気づけばモンスター

十 的

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11あなたの魔法があったから、私は命を救われた

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 魔法ギルドを出たリシェスとスフィンは、冒険者ギルドに行った。
 そこでスフィンが、トルクヤをテイムモンスターにする。トルクヤには首輪がはめられないので、白いスカーフを持ち手に巻いた。
 リシェスは資料室に行って、旅の準備をする。その間俺達は、ホールで待機。トルクヤがテイムモンスター登録を終えてこちらに合流すると、スフィンまで資料室に行って、更に待った。
 その後、日が暮れた頃に冒険者ギルドを出て、俺達は八百屋等で大量の買い物を終えてから、家に帰った。
 ちなみにトルクヤは俺達と一緒。あくまでスフィンは、トルクヤのモンスターテイマーになってくれるだけの約束だからな。やはりトルクヤの生活は、俺達と一緒というわけだ。
 そして、夕ご飯前。父母がそろったところで、リシェスが言った。
「お父さん、お母さん。あのね。私、どうしても2ランク試験が受けられる町、クエリまで行かなくちゃいけなくなったの」
 リシェスは、トルクヤをテイムモンスターにしたいこと。そのために試験を受けないといけないこと。そしてもう旅立つ準備を終えたことを話す。
 その話をしっかりと聞いた両親は、すぐにうなずいた。
「そうか。なら、旅立たないといけないな。行っておいで、リシェス。行かないといけないなら、俺達には止められないさ」
「そうね。本当は町に行くなんて心配だけど、私達には仕事があるから。一緒にスフィンも行くんでしょ。それに、ポットやカップ、皆も。なら、少しは安心できるわ。気を付けていってらっしゃい」
「お父さん、お母さん、ありがとう」
 どうやら、これでリシェスは心置きなく旅立つことができそうだ。
 そして旅の間も、それから先も、俺が絶対リシェスを守ろう。これからはトルクヤもいることだし、戦力がますます頼もしくなったから、はりきろう。
 ところでトルクヤは、ごはんをあまり食べなかった。どうやら口に合わないらしい。でも少しは食べたから、半分安心、半分心配、といった感じだ。
 そして今日から、俺とカップはリシェスから離れて寝ることにした。
 トルクヤもリシェスの近くで寝たら、危ないからだ。トルクヤは全身が剣だからな。少しでも寝返りをうったら、リシェスがスパッ。なんてこともありうる。十分気をつけたいところだ。
 そしてそうなると、トルクヤ一人だけ離れて寝るのはかわいそうだから、俺とカップだけはトルクヤのそばで寝ることにする。もちろん俺達も、トルクヤの寝返りには十分注意する。
 リシェスは玄関で眠ろうとする俺達を見て寂しそうにしていたが、一緒の屋根の下で寝てるんだ。凄く寂しいって程でもないだろう。
 こうして、今日から一緒に眠る仲間が増えた。
 トルクヤ。これからもよろしく頼む。

 翌朝。俺達とスフィンは、村を出て旅立った。
 スフィンはモンスターテイマーの心得をギルドで聞いていたが、それもすぐに終わったので、朝ごはんを食べて早めに出発。という感じだ。
 リシェスは一通の手紙を預かっている。どうやら配達の依頼を受けたらしい。冒険者は、こういうおつかいも引き受けるのか。手紙のためにも、早く移動を終えたいものだ。
「さあ、皆。行くよ!」
「(おー!)レキュー!」
「(おー!)イモー!」
「(おー?)フユー?」
「にぎやかね。このパーティは」
「うん。それに、スフィンも一緒だから、更ににぎやか!」
「そうね。こういうの、久しぶりだわ。いるのは半分以上がモンスターだけど」
「へへ。貴重な体験でしょ」
「そういえばそうね。皆、道中の戦い、しっかりお願いね」
 任せろ。戦うのが俺達の役目だ。
 それに、ここら辺のモンスターはもう結構倒しているだろう。序盤は楽だと思う。
 加えて、トルクヤという強い味方もいるしな。
「(トルクヤ、戦闘になったら任せたぞ!)エッレキュー!」
「(ああ、俺は戦う!)フユーバッバ!」
 こうして合計五人の旅が始まった。
 安全に行って、リシェスのランク上げて、それで晴れてトルクヤも俺達の正式な仲間になるんだ。

