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12ここから一気に、勝利をもぎとってやる!
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この町の冒険者ギルドは、村のギルドよりも大きかった。
まあ、それだけ人が多いってことなんだろう。それより、ここでモンスターテイマーのランクアップ試験が受けられるんだよな。ちょっとドキドキする。
受付には、少し人が並んでいた。俺達はその列に並ぶ。周りの冒険者達は俺達モンスターを気にしているけど、そんな視線はなるべく気にしないようにする。
いや、でも、常に周囲への警戒はしておかないとな。リシェスやスフィンに近づく男なんかがいたら、要注意だ。すぐに追い払わなければ。
そうしていると、やがて俺達の番が回ってきた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。本日はどういったご用件でしょうか?」
受付嬢に、そううながされる。
「あの、ここでモンスターテイマーのランクアップ試験を受けられませんか?」
「ええ、可能ですよ。お二人共受けられますか?」
「いえ、私はつきそいです。こっちが、三人のモンスターをテイムしたいんですけど、まだランクが1なので」
「なるほど。試験は今日中にも受けられますよ。早速試験官を呼びますか?」
「い、いいえ。やっぱり、明日にします。今日は、まだ町に来たばかりだから。明日でも大丈夫ですよね?」
「はい。かまいませんよ。ご用件はそれだけですか?」
「あ、解体場と、宿屋の場所を教えてください」
「はい。解体場は当ギルドを出て左手にある建物です。宿屋については、テイムモンスターも泊まれる宿をご紹介しますよ。宿の名前は集いの屋根。場所の説明は口頭でよろしいでしょうか?」
「はい。お願いします」
「それではまず、ギルドを出ていただいて、右へ行きます。するとすぐに右へ行く道がございますので、そこを通り、またすぐにある別れ道を左へ曲がると、少ししたら看板が見えます」
俺達は受付嬢の説明で、宿の場所を憶える。
「ありがとうございます。そこに行ってみます」
「他にご用件はございますか?」
「いいえ。皆、行こう」
「あ、私は魔法ギルドの場所が知りたいんですけど」
「魔法ギルドなら、ここを出て右へ進んでもらえば、その先で見つかりますよ」
「ありがとうございます。ぜひ行ってみます」
「ありがとうございました。さあ、皆。もう行こう」
俺達はすぐにギルドを出て、まず解体場で今まで倒したモンスターを渡す。それを解体してもらって得られる報酬を明日もらうと伝えた後、宿屋に行った。
「あー、あれモンスター、かわいい!」
「羽が生えてる、きれい!」
「剣が動いてるぜ、かっこいい!」
歩いている途中、俺達を見て喜ぶ子供達を見た。
ふっ。悪い気はしないな。ていうか、たぶん可愛いって言われてるの俺か。一体どんな見た目なんだ俺。きっと鏡見たら驚くだろうな。
少し歩いて、無事宿屋、集いの屋根まで来る。
皆で宿屋に入ると、入ってすぐは食堂になっていた。そして丁度すぐ近くに元気な少女がいて、俺達を見ると笑顔で言った。
「きゃーっ、モンスターっ、凄い、久しぶりー!」
エプロンをつけているのを見る限り、おそらくこの少女が宿屋の人なのだろう。久しぶりにテイムモンスターを見たらしく、どうやら大歓迎ムードのようだ。
「きゃーきゃーっ、初めて見る、ゴロキュウよーっ。翼があるのはハヤイモでしょ。剣なのはフユーバ。どれも良いわあ。トリプル初顔合わせ。いやーんテンション上がるー!」
テンション上がるのは良いとして、話を進めてくれませんか?
「あ、あの。一晩、泊まれますか。二人と、テイムモンスター三人なんですけど」
リシェスがそう言うと、宿屋の少女は何度もうなずいた。
「うんうん、ぜひうちで泊まっていって。勿論テイムモンスター用の部屋もあるわ。モンスター達は皆小さいサイズだし、人用で一部屋、テイムモンスター用で一部屋の宿泊でいい?」
「はい。いいです」
リシェスがうなずく。
「オーケー。テイムモンスターの部屋代は、取らないわ。ただし、ごはん代はいただくから。まあそれも、あなたがごはんをあげなければだけどね」
「あの、ごはんの用意はあるんですけど、トルクヤ、私のフユーバがあまり食欲無くて、ああ、今は私のモンスターじゃないんですけど」
「んん、事情はよく知らないけど、フユーバの好物は鉱物よ。だから、与えるごはんを間違えてたのかも」
「え?」
ん、俺も今の発言はよくわからなかったな。
「フユーバはよく、倒した冒険者の剣や鉄の盾を食べるの。知らなかった?」
「は、はい。知りませんでした」
「うちに任せてもらえば、フユーバに朝晩、鉄のインゴットを食べさせてあげる。ゴロキュウとハヤイモにも、好物のレレモンとポッポテトをごちそうしてあげる。どうする、ごはんもこっちに任せてもらえる?」
「そ、そうだったんですね。知りませんでした。はい。では、モンスター達のごはんもそちらにお任せします」
「よしきた。はあー、この子達にごはんをあげられるのね。楽しみ!」
「それでは、すぐに部屋を案内してくれると、助かりますけど」
「はいはい。わかってますって。ところで、お客さん。モンスター達の名前は、トルクヤちゃんと、誰ちゃんに、誰ちゃん?」
「あー。ゴロキュウがポットで、ハヤイモがカップです。それで私がリシェス。こっちがスフィン」
「はい。そうそう、トルクヤちゃん、ポットちゃん、カップちゃんに、リシェスにスフィンね。私は集いの屋根の看板娘、エルゼナ。当宿をご利用いただいて、真にありがとうございます。まずテイムモンスター用の部屋は、こっちよ!」
そう言ってエルゼナが元気よく歩き出す。俺達はその後についていった。
エルゼナは元気だし、モンスターの宿泊費は取らないって言うし、結構良い宿っぽいな。
案内されたのは3畳一間の一室、みたいな部屋。ベッドっぽい藁とトイレっぽい砂場があって、まあまあ良いんじゃないか?
