(ありがとう、ポット!)イモモー!」
俺がトマトとキンカンを、カップがパンとスープを交換する。その様子をリシェス家族が見ていた。
「あら、どうやらカップちゃんはパンとスープが苦手らしいわね」
「ふうむ、モンスターは雑食というわけじゃないんだなあ」
「そっか、カップはパンとスープが食べられないんだ。でもポット、もしそれが甘やかしだったら、めっ、だからね。好き嫌いして育ったら良い大人になれないんだから、ちゃんとしないとダメよ?」
「(は、はい)エレッキュ」
隣では既にカップが、トマトとキンカンにがっついている。ま、まあ、カップはたぶんイモモンスターだし、食べ物は果物野菜が良いというのは本当だろう。それに、嫌いな物を食べていてもやる気が上がりづらいというのはある。これからも戦闘の連続だろうし、気の持ちようは大事だと思うんだ。
「(もぐもぐ、はー美味しい。ボク、リシェスとポットと仲間になって良かった!)イモ、イモモー!」
だからカップよ、これからわがままには育ってくれるなよ?
その後、お風呂でまず俺が先にリシェスに洗われて、それを見たカップが俺を一緒にゴシゴシしてくる。
「あ、カップも手伝ってくれるの、ありがとー!」
「(これがいいの、これがいいの?)イモ、イモ?」
「(あ、うん、いいから。あんまり強くこすらないでくれ)エレッキュー」
俺が洗われた後は、カップも洗う。カップの方が、なんかイモ洗いで、早かった。俺も洗ってやろうかと思ったが、ボディーがイモすぎて手を出す余地がなかった。
その後お風呂に入ったカップが2秒で出て、それ以上絶対にお風呂には入らないようになったりしつつ、まったり過ごす。
お布団に入ったら、俺とカップがリシェスをはさむ。リシェスは幸せそうに眠った。俺もその後眠る。良い夢が見れますように。
今日は、想像以上に危なかった。これ以上危険なことが起こらないように、もっと強くならないといけない。この幸せを守るために、俺と、皆の力を合わせて、強くなろう。
今の俺のレベルは、15か。まだ、強い方かはわからない。いや、きっとクマザルに一人で勝てないから、弱い方だ。もっと上を目指さなきゃな。
目標があると、より一層頑張れる気がする。リシェスとカップと共に、頑張ろう。
翌日。ギルドに来たリシェスは、掲示板の張り紙を見て表情を変えた。
「これって」
なになに。俺の背の高さじゃ張り紙をよく見れないな。
リシェスはすぐ受付へと駆ける。俺とカップも後に続いた。
「あの、リーヤさん。掲示板の、東の森への注意事項なんですが」
「ああ、リシェス。そうよ、どうも今、強力なカタガメが現れてるみたいなの。パーティ勝利の風が見つけて、倒せず敗走。特殊な毒攻撃を使ってくるみたいだから、今は東の森へ行っちゃダメよ。浅い所なら、まだ行ってもいいけど」
「ミネスさん達が、敗走。死者は、出てませんよね?」
「ええ、幸いね。けど、なんにせよ強いみたいだから、これはパーティ勝ち時笛が戻って来るのを待つしかないわね。それまで、東方面は常時危険地帯指定よ」
東方面って、俺がリシェスと出会った方だよな。そっちに今カタガメというやつがいるのか。ミネスのパーティが敗走っていうことは、きっと今の俺達でも勝てないだろう。
「勝ち時笛さん達は、すぐにカタガメを倒しに行けるんですか?」
「どうかしらね。たぶん、もう2、3日で町から戻ってくると思うけど、もっとかかるかもしれない。もっとも、帰って来る時は東から来るから、その際にカタガメを倒してくれたら幸いなんだけど」
「あの、できたらの話なんですけど、そのカタガメ討伐の話、私達が引き受けられませんか?」
え、俺達が?
リシェス。それはちょっと、いくらなんでも危険すぎないか?