 進み具合は順調。現れる敵は弱く、少なく、それ以外のアクシデントも発生しない。
 たまに、リシェスやスフィンがアイテムを採取している。この調子なら問題ないな。
 やがて夜になり、リシェス達は野宿を決断する。俺からすれば、久しぶりの野宿だ。
 リシェスとスフィンが毛布にくるまって、くっついて寝て、俺達は彼女達の三方向を警戒するように配置。更に一人ずつ順番に起きて見張りもする。道のど真ん中で眠るというのは危険に思えるが、その方が周囲を見やすいし、仲間の姿もすぐ確認できる。なかなか落ち着かないという難点は、慣れで解消するしかないだろう。
 幸い、夜の戦闘はなかった。きっと皆日中に活動するタイプなんだろう。
 俺達は朝ごはんを食べ、また歩き出す。
 それからすぐに、新たなモンスター達と出会った。

 ガサガサ、ガサリ。
 茂みが揺れたので皆で注目すると、そこから三体の二足歩行の赤いトカゲと、一体の四足歩行のオレンジ色のトカゲが現れた。
「(へ、朝飯発見だ)カキカー」
「(全員やるぞ。一人も逃がさん)カキカトカ」
「(俺は人間をやる。美味そうだからな)トカトカ」
「(なんだか固そうなのがいるな。俺はあいつを狙うぞ)ヒッタテー」
「あれはカキトカゲとヒッタテトカゲ。アカトカゲの変態後モンスター!」
 リシェスが敵の名前を教えてくれる。見た目と喋り方から察するに、三体いるのがカキトカゲで、もう一体がヒッタテトカゲか。
「数が多い。まずいわね」
 スフィンが後ずさる。そう、相手が四体ということは、凄く対処が難しい。基本戦闘をするのは、俺、カップ、トルクヤの三人だけだからだ。
「(ど、どうしよう。一体をボク、ポット、トルクヤが相手しても、一体余っちゃうよー!)イモ、イモー!」
「(だったら、俺が二体を引き付ける。今までもそうやってきたんだ、俺はやる!)フユ、フユーバ!」
 おお、頼もしいぞ、トルクヤ!
「(トルクヤ、頼めるか!)エレッキュー!」
 だったらここはほんの少しの間トルクヤに耐えてもらって、俺とカップが一体倒したら、すぐに援護に向かうしかないか!
 そう思った直後、なんとリシェスが前に出た。
「皆、敵を一体ずつ引き付けて。もう一体は、私とスフィンで相手する!」
 な、なんだってー!
「(そんな、リシェスっ)エレッキュッ」
「(さっさと倒そうぜー!)カキー!」
「(俺が多く倒してやるよー!)カキカー!」
「(ヒャッハー、血祭だあー!)カキトカー!」
「(お前ら、ぬかるなよ!)ヒッタテー!」
 くっ、相手が先につっこんできた!
「リ、リシェス、私は」
「スフィン、自分を信じて。そして、私も信じて。私達なら、できる、二人で戦える!」
 こうして、旅に出て初めて危機を感じる程の、集団戦が始まった。
「(く、ひとまず鳴き声!)エレキュー!」
 俺は声をあげて、戦意を高ぶらせる。これで、少しでも相手の視線がリシェスから外れてくれるとうれしいが。
「(火の玉射出!)カキー!」
「(火の玉射出!)カキー!」
「(火の玉射出!)カキー!」
 ひいーっ、カキトカゲの攻撃が全部俺に集中したー!
 回避して、回避して、回避!
「(うわああ!)エレー!」
 くっ、一発もろに受けてしまった。凄く熱い!
「(よくもポットをやったなー!)イモオー!」
「小回復、スフィン、このままじゃポットがもたない。早く!」
「わ、わかったわ。やるだけ、やってみる!」
 幸い、すぐにリシェスから回復魔法がとんできて、体の痛みが和らぐ。更に、カップが敵一体の注意をひきつけてくれる。
 トルクヤはヒッタテトカゲと一対一の勝負。なら俺は、ここは敵一体を少しでも早く倒す!
「(エレキ射出ー!)エーレーキュー!」
「(く、こいつなかなかやる!)トカッ!」
「風の矢!」
「(あの人間、厄介な攻撃を使ってくるな!)カキー!」
