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15 雪山その2
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私はリキュア。アッファルト王国の第二王女。
けれど今は、サバク様のしもべ。私はサバク様という救世主と出会い、自分の価値観、人生観を一変させました。今後は一生をかけて、この身を捧げてサバク様からいただいた恩を返していく所存です。
まあ、サバク様は私を遠ざけて、結婚までなかったことにされてしまいましたが。しかし、私は諦めません。もう心は既にズタボロですが、しかしサバク様の子供を産む未来しか考えられないことも事実。なんとかアタックを続け、絶対に将来サバク様の妻になってみせます。
話を目の前の現実に戻します。今の場所は雪山の屋敷内。そして目の前には、ウサット族の子供が二人。
正直言って、とても衝撃的な展開です。まさか、この目でウサット族を見ることになろうとは。少し彼らに興味もありますが、それ以上にかつて宝を奪ってしまったという、うしろめたさの方が大きくあります。
ですが、私はサバク様から、ウサット族の方々に現在の状況を説明して、なんとかご理解をいただくという使命をいただきました。このミッションは絶対に失敗できません。必ず成功させてみせます。
まず私は、スイホさんとキンカさんにお願いして、ウサット族の二人を暖炉の前までつれていってもらいました。
「今、温かくしますね。火種は、ああ、しまった。薪がありませんね」
「炎くらい用意します。カメトル、やってください」
「カメッ」
スイホさんが指示を出すと、赤いカメさんことカメトルさんが、口から炎を吐きました。まあ、凄い。炎は燃やす物もないのに、ずっと暖炉の中で燃え続けています。
そういえば、この前荒野を一緒に歩いていた時も、ヒイコさんが消えない火を出していました。流石はサバク様のクリーチャーです。
後は、飲み物ですね。温かい方が良いでしょう。
「ありがとうございます、カメトルさん。それと、何か飲み物を用意していただけませんか。スイホさん、すみませんができれば、お湯をください」
「まあ、いいでしょう。キンカ。コップとやかんを」
「わかった」
しめし合わせたように、キンカさんが目の前にやかんと、人数分のコップを生み出します。
「鉄だ」
「あれ、鉄?」
すると、二人がこれらのアイテムに興味を示しました。
「いいや、コップはステンレスだ。鉄ではないぞ。やかんは鉄だがな」
キンカさんが生み出したやかんに、スイホさんが手を伸ばします。
「ウキー!」
その時、緑色のお猿さんが立ちはだかりました。
「なんですか、サルンキー」
「ウキウキー!」
どうやらお猿さんは、サルンキーという名前だそうです。カメトルさんと同様、非常にわかりやすい名前です。他の動物の方もそうなのでしょうか?
おっと、思考がそれました。それよりも今は、サルンキーさんに注意を向けなくては。
サルンキーさんは皆が見ている前でオレンジを生み出し、それを二つに割って、コップの上で潰し、しぼり汁を溜め始めます。絞り終わったオレンジは、暖炉へイン。その動きに一切の迷いがありません。おかげで部屋中にオレンジの香りが漂い始めました。
私はそれを見て、ピンときました。
「これは、オレンジジュースですね?」
「ウキー!」
どうやら正解だったようです。
確かに、子供にはジュース。定番です。サルンキーさん、なかなかやります。
「オレンジジュースって、何?」
「もしかして、果物ってやつ?」
お二人はサルンキーが生み出したオレンジジュース、加えてオレンジに興味津々のようです。
「あなたたち、オレンジに興味がありますか?」
私がそう訊ねると、お二人はハッとしました。
「きょ、興味なんて、ない!」
「な、なんとも思ってないもん!」
言葉とは裏腹の、なんともわかりやすい反応です。では、食べ物で更に警戒心を解く作戦はどうでしょう?
「サルンキーさん、この子達のために、絞らないままのオレンジも出してあげてください。そして、オレンジの他にも、果物は出せますか?」
「ウキー!」
サルンキーさんはうなずいてくれました。
「い、いらないよ、そんなもの!」
「欲しく、ないもん」
「そうですか。ですが、手が使えないのは不自由でしょう。今、あなた達の拘束を解いてもらいますね」
「え?」
お二人が戸惑っている内に、キンカさんの方を見ますと、キンカさんはうなずきました。
「スイホ、手を貸せ」
「わかりましたわ」
キンカさんとスイホさんは、二人で子供二人の拘束を手でちぎりとってくださいました。
「!」
その瞬間に、少年が走り出そうとします。しかしキンカさんがすぐに捕まえ、首に鉄の首輪をはめてしまいました。これで少年は、キンカさんから逃げられません。
「なんだこれ、放せ!」
「大人しくしないから、拘束しなければならないんだ。私はお前達を大人しくさせるためにいるんだぞ。妙な動きをするな」
「くそ!」
「どうして、自由にしてくれたの?」
少女が私達を見ます。確か、ルンナさんでしたか。私は言いました。
「相手の手足を縛って、対等に話ができますか? 第一これから私がするのは、あなた達へのお願いなのです。お願いとは、無理矢理聞いてもらうものではありません。まず、オレンジジュースをどうぞ」
一応、スイホさんがお湯を作るべく、水の器でやかんを浮かび上がらせ、それが暖炉の火の方へ運ばれますが、ひょっとしたら飲み物はこれ以降もオレンジジュースオンリーの方が良いかもしれません。
とにかく今は、ルンナさんに狙いを定めてオレンジジュースをオススメします。
「っ」
「ルンナ、飲んじゃダメだ!」
「美味しいですよ。ほら」
まず先に私が一口飲んで、笑顔を向けます。
ちゃんと、百%のオレンジジュースです。
「い、いただきます」
「ルンナ!」
ルンナさんはおそるおそる自分の分のコップを手に取ると、両手で中身を飲みました。
すると。
「おい、しい」
「ルンナ、何やってるんだよ!」
「だってこれ、本当に美味しい。ズンタも、飲もうよ」
「っ、俺は、飲まない!」
そう言って、ズンタさんの態度は頑ななままです。まあ、飲むかどうかは個人の自由です。ですがやはり、すぐに飲んでいただけた方がうれしいですね。
「ルンナさん、ズンタさん。他の果物も、サルンキーさんが出してくださいましたよ。いかがですか、甘くて美味しいですよ」
そう言うと、お二人の視線がサルンキーさんの方へ向きます。
そこにはもう果物の山があります。流石はサバク様のクリーチャーさん。凄いです。まるで生きる魔法です。
「い、いただきます」
「ルンナ!」
ぐうー。
その時、ズンタさんのお腹が鳴ります。
私は笑顔で言いました。
「さあ、めしあがれ」
結局、お二人共果物を食べました。
「おいしい、凄く美味しい!」