俺、カップ、トルクヤはその部屋に入る。ひとまずここで、リシェスとスフィンとはお別れかな。
「はい。ここがモンスター用の部屋よ。もちろんリシェスとスフィンは、いつでもここに立ち寄っていいから。これが鍵ね」
「はい。それでは、私達の部屋を案内してもらった後、早速皆とまた会いたいと思います」
「人用の部屋はこっち。渡り廊下を渡って二階ね」
「皆。また後で会えるから、大人しくしててね」
ここで、リシェス、スフィン、エルゼナは行ってしまった。
俺達三人は、三人を見送った後、それぞれ顔を合わせる。
「(さて、それじゃあ一休みするか)ゴロッキュー」
「(ここに入れられて、この後俺達どうすんだ?)フユーバ?」
「(ここ、何もないよ?)イモオ?」
「(それでも、ゆっくり休めるだろ。とにかく、リシェスが来るまで休んでようぜ。それにごはんも、用意してくれるらしい。今日はもう、ずっとのんべんだらりとしていよう)ゴロッキュ、ゴーローキュ」
「(俺はまだ戦える!)フユーバ!」
「(ボクも!)イモモ!」
「(だから、今は戦わなくていいの。休憩中。それよりお前ら、こんな狭い場所で暴れるなよな。もし何か壊しでもしたら、俺達ここから放り出されるかもしれないから、絶対大人しくしてろよ)ゴローキュ」
「(う、うぐう)フユ、バ」
「(本当に何もしないの?)イモモ?」
仕方ないので、俺は真っ先に藁のベッドの上で寝た。
「(ほーら。お前たちも休め。気持ち良いぞ。今までずっと歩きどおしだったし、ここは明日に備えて寝っ転がるべきだ)ゴロッキュ、ゴロキュー」
「(ポ、ポットがそう言うなら、そうするけど)イモ」
「(敵もいねえんなら、仕方ねえな)フユーバ」
こうして俺達は、ゴロゴロッと寝っ転がった。
「(こ、これは、結構良い!)イモ!」
「(たまにはこういうのもいいな)フユバ」
「(だろ。今はリシェスとごはんを待って、ずっと寝てようぜ)ゴロッキュー」
その後、すぐにリシェスが来て、テレパシーとチェックの練習をしたり、エルゼナが俺達をブラッシングしにやって来たり、他にもおじさんとおばさんが頭をなでに来たりした。
そして夜ごはんは、とにかく美味かった。
「(うま、この実うまっ!)ゴロッキュー!」
「(パクパク、このごはん美味しいー!)イモー!」
「(うめえ、うめえー!)フユーバー!」
「ふふっ。食べてる食べてる。気持ちの良い食べっぷりだねえ」
「本当ね」
「テイムモンスター対応の宿屋をやっていて、本当に良かった」
なぜか、宿屋の親子が三人そろって俺達の食事風景を眺めてたけど、まあ、それはいいや。
とにかく、宿屋、集いの屋根は快適だった。
翌日。朝ごはんを食べ終えた俺達は、今日もまた冒険者ギルドへ向かった。
今日こそ、ランクアップ試験に合格して、リシェスを2ランクに上げるのだ。
昨日と同じ受付嬢と、顔を合わせる。
「おはようございます。今日は、モンスターテイマーの2ランク昇進試験に挑戦ですか?」
「はい。ぜひ受けさせてください!」
「では、ここに自分の名前、テイムモンスターの名前を書いて、更に参加費をもらいます」
簡単な手続きを行って、後は待つだけとなる。俺達は隣スペースの酒場に座って、そこでスフィンと顔を合わせた。
「それじゃあ、行ってくるね、スフィン」
「ええ。試験、頑張って。トルクヤとここで、お留守番してるわ」
「(ん?)ユバ?」
「うん。お願いスフィン。トルクヤも、私達頑張ってくるからね」
「(俺はここで待つのか?)フユーバ?」
「(フユーバ。申し訳ないが、今のリシェスのテイムモンスターは俺とカップだけなんだ。もう少し待てば、トルクヤも正式にリシェスのテイムモンスターになれるから、それまで、ちょっと別行動だ。大丈夫、俺達、絶対勝ってくるから!)ゴロッキュ、ゴロキュー!」
「(よくわからないけど、ボクも頑張る!)イモーモー!」
「(だったら、俺も頑張るぜー!)フユーバー!」
「(うん。もう一回念をおしとくけど、今頑張るのは、俺とカップ、そしてリシェスだけなんだ。トルクヤは絶対ここで待機。どこにも行くなよ。わかってくれ。これが終わったら、また一緒に冒険しよう)ゴロッキュゴローキュー」
「(うーん。なんだか納得いかねえが、とにかく、待ってればいいんだな。わかった。だったら待ってやる!)フユーバ!」
「(おう、その意気だ!)ゴローキュー!」
「(その意気だー!)イモー!」
「ふふ。なんだかモンスター達はにぎやかね」
「皆も、この試験が大事だってわかってくれてるのよ。よし。私、全力で頑張る!」
皆で意気込んでいると、絶対大丈夫な気がしてきた。
よし。気合い入れて一発合格だ。何をやるかは知らないが、無様な姿はさらせないぜ!