受付のリーヤも驚いていた。
「あなた達が?」
「ええ。幸いエレキュウは電気属性、カルイモは木属性です。なら、水属性のカタガメに有利だと思うんです」
「それはそうかもしれないけど、けどあなたは昨日モンスターテイマーになったばかりの素人よ。いくらなんでも、早すぎる。せめて、クマザルを倒せるくらいの実力がないと」
「クマザルなら、昨日ポットとカップが倒してくれました!」
「あ、そうだったわね。けど、それも簡単にはいかなかったんでしょ?」
「う。い、いけるよね、ポット、カップ?」
リシェスが俺達を見る。けどそれはちょっと以上に無理な相談だ。
「(いや、それはちょっと。俺今、電気使えないし)エレエレキュー」
「(クマザル、強い、手強かった!)イモ、イモー!」
「ほら、この子達もやる気になってます!」
そんなこと一言も言ってねえよ。
「リシェス、おちついて。ギルドとしては、まだあなた達の実力に不安がある。ここは、あなた達以上に強いパーティ、勝ち時笛に頼むのが手堅い判断なの。緊急事態でもないのに、冒険者に無理はさせられない」
「でも」
「リシェスは、今自分ができることをしてくれればいい。丁度あなた達の元パーティ、勇気の炎が解散した分、モンスターの討伐数が減っている。今は、東方面以外のモンスターを減らしてきてくれない?」
「わかり、ました」
「ありがとう、お願いね。とにかく、今は東には行かないこと。いいわね?」
「はい」
「よろしい。期待してるわよ、リシェス」
その後リシェスは、依頼を一つ引き受けてギルドを出る。
「ポット達なら、勝ってくれるもん。私達もう、強いんだから」
その後呟いたリシェスの一言が、なんだかちょっと不安だった。
今回は解毒草を手に入れるらしい。村を出た方向は、南側だ。
「ポット、カップ。解毒草はこれよ。二つの葉が合わさったみたいな形をしている葉っぱ。これが三枚で、大人一人分の解毒薬になるわ」
「(よし、これだな。わかりやすい。一瞬で憶えたぞ)エッレッキュー」
「(毒って何?)イモー?」
「(危険な力なんだ。それにやられると具合が悪くなったり、すぐ死んじゃったりする)エレエレキュー」
「(え、怖い。でも、これがあれば大丈夫なんだ。安心)イモイモー」
俺達はどんどん解毒草を採取していく。目標数は12だ。すると。
「(グアー!)グアー!」
何体かモンスターを相手にした後、今日もクマザルが現れた。
「またクマザル、なんでこんなところに!」
リシェスが驚くが、今は驚いている場合ではない。
「(どうする、逃げるか!)エレッキュ、エレキュー!」
俺はリシェスを見る。するとリシェスは強気な目で俺とカップを見た。
「ポット、カップ、戦って。勝ってギルドに私達は強いって認めてもらうの。そうしたら、カタガメだって倒しに行ける。やれるよね、二人共!」
正直、まだクマザルとは戦いづらい。相手は強いってわかってるからだ。今回も、きっと楽に勝つことはできないだろう。
でもそれを念頭においても、今ここでクマザルを倒すことには意味がある。今、カタガメというモンスターのせいで村が困っている。ミネスだってひどくやられたかもしれない。そんな今の状況に、このクマザルを倒しておけたら、その戦果でたぶん、ちょっとくらいは村に良い空気を起こせるはずだ。
この村のピンチをなんとかしたいっていう気持ちは、俺にもある。だから俺はもっと、そして早く強くなりたい。
よし、やるぞカップ。俺はカップと目を合わせた。
「(カップ、挟み撃ちだ。敵の後ろに回った方が攻撃するぞ。正面にいる方が、相手の注意をひきつけるんだ!)エレキュー!」
「(わかった!)イモー!」
カップが勢いよくクマザルの背後へと回る。
それなら俺は今、鳴き声を使うべきだ!
「(鳴き声!)エレキュー!」
「(ぐうっ!)グアー!」
クマザルの攻撃力の高さは驚異だ。だから、鳴き声はかかせない。それに、数の利も有効に使う。しっかり状況を見極めて、皆の力で勝利しよう。
幸いクマザルは今、俺へと視線を定めた。だが、動きが遅い。もうカップが、お前の背後にきているぞ!
「(スタンプー!)イモー!」
「(グアー、きりさくー!)グアー!」
痛がるクマザル。反射的にカップがいる方へと手を伸ばし、ろくに狙いもせずに技を使ってくる。だが、カップは速い。でたらめに攻撃しても、カップを捉えることはできない。
そしてクマザルは今、カップへと視線を向けている。だったら、今度は俺が攻撃する番だ。
この機を逃さず、一気に駆ける!
「(たいあたりー!)エッレキュー!」
「(グアー!)グアー!」
今は、電気技が使えない。よってエレキアタックが使えなかったが、これで戦うしかない。幸いダメージは通っている。これをくり返せば、勝てる!
クマザルが俺の方を向けば、カップが攻撃し、カップの方を向けば、俺が攻撃する。そんな、誰がどう見ても卑怯といえる戦法で、少しずつクマザルを追い詰めていく。
だがどれだけ卑怯になっても、仲間や自分が傷つくよりはずっと良い。俺達は今、生きるために戦っているのだ。
「いいよ、ポット、カップ、その調子!」
後ろにリシェスがいてくれるから、もし傷を負っても安心だ。そういう心の支えが、俺とカップの戦意を上げる。
だが、クマザルはタフだ。体力が高い分、反撃できる回数も増える。その強みを、ここで発揮してきた。
「(ふん、切り裂く!)グアー!」
「(く、ぐあー!)エレキュー!」
クマザルは俺に背を向けていたが、俺の攻撃のタイミングを計ってすぐに振り向き、攻撃してきた。一撃、いいのをもらってしまった。く、俺達の動きが単調すぎたか?
「(ポットー、たいあたりー!)イモモー!」
「(ふん、切り裂く!)グアー!」
「(あああっと!)イモー!」
クマザルはすかさず振り返り、カップを攻撃して、技を中断させ回避させる。これは、相手が俺達の挟み撃ちに対応してきたってことか。厄介な。
「ポット、小回復!」
「(ありがとう、リシェス!)エレキュー!」
幸い、俺の傷はすぐに癒える。けど、だからといってすかさず攻撃には移れない。自然と、今ダメージを受けた時の記憶がフラッシュバックして、意識が攻撃よりも相手の警戒へと向いたのだ。言ってしまえば、臆病風が俺の戦意を鈍らせた。
だが、今回はそれで良かった。クマザルはすぐに俺の方を向き、ニヤリと笑った。どうやら、しっかり俺の動きに対応するつもりでいたようだ。そしてあいつ、このままいけば俺達を倒せると思っていやがるんだ。
そうはいくか、勝つのは俺達だ!