 ああっ、とうとうスフィンが魔法で攻撃して、敵一体の注意を引き付けてしまった。
 そしてそのスフィンの前には、まるで守るようにリシェスが立っている!
「(人間はもろくて柔らかい。すぐに首をひきちぎってやるー!)カキトカー!」
「小障壁!」
 突進したカキトカゲ。そのたくましく発達した腕から伸びる凶悪な爪がふりかぶられるが、その攻撃は透明な壁が防ぎ切った。
 これはリシェスの、防御魔法か!
「(遠距離攻撃もしてくるなら、接近戦だ!)カキトカカキトカー!」
「(上等だ、かかってこい!)エレッキュウウウー!」
 一方俺は、エレキ射出を浴びたカキトカゲに接近され、一対一の状況を余儀なくされる。
 今はリシェスのことがすっごく気になるが、防御手段があるのなら、少しの間考えないようにするのが最善か。
 そして、全力で目の前のカキトカゲを速攻倒して、すぐにリシェスの元へ駆けつける!
「(火の爪ー!)カキトカー!」
「(そんな攻撃でー!)エレキュー!」
 俺はカキトカゲの攻撃を丁寧にかわす。そして最小限の動きで、すかさずカウンターを叩きこんでやるんだ!
「(たいあたり!)エレキュー!」
「(ぐうっ、くそ!)カキー!」
 ダメージは大して与えられていないように見えるが、エレキ射出には使用後の硬直があるし、エレキアタックは使用前に溜めが必要だ。隙を作らないように動くなら、ここはたいあたりがベストの選択!
「(この、このお!)カキ、カキカー!」
「(この程度なら。はあっ、たいあたり!)エレキュ、キュー!」
 カキトカゲはまたもや大ぶりな攻撃。これもていねいに避けて、たいあたりを脇腹にぶちあてる。
 するとカキトカゲは、わずかによろめいた。よし、効いているぞ。俺一人でもやれる!
 最近はカップやトルクヤと連携していたから、一対一の状況は久しぶりだが、俺にはクマザルやカタガメ等、強敵と戦った経験がある。こんなやつくらい、俺一人で倒してみせる!
「(ええい、こうなったら。爪アタックー!)カキ、カキカー!」
「(くっ!)エレ!」
 突然、カキトカゲの攻撃が、普通に燃えない爪を振り回す、隙の無い連続攻撃に変わった。
 これは、たいあたりを使う隙がない。いきなり戦いが厳しくなったぞ。
 でもその分カキトカゲは攻撃に夢中で、こちらからの反撃に対して備えがない。逆に今は、チャンスか!
 俺はカキトカゲのわずかな隙を見逃さず、更に相手に肉薄する。そして、その後のダメージは気にせず、体内の電気を力いっぱいふりしぼる!
「(くらえ、エレキ拡散!)エレ、エレエレキュー!」
「(ぎゃああー!)カキカー!」
 よし、効いたぞ。たくさんの電気がカキトカゲにあたった!
 ここで、カキトカゲに隙が生じたぞ。ならば、こちらも大技だ!
「(からの、エレキアタックー!)エーレー、キュウウー!」
「(ぐわあああー!)カキカアー!」
 至近距離からぶちかますエレキアタックが、カキトカゲの体をつきとばした!
 よし。更にもう一押し!
「(エレキ射出!)エーレーキュー!」
 バチッ。エレキ射出がカキトカゲにあたり、カキトカゲはそこで動かなくなる。これは、倒したか?
 よし。こいつの相手はもういいや。もしかしたら再び動き出すかもしれないけど、それよりも今はリシェスを心配しないと!
「(リシェス、無事か!)エレキュ、エレキュ!」
 咄嗟にリシェスの方を見ると、今リシェスはカキトカゲに押し倒され、杖で敵を押し返してなんとかしのいでいるという状況だった。
「(リシェスー!)エレキュー!」
 俺はリシェスの元へ駆けつける。
 そしてリシェスの杖が、カキトカゲによって弾き飛ばされた時、俺の頭の中が真っ白になった。
 そんな。このままじゃリシェスが、リシェスが危ない!
 間に合わなかったというのか。俺は、遅かったというのか。
 いや、そんなことはない。まだ間に合う。助かるんだ、リシェスは。俺はそのために今、ここにいる!