「リシェスさーん、テイムモンスターと共におこしくださーい!」
ギルドの職員が、俺達を呼んだ。
「よし、行こう。ポット。カップ!」
「(おう!)ゴロキュー!」
「(うん!)イモー!」
「(俺は待ってる。早く来いよ!)フユーバ!」
俺、カップ、リシェスはギルド職員につれられて、ギルド館奥へ行く。
すると一度ギルド館を出た俺達は、道場みたいな場所に案内された。地面は土だが、天井とか壁はしっかりとした板ばり&石作りだ。
そして、その道場には一人の女と、二人のモンスターが待っていた。
女は、肌が黒くてポニーテールの長身女性。皮鎧と額当てが似合っている。モンスターもつれているということは、彼女もモンスターテイマーか。
モンスターは、見た目鳥とサイ。鳥は白と緑のグラデーションで、インコを大きくしたような感じ。サイはツノは短いが、体のあちこちに岩がくっついている、頑丈そうな見た目だ。
この場に案内してくれたギルド職員とは、出入り口で別れる。そして、腕組みをしていた女が、よく通る声で言った。
「お前が2ランクになりたいというテイマーだな。まず、名を名乗れ!」
「わ、私はリシェスです。で、ゴロキュウがポット。ハヤイモがカップ!」
「(そうだ!)ゴロキュー!」
「(そうだそうだ!)イモイモー!」
女と相手モンスター達はうなずく。
「良い返事だ。私はナシャール。今回の試験の試験官だ。そしてお前達の相手をしてやるのが、このスピニンコのシャットと、タテサイのルゴーだ」
シャットとルゴー。俺達の相手か。やっぱり、バトルはするんだな。いいだろう、相手は強そうだが、勝ってやる。
「さて。それではまず、第一の試練だ。最初にリシェス、お前のモンスターテイマーとしての実力を確かめたい。早速仲間とテレパシーで会話してくれ。その次はチェックを使うんだ。いいな?」
「は、はい!」
げげー、いきなり最大の試練がやってきたー!
リシェスは今まで一度も、テレパシーとチェックを成功させたことがない。これは、まさか最初から詰みか?
「い、いくよ。ポット、カップ!」
「(こい、リシェス!)ゴロッキュ!」
「(任せて!)イモイモー!」
「はああ、テレパシー!」
「テレパシー!」
リシェスとナシャールが、ほぼ同時にテレパシーを使う。
そしたら、俺は。
「(この試験、トルクヤのために絶対勝つぞ!)ゴロッキュー!」
「(そうだ、勝つぞー!)イモモー!」
「うっ」
リシェスがうめいた。どうだ?
「リシェス。今ポットとカップがなんと言ったか、言ってみろ!」
ナシャールが言う。さあ、リシェス。ここで頑張るんだ!
「だ、ダメです。私では、テレパシーを使うことができません」
ダメかー。
「(気にするな、リシェス。リシェスの良いところは、他にもある!)ゴロッキュー!」
「(頑張れリシェス!)イモモー!」
「ふむ。テレパシーは無理か。では、チェックはどうだ?」
「はい。すうー、はー。チェック!」
リシェスは気を取り直して、チェックも試した。
けど。
「ううう。ダメです。チェックもできませーん」
やっぱりかー。
「(気にするな、リシェス。次で勝負だ!)ゴロッキュー!」
「(そうだ、勝負だー!)イモー!」
「ふむ。チェックも無理か。では、次の試験だ」
ナシャールはそう言うと、後ろに置いてあった袋をこっちに持って来た。
ナシャールはその袋から、皿と木の実を出す。
「リシェス。これはプチプリの実だ。今この実をポットとカップの前に出すから、それを食べられないように我慢させてみろ。命令でな。いいな?」
「は、はい。わかりました!」
要するに、今回は待ての試験か。いいだろう、やってやる!
「(いいか、カップ。目の前に置かれた物を、絶対食べるんじゃないぞ!)ゴロッキュウ!」
「(うん、わかった。食べない!)イモ!」
「ふっ。モンスター達の方は威勢が良いな」
ナシャールはそう言いつつ笑い、置いた皿の上で、木の実の殻をパカッと割った。
すると、中からこげ茶色のタレがかかった黄色いプルプル物体が現れた。
あ、あれはまさか、プッチンなプリン?
「(くんくん、わあ、美味しそうー!)イモイモー!」
あああ、カップがプチプリの実の香りにひきつけられている!
「ポット、カップ、それは食べちゃダメ。少し待ってて。お願いよ!」
「(そうだぞ、カップ。今は待つんだ。耐えろ!)ゴロッキュゴロッキュー!」
「(うわあー、美味しそうー)イモイモイモー」
「(カップ、目の前のことを考えるな。トルクヤのことを考えろ!)ゴロッキュウー!」
「(はっ。トルクヤ!)イモオ!」
よ、よし。なんとかカップの意識をプチプリから引き離せそうだ。
「(そうだ。カップ。トルクヤと一緒にいたいんだろ。そのために、食べるんじゃない!)ゴロッキュー!」
「(食べない。トルクヤのために、食べない。ううう、頑張る。でも美味しそうー!)イモオオオオー!」
「(耐えろ、カップ。耐えろー!)ゴロキュー!」
俺達が頑張っている間に、ナシャールはプチプリの実を二つ用意した。
「(ふーたーつーもーあーるー!)イーモー!」
「(カップ。目をつぶれ。平常心だ、平常心!)ゴロッキュー!」
「お願い、二人共。もうちょっと待ってて。後で絶対同じの買ってあげるから!」
長いようで、しかしそれ程経ってはいないような時間が過ぎた。そこでナシャールが言う。
「よし。もういいぞ。二人共食べてよし」
「や、やったあ!」
リシェスが喜ぶ。
「(がーまーんーすーるー!)イーモーイーモーイー!」
「(カップ。もう食べていいってよ!)ゴロッキュー!」
よだれをたらしまくっているカップに、そう言ってやる。
「(ほんと、リシェス、本当?)イモオ?」
「二人共、よく頑張ったね。プチプリ、食べていいって!」
「(やったー!)イモー!」
「(それじゃあ俺もー!)ゴロキュー!」
早速、我慢しまくったプチプリの実をガツガツ食べる。おお、味はまんまプリンだ。普通な味だが、甘い香りが特に強くてどうも気をそらせないんだよな!