「(きりさく!)グアー!」
クマザルが攻撃に転じてきた。俺の方へ突っ込んでくる。上等だ。ここは回避に集中する!
「(なんのー!)エレキュー!」
間一髪のところを回避する。へっ、お前のきりさくは何度も見てきた。レベルも昨日より1上がってる。そう簡単に当たってたまるかよ!
「(スタンプ!)イモー!」
幸い、カップが俺に攻撃中のクマザルを攻撃する。やはりクマザルは、後ろをとられるときつそうだ。そう簡単に、数の差は覆せないぞ!
ここでクマザルは、一度カップをはらいのけると、すぐにまた俺へと攻撃してきた。どうやら相手は、俺を優先的に攻撃することに決めたらしい。
それは好都合。このまま回避しまくって、確実にカップへのサポートを行う!
俺は何度もクマザルの爪をギリギリ回避し、その間にカップが更に後ろを攻撃する。
俺が敵の攻撃を回避すれば回避する程、カップの攻撃が通る。いいぞ、この調子だ。
クマザルはカップを煩わしそうにするも、どんどんダメージを負っていった。その間に俺も何回かダメージを負ったが、その度にリシェスが回復してくれる。
「(ぐうう、こうなったら!)グアー!」
もうクマザルは、ボロボロになっている。しかしここでクマザルは、初めてある方向を向いた。
よりによって、リシェスの方だ。
「(あいつだけでも倒してやるー!)グアー!」
最悪なことに、クマザルはリシェスへと一直線に駆ける。
待てー、それだけはやめろー卑怯だぞー!
「(止まれー、たいあたりー!)エレキュー!」
慌てて使った俺のたいあたりが、クマザルの背中を強打する。けれど、それだけでは止まらない。電気技は、まだ使えない。
「(だったら、鳴き声ー!)エレキュー!」
苦し紛れの鳴き声も、効果無し。くそ、これでこっちを振り向いてくれれば助かったのだが、なんともならなかったか。
俺は、もう手詰まりだ。
後は、カップ、お前が頼りだ。リシェスが逃げきれればそれで良いのだが、相手はモンスター、逃げ切れない可能性だってある。
頼む。なんとか、リシェスを守ってやってくれ!
「(リシェス、助ける。ボクが、倒すー!)イモモー!」
そう思っていた視線の先で、カップが超高速でクマザルへと接近する。
「(後ろアタックー!)イモーモー!」
なんの変哲もない、ただのたいあたりのように見えるカップの攻撃が、クマザルを倒す!
「(グアー!)グアー!」
震えながらも、立ち上がろうとするクマザル。そうか、まだ余力がわずかながらに残っているのか。
けど、悪いな。これで終わりだ!
「(たいあたり!)エレキュー!」
「(スタンプ!)イモー!」
俺とカップの同時攻撃が、クマザルにとどめを刺した。
「(こんな、とこ、ろで)グアー」
どさっ、ばたり。今度こそ、クマザルは動かなくなる。
「やった、倒せた。本当にやった、すごい二人共!」
リシェスが喜ぶ。俺は、一安心だ。
よし、レベルも上がった。今16だ。ん、それに、なにか技も覚えたな。なになに、痺れエレキ?
名前から察するに、相手をしびれさせる技だろうか。今は電気技が使えないから、この技もまだ使えないけど、有用だったら良いな。
数分後。
俺の電気技が復活した。やったー。
そして今はまた戦闘中。今日もミステリーフが現れやがったぜ。
「(くらえ、痺れエレキ!)エーレキュー!」
「(いやー、しーびーれーるー!)テリリーフ!」
俺の技を受けた敵の動きが、少し止まる。体感、三秒くらいか?