 なのに、俺が諦めたら、ダメだあああー!
「エレキュー!(痺れエレキー!)」
「イモイモー!(激突ー!)」
「風の、矢ー!」
 それから起こったことは、一瞬だった。
 カキトカゲがリシェスにかみつこうとした寸前。俺の痺れエレキが、その動きをわずかに止めた。
 そして技の痺れが消えた直後、スフィンの魔法、風の矢がカキトカゲの目に突き刺さる。
 カキトカゲが痛みのあまりまた動きを止めた瞬間、カップの激突がカキトカゲをつきとばす。
 その結果、リシェスをおそったカキトカゲは倒れ、動かなくなった。
 なんとか、やったか?
「皆、ありがとう」
 そう言うリシェスは、無事だ。良かった。
 なら、後は!
「(こいつ、強い!)フユー、バアー!」
「(あいつら、やられたのか。こいつはまずいな)ヒッタテタテ」
 冷静に状況を判断する限り、あのヒッタテトカゲを倒せば、戦闘終了だ!
「(カップ、フユーバと力を合わせて、正面から力押しだ!)エレキュー!」
「(わかった。ボク、勝つ!)イモー!」
 今のカップはとてつもなく速い。カップは白い翼をはためかせて、一気に加速した。
「(たいあたりー!)イモー!」
 よし。俺も!
「(エレキ射出!)エーレーキュー!」
 遠くから放ったエレキ射出と、カップのたいあたりが、ヒッタテトカゲをおそう!
「(今だ、斬撃!)フユーバー!」
「(ふん、カチカチガード!)ヒッタテ!」
 ああ、でも、上手く決まった俺達の連続攻撃を、ヒッタテトカゲは少ないダメージでやりすごしている?
「(どのみち倒さないと生き残れないか。ならば、まずは剣のやつを倒す!)ヒッタテタテ!」
 そう言ってヒッタテトカゲは、目の前に迫っていたトルクヤにとびかかり、押し倒した。
「(ぐ、この!)フユ、バ!」
 フユーバは身じろぎするが、上手く逃げられない!
「(捕まえられればこっちのものだ。このまま踏みつぶしまくってやる!)ヒッタテター!」
 そうはいくか!
「(痺れエレキー!)エレキュー!」
「(う、動けないー!)ヒッタテー!」
「(トルクヤから離れろ、激突ー!)イモモイモー!」
 カップの攻撃をもろにくらって、ヒッタテトカゲは押される。
 そのわずかな移動で、なんとかトルクヤが解放された。
「(危なかったぜ。よくもやってくれたな。斬撃!)フユー、ババー!」
 そしてトルクヤの強力な一撃が、ヒッタテトカゲの喉を切り裂く!
「(ぐううう!)タテー!」
 ヒッタテトカゲはタフなことにまだ立っていたが、その後はずっと俺達のターンだった。
「(エレキアタック!)エレキュー!」
「(スタンプ!)イモー!」
「(斬撃!)フユーバー!」
 俺達のラッシュを全て受けたヒッタテトカゲは、とうとう立っていられず、倒れた。
 ふう。
 どうにか、勝てた!
「やったね皆。全員倒せた。凄い!」
 リシェスも喜んでくれた。当然俺達も、全員喜ぶ。
「エレキュー!(やったぜー!)」
「イモー!(倒したー!)」
「フユーバー!(勝ったぞー!)」
「あの、リシェス。ごめんなさい」
 けれど、この中で一人だけ、スフィンだけがうかない顔をしていた。
「私が、私のせいで、リシェスはやられるところだった。ケガだって、いっぱいしてるでしょ?」
 うつむくスフィンに、リシェスは笑顔で言う。
「何言ってるの、スフィン。あなたのおかげで勝てたのよ」
「え?」
「あなたの魔法があったから、私は命を救われた。ちゃんと見てたんだから。だからこの勝利は、私達全員の勝利なの。さあ、スフィンも笑って。勝てたことを、喜ぼう?」
「リシェス」
「あなたの魔法は、敵に打ち勝つ力。そして、仲間を守れる力。私はそれを、あなた以上に信じてるよ」
「あり、がとう。リシェス」
 そう言って、スフィンは笑った。
「あなたのおかげで、失った自信を、取り戻せそうな気がするわ」