「う、うまっ!」
二人共喜んでくれて良かったです。サルンキーさんも自慢げにしています。
残った芯や食べられない皮は、鳥さんが出した鉄のバケツに入れていきます。いっぱいになった生ごみは、後で私が捨てましょう。それくらいのことはしたいです。ここに使用人はいませんし、何より何もしないままただサバク様のお帰りを待っているだけというのは絶対に良くありません。サバク様が知ればマイナスポイントになってしまうでしょう。
「ごちそうさまでした」
「母さんにも、食べさせてやりたい」
どうやらお二人は、満足してくださったようです。
ではこちらもそろそろ、話をすすめてしまいましょう。
「あなた達は、ルンナさんとズンタさんと言うのですね?」
「!」
「ち、ちがう!」
ルンナさんは、しまった。という顔をしました。ズンタさんは首をブンブンと横に振ります。
「そうですか。ですが、これだけはわかってください。私達は、あなた達と話がしたいだけなのです。私はリキュア。アッファルト王国の王女です」
「おう、じょ?」
「敵だ、宝を奪った悪いやつだ!」
ルンナさんはズンタさんの言葉を聞いて、ハッとしました。やはり、この子達も過去の話を知っていましたか。
「その件は、本当にごめんなさい。あなた達から盗んだ宝剣は、私のご先祖様を救うために壊してしまいました。その償いをする方法を、私は知りません。ただ、頭を下げることしかできません。ごめんなさい」
私は深く頭を下げます。
「す、救うため?」
「壊しただと、ふざけるな。俺達の宝だぞ!」
そう言われて、私は頭を上げて相手の顔を見つめ返します。今の所、良い調子です。話ができ、続くなら、こちらの目的を達せられる可能性が見えます。
「あなた達が怒るのは当然です。しかし、今の私では何か恩を返すことさえできません。ここで会えたのも、何かの縁。私でつぐなえることがありましたら、なんでもいたしましょう。ですが、今だけは、今だけはどうか、怒りを抑えてほしいのです。今、先程までいたサバク様が、他国から来る脅威に対抗すべく、更なる力を得ようとしています。それを、どうか静観していただきたいのです。お願いします。今だけ、私達と争わないでください」
もう一度頭を下げます。
それから時間が、十秒、二十秒経って。そこで、ルンナさんが声を発しました。
「本当に、あなたは罪をつぐなうの?」
「はい」
「おいルンナ、何を言ってるんだ!」
「ズンタは黙ってて。あなた達は、果物を出せる。鉄を出せる。その力を、私達にちょうだい。そして、私達を無事に家まで帰して。そうしたら、少しは信じてあげてもいい」
「おいルンナ!」
「ズンタは帰りたくないの?」
「敵の味方をするくらいなら、戦って死んだ方がマシだ!」
「ズンタのバカ!」
「!」
「こんなところで死ぬなんて大バカよ。私は、生きて皆の元に帰る!」
お二人の意見は割れたようですが、どうやら、私の目的は半ば達成されたようです。
ルンナさんは、こちらを信用しても良いと言ってくださっている。
どうやら、もう一押しでサバク様の役に立てそうです。
雪山での戦闘メンバーを全員召喚し終えた。
ヒロードラゴン、ゴールドラゴン、サガンドラゴン、スプラッシュドラゴン。ジュレイドラゴンだけは、大きな姿で呼んでいるので、彼だけビッグサイズ。
更にいつもの顔ぶれとして、メタルギアジャイアント、フレイムピラージャイアント、スイボツジャイアント、フォレストジャイアント、アースジャイアント。
皆人サイズの大きさだ。ジャイアントが人サイズとはこれいかに。まあ、強さは変わっていないはずだから、きっと問題はない。小さくなったから弱体化とか、ないよね?
そして後の5人は、ウッドルフ、ネツウルフ、ナミウルフ、ギンウルフ、ジウルフ。
彼らだけ3コストのウルフタイプだ。4コストクリーチャーの召喚も考えたけど、4コストのクリーチャー達は、ワイバーン、蛇、少女5種類ずつの15人。きっと、雪山では寒さに強そうなウルフ達を呼んだ方が良いだろう。と思ってこっちにした。
皆召喚し終えると、やはりジュレイドラゴンだけ一際大きい。まあ、一人くらい大きい仲間がいる方が、心強いか。
「よし。これで戦力は十分だろう。皆、移動を開始だ。家の玄関を真後ろにして、まっすぐ前に進むぞ。それとネツウルフは俺を背中に乗せてくれ」
「ワン!」
俺はネツウルフに乗って雪山を散歩する。だって、彼が一番温かそうだったから。そして実際に温かかった。ぬくぬくでポカポカだ。頼りになる。
俺達はこの戦力で雪山を歩く、いや走る。この戦力で勝てなかった場合、ほぼ間違いなく俺では勝てないということだ。上手いこと手頃なモンスターを見つけたい。
ところで雪山は、今まで見たことないような銀世界なので、この中にいると新鮮な気分になる。でも、一番の目的は観光ではなくモンスターの発見と撃破なので、どんな生物の目撃も見逃さないつもりだ。早くレベルを上げてアッファルト王国に戻ろう。
俺だけ楽をして、皆は走る。おかげで移動が雪の上でも速い。ジャイアント達が若干遅く、皆はそのスピードに合わせているようだが、そのかわり俺達の陣形は完璧だった。
俺を真ん中に、ひし形陣形。先頭にジャイアント達がⅤ字に並び、横をウッドルフが、後ろをドラゴン達が守ってくれる。一番大きいジュレイドラゴンが最後尾。
そのままフォーメーションを崩さず、しばらく移動する。
すると。
「ワン!」
「ワン!」
突然ウルフ達が、吠えだした。
「皆、何か見つけたか?」
「ワン!」
皆うなずく。ネツウルフもうなずく。そうか、やっと第一モンスターを発見したか。
それじゃあ、勝てるなら勝たせてもらう。
「よし。それじゃあ皆、まずはそのモンスターの姿を捕捉してくれ。その後は勝てるかどうか探る。いけそうなら倒して、ダメそうなら逃げる。細かいところは各自の判断で。皆、いけるか?」
「ワン!」
「ガオオオーン!」
「よし、それじゃあ行動開始。頼んだぞ皆!」
俺の命令と同時に、皆それぞれ動き出した。
まずこの中で、一番スピードが速かったのがドラゴン達だ。5人のドラゴンが低空飛行で、敵の元へと飛んでいく。
次に速かったのが、ウルフ達。ジャイアント達をおいて、雪山を猛ダッシュ。ジャイアント達と少しずつ距離を開けていく。
一番足が遅かったジャイアント達は、そのままダッシュを継続。うーん、どうにか足を速くしてあげられればいいんだが、仕方ない。後から追いついてもらおう。
そのままひたすら全力移動が続くと、約一分後、俺にもモンスターを見つけられた。
敵は、巨大な猪だった。数は1体。
牙はないが、毛が長い。まるで茶色い小屋が動いているみたいだ。
そしてその猪を、5人のドラゴンが襲っている。
5方向からの各属性ブレス攻撃を受けて、猪は一方的にやられているようだった。猪はその場でじっと動かず、攻撃に耐えている。ひょっとして、猪は遠距離攻撃ができないのか?