ダメージは、どうだろう。たぶん、無いように思える。
「(後ろアタックー!)イモー!」
「(うわあー!)ミステリーフ!」
ちょっとの間動けないでいた敵を、カップが倒す。ナイスだカップ。けど、俺の新技は、あんまり使えない感じかな。だって、折角動きを止められても、ちょっとじゃ大して意味ないし。
あ、でも、相手の動きを止められるんだから、相手の攻撃を中断させるとか、使い道はありそうか。今みたいにカップも隙を狙ってくれるし、全然使えないわけじゃないな。
とにかく、これでまた少し強くなれたぞ。
「やったね、二人共。ミステリーフを倒したよ。しかも、ポットは電気技がまた使えるようになったんだね!」
「(まあな)エレッキュ」
「おめでとう、ポット!」
「(やったー、ポット!)イモイモー!」
これで、俺が完全復活した。でも、ラストエレキは封印だな。一日中くらい電気技が使えなくなるなんて、リスクが大きすぎる。また使わなければならないような緊急事態は、もうこないでほしいものだ。
「ポットの電気技が復活した。それに電気技がなくてもクマザルを倒せたし、解毒草の採取もこれで終わり。今度こそ、カタガメを倒しに行けるかも」
リシェスが呟く。リシェス、まだカタガメのことを気にしていたのか。まあ、村の仲間がやられたんだ。気にするのも仕方ないか。
「ひとまず、帰ろう、ポット、カップ。すぐに解毒草を採取し終えるからね!」
「(ああ)エレッキュ」
「(うん!)イモ!」
まずは、一時帰還だ。そしてできることなら、この後も同じような採取依頼をやってもらいたい。
やっぱり、ミネスのパーティが負けるような相手と戦うというのは、まだ気が引ける。そんな相手の前に、わざわざリシェスをつれていくなんてことはしたくない。
まあ、このまま冒険者を続けていけば、危険の一回二回なんて簡単にやってきそうだけど、でも自分から危険にとびこむようなことは、あまりしてほしくない。
今は三人で、カップもいてくれる。けれど、後悔は後で悔いるから後悔なのだ。何事も慎重すぎることにこしたことはないはずだ。
「急いで帰ろうね、ポット、カップ!」
「(帰ったらごはんかなあ?)イモ、イモ?」
「(たぶんそうだな)エレキュー」
カタガメというモンスターは気にはなるけど、ギルドが注意を促す程のモンスター。しかも、日が経てばそいつを倒せるパーティが現れるらしい。
流石に今回は、俺達の出番はないだろう。ギルドの人もリシェスを止めてくれたし、リシェスにはこのままガマンしてもらおう。
そして、村に帰ってきて。
「お願い、リシェス。一緒に東の森に来て!」
村の入り口で俺達を待っていたミネスに、そうお願いされた。
「え、はい、行きます!」
リシェス、即オーケーする。っておいおい、ちょっと待て。
東の森って、カタガメがいる方向だろ。なんでそんなところへリシェスを誘うんだよ!
「(リシェス、せめて訳を聞け!)エッレキュー!」
「(あれ、ごはんは?)イモモ?」
「ポット、カップ、行くよ!」
ダメだ。俺達の言葉ではリシェスを止められない。
「訳は走りながら説明するわ。とにかくまずは、先に向かった私のパーティに追いつきましょう!」
ミネスは急いでいるみたいだから緊急事態なんだろうが、それでも俺達なんかが行って役に立つような状況なのか?
とにかく、走る俺達。村の中を突っ走り、すぐに東方面への入り口を出る。
「まず今日の朝遅くに、東から旅の商人が来たの」
走りながら喋るミネスは、凄い体力をしている。流石冒険者って感じだ。
「商人はここまで来る間に、毒を使うカタガメに馬車と荷物のほとんどを奪われてここまで逃げてきた。だから商人は私達に、緊急の荷物を取り返す依頼をしてきたの。でも、私達はカタガメを警戒して、その話を断った。そこで、話が終わってくれれば良かったんだけど。商人は荷物を諦めきれず、他の冒険者にも依頼を出した。そして、ありえないことにオルツがたった一人で依頼を引き受けたの」
話を聞いていて、一瞬頭の中が真っ白になる。
オルツ。リシェスが背負うことで村まで帰れたあいつ。あいつが、たった一人でモンスターが出る森へ入っていった?
どんな大バカ野郎だよ、本当!
「そんな、まさかオルツが!」
リシェスも驚く。けれどミネスは、しっかりとうなずいた。
「そのまさかよ。オルツはそのまま東の森に行ってしまった。その後すぐそれに気づいたギルドが、急いでオルツを連れ戻す依頼を私達に頼んできた。私以外の皆は、その依頼を受けてすぐに東の森に向かったわ。でも、私だけはリシェスを待っていた。今、この村にいるクマザルを倒せる程の実力者は、私達とあなた達だけなの。だから、万が一カタガメと戦闘を余儀なくされた場合に備えて、あなた達の戦力を期待することにした。リシェス、引き受けてくれて、ありがとう!」
「オルツが一人で突っ走ったのは、ちょっとは私達の責任です。ですから、断る理由なんてありません!」
「そう言ってもらえると助かるわ。それじゃあリシェス、もっとスピード上げられる?」
「これ以上は無理です!」
こうして走りまくった俺達は、時折モンスターとの戦闘を交えて、ひたすら森の道の先を目指した。
そして大分進んだ先で、死んだ馬二頭をつけた馬車の近くで、三人のパーティが亀モンスターと戦っている光景を見つけた。
そして、馬車の近くには、力尽きたオルツが転がっていた。
そしてまた八百屋でトマトとキンカンを買い、よだれをたらすカップをガマンさせながら、帰路につく。