 その後、新たな村につき、更にその先へ行く。二つ目の村を出た後、また手強いモンスター達が現れた。
 耳の形が雫の、水色犬が三体と、それを成長させたようなのが三体。
 きっと水属性で、俺とカップが相性良い相手だろう。けど、数が多すぎる。今回もまた、リシェスとスフィンに攻撃の手が伸びるかもしれない。
 けど、リシェスとスフィンは全くものおじせず、逆に敵を見据えて笑みを浮かべていた。
「ミズドッグが三体に、スイワンが三体。数が多いけど、いけるよね。スフィン」
「ええ。私は魔法使いよ。魔法でこの場を切り抜けるのが役目。攻撃は任せなさい。私もポット達と同じくらい、役に立つ!」
「オーケースフィン。守りは任せて。皆も、全力で戦って!」
「(おー!)レキュー!」
「(おー!)イモー!」
「(おー!)ユバー!」
 どうやら皆勝つ気満々のようだ。へ、ビビッてたのは俺だけか。よし、やってやる。状況がピンチなら、最初から全力で戦うだけだ!
 そして、俺達と犬達の死闘が始まる。
 大きな犬は、俺とカップとトルクヤが相手。小さな犬三体は、リシェスとスフィンをおそう。
 しかしリシェスの防御魔法は硬く、そしてスフィンの攻撃魔法は強烈だった。
「風の矢連打!」
「(うわー!)キャウン!」
「(やらー!)キャウン!」
「(れるー!)キャウン!」
 なんと、あっという間に複数の敵を倒してしまった。そして俺達の方にも援護攻撃を放ってくれる。
 おかげで敵を、難なく倒すことができた。
「やったあー!」
「ふふふ。私、復活ね」
 リシェスとスフィンが笑顔を見せる中。
 ん、なんだ?
 ふと俺の意識が、白い世界に引き込まれた。