「ブギイイー!」
そう思っていると、突然猪が叫び、前足を上げて、足元の雪をたくさんとばした。とんでもない量とスピードだ。
雪攻撃を受けたゴールドラゴンが、ぶつけられた雪と共に地面に落ちる。どうやら猪は、このチャンスを狙っていたらしい。
猪がゴールドラゴンの落下地点へと走る。まずい、そのまま踏みつぶして、ひき殺す気だ。相手はあの大きさだから、どれくらい重いのか想像もつかないぞ!
ここで射程距離に入ったウルフ達が、魔法攻撃で猪を攻撃する。けれど、それでも猪は突進を止めず、側面から突っ込んだ大きなジュレイドラゴンさえ、逆に軽く弾き返してしまった。
「ゴールドラゴン、避けろ!」
俺は、咄嗟にそう言うことしかできない。
その時、ゴールドラゴンは雪の中から出てきて、猪に気づくと慌てて飛んで逃げようとした。しかし回避が間に合わず、たいあたりをくらってしまう。
今度は突き飛ばされたゴールドラゴン。しかしかろうじて空を飛び、猪から距離をとった。ふう、良かった。まだ動けるようだな。ゴールドラゴン。
すぐにスプラッシュドラゴンがゴールドラゴンに近寄り、口から水を吐いてぶっかける。あれ、きっと治癒水だよな。そう信じよう。
それからは、こちらの一方的な攻撃が続いた。
皆の属性攻撃は、確実に猪の命を削り取っていった。猪はあと一回だけ、足元の雪をとばしてきたが、その時狙われたサガンドラゴンは、ギリギリのところでそれをかわした。どうやら猪は連続で遠距離攻撃ができないようだったし、かつこちらも一度見た攻撃への備えがあったため、もう大ダメージは受けなかった。
遅れてやって来たジャイアント達の魔法攻撃も加わると、猪は俺を乗せたネツウルフへ突進した後、あっさり倒れた。
その突進も、ネツウルフがギリギリかわしてくれて、事なきを得る。後は皆で囲んで集中砲火。すると猪は力尽き、動かなくなる。
「レベルが上がりました」
ありがとうとっ君。今の俺のレベルは、66か。一気に3上がったな。そして肝心の敵は、皆から属性攻撃を受けてもかなりの時間立っていたし、防御力重視のタフなモンスターだったのだろう。
しかしそのかわり、猪は俺達に対抗できる手段をあまり持ち合わせていなかった。俺達は、とても運が良かった。
「よし。この調子でもう何体かモンスターを倒そう」
「ガオオオーン!」
「おっと、その前に。ゴールドラゴン。体は平気か?」
「ゴオオオーン!」
良かった。ゴールドラゴンはもう元気そうだ。戦力が減らなかったことも、俺達にとってはプラスだ。
「でも、猪の方へ来たことで、帰り道が分からなくなってしまったかもしれないか。皆、屋敷の方向はわかるか?」
「ワン!」
ウルフ達が元気よくうなずく。そうか、わかるか。流石だ。
「よし。お前達がそう言うなら、大丈夫なんだろう。じゃあ帰る時は任せたぞ。ここから更に進んで、次のモンスターを見つけよう」
その後、更に猪を二体倒した。今俺は67レベル。
けれどその後、雪が降らない場所まで来ると、今度は敵が完全にいなくなった。
その後もしばらく歩いたが、やがて俺達は引き返すことにした。俺達は雪山にレベル上げしに来たのだ。雪が無くなっていく下の方には、モンスターがいないのかもしれない。屋敷から遠くなりすぎてもいけないだろうし、レベル上げは、雪山内ですべきだ。
陣形は最初の形から、ギンウルフが先頭になる。今はギンウルフに屋敷までの案内をしてもらっている。
そしてまた雪が降り始めると、先程倒した猪の死体を見つけた。この猪達は、雪山の低いところには来ないのかな?
二体目の猪の死体も発見。俺達は順調に屋敷へと戻っている。流石ウルフだ。今回はもうこのまま帰ろう。それでも時間があったら、また屋敷から再スタートにしよう。
山を登れば登る程、降る雪が多くなっていくことに気づく。下山中はあまり感じなかったけど、ということは、屋敷よりも上の方は更に降っているのか?
三体目の猪の死体も発見する。
しかし同時に、猪の死体の方から数体のモンスターがこちらへと走ってきた。俺がその姿を確認するよりも早く、皆が俺とネツウルフを守るように前に出る。
モンスターの数は5体。あれは、ウサギ、いや、キツネか?
耳はウサギだが、顔は鼻が前に突き出ていて、尻尾はこちらのウルフ達と同じくらい大きくフサフサしている。そして尻尾の数は一本ではなく三本。ウサギの体というよりは、キツネという感じがした。そして大きさは、俺よりは小さそうだ。小動物、いや、中動物くらいか?