「二人共、ごはんはお家で、皆揃って食べるよ!」
「(はーい!)エレッキュ!」
「(はあーい)イモモー」
残念そうにしているカップ。見るからに食い意地がはっているな。けどこれだけリシェスに素直なら、安心だ。
そうしてリシェス家に帰ると、先に帰っていた父母がカップを見て言った。
「お帰り、リシェス。今日はカルイモを見つけてくれたのか。とっても美味しそうだね」
「お帰り、リシェス。まあ、そのカルイモは、どうしましょう。焼くか、煮るか、どっちにする?」
「(えー!)イモー!」
ドキリとするカップ。俺もちょっとドキッとする。リシェスは、本気ではないけど怒った顔をした。
「もう、お父さん、お母さん、冗談はやめて。カップは私の仲間なの。絶対食べちゃダメだよ!」
「ああ、そうなのか。へえ、カップっていうのか、可愛いね」
「まあ、カルイモが仲間なんて、不思議な気分だわ。ごめんね、カップちゃん。これからは、イモ料理は出さないようにするわね」
「(ボ、ボクって、ごはんにされるの?)イ、イモー?」
「(安心しろ、カップ。お前のことは何があっても俺とリシェスが守るから、心配するな)エレエレキュー」
どうやら、ヨワイモ、カルイモは食料とみなされるらしい。
とにかく、イモ泥棒には注意しないとな。
それから、ごはんタイム。
皆はパンとスープで、更に俺の分まで用意してくれていた。その俺の分を、更にカップの分にと分ける。
「いただきまーす」
「(もぐもぐ。パンは、やっぱりあんまり美味しくない。スープは、あちっ、熱すぎ。飲めない)イモイモー」
どうやら、カップは普通の料理が苦手なようだ。食べるなら生の野菜、果物が良いらしい。
「(だったら、パンとスープを俺にくれよ。そのかわり、トマトとキンカンをあげるよ)エレキュー」
「(ありがとう、ポット!)イモモー!」
俺がトマトとキンカンを、カップがパンとスープを交換する。その様子をリシェス家族が見ていた。
「あら、どうやらカップちゃんはパンとスープが苦手らしいわね」
「ふうむ、モンスターは雑食というわけじゃないんだなあ」
「そっか、カップはパンとスープが食べられないんだ。でもポット、もしそれが甘やかしだったら、めっ、だからね。好き嫌いして育ったら良い大人になれないんだから、ちゃんとしないとダメよ?」
「(は、はい)エレッキュ」
隣では既にカップが、トマトとキンカンにがっついている。ま、まあ、カップはたぶんイモモンスターだし、食べ物は果物野菜が良いというのは本当だろう。それに、嫌いな物を食べていてもやる気が上がりづらいというのはある。これからも戦闘の連続だろうし、気の持ちようは大事だと思うんだ。
「(もぐもぐ、はー美味しい。ボク、リシェスとポットと仲間になって良かった!)イモ、イモモー!」
だからカップよ、これからわがままには育ってくれるなよ?
その後、お風呂でまず俺が先にリシェスに洗われて、それを見たカップが俺を一緒にゴシゴシしてくる。
「あ、カップも手伝ってくれるの、ありがとー!」
「(これがいいの、これがいいの?)イモ、イモ?」
「(あ、うん、いいから。あんまり強くこすらないでくれ)エレッキュー」
俺が洗われた後は、カップも洗う。カップの方が、なんかイモ洗いで、早かった。俺も洗ってやろうかと思ったが、ボディーがイモすぎて手を出す余地がなかった。
その後お風呂に入ったカップが2秒で出て、それ以上絶対にお風呂には入らないようになったりしつつ、まったり過ごす。
お布団に入ったら、俺とカップがリシェスをはさむ。リシェスは幸せそうに眠った。俺もその後眠る。良い夢が見れますように。
今日は、想像以上に危なかった。これ以上危険なことが起こらないように、もっと強くならないといけない。この幸せを守るために、俺と、皆の力を合わせて、強くなろう。
今の俺のレベルは、15か。まだ、強い方かはわからない。いや、きっとクマザルに一人で勝てないから、弱い方だ。もっと上を目指さなきゃな。
目標があると、より一層頑張れる気がする。リシェスとカップと共に、頑張ろう。
翌日。ギルドに来たリシェスは、掲示板の張り紙を見て表情を変えた。
「これって」
なになに。俺の背の高さじゃ張り紙をよく見れないな。
リシェスはすぐ受付へと駆ける。俺とカップも後に続いた。
「あの、リーヤさん。掲示板の、東の森への注意事項なんですが」
「ああ、リシェス。そうよ、どうも今、強力なカタガメが現れてるみたいなの。パーティ勝利の風が見つけて、倒せず敗走。特殊な毒攻撃を使ってくるみたいだから、今は東の森へ行っちゃダメよ。浅い所なら、まだ行ってもいいけど」
「ミネスさん達が、敗走。死者は、出てませんよね?」
「ええ、幸いね。けど、なんにせよ強いみたいだから、これはパーティ勝ち時笛が戻って来るのを待つしかないわね。それまで、東方面は常時危険地帯指定よ」
東方面って、俺がリシェスと出会った方だよな。そっちに今カタガメというやつがいるのか。ミネスのパーティが敗走っていうことは、きっと今の俺達でも勝てないだろう。
「勝ち時笛さん達は、すぐにカタガメを倒しに行けるんですか?」
「どうかしらね。たぶん、もう2、3日で町から戻ってくると思うけど、もっとかかるかもしれない。もっとも、帰って来る時は東から来るから、その際にカタガメを倒してくれたら幸いなんだけど」
「あの、できたらの話なんですけど、そのカタガメ討伐の話、私達が引き受けられませんか?」
え、俺達が?
リシェス。それはちょっと、いくらなんでも危険すぎないか?