「(ガツガツガツガツ)ゴロッキュゴロッキュゴロッキュゴロッキュ」
「(ガツガツガツガツ)イモイモイモイモ」
「二人共、美味しそう」
「ふふ。悪いけどリシェスは、後で食べてね。さて、これを食べ終えたら、最後の試験よ」
きれいに平らげた俺達を前にして、ナシャールがプチプリの実を置いていた皿を片付ける。
そしてナシャールは壁端に寄って、ハンドサインでスピニンコのシャットと、タテサイのルゴーを前に出した。
「次はあなた達の強さを計る。このシャットと、ルゴーと戦ってもらう。ただし、そちらはリシェス、ポット、カップの三人でかかってこい。こちらもその三人に攻撃をさせる。いいな?」
「はい!」
「(来い!)ゴロッキュー!」
「(え、戦う、やっぱり、敵だったんだ!)イモー!」
「ふっ。私が戦闘不能と言ったら、そいつとの戦いを即座にやめてもらうぞ。それでは、リシェス、ポット、カップ、シャット、ルゴー。戦闘訓練、スタートだ!」
「(いくぜー!)スピー!」
「(来いー!)サイサイサイー!」
「ポット、カップ、目の前の二人を倒して!」
「(よしきた!)ゴロッキュー!」
「(任せて!)イモー!」
俺達四人のモンスターが、ほぼ同時に接近する。
この戦いで、なんとかナシャールに認めてもらうんだ。そして、2ランクに昇進だ!
「(風弾幕!)スピイー!」
「(激突!)サイー!」
まずは相手が先に動いた。そしてシャットの攻撃、無数の風の弾を放つ弾幕は、俺達三人全員に向けられている。
リシェスにも攻撃がいってしまうが、今は仕方ない。俺はこの二人の攻撃を、どうにか切り抜けなければ。
「(鳴き声、そしてふっわふわガード!)ゴロッキュー!」
「(攻撃は凄いけど、当たらないー!)イッモオー!」
「小障壁!」
俺は体毛をボワンとふくらませ、毛のガードで攻撃を耐える。
カップは翼を羽ばたかせ、高速移動で風弾幕を回避。
リシェスはどうやら、魔法で防げているようだった。
よし。どうやら一方的な展開にはならなそうだぞ!
「(おらあ、くらえー!)サイー!」
ルゴーの激突が、俺に当たる。
俺はその攻撃もふっわふわな部分で受け止めて、ポーンとボールのようにふきとんだ。ダメージはほぼない。
そして、着地。
「(私の相手はお前だ!)スピー!」
「(俺と力試しをして、勝てると思うなよ!)サイー!」
シャットはカップを。ルゴーは俺を狙って動き出す。ならこっちも、相手の動きについていかないと!
「ポット、カップ、二人共くるよ。迎え撃って!」
「(カップ。シャットとスピード勝負だ。俺はルゴーと戦う!)ゴロッキュー!」
「(わかった!)イモー!」
「(いくぞ、ルゴー。たいあたりー!)ゴロキュー!」
ルゴーは見るからに岩属性だ。なら、電気属性の攻撃は無意味だろう。
ここはなんとか、たいあたりで対抗するしかない。
「(ふん、来い!)サイー!」
「(うおー!)ゴロキュー!」
ドカーン、正面衝突!
でも、ルゴーは大してダメージを受けていないような?
「(全然効かないぜー!)サイサイー!」
「(うおー、こいつどうやって倒せばいいんだー!)ゴロッキュー!」
「(激突ー!)サイー!」
ぐううっ。手痛い反撃をくらってしまった。俺は少し吹き飛ぶ。
でも、こっちだって防御型モンスターのゴロキュウだ。大したダメージはもらっていない。まだまだやれるぞ!
「(へっ。こんなもんか、ルゴー!)ゴロッキュウー!」
「(石射出!)サイー!」
「(へ。うわ、ふっわふわガード!)ゴロッキュー!」
あ、危ない。相手は目の前に石を生み出し、それを高速でとばしてきた!
俺は慌てて防御する。ううっ。額に当たった。けど、まだなんてことはない。あと数発撃たれても耐えられる!
でも、依然相手を倒すための突破口が見えないぞ!
「(翼アタックー!)スピー!」
「(たいあたりー!)イモー!」
カップとシャットは高速戦闘を繰り広げている。その強さは、互角ってところか。いや、少しカップがおされている?
「(く、まだまだー!)イモー!」
「(なかなか速いが、それでも私の方が上だー!)スピピピピー!」
く、まずい。俺達、どっちもおされているぞ。どうやら地力は向こうの方が上みたいだ!
「(く、たいあたりー!)ゴロキュー!」
「(ふん、激突ー!)サイー!」
俺とルゴーは、ぶつかり合う。俺はこれしかできないんだが、やっぱりこのままじゃダメだ。パワーが足りない!
なんとかして、なんとかして現状を打開しなければ!
「ポット、カップ、小回復、小回復!」
リシェスが俺とカップを回復してくれる。ありがとう、リシェス。
そうだ。俺にはリシェスとカップもいる。そして、逆もまたしかりだ。ここは、ルゴーにばかり集中しないで、もっと周りをよく見よう!