まずドラゴン達がウサギキツネに攻撃する。各属性ブレスが敵をおそう。
しかしウサギキツネ達は、驚異的な速さで全てのブレスをかわした。
次はウサギキツネの番だった。目の前で氷のブーメランを作り、高速でとばしてドラゴン達を攻撃する。ドラゴン達はかろうじて回避するが、ジュレイドラゴンだけ体の大きさが災いしてか、少しダメージを受けていた。慌てて少し距離をとっている。
互いに致命傷を与えられない内に、ウルフ四人が一体のウサギキツネに接近した。
ウルフ達は即座に、そのウサギキツネを狙い撃ち、属性魔法で集中砲火する。しかしその全ての攻撃すら、あっけなく回避されてしまう。
あのモンスター、凄く強いぞ。というか、速い。攻撃も回避も、どちらも厄介だ。
ドラゴンとウルフ達が9人がかりで集中攻撃すると、やっと一体のウサギキツネにダメージが入った。しかし他四体のマークが外れたウサギキツネ達が、今度はウルフ達に氷のブーメランをとばす。
ウルフ達は敵の攻撃の速さについていけず、あっという間にかなりのダメージを受けた。
慌ててウルフ達は後ろに下がり、ジャイアント達の後ろに隠れる。するとジャイアント達は自らが壁になりながら、攻撃魔法を放った。
ジャイアント達も加わって、ダメージを受けていたウサギキツネが更に攻撃を浴びる。ウサギキツネは必死に回避していたが、それでも避けきれずにダメージを受けると、続けてもう一発ブレスを浴びて、そこで力尽きた。
「レベルが上がりました」
よしっ。これで皆の地力が上がってくれればいいんだけど。
四体のウサギキツネ達は仲間がやられている間に、ジャイアント一体に集中攻撃した。
だがジャイアント達は攻撃魔法を氷のブーメランの迎撃に使い、更に連続ダメージを受けた一体を後ろにかばってダメージを散らすことで、見事に壁役を果たした。
今回は、ジャイアントと敵との相性が良かったのだろう。攻撃を撃ち合っている間に、二体目のウサギキツネが力尽きる。
「レベルが上がりました」
今、俺のレベルは70か。
また3レベルも上がっているということは、もう皆大分強くなっているはずだ。
と思っていると、ウサギキツネ達が一斉に逃げ始めた。
どうやら仲間が二体やられて、勝てないと判断したらしい。物凄いスピードで遠ざかって行く。
皆は追い打ちをしかけたが、ウサギキツネ達は最後までこちらの攻撃を丁寧にかわす。更にあの速さで逃げられたらとても追いつけず、結局皆はすぐに俺の元へ戻ってきた。
俺は皆をねぎらう。
「皆、戦闘ありがとう。相手はかなり強かったな。倒せて良かった。今回はジャイアント達が活躍してくれたな。お前達のおかげでウルフ達が助かった。大活躍だ」
ジャイアント達は腕を上げて答える。けれどその姿は、皆ボロボロだった。
「皆、凄くボロボロだな。ウルフ達もだ。治癒水が使える者は、すぐに皆の手当てをしてくれ」
「ワン!」
「シュレアー!」
「ワン!」
「グオオーン!」
ナミウルフとスプラッシュドラゴン、スイボツジャイアントだけてなく、ウッドルフとジュレイドラゴン、フォレストジャイアントまでもが俺の指示に応じた。
ナミウルフ、スプラッシュドラゴン、スイボツジャイアントは普通に治癒水を生み出すが、ウッドルフ、ジュレイドラゴン、フォレストジャイアントは拳サイズの木の実を生み出した。それを食べた皆は、みるみると回復していった。どうやら木属性の皆も、回復アイテムを生み出せるらしい。
結果的にすぐに皆、受けた傷を全て癒やした。
頼もしい。きっと彼らはまだ戦えるだろう。
けれど今はもう、絶対に帰ろう。今も帰っている途中だったしな。
周囲も既に、暗くなってきている気がする。暗闇の中雪山を移動するのは危険だろう。少なくとも俺は、完全にお荷物になる。これまでも何か役立つような場面もなかったけど、何かできるかもしれないと、何もできないでは大きな差がある。というか、少しは俺もいた意味があったと思いたい。なのでそう思うことにする。
あ、そうだ。一応ウサギキツネの死体を回収しておこう。こいつらは強かったし、もしかしたら貴重な素材とかになるかもしれない。そういうことがわかる可能性があるのはリキュア王女様くらいしかいないけど、彼女がわからなくてもお肉が美味しければ問題ないはずだ。
「ナミウルフ、スプラッシュドラゴン。できればウサギキツネの体を氷漬けにして持って行こう。運ぶのはジャイアント達に頼む」
皆、すぐ作業にかかってくれた。水属性の彼らがうなずいたということは、できるということだ。では、よろしく頼む。
血抜きはよくわからなかったけど、ここで時間を消費するのも悪い気がしたので、まずは屋敷に戻ることが先決だ。
ウサギキツネを氷漬けにしている間に、軽く猪の死体も確認する。こっちは大きすぎて持ち運べないけど、お肉や毛皮を切り分ければ少しはもっていけるか?