受付のリーヤも驚いていた。
「あなた達が?」
「ええ。幸いエレキュウは電気属性、カルイモは木属性です。なら、水属性のカタガメに有利だと思うんです」
「それはそうかもしれないけど、けどあなたは昨日モンスターテイマーになったばかりの素人よ。いくらなんでも、早すぎる。せめて、クマザルを倒せるくらいの実力がないと」
「クマザルなら、昨日ポットとカップが倒してくれました!」
「あ、そうだったわね。けど、それも簡単にはいかなかったんでしょ?」
「う。い、いけるよね、ポット、カップ?」
リシェスが俺達を見る。けどそれはちょっと以上に無理な相談だ。
「(いや、それはちょっと。俺今、電気使えないし)エレエレキュー」
「(クマザル、強い、手強かった!)イモ、イモー!」
「ほら、この子達もやる気になってます!」
そんなこと一言も言ってねえよ。
「リシェス、おちついて。ギルドとしては、まだあなた達の実力に不安がある。ここは、あなた達以上に強いパーティ、勝ち時笛に頼むのが手堅い判断なの。緊急事態でもないのに、冒険者に無理はさせられない」
「でも」
「リシェスは、今自分ができることをしてくれればいい。丁度あなた達の元パーティ、勇気の炎が解散した分、モンスターの討伐数が減っている。今は、東方面以外のモンスターを減らしてきてくれない?」
「わかり、ました」
「ありがとう、お願いね。とにかく、今は東には行かないこと。いいわね?」
「はい」
「よろしい。期待してるわよ、リシェス」
その後リシェスは、依頼を一つ引き受けてギルドを出る。
「ポット達なら、勝ってくれるもん。私達もう、強いんだから」
その後呟いたリシェスの一言が、なんだかちょっと不安だった。
今回は解毒草を手に入れるらしい。村を出た方向は、南側だ。
「ポット、カップ。解毒草はこれよ。二つの葉が合わさったみたいな形をしている葉っぱ。これが三枚で、大人一人分の解毒薬になるわ」
「(よし、これだな。わかりやすい。一瞬で憶えたぞ)エッレッキュー」
「(毒って何?)イモー?」
「(危険な力なんだ。それにやられると具合が悪くなったり、すぐ死んじゃったりする)エレエレキュー」
「(え、怖い。でも、これがあれば大丈夫なんだ。安心)イモイモー」
俺達はどんどん解毒草を採取していく。目標数は12だ。すると。
「(グアー!)グアー!」
何体かモンスターを相手にした後、今日もクマザルが現れた。
「またクマザル、なんでこんなところに!」
リシェスが驚くが、今は驚いている場合ではない。
「(どうする、逃げるか!)エレッキュ、エレキュー!」
俺はリシェスを見る。するとリシェスは強気な目で俺とカップを見た。
「ポット、カップ、戦って。勝ってギルドに私達は強いって認めてもらうの。そうしたら、カタガメだって倒しに行ける。やれるよね、二人共!」
正直、まだクマザルとは戦いづらい。相手は強いってわかってるからだ。今回も、きっと楽に勝つことはできないだろう。
でもそれを念頭においても、今ここでクマザルを倒すことには意味がある。今、カタガメというモンスターのせいで村が困っている。ミネスだってひどくやられたかもしれない。そんな今の状況に、このクマザルを倒しておけたら、その戦果でたぶん、ちょっとくらいは村に良い空気を起こせるはずだ。
この村のピンチをなんとかしたいっていう気持ちは、俺にもある。だから俺はもっと、そして早く強くなりたい。
よし、やるぞカップ。俺はカップと目を合わせた。
「(カップ、挟み撃ちだ。敵の後ろに回った方が攻撃するぞ。正面にいる方が、相手の注意をひきつけるんだ!)エレキュー!」
「(わかった!)イモー!」
カップが勢いよくクマザルの背後へと回る。
それなら俺は今、鳴き声を使うべきだ!
「(鳴き声!)エレキュー!」
「(ぐうっ!)グアー!」
クマザルの攻撃力の高さは驚異だ。だから、鳴き声はかかせない。それに、数の利も有効に使う。しっかり状況を見極めて、皆の力で勝利しよう。
幸いクマザルは今、俺へと視線を定めた。だが、動きが遅い。もうカップが、お前の背後にきているぞ!
「(スタンプー!)イモー!」
「(グアー、きりさくー!)グアー!」
痛がるクマザル。反射的にカップがいる方へと手を伸ばし、ろくに狙いもせずに技を使ってくる。だが、カップは速い。でたらめに攻撃しても、カップを捉えることはできない。
そしてクマザルは今、カップへと視線を向けている。だったら、今度は俺が攻撃する番だ。
この機を逃さず、一気に駆ける!
「(たいあたりー!)エッレキュー!」
「(グアー!)グアー!」
今は、電気技が使えない。よってエレキアタックが使えなかったが、これで戦うしかない。幸いダメージは通っている。これをくり返せば、勝てる!
クマザルが俺の方を向けば、カップが攻撃し、カップの方を向けば、俺が攻撃する。そんな、誰がどう見ても卑怯といえる戦法で、少しずつクマザルを追い詰めていく。
だがどれだけ卑怯になっても、仲間や自分が傷つくよりはずっと良い。俺達は今、生きるために戦っているのだ。
「いいよ、ポット、カップ、その調子!」
後ろにリシェスがいてくれるから、もし傷を負っても安心だ。そういう心の支えが、俺とカップの戦意を上げる。
だが、クマザルはタフだ。体力が高い分、反撃できる回数も増える。その強みを、ここで発揮してきた。
「(ふん、切り裂く!)グアー!」
「(く、ぐあー!)エレキュー!」
クマザルは俺に背を向けていたが、俺の攻撃のタイミングを計ってすぐに振り向き、攻撃してきた。一撃、いいのをもらってしまった。く、俺達の動きが単調すぎたか?