「(こうなったら!)ゴロキュー!」
「(ふん。離れても攻撃は続くぜ。石射出!)サイサイー!」
「(ふっわふわガード!)ゴロキュウー!」
俺はひとまず、丁寧に相手の攻撃を脇腹で受ける。落ち着け、集中しろ。俺。今が絶好のチャンスのはずだ。
ここから一気に、勝利をもぎとってやる!
まあ、それだけ人が多いってことなんだろう。それより、ここでモンスターテイマーのランクアップ試験が受けられるんだよな。ちょっとドキドキする。
受付には、少し人が並んでいた。俺達はその列に並ぶ。周りの冒険者達は俺達モンスターを気にしているけど、そんな視線はなるべく気にしないようにする。
いや、でも、常に周囲への警戒はしておかないとな。リシェスやスフィンに近づく男なんかがいたら、要注意だ。すぐに追い払わなければ。
そうしていると、やがて俺達の番が回ってきた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。本日はどういったご用件でしょうか?」
受付嬢に、そううながされる。
「あの、ここでモンスターテイマーのランクアップ試験を受けられませんか?」
「ええ、可能ですよ。お二人共受けられますか?」
「いえ、私はつきそいです。こっちが、三人のモンスターをテイムしたいんですけど、まだランクが1なので」
「なるほど。試験は今日中にも受けられますよ。早速試験官を呼びますか?」
「い、いいえ。やっぱり、明日にします。今日は、まだ町に来たばかりだから。明日でも大丈夫ですよね?」
「はい。かまいませんよ。ご用件はそれだけですか?」
「あ、解体場と、宿屋の場所を教えてください」
「はい。解体場は当ギルドを出て左手にある建物です。宿屋については、テイムモンスターも泊まれる宿をご紹介しますよ。宿の名前は集いの屋根。場所の説明は口頭でよろしいでしょうか?」
「はい。お願いします」
「それではまず、ギルドを出ていただいて、右へ行きます。するとすぐに右へ行く道がございますので、そこを通り、またすぐにある別れ道を左へ曲がると、少ししたら看板が見えます」
俺達は受付嬢の説明で、宿の場所を憶える。
「ありがとうございます。そこに行ってみます」
「他にご用件はございますか?」
「いいえ。皆、行こう」
「あ、私は魔法ギルドの場所が知りたいんですけど」
「魔法ギルドなら、ここを出て右へ進んでもらえば、その先で見つかりますよ」
「ありがとうございます。ぜひ行ってみます」
「ありがとうございました。さあ、皆。もう行こう」
俺達はすぐにギルドを出て、まず解体場で今まで倒したモンスターを渡す。それを解体してもらって得られる報酬を明日もらうと伝えた後、宿屋に行った。
「あー、あれモンスター、かわいい!」
「羽が生えてる、きれい!」
「剣が動いてるぜ、かっこいい!」
歩いている途中、俺達を見て喜ぶ子供達を見た。
ふっ。悪い気はしないな。ていうか、たぶん可愛いって言われてるの俺か。一体どんな見た目なんだ俺。きっと鏡見たら驚くだろうな。
少し歩いて、無事宿屋、集いの屋根まで来る。
皆で宿屋に入ると、入ってすぐは食堂になっていた。そして丁度すぐ近くに元気な少女がいて、俺達を見ると笑顔で言った。
「きゃーっ、モンスターっ、凄い、久しぶりー!」
エプロンをつけているのを見る限り、おそらくこの少女が宿屋の人なのだろう。久しぶりにテイムモンスターを見たらしく、どうやら大歓迎ムードのようだ。
「きゃーきゃーっ、初めて見る、ゴロキュウよーっ。翼があるのはハヤイモでしょ。剣なのはフユーバ。どれも良いわあ。トリプル初顔合わせ。いやーんテンション上がるー!」
テンション上がるのは良いとして、話を進めてくれませんか?
「あ、あの。一晩、泊まれますか。二人と、テイムモンスター三人なんですけど」
リシェスがそう言うと、宿屋の少女は何度もうなずいた。
「うんうん、ぜひうちで泊まっていって。勿論テイムモンスター用の部屋もあるわ。モンスター達は皆小さいサイズだし、人用で一部屋、テイムモンスター用で一部屋の宿泊でいい?」
「はい。いいです」
リシェスがうなずく。
「オーケー。テイムモンスターの部屋代は、取らないわ。ただし、ごはん代はいただくから。まあそれも、あなたがごはんをあげなければだけどね」
「あの、ごはんの用意はあるんですけど、トルクヤ、私のフユーバがあまり食欲無くて、ああ、今は私のモンスターじゃないんですけど」
「んん、事情はよく知らないけど、フユーバの好物は鉱物よ。だから、与えるごはんを間違えてたのかも」
「え?」
ん、俺も今の発言はよくわからなかったな。
「フユーバはよく、倒した冒険者の剣や鉄の盾を食べるの。知らなかった?」
「は、はい。知りませんでした」
「うちに任せてもらえば、フユーバに朝晩、鉄のインゴットを食べさせてあげる。ゴロキュウとハヤイモにも、好物のレレモンとポッポテトをごちそうしてあげる。どうする、ごはんもこっちに任せてもらえる?」
「そ、そうだったんですね。知りませんでした。はい。では、モンスター達のごはんもそちらにお任せします」
「よしきた。はあー、この子達にごはんをあげられるのね。楽しみ!」
「それでは、すぐに部屋を案内してくれると、助かりますけど」
「はいはい。わかってますって。ところで、お客さん。モンスター達の名前は、トルクヤちゃんと、誰ちゃんに、誰ちゃん?」
「あー。ゴロキュウがポットで、ハヤイモがカップです。それで私がリシェス。こっちがスフィン」
「はい。そうそう、トルクヤちゃん、ポットちゃん、カップちゃんに、リシェスにスフィンね。私は集いの屋根の看板娘、エルゼナ。当宿をご利用いただいて、真にありがとうございます。まずテイムモンスター用の部屋は、こっちよ!」
そう言ってエルゼナが元気よく歩き出す。俺達はその後についていった。
エルゼナは元気だし、モンスターの宿泊費は取らないって言うし、結構良い宿っぽいな。
案内されたのは3畳一間の一室、みたいな部屋。ベッドっぽい藁とトイレっぽい砂場があって、まあまあ良いんじゃないか?