そう思って近づいてみるけど、俺の表情はすぐに曇った。
「うーん。やっぱり猪には、食べられた跡があるな。ウサギキツネはこいつを食べるために集まっていたんだ」
流石に野生のモンスターが食べかけていた物を持って行こうとは思わない。
ひょっとしたらウサギキツネが好んで食べるくらい肉が美味しいのかもしれないけど、そのウサギキツネの口や手から、この猪に危険な菌とかをつけられてしまっていたら大変だ。
このモンスターの素材は、リキュア王女様と相談して、欲しかったら新しく探そう。今食料は必要としていないし、今の俺達なら猪一体くらいかなり安全に倒せるだろうから、そう貴重な物でもないだろう。
それに、努力してこれを切り分けて持って行って、その結果全部ゴミになったら、ちょっと落ち込みそう。
少なくともこの死体は完全に諦めよう。他の猪の死体も、明日確かめてきれいに残っていたら良いな。程度に思っておこう。狩れる猪はまだ他にもいるだろうからね。ウサギキツネも同様。命を奪っておいて、そのまま放置するしかないっていうのも良くない気がするからね。
ところでウサギキツネの攻撃方法は魔法攻撃しか見ていないけど、きっと牙や爪も鋭いんだろうな。
「ところで、皆。皆は、この猪の肉食べる?」
ふと思って訊く。ひょっとしたら皆、働きづくめで食欲に飢えているかもしれない。それに皆モンスタータイプの姿だし、生でもいけるのかも。
という俺の思いは杞憂に終わり、皆は首を横に振った。
「そっか。じゃあ、行こうか」
こうして俺達は、ウサギキツネというお土産も持って屋敷へと帰ることにした。
けれど今は、サバク様のしもべ。私はサバク様という救世主と出会い、自分の価値観、人生観を一変させました。今後は一生をかけて、この身を捧げてサバク様からいただいた恩を返していく所存です。
まあ、サバク様は私を遠ざけて、結婚までなかったことにされてしまいましたが。しかし、私は諦めません。もう心は既にズタボロですが、しかしサバク様の子供を産む未来しか考えられないことも事実。なんとかアタックを続け、絶対に将来サバク様の妻になってみせます。
話を目の前の現実に戻します。今の場所は雪山の屋敷内。そして目の前には、ウサット族の子供が二人。
正直言って、とても衝撃的な展開です。まさか、この目でウサット族を見ることになろうとは。少し彼らに興味もありますが、それ以上にかつて宝を奪ってしまったという、うしろめたさの方が大きくあります。
ですが、私はサバク様から、ウサット族の方々に現在の状況を説明して、なんとかご理解をいただくという使命をいただきました。このミッションは絶対に失敗できません。必ず成功させてみせます。
まず私は、スイホさんとキンカさんにお願いして、ウサット族の二人を暖炉の前までつれていってもらいました。
「今、温かくしますね。火種は、ああ、しまった。薪がありませんね」
「炎くらい用意します。カメトル、やってください」
「カメッ」
スイホさんが指示を出すと、赤いカメさんことカメトルさんが、口から炎を吐きました。まあ、凄い。炎は燃やす物もないのに、ずっと暖炉の中で燃え続けています。
そういえば、この前荒野を一緒に歩いていた時も、ヒイコさんが消えない火を出していました。流石はサバク様のクリーチャーです。
後は、飲み物ですね。温かい方が良いでしょう。
「ありがとうございます、カメトルさん。それと、何か飲み物を用意していただけませんか。スイホさん、すみませんができれば、お湯をください」
「まあ、いいでしょう。キンカ。コップとやかんを」
「わかった」
しめし合わせたように、キンカさんが目の前にやかんと、人数分のコップを生み出します。
「鉄だ」
「あれ、鉄?」
すると、二人がこれらのアイテムに興味を示しました。
「いいや、コップはステンレスだ。鉄ではないぞ。やかんは鉄だがな」
キンカさんが生み出したやかんに、スイホさんが手を伸ばします。
「ウキー!」
その時、緑色のお猿さんが立ちはだかりました。
「なんですか、サルンキー」
「ウキウキー!」
どうやらお猿さんは、サルンキーという名前だそうです。カメトルさんと同様、非常にわかりやすい名前です。他の動物の方もそうなのでしょうか?
おっと、思考がそれました。それよりも今は、サルンキーさんに注意を向けなくては。
サルンキーさんは皆が見ている前でオレンジを生み出し、それを二つに割って、コップの上で潰し、しぼり汁を溜め始めます。絞り終わったオレンジは、暖炉へイン。その動きに一切の迷いがありません。おかげで部屋中にオレンジの香りが漂い始めました。
私はそれを見て、ピンときました。
「これは、オレンジジュースですね?」
「ウキー!」
どうやら正解だったようです。
確かに、子供にはジュース。定番です。サルンキーさん、なかなかやります。
「オレンジジュースって、何?」
「もしかして、果物ってやつ?」
お二人はサルンキーが生み出したオレンジジュース、加えてオレンジに興味津々のようです。
「あなたたち、オレンジに興味がありますか?」
私がそう訊ねると、お二人はハッとしました。
「きょ、興味なんて、ない!」
「な、なんとも思ってないもん!」
言葉とは裏腹の、なんともわかりやすい反応です。では、食べ物で更に警戒心を解く作戦はどうでしょう?
「サルンキーさん、この子達のために、絞らないままのオレンジも出してあげてください。そして、オレンジの他にも、果物は出せますか?」
「ウキー!」
サルンキーさんはうなずいてくれました。
「い、いらないよ、そんなもの!」
「欲しく、ないもん」
「そうですか。ですが、手が使えないのは不自由でしょう。今、あなた達の拘束を解いてもらいますね」
「え?」
お二人が戸惑っている内に、キンカさんの方を見ますと、キンカさんはうなずきました。
「スイホ、手を貸せ」
「わかりましたわ」
キンカさんとスイホさんは、二人で子供二人の拘束を手でちぎりとってくださいました。
「!」
その瞬間に、少年が走り出そうとします。しかしキンカさんがすぐに捕まえ、首に鉄の首輪をはめてしまいました。これで少年は、キンカさんから逃げられません。
「なんだこれ、放せ!」
「大人しくしないから、拘束しなければならないんだ。私はお前達を大人しくさせるためにいるんだぞ。妙な動きをするな」
「くそ!」
「どうして、自由にしてくれたの?」
少女が私達を見ます。確か、ルンナさんでしたか。私は言いました。
「相手の手足を縛って、対等に話ができますか? 第一これから私がするのは、あなた達へのお願いなのです。お願いとは、無理矢理聞いてもらうものではありません。まず、オレンジジュースをどうぞ」
一応、スイホさんがお湯を作るべく、水の器でやかんを浮かび上がらせ、それが暖炉の火の方へ運ばれますが、ひょっとしたら飲み物はこれ以降もオレンジジュースオンリーの方が良いかもしれません。
とにかく今は、ルンナさんに狙いを定めてオレンジジュースをオススメします。
「っ」
「ルンナ、飲んじゃダメだ!」
「美味しいですよ。ほら」
まず先に私が一口飲んで、笑顔を向けます。
ちゃんと、百%のオレンジジュースです。
「い、いただきます」
「ルンナ!」
ルンナさんはおそるおそる自分の分のコップを手に取ると、両手で中身を飲みました。
すると。
「おい、しい」
「ルンナ、何やってるんだよ!」
「だってこれ、本当に美味しい。ズンタも、飲もうよ」
「っ、俺は、飲まない!」