「(ポットー、たいあたりー!)イモモー!」
「(ふん、切り裂く!)グアー!」
「(あああっと!)イモー!」
クマザルはすかさず振り返り、カップを攻撃して、技を中断させ回避させる。これは、相手が俺達の挟み撃ちに対応してきたってことか。厄介な。
「ポット、小回復!」
「(ありがとう、リシェス!)エレキュー!」
幸い、俺の傷はすぐに癒える。けど、だからといってすかさず攻撃には移れない。自然と、今ダメージを受けた時の記憶がフラッシュバックして、意識が攻撃よりも相手の警戒へと向いたのだ。言ってしまえば、臆病風が俺の戦意を鈍らせた。
だが、今回はそれで良かった。クマザルはすぐに俺の方を向き、ニヤリと笑った。どうやら、しっかり俺の動きに対応するつもりでいたようだ。そしてあいつ、このままいけば俺達を倒せると思っていやがるんだ。
そうはいくか、勝つのは俺達だ!
「(きりさく!)グアー!」
クマザルが攻撃に転じてきた。俺の方へ突っ込んでくる。上等だ。ここは回避に集中する!
「(なんのー!)エレキュー!」
間一髪のところを回避する。へっ、お前のきりさくは何度も見てきた。レベルも昨日より1上がってる。そう簡単に当たってたまるかよ!
「(スタンプ!)イモー!」
幸い、カップが俺に攻撃中のクマザルを攻撃する。やはりクマザルは、後ろをとられるときつそうだ。そう簡単に、数の差は覆せないぞ!
ここでクマザルは、一度カップをはらいのけると、すぐにまた俺へと攻撃してきた。どうやら相手は、俺を優先的に攻撃することに決めたらしい。
それは好都合。このまま回避しまくって、確実にカップへのサポートを行う!
俺は何度もクマザルの爪をギリギリ回避し、その間にカップが更に後ろを攻撃する。
俺が敵の攻撃を回避すれば回避する程、カップの攻撃が通る。いいぞ、この調子だ。
クマザルはカップを煩わしそうにするも、どんどんダメージを負っていった。その間に俺も何回かダメージを負ったが、その度にリシェスが回復してくれる。
「(ぐうう、こうなったら!)グアー!」
もうクマザルは、ボロボロになっている。しかしここでクマザルは、初めてある方向を向いた。
よりによって、リシェスの方だ。
「(あいつだけでも倒してやるー!)グアー!」
最悪なことに、クマザルはリシェスへと一直線に駆ける。
待てー、それだけはやめろー卑怯だぞー!
「(止まれー、たいあたりー!)エレキュー!」
慌てて使った俺のたいあたりが、クマザルの背中を強打する。けれど、それだけでは止まらない。電気技は、まだ使えない。
「(だったら、鳴き声ー!)エレキュー!」
苦し紛れの鳴き声も、効果無し。くそ、これでこっちを振り向いてくれれば助かったのだが、なんともならなかったか。
俺は、もう手詰まりだ。
後は、カップ、お前が頼りだ。リシェスが逃げきれればそれで良いのだが、相手はモンスター、逃げ切れない可能性だってある。
頼む。なんとか、リシェスを守ってやってくれ!
「(リシェス、助ける。ボクが、倒すー!)イモモー!」
そう思っていた視線の先で、カップが超高速でクマザルへと接近する。
「(後ろアタックー!)イモーモー!」
なんの変哲もない、ただのたいあたりのように見えるカップの攻撃が、クマザルを倒す!
「(グアー!)グアー!」
震えながらも、立ち上がろうとするクマザル。そうか、まだ余力がわずかながらに残っているのか。
けど、悪いな。これで終わりだ!
「(たいあたり!)エレキュー!」
「(スタンプ!)イモー!」
俺とカップの同時攻撃が、クマザルにとどめを刺した。
「(こんな、とこ、ろで)グアー」
どさっ、ばたり。今度こそ、クマザルは動かなくなる。
「やった、倒せた。本当にやった、すごい二人共!」
リシェスが喜ぶ。俺は、一安心だ。
よし、レベルも上がった。今16だ。ん、それに、なにか技も覚えたな。なになに、痺れエレキ?
名前から察するに、相手をしびれさせる技だろうか。今は電気技が使えないから、この技もまだ使えないけど、有用だったら良いな。
数分後。
俺の電気技が復活した。やったー。
そして今はまた戦闘中。今日もミステリーフが現れやがったぜ。
「(くらえ、痺れエレキ!)エーレキュー!」
「(いやー、しーびーれーるー!)テリリーフ!」
俺の技を受けた敵の動きが、少し止まる。体感、三秒くらいか?