俺、カップ、トルクヤはその部屋に入る。ひとまずここで、リシェスとスフィンとはお別れかな。
「はい。ここがモンスター用の部屋よ。もちろんリシェスとスフィンは、いつでもここに立ち寄っていいから。これが鍵ね」
「はい。それでは、私達の部屋を案内してもらった後、早速皆とまた会いたいと思います」
「人用の部屋はこっち。渡り廊下を渡って二階ね」
「皆。また後で会えるから、大人しくしててね」
ここで、リシェス、スフィン、エルゼナは行ってしまった。
俺達三人は、三人を見送った後、それぞれ顔を合わせる。
「(さて、それじゃあ一休みするか)ゴロッキュー」
「(ここに入れられて、この後俺達どうすんだ?)フユーバ?」
「(ここ、何もないよ?)イモオ?」
「(それでも、ゆっくり休めるだろ。とにかく、リシェスが来るまで休んでようぜ。それにごはんも、用意してくれるらしい。今日はもう、ずっとのんべんだらりとしていよう)ゴロッキュ、ゴーローキュ」
「(俺はまだ戦える!)フユーバ!」
「(ボクも!)イモモ!」
「(だから、今は戦わなくていいの。休憩中。それよりお前ら、こんな狭い場所で暴れるなよな。もし何か壊しでもしたら、俺達ここから放り出されるかもしれないから、絶対大人しくしてろよ)ゴローキュ」
「(う、うぐう)フユ、バ」
「(本当に何もしないの?)イモモ?」
仕方ないので、俺は真っ先に藁のベッドの上で寝た。
「(ほーら。お前たちも休め。気持ち良いぞ。今までずっと歩きどおしだったし、ここは明日に備えて寝っ転がるべきだ)ゴロッキュ、ゴロキュー」
「(ポ、ポットがそう言うなら、そうするけど)イモ」
「(敵もいねえんなら、仕方ねえな)フユーバ」
こうして俺達は、ゴロゴロッと寝っ転がった。
「(こ、これは、結構良い!)イモ!」
「(たまにはこういうのもいいな)フユバ」
「(だろ。今はリシェスとごはんを待って、ずっと寝てようぜ)ゴロッキュー」
その後、すぐにリシェスが来て、テレパシーとチェックの練習をしたり、エルゼナが俺達をブラッシングしにやって来たり、他にもおじさんとおばさんが頭をなでに来たりした。
そして夜ごはんは、とにかく美味かった。
「(うま、この実うまっ!)ゴロッキュー!」
「(パクパク、このごはん美味しいー!)イモー!」
「(うめえ、うめえー!)フユーバー!」
「ふふっ。食べてる食べてる。気持ちの良い食べっぷりだねえ」
「本当ね」
「テイムモンスター対応の宿屋をやっていて、本当に良かった」
なぜか、宿屋の親子が三人そろって俺達の食事風景を眺めてたけど、まあ、それはいいや。
とにかく、宿屋、集いの屋根は快適だった。
翌日。朝ごはんを食べ終えた俺達は、今日もまた冒険者ギルドへ向かった。
今日こそ、ランクアップ試験に合格して、リシェスを2ランクに上げるのだ。
昨日と同じ受付嬢と、顔を合わせる。
「おはようございます。今日は、モンスターテイマーの2ランク昇進試験に挑戦ですか?」
「はい。ぜひ受けさせてください!」
「では、ここに自分の名前、テイムモンスターの名前を書いて、更に参加費をもらいます」
簡単な手続きを行って、後は待つだけとなる。俺達は隣スペースの酒場に座って、そこでスフィンと顔を合わせた。
「それじゃあ、行ってくるね、スフィン」
「ええ。試験、頑張って。トルクヤとここで、お留守番してるわ」
「(ん?)ユバ?」
「うん。お願いスフィン。トルクヤも、私達頑張ってくるからね」
「(俺はここで待つのか?)フユーバ?」
「(フユーバ。申し訳ないが、今のリシェスのテイムモンスターは俺とカップだけなんだ。もう少し待てば、トルクヤも正式にリシェスのテイムモンスターになれるから、それまで、ちょっと別行動だ。大丈夫、俺達、絶対勝ってくるから!)ゴロッキュ、ゴロキュー!」
「(よくわからないけど、ボクも頑張る!)イモーモー!」
「(だったら、俺も頑張るぜー!)フユーバー!」
「(うん。もう一回念をおしとくけど、今頑張るのは、俺とカップ、そしてリシェスだけなんだ。トルクヤは絶対ここで待機。どこにも行くなよ。わかってくれ。これが終わったら、また一緒に冒険しよう)ゴロッキュゴローキュー」
「(うーん。なんだか納得いかねえが、とにかく、待ってればいいんだな。わかった。だったら待ってやる!)フユーバ!」
「(おう、その意気だ!)ゴローキュー!」
「(その意気だー!)イモー!」
「ふふ。なんだかモンスター達はにぎやかね」
「皆も、この試験が大事だってわかってくれてるのよ。よし。私、全力で頑張る!」
皆で意気込んでいると、絶対大丈夫な気がしてきた。
よし。気合い入れて一発合格だ。何をやるかは知らないが、無様な姿はさらせないぜ!