そう言って、ズンタさんの態度は頑ななままです。まあ、飲むかどうかは個人の自由です。ですがやはり、すぐに飲んでいただけた方がうれしいですね。
「ルンナさん、ズンタさん。他の果物も、サルンキーさんが出してくださいましたよ。いかがですか、甘くて美味しいですよ」
そう言うと、お二人の視線がサルンキーさんの方へ向きます。
そこにはもう果物の山があります。流石はサバク様のクリーチャーさん。凄いです。まるで生きる魔法です。
「い、いただきます」
「ルンナ!」
ぐうー。
その時、ズンタさんのお腹が鳴ります。
私は笑顔で言いました。
「さあ、めしあがれ」
結局、お二人共果物を食べました。
「おいしい、凄く美味しい!」
「う、うまっ!」
二人共喜んでくれて良かったです。サルンキーさんも自慢げにしています。
残った芯や食べられない皮は、鳥さんが出した鉄のバケツに入れていきます。いっぱいになった生ごみは、後で私が捨てましょう。それくらいのことはしたいです。ここに使用人はいませんし、何より何もしないままただサバク様のお帰りを待っているだけというのは絶対に良くありません。サバク様が知ればマイナスポイントになってしまうでしょう。
「ごちそうさまでした」
「母さんにも、食べさせてやりたい」
どうやらお二人は、満足してくださったようです。
ではこちらもそろそろ、話をすすめてしまいましょう。
「あなた達は、ルンナさんとズンタさんと言うのですね?」
「!」
「ち、ちがう!」
ルンナさんは、しまった。という顔をしました。ズンタさんは首をブンブンと横に振ります。
「そうですか。ですが、これだけはわかってください。私達は、あなた達と話がしたいだけなのです。私はリキュア。アッファルト王国の王女です」
「おう、じょ?」
「敵だ、宝を奪った悪いやつだ!」
ルンナさんはズンタさんの言葉を聞いて、ハッとしました。やはり、この子達も過去の話を知っていましたか。
「その件は、本当にごめんなさい。あなた達から盗んだ宝剣は、私のご先祖様を救うために壊してしまいました。その償いをする方法を、私は知りません。ただ、頭を下げることしかできません。ごめんなさい」
私は深く頭を下げます。
「す、救うため?」
「壊しただと、ふざけるな。俺達の宝だぞ!」
そう言われて、私は頭を上げて相手の顔を見つめ返します。今の所、良い調子です。話ができ、続くなら、こちらの目的を達せられる可能性が見えます。
「あなた達が怒るのは当然です。しかし、今の私では何か恩を返すことさえできません。ここで会えたのも、何かの縁。私でつぐなえることがありましたら、なんでもいたしましょう。ですが、今だけは、今だけはどうか、怒りを抑えてほしいのです。今、先程までいたサバク様が、他国から来る脅威に対抗すべく、更なる力を得ようとしています。それを、どうか静観していただきたいのです。お願いします。今だけ、私達と争わないでください」
もう一度頭を下げます。
それから時間が、十秒、二十秒経って。そこで、ルンナさんが声を発しました。
「本当に、あなたは罪をつぐなうの?」
「はい」
「おいルンナ、何を言ってるんだ!」
「ズンタは黙ってて。あなた達は、果物を出せる。鉄を出せる。その力を、私達にちょうだい。そして、私達を無事に家まで帰して。そうしたら、少しは信じてあげてもいい」
「おいルンナ!」
「ズンタは帰りたくないの?」
「敵の味方をするくらいなら、戦って死んだ方がマシだ!」
「ズンタのバカ!」
「!」
「こんなところで死ぬなんて大バカよ。私は、生きて皆の元に帰る!」
お二人の意見は割れたようですが、どうやら、私の目的は半ば達成されたようです。
ルンナさんは、こちらを信用しても良いと言ってくださっている。
どうやら、もう一押しでサバク様の役に立てそうです。
雪山での戦闘メンバーを全員召喚し終えた。
ヒロードラゴン、ゴールドラゴン、サガンドラゴン、スプラッシュドラゴン。ジュレイドラゴンだけは、大きな姿で呼んでいるので、彼だけビッグサイズ。
更にいつもの顔ぶれとして、メタルギアジャイアント、フレイムピラージャイアント、スイボツジャイアント、フォレストジャイアント、アースジャイアント。
皆人サイズの大きさだ。ジャイアントが人サイズとはこれいかに。まあ、強さは変わっていないはずだから、きっと問題はない。小さくなったから弱体化とか、ないよね?
そして後の5人は、ウッドルフ、ネツウルフ、ナミウルフ、ギンウルフ、ジウルフ。
彼らだけ3コストのウルフタイプだ。4コストクリーチャーの召喚も考えたけど、4コストのクリーチャー達は、ワイバーン、蛇、少女5種類ずつの15人。きっと、雪山では寒さに強そうなウルフ達を呼んだ方が良いだろう。と思ってこっちにした。
皆召喚し終えると、やはりジュレイドラゴンだけ一際大きい。まあ、一人くらい大きい仲間がいる方が、心強いか。
「よし。これで戦力は十分だろう。皆、移動を開始だ。家の玄関を真後ろにして、まっすぐ前に進むぞ。それとネツウルフは俺を背中に乗せてくれ」
「ワン!」
俺はネツウルフに乗って雪山を散歩する。だって、彼が一番温かそうだったから。そして実際に温かかった。ぬくぬくでポカポカだ。頼りになる。
俺達はこの戦力で雪山を歩く、いや走る。この戦力で勝てなかった場合、ほぼ間違いなく俺では勝てないということだ。上手いこと手頃なモンスターを見つけたい。
ところで雪山は、今まで見たことないような銀世界なので、この中にいると新鮮な気分になる。でも、一番の目的は観光ではなくモンスターの発見と撃破なので、どんな生物の目撃も見逃さないつもりだ。早くレベルを上げてアッファルト王国に戻ろう。
俺だけ楽をして、皆は走る。おかげで移動が雪の上でも速い。ジャイアント達が若干遅く、皆はそのスピードに合わせているようだが、そのかわり俺達の陣形は完璧だった。
俺を真ん中に、ひし形陣形。先頭にジャイアント達がⅤ字に並び、横をウッドルフが、後ろをドラゴン達が守ってくれる。一番大きいジュレイドラゴンが最後尾。
そのままフォーメーションを崩さず、しばらく移動する。
すると。
「ワン!」
「ワン!」
突然ウルフ達が、吠えだした。
「皆、何か見つけたか?」
「ワン!」
皆うなずく。ネツウルフもうなずく。そうか、やっと第一モンスターを発見したか。
それじゃあ、勝てるなら勝たせてもらう。
「よし。それじゃあ皆、まずはそのモンスターの姿を捕捉してくれ。その後は勝てるかどうか探る。いけそうなら倒して、ダメそうなら逃げる。細かいところは各自の判断で。皆、いけるか?」
「ワン!」
「ガオオオーン!」
「よし、それじゃあ行動開始。頼んだぞ皆!」
俺の命令と同時に、皆それぞれ動き出した。
まずこの中で、一番スピードが速かったのがドラゴン達だ。5人のドラゴンが低空飛行で、敵の元へと飛んでいく。
次に速かったのが、ウルフ達。ジャイアント達をおいて、雪山を猛ダッシュ。ジャイアント達と少しずつ距離を開けていく。
一番足が遅かったジャイアント達は、そのままダッシュを継続。うーん、どうにか足を速くしてあげられればいいんだが、仕方ない。後から追いついてもらおう。
そのままひたすら全力移動が続くと、約一分後、俺にもモンスターを見つけられた。
敵は、巨大な猪だった。数は1体。
牙はないが、毛が長い。まるで茶色い小屋が動いているみたいだ。
そしてその猪を、5人のドラゴンが襲っている。
5方向からの各属性ブレス攻撃を受けて、猪は一方的にやられているようだった。猪はその場でじっと動かず、攻撃に耐えている。ひょっとして、猪は遠距離攻撃ができないのか?