ダメージは、どうだろう。たぶん、無いように思える。
「(後ろアタックー!)イモー!」
「(うわあー!)ミステリーフ!」
ちょっとの間動けないでいた敵を、カップが倒す。ナイスだカップ。けど、俺の新技は、あんまり使えない感じかな。だって、折角動きを止められても、ちょっとじゃ大して意味ないし。
あ、でも、相手の動きを止められるんだから、相手の攻撃を中断させるとか、使い道はありそうか。今みたいにカップも隙を狙ってくれるし、全然使えないわけじゃないな。
とにかく、これでまた少し強くなれたぞ。
「やったね、二人共。ミステリーフを倒したよ。しかも、ポットは電気技がまた使えるようになったんだね!」
「(まあな)エレッキュ」
「おめでとう、ポット!」
「(やったー、ポット!)イモイモー!」
これで、俺が完全復活した。でも、ラストエレキは封印だな。一日中くらい電気技が使えなくなるなんて、リスクが大きすぎる。また使わなければならないような緊急事態は、もうこないでほしいものだ。
「ポットの電気技が復活した。それに電気技がなくてもクマザルを倒せたし、解毒草の採取もこれで終わり。今度こそ、カタガメを倒しに行けるかも」
リシェスが呟く。リシェス、まだカタガメのことを気にしていたのか。まあ、村の仲間がやられたんだ。気にするのも仕方ないか。
「ひとまず、帰ろう、ポット、カップ。すぐに解毒草を採取し終えるからね!」
「(ああ)エレッキュ」
「(うん!)イモ!」
まずは、一時帰還だ。そしてできることなら、この後も同じような採取依頼をやってもらいたい。
やっぱり、ミネスのパーティが負けるような相手と戦うというのは、まだ気が引ける。そんな相手の前に、わざわざリシェスをつれていくなんてことはしたくない。
まあ、このまま冒険者を続けていけば、危険の一回二回なんて簡単にやってきそうだけど、でも自分から危険にとびこむようなことは、あまりしてほしくない。
今は三人で、カップもいてくれる。けれど、後悔は後で悔いるから後悔なのだ。何事も慎重すぎることにこしたことはないはずだ。
「急いで帰ろうね、ポット、カップ!」
「(帰ったらごはんかなあ?)イモ、イモ?」
「(たぶんそうだな)エレキュー」
カタガメというモンスターは気にはなるけど、ギルドが注意を促す程のモンスター。しかも、日が経てばそいつを倒せるパーティが現れるらしい。
流石に今回は、俺達の出番はないだろう。ギルドの人もリシェスを止めてくれたし、リシェスにはこのままガマンしてもらおう。
そして、村に帰ってきて。
「お願い、リシェス。一緒に東の森に来て!」
村の入り口で俺達を待っていたミネスに、そうお願いされた。
「え、はい、行きます!」
リシェス、即オーケーする。っておいおい、ちょっと待て。
東の森って、カタガメがいる方向だろ。なんでそんなところへリシェスを誘うんだよ!
「(リシェス、せめて訳を聞け!)エッレキュー!」
「(あれ、ごはんは?)イモモ?」
「ポット、カップ、行くよ!」
ダメだ。俺達の言葉ではリシェスを止められない。
「訳は走りながら説明するわ。とにかくまずは、先に向かった私のパーティに追いつきましょう!」
ミネスは急いでいるみたいだから緊急事態なんだろうが、それでも俺達なんかが行って役に立つような状況なのか?
とにかく、走る俺達。村の中を突っ走り、すぐに東方面への入り口を出る。
「まず今日の朝遅くに、東から旅の商人が来たの」
走りながら喋るミネスは、凄い体力をしている。流石冒険者って感じだ。
「商人はここまで来る間に、毒を使うカタガメに馬車と荷物のほとんどを奪われてここまで逃げてきた。だから商人は私達に、緊急の荷物を取り返す依頼をしてきたの。でも、私達はカタガメを警戒して、その話を断った。そこで、話が終わってくれれば良かったんだけど。商人は荷物を諦めきれず、他の冒険者にも依頼を出した。そして、ありえないことにオルツがたった一人で依頼を引き受けたの」
話を聞いていて、一瞬頭の中が真っ白になる。
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「そんな、まさかオルツが!」
リシェスも驚く。けれどミネスは、しっかりとうなずいた。
「そのまさかよ。オルツはそのまま東の森に行ってしまった。その後すぐそれに気づいたギルドが、急いでオルツを連れ戻す依頼を私達に頼んできた。私以外の皆は、その依頼を受けてすぐに東の森に向かったわ。でも、私だけはリシェスを待っていた。今、この村にいるクマザルを倒せる程の実力者は、私達とあなた達だけなの。だから、万が一カタガメと戦闘を余儀なくされた場合に備えて、あなた達の戦力を期待することにした。リシェス、引き受けてくれて、ありがとう!」
「オルツが一人で突っ走ったのは、ちょっとは私達の責任です。ですから、断る理由なんてありません!」
「そう言ってもらえると助かるわ。それじゃあリシェス、もっとスピード上げられる?」
「これ以上は無理です!」
こうして走りまくった俺達は、時折モンスターとの戦闘を交えて、ひたすら森の道の先を目指した。
そして大分進んだ先で、死んだ馬二頭をつけた馬車の近くで、三人のパーティが亀モンスターと戦っている光景を見つけた。
そして、馬車の近くには、力尽きたオルツが転がっていた。
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この度ついに完結しました。
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---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
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