「リシェスさーん、テイムモンスターと共におこしくださーい!」
ギルドの職員が、俺達を呼んだ。
「よし、行こう。ポット。カップ!」
「(おう!)ゴロキュー!」
「(うん!)イモー!」
「(俺は待ってる。早く来いよ!)フユーバ!」
俺、カップ、リシェスはギルド職員につれられて、ギルド館奥へ行く。
すると一度ギルド館を出た俺達は、道場みたいな場所に案内された。地面は土だが、天井とか壁はしっかりとした板ばり&石作りだ。
そして、その道場には一人の女と、二人のモンスターが待っていた。
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この場に案内してくれたギルド職員とは、出入り口で別れる。そして、腕組みをしていた女が、よく通る声で言った。
「お前が2ランクになりたいというテイマーだな。まず、名を名乗れ!」
「わ、私はリシェスです。で、ゴロキュウがポット。ハヤイモがカップ!」
「(そうだ!)ゴロキュー!」
「(そうだそうだ!)イモイモー!」
女と相手モンスター達はうなずく。
「良い返事だ。私はナシャール。今回の試験の試験官だ。そしてお前達の相手をしてやるのが、このスピニンコのシャットと、タテサイのルゴーだ」
シャットとルゴー。俺達の相手か。やっぱり、バトルはするんだな。いいだろう、相手は強そうだが、勝ってやる。
「さて。それではまず、第一の試練だ。最初にリシェス、お前のモンスターテイマーとしての実力を確かめたい。早速仲間とテレパシーで会話してくれ。その次はチェックを使うんだ。いいな?」
「は、はい!」
げげー、いきなり最大の試練がやってきたー!
リシェスは今まで一度も、テレパシーとチェックを成功させたことがない。これは、まさか最初から詰みか?
「い、いくよ。ポット、カップ!」
「(こい、リシェス!)ゴロッキュ!」
「(任せて!)イモイモー!」
「はああ、テレパシー!」
「テレパシー!」
リシェスとナシャールが、ほぼ同時にテレパシーを使う。
そしたら、俺は。
「(この試験、トルクヤのために絶対勝つぞ!)ゴロッキュー!」
「(そうだ、勝つぞー!)イモモー!」
「うっ」
リシェスがうめいた。どうだ?
「リシェス。今ポットとカップがなんと言ったか、言ってみろ!」
ナシャールが言う。さあ、リシェス。ここで頑張るんだ!
「だ、ダメです。私では、テレパシーを使うことができません」
ダメかー。
「(気にするな、リシェス。リシェスの良いところは、他にもある!)ゴロッキュー!」
「(頑張れリシェス!)イモモー!」
「ふむ。テレパシーは無理か。では、チェックはどうだ?」
「はい。すうー、はー。チェック!」
リシェスは気を取り直して、チェックも試した。
けど。
「ううう。ダメです。チェックもできませーん」
やっぱりかー。
「(気にするな、リシェス。次で勝負だ!)ゴロッキュー!」
「(そうだ、勝負だー!)イモー!」
「ふむ。チェックも無理か。では、次の試験だ」
ナシャールはそう言うと、後ろに置いてあった袋をこっちに持って来た。
ナシャールはその袋から、皿と木の実を出す。
「リシェス。これはプチプリの実だ。今この実をポットとカップの前に出すから、それを食べられないように我慢させてみろ。命令でな。いいな?」
「は、はい。わかりました!」
要するに、今回は待ての試験か。いいだろう、やってやる!
「(いいか、カップ。目の前に置かれた物を、絶対食べるんじゃないぞ!)ゴロッキュウ!」
「(うん、わかった。食べない!)イモ!」
「ふっ。モンスター達の方は威勢が良いな」
ナシャールはそう言いつつ笑い、置いた皿の上で、木の実の殻をパカッと割った。
すると、中からこげ茶色のタレがかかった黄色いプルプル物体が現れた。
あ、あれはまさか、プッチンなプリン?
「(くんくん、わあ、美味しそうー!)イモイモー!」
あああ、カップがプチプリの実の香りにひきつけられている!
「ポット、カップ、それは食べちゃダメ。少し待ってて。お願いよ!」
「(そうだぞ、カップ。今は待つんだ。耐えろ!)ゴロッキュゴロッキュー!」
「(うわあー、美味しそうー)イモイモイモー」
「(カップ、目の前のことを考えるな。トルクヤのことを考えろ!)ゴロッキュウー!」
「(はっ。トルクヤ!)イモオ!」
よ、よし。なんとかカップの意識をプチプリから引き離せそうだ。
「(そうだ。カップ。トルクヤと一緒にいたいんだろ。そのために、食べるんじゃない!)ゴロッキュー!」
「(食べない。トルクヤのために、食べない。ううう、頑張る。でも美味しそうー!)イモオオオオー!」
「(耐えろ、カップ。耐えろー!)ゴロキュー!」
俺達が頑張っている間に、ナシャールはプチプリの実を二つ用意した。
「(ふーたーつーもーあーるー!)イーモー!」
「(カップ。目をつぶれ。平常心だ、平常心!)ゴロッキュー!」
「お願い、二人共。もうちょっと待ってて。後で絶対同じの買ってあげるから!」
長いようで、しかしそれ程経ってはいないような時間が過ぎた。そこでナシャールが言う。
「よし。もういいぞ。二人共食べてよし」
「や、やったあ!」
リシェスが喜ぶ。
「(がーまーんーすーるー!)イーモーイーモーイー!」
「(カップ。もう食べていいってよ!)ゴロッキュー!」
よだれをたらしまくっているカップに、そう言ってやる。
「(ほんと、リシェス、本当?)イモオ?」
「二人共、よく頑張ったね。プチプリ、食べていいって!」
「(やったー!)イモー!」
「(それじゃあ俺もー!)ゴロキュー!」
早速、我慢しまくったプチプリの実をガツガツ食べる。おお、味はまんまプリンだ。普通な味だが、甘い香りが特に強くてどうも気をそらせないんだよな!