「ブギイイー!」
そう思っていると、突然猪が叫び、前足を上げて、足元の雪をたくさんとばした。とんでもない量とスピードだ。
雪攻撃を受けたゴールドラゴンが、ぶつけられた雪と共に地面に落ちる。どうやら猪は、このチャンスを狙っていたらしい。
猪がゴールドラゴンの落下地点へと走る。まずい、そのまま踏みつぶして、ひき殺す気だ。相手はあの大きさだから、どれくらい重いのか想像もつかないぞ!
ここで射程距離に入ったウルフ達が、魔法攻撃で猪を攻撃する。けれど、それでも猪は突進を止めず、側面から突っ込んだ大きなジュレイドラゴンさえ、逆に軽く弾き返してしまった。
「ゴールドラゴン、避けろ!」
俺は、咄嗟にそう言うことしかできない。
その時、ゴールドラゴンは雪の中から出てきて、猪に気づくと慌てて飛んで逃げようとした。しかし回避が間に合わず、たいあたりをくらってしまう。
今度は突き飛ばされたゴールドラゴン。しかしかろうじて空を飛び、猪から距離をとった。ふう、良かった。まだ動けるようだな。ゴールドラゴン。
すぐにスプラッシュドラゴンがゴールドラゴンに近寄り、口から水を吐いてぶっかける。あれ、きっと治癒水だよな。そう信じよう。
それからは、こちらの一方的な攻撃が続いた。
皆の属性攻撃は、確実に猪の命を削り取っていった。猪はあと一回だけ、足元の雪をとばしてきたが、その時狙われたサガンドラゴンは、ギリギリのところでそれをかわした。どうやら猪は連続で遠距離攻撃ができないようだったし、かつこちらも一度見た攻撃への備えがあったため、もう大ダメージは受けなかった。
遅れてやって来たジャイアント達の魔法攻撃も加わると、猪は俺を乗せたネツウルフへ突進した後、あっさり倒れた。
その突進も、ネツウルフがギリギリかわしてくれて、事なきを得る。後は皆で囲んで集中砲火。すると猪は力尽き、動かなくなる。
「レベルが上がりました」
ありがとうとっ君。今の俺のレベルは、66か。一気に3上がったな。そして肝心の敵は、皆から属性攻撃を受けてもかなりの時間立っていたし、防御力重視のタフなモンスターだったのだろう。
しかしそのかわり、猪は俺達に対抗できる手段をあまり持ち合わせていなかった。俺達は、とても運が良かった。
「よし。この調子でもう何体かモンスターを倒そう」
「ガオオオーン!」
「おっと、その前に。ゴールドラゴン。体は平気か?」
「ゴオオオーン!」
良かった。ゴールドラゴンはもう元気そうだ。戦力が減らなかったことも、俺達にとってはプラスだ。
「でも、猪の方へ来たことで、帰り道が分からなくなってしまったかもしれないか。皆、屋敷の方向はわかるか?」
「ワン!」
ウルフ達が元気よくうなずく。そうか、わかるか。流石だ。
「よし。お前達がそう言うなら、大丈夫なんだろう。じゃあ帰る時は任せたぞ。ここから更に進んで、次のモンスターを見つけよう」
その後、更に猪を二体倒した。今俺は67レベル。
けれどその後、雪が降らない場所まで来ると、今度は敵が完全にいなくなった。
その後もしばらく歩いたが、やがて俺達は引き返すことにした。俺達は雪山にレベル上げしに来たのだ。雪が無くなっていく下の方には、モンスターがいないのかもしれない。屋敷から遠くなりすぎてもいけないだろうし、レベル上げは、雪山内ですべきだ。
陣形は最初の形から、ギンウルフが先頭になる。今はギンウルフに屋敷までの案内をしてもらっている。
そしてまた雪が降り始めると、先程倒した猪の死体を見つけた。この猪達は、雪山の低いところには来ないのかな?
二体目の猪の死体も発見。俺達は順調に屋敷へと戻っている。流石ウルフだ。今回はもうこのまま帰ろう。それでも時間があったら、また屋敷から再スタートにしよう。
山を登れば登る程、降る雪が多くなっていくことに気づく。下山中はあまり感じなかったけど、ということは、屋敷よりも上の方は更に降っているのか?
三体目の猪の死体も発見する。
しかし同時に、猪の死体の方から数体のモンスターがこちらへと走ってきた。俺がその姿を確認するよりも早く、皆が俺とネツウルフを守るように前に出る。
モンスターの数は5体。あれは、ウサギ、いや、キツネか?
耳はウサギだが、顔は鼻が前に突き出ていて、尻尾はこちらのウルフ達と同じくらい大きくフサフサしている。そして尻尾の数は一本ではなく三本。ウサギの体というよりは、キツネという感じがした。そして大きさは、俺よりは小さそうだ。小動物、いや、中動物くらいか?