 新しい姿を選んでください。

 何か聞こえたような気がする。そして、俺の目の前に現れた三つの選択肢。
 バチキュウ。攻撃特化モンスター。
 ゴロキュウ。防御特化モンスター。
 ピリキュウ。速度特化モンスター。
「(そうか。俺、進化できるのか)エレキュー」
 その事実を理解すると、だんだんとうれしくなってきた。
 やった。遂に俺も、進化だ。もっと強くなれる。皆を守れる!
 やったー、ばんざーい、ばんざーい!
 さて。
 では一体、どの選択肢を選べばいいのだろう?
 バチキュウは攻撃型か。簡単に考えるなら、パワーが上がるイコール強い。つまりこれで良いかもしれない。
 でもゴロキュウは防御型で、敵の強い攻撃に耐えられるかもしれないし、その力で皆を守れるかもしれない。
 ピリキュウのスピード型の強さは、カップを見れば丸わかりだ。速いイコール強い。どんな戦闘でも有利をとれるだろう。
 うーん。となると、俺は一体どのタイプになるべきか。
 ちょっと悩んで、やがて、決めた。
 よし。防御型の、ゴロキュウになろう。
 思えば今までの戦闘で脅威だと感じたのは、いつも防御型のモンスターだった。
 頑丈な体で、攻撃を受けても倒れない。しつこい攻撃で相手を弱らせ、チャンスを引き寄せることだってできる。
 それに、今戦闘で辛いと感じることは、強いパワーのモンスターが現れることではなく、数が多い敵を一度に相手する時だ。
 今はスフィンがいてくれるからまだなんとかなっているけど、まだ俺達の戦力は弱い。一体の敵を相手にしている間に、それ以上の数で簡単に押しつぶされてしまう。
 それに耐えられるだけの、防御力が欲しい。
 だから、俺は決めた。
「(俺がなるのは、防御型のゴロキュウだ!)エッレキュー!」
 そう決めると、俺の体に変化が生じた。
 グネグネウネウネと、体の形が変わっていく。いや、メキメキニョキニョキ?
 とにかく、不快ではない体の変化が起きて、次の瞬間、俺は元いた世界に戻っていた。
「(ふう)ゴロッキュ」
「ポット。まさか、進化したの?」
 声がした方を見ると、そこには驚いた顔のリシェス。
 お。リシェスの顔が、少し見やすくなっているな。俺、ちょっと大きくなったのか。
 ちょっと。ちょっとだけかあ。
 もうちょっと、強そうな背の高さになっていてほしかったなあ。
 でも、それ以上に喜びの感情の方が強い!
「(リシェス、皆。俺、ゴロキュウになったぞ!)ゴロゴロッキュ!」
 俺はそう言って、跳びはね、一回転する。
「(ポット、凄い。ポット、やった!)イモーイモーイモー!」
「(すげえな、ポット。お前なんだな。すっげえ形が変わってるぞ!)フユーバ、ユバ、フユーバ!」
「あはは、やったあ、ポット、おめでとう!」
 リシェスはそう言って、俺を抱きしめてくれる。
「かなり丸くなったけど、それでも可愛いわね。ふわふわ、いえ、もこもこになった?」
 スフィンも俺をなでる。ふふふ、俺が可愛いらしいが、それだけじゃないぜ。体に力がみなぎる。防御力だけじゃなくて、攻撃力も素早さも上がったみたいだ!
 それに、新しい技、ふわふわガードも覚えたぞ!
「(よっし。これで今まで以上に、リシェスを守れるぞー!)ゴロッキュー!」
 俺はリシェスの腕からとびだして、技を試してみる。
「(たいあたり、たいあたり、ふっわふわガード!)ゴロキュー、ゴロキュー、ゴロー!」
 たいあたり、たいあたり、ふわふわガードの連続技。おお、できた。やった、遂に俺は連続技を身につけた。これが変態後の力か。すげえ!
「うふふ、ポットったらはりきってる。この調子で、クエリまで行こう!」
 こうして俺達は、士気を上げながら旅を続けた。

 それから二日後、俺達は初めての町、クエリに到着した。
 その光景は、やっぱり村とは違う。レンガ造りの建物が所せましと建てられていて、人通りも多い。町に入る門だって、かなり大きくて立派だった。
 そして、町に入ったリシェスとスフィンは、顔を輝かせながら周囲を見た。
「わあ、人多い!」
「そうね。でも、あんまりじろじろしてても、おのぼりさんだと思われちゃうわ」
「実際そうなんだからいいじゃない」
「バカ。もっと堂々としてなさい」
 そういうスフィンも、気になる出店があったら、視線がそちらへと奪われてしまっている。
 とにかく俺達は、まず真っ先に冒険者ギルドへ寄った。

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