「(ガツガツガツガツ)ゴロッキュゴロッキュゴロッキュゴロッキュ」
「(ガツガツガツガツ)イモイモイモイモ」
「二人共、美味しそう」
「ふふ。悪いけどリシェスは、後で食べてね。さて、これを食べ終えたら、最後の試験よ」
きれいに平らげた俺達を前にして、ナシャールがプチプリの実を置いていた皿を片付ける。
そしてナシャールは壁端に寄って、ハンドサインでスピニンコのシャットと、タテサイのルゴーを前に出した。
「次はあなた達の強さを計る。このシャットと、ルゴーと戦ってもらう。ただし、そちらはリシェス、ポット、カップの三人でかかってこい。こちらもその三人に攻撃をさせる。いいな?」
「はい!」
「(来い!)ゴロッキュー!」
「(え、戦う、やっぱり、敵だったんだ!)イモー!」
「ふっ。私が戦闘不能と言ったら、そいつとの戦いを即座にやめてもらうぞ。それでは、リシェス、ポット、カップ、シャット、ルゴー。戦闘訓練、スタートだ!」
「(いくぜー!)スピー!」
「(来いー!)サイサイサイー!」
「ポット、カップ、目の前の二人を倒して!」
「(よしきた!)ゴロッキュー!」
「(任せて!)イモー!」
俺達四人のモンスターが、ほぼ同時に接近する。
この戦いで、なんとかナシャールに認めてもらうんだ。そして、2ランクに昇進だ!
「(風弾幕!)スピイー!」
「(激突!)サイー!」
まずは相手が先に動いた。そしてシャットの攻撃、無数の風の弾を放つ弾幕は、俺達三人全員に向けられている。
リシェスにも攻撃がいってしまうが、今は仕方ない。俺はこの二人の攻撃を、どうにか切り抜けなければ。
「(鳴き声、そしてふっわふわガード!)ゴロッキュー!」
「(攻撃は凄いけど、当たらないー!)イッモオー!」
「小障壁!」
俺は体毛をボワンとふくらませ、毛のガードで攻撃を耐える。
カップは翼を羽ばたかせ、高速移動で風弾幕を回避。
リシェスはどうやら、魔法で防げているようだった。
よし。どうやら一方的な展開にはならなそうだぞ!
「(おらあ、くらえー!)サイー!」
ルゴーの激突が、俺に当たる。
俺はその攻撃もふっわふわな部分で受け止めて、ポーンとボールのようにふきとんだ。ダメージはほぼない。
そして、着地。
「(私の相手はお前だ!)スピー!」
「(俺と力試しをして、勝てると思うなよ!)サイー!」
シャットはカップを。ルゴーは俺を狙って動き出す。ならこっちも、相手の動きについていかないと!
「ポット、カップ、二人共くるよ。迎え撃って!」
「(カップ。シャットとスピード勝負だ。俺はルゴーと戦う!)ゴロッキュー!」
「(わかった!)イモー!」
「(いくぞ、ルゴー。たいあたりー!)ゴロキュー!」
ルゴーは見るからに岩属性だ。なら、電気属性の攻撃は無意味だろう。
ここはなんとか、たいあたりで対抗するしかない。
「(ふん、来い!)サイー!」
「(うおー!)ゴロキュー!」
ドカーン、正面衝突!
でも、ルゴーは大してダメージを受けていないような?
「(全然効かないぜー!)サイサイー!」
「(うおー、こいつどうやって倒せばいいんだー!)ゴロッキュー!」
「(激突ー!)サイー!」
ぐううっ。手痛い反撃をくらってしまった。俺は少し吹き飛ぶ。
でも、こっちだって防御型モンスターのゴロキュウだ。大したダメージはもらっていない。まだまだやれるぞ!
「(へっ。こんなもんか、ルゴー!)ゴロッキュウー!」
「(石射出!)サイー!」
「(へ。うわ、ふっわふわガード!)ゴロッキュー!」
あ、危ない。相手は目の前に石を生み出し、それを高速でとばしてきた!
俺は慌てて防御する。ううっ。額に当たった。けど、まだなんてことはない。あと数発撃たれても耐えられる!
でも、依然相手を倒すための突破口が見えないぞ!
「(翼アタックー!)スピー!」
「(たいあたりー!)イモー!」
カップとシャットは高速戦闘を繰り広げている。その強さは、互角ってところか。いや、少しカップがおされている?
「(く、まだまだー!)イモー!」
「(なかなか速いが、それでも私の方が上だー!)スピピピピー!」
く、まずい。俺達、どっちもおされているぞ。どうやら地力は向こうの方が上みたいだ!
「(く、たいあたりー!)ゴロキュー!」
「(ふん、激突ー!)サイー!」
俺とルゴーは、ぶつかり合う。俺はこれしかできないんだが、やっぱりこのままじゃダメだ。パワーが足りない!
なんとかして、なんとかして現状を打開しなければ!
「ポット、カップ、小回復、小回復!」
リシェスが俺とカップを回復してくれる。ありがとう、リシェス。
そうだ。俺にはリシェスとカップもいる。そして、逆もまたしかりだ。ここは、ルゴーにばかり集中しないで、もっと周りをよく見よう!
「(こうなったら!)ゴロキュー!」
「(ふん。離れても攻撃は続くぜ。石射出!)サイサイー!」
「(ふっわふわガード!)ゴロキュウー!」
俺はひとまず、丁寧に相手の攻撃を脇腹で受ける。落ち着け、集中しろ。俺。今が絶好のチャンスのはずだ。
ここから一気に、勝利をもぎとってやる!
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追記:2025/09/20
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もし気になる方は、
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