まずドラゴン達がウサギキツネに攻撃する。各属性ブレスが敵をおそう。
しかしウサギキツネ達は、驚異的な速さで全てのブレスをかわした。
次はウサギキツネの番だった。目の前で氷のブーメランを作り、高速でとばしてドラゴン達を攻撃する。ドラゴン達はかろうじて回避するが、ジュレイドラゴンだけ体の大きさが災いしてか、少しダメージを受けていた。慌てて少し距離をとっている。
互いに致命傷を与えられない内に、ウルフ四人が一体のウサギキツネに接近した。
ウルフ達は即座に、そのウサギキツネを狙い撃ち、属性魔法で集中砲火する。しかしその全ての攻撃すら、あっけなく回避されてしまう。
あのモンスター、凄く強いぞ。というか、速い。攻撃も回避も、どちらも厄介だ。
ドラゴンとウルフ達が9人がかりで集中攻撃すると、やっと一体のウサギキツネにダメージが入った。しかし他四体のマークが外れたウサギキツネ達が、今度はウルフ達に氷のブーメランをとばす。
ウルフ達は敵の攻撃の速さについていけず、あっという間にかなりのダメージを受けた。
慌ててウルフ達は後ろに下がり、ジャイアント達の後ろに隠れる。するとジャイアント達は自らが壁になりながら、攻撃魔法を放った。
ジャイアント達も加わって、ダメージを受けていたウサギキツネが更に攻撃を浴びる。ウサギキツネは必死に回避していたが、それでも避けきれずにダメージを受けると、続けてもう一発ブレスを浴びて、そこで力尽きた。
「レベルが上がりました」
よしっ。これで皆の地力が上がってくれればいいんだけど。
四体のウサギキツネ達は仲間がやられている間に、ジャイアント一体に集中攻撃した。
だがジャイアント達は攻撃魔法を氷のブーメランの迎撃に使い、更に連続ダメージを受けた一体を後ろにかばってダメージを散らすことで、見事に壁役を果たした。
今回は、ジャイアントと敵との相性が良かったのだろう。攻撃を撃ち合っている間に、二体目のウサギキツネが力尽きる。
「レベルが上がりました」
今、俺のレベルは70か。
また3レベルも上がっているということは、もう皆大分強くなっているはずだ。
と思っていると、ウサギキツネ達が一斉に逃げ始めた。
どうやら仲間が二体やられて、勝てないと判断したらしい。物凄いスピードで遠ざかって行く。
皆は追い打ちをしかけたが、ウサギキツネ達は最後までこちらの攻撃を丁寧にかわす。更にあの速さで逃げられたらとても追いつけず、結局皆はすぐに俺の元へ戻ってきた。
俺は皆をねぎらう。
「皆、戦闘ありがとう。相手はかなり強かったな。倒せて良かった。今回はジャイアント達が活躍してくれたな。お前達のおかげでウルフ達が助かった。大活躍だ」
ジャイアント達は腕を上げて答える。けれどその姿は、皆ボロボロだった。
「皆、凄くボロボロだな。ウルフ達もだ。治癒水が使える者は、すぐに皆の手当てをしてくれ」
「ワン!」
「シュレアー!」
「ワン!」
「グオオーン!」
ナミウルフとスプラッシュドラゴン、スイボツジャイアントだけてなく、ウッドルフとジュレイドラゴン、フォレストジャイアントまでもが俺の指示に応じた。
ナミウルフ、スプラッシュドラゴン、スイボツジャイアントは普通に治癒水を生み出すが、ウッドルフ、ジュレイドラゴン、フォレストジャイアントは拳サイズの木の実を生み出した。それを食べた皆は、みるみると回復していった。どうやら木属性の皆も、回復アイテムを生み出せるらしい。
結果的にすぐに皆、受けた傷を全て癒やした。
頼もしい。きっと彼らはまだ戦えるだろう。
けれど今はもう、絶対に帰ろう。今も帰っている途中だったしな。
周囲も既に、暗くなってきている気がする。暗闇の中雪山を移動するのは危険だろう。少なくとも俺は、完全にお荷物になる。これまでも何か役立つような場面もなかったけど、何かできるかもしれないと、何もできないでは大きな差がある。というか、少しは俺もいた意味があったと思いたい。なのでそう思うことにする。
あ、そうだ。一応ウサギキツネの死体を回収しておこう。こいつらは強かったし、もしかしたら貴重な素材とかになるかもしれない。そういうことがわかる可能性があるのはリキュア王女様くらいしかいないけど、彼女がわからなくてもお肉が美味しければ問題ないはずだ。
「ナミウルフ、スプラッシュドラゴン。できればウサギキツネの体を氷漬けにして持って行こう。運ぶのはジャイアント達に頼む」
皆、すぐ作業にかかってくれた。水属性の彼らがうなずいたということは、できるということだ。では、よろしく頼む。
血抜きはよくわからなかったけど、ここで時間を消費するのも悪い気がしたので、まずは屋敷に戻ることが先決だ。
ウサギキツネを氷漬けにしている間に、軽く猪の死体も確認する。こっちは大きすぎて持ち運べないけど、お肉や毛皮を切り分ければ少しはもっていけるか?
そう思って近づいてみるけど、俺の表情はすぐに曇った。
「うーん。やっぱり猪には、食べられた跡があるな。ウサギキツネはこいつを食べるために集まっていたんだ」
流石に野生のモンスターが食べかけていた物を持って行こうとは思わない。
ひょっとしたらウサギキツネが好んで食べるくらい肉が美味しいのかもしれないけど、そのウサギキツネの口や手から、この猪に危険な菌とかをつけられてしまっていたら大変だ。
このモンスターの素材は、リキュア王女様と相談して、欲しかったら新しく探そう。今食料は必要としていないし、今の俺達なら猪一体くらいかなり安全に倒せるだろうから、そう貴重な物でもないだろう。
それに、努力してこれを切り分けて持って行って、その結果全部ゴミになったら、ちょっと落ち込みそう。
少なくともこの死体は完全に諦めよう。他の猪の死体も、明日確かめてきれいに残っていたら良いな。程度に思っておこう。狩れる猪はまだ他にもいるだろうからね。ウサギキツネも同様。命を奪っておいて、そのまま放置するしかないっていうのも良くない気がするからね。
ところでウサギキツネの攻撃方法は魔法攻撃しか見ていないけど、きっと牙や爪も鋭いんだろうな。
「ところで、皆。皆は、この猪の肉食べる?」
ふと思って訊く。ひょっとしたら皆、働きづくめで食欲に飢えているかもしれない。それに皆モンスタータイプの姿だし、生でもいけるのかも。
という俺の思いは杞憂に終わり、皆は首を横に振った。
「そっか。じゃあ、行こうか」
こうして俺達は、ウサギキツネというお土産も持って屋敷へと帰ることにした。
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