神様だけにバカ売れしたカードゲームが、異世界で超優秀な特殊能力に生まれ変わりました(ターゲットブレイク)

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30 サッカーその2

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 サッカーコートから、屋敷まで移動。そこでバトソンを捕まえる。
「バトソン、話がある」
「はい。なんでしょうか、サバク様」
「人を集めたいんだが、どうすればいい。バトソンはできるか?」
「人、ですか。屋敷の使用人の新規応募ですか?」
「いいや、サッカーというスポーツをやってほしいんだ」
「サッカー、スポーツ?」
「大勢でやる運動、競技だよ。俺が人を集められるんならそうしたいんだけど、具体的な方法が思いつかなくて。あ、つまりだね。お金を出して運動をやってもらうんだよ。今果物を売って儲けてるから、その利益で人を雇いたいんだ。足りない部分は、屋敷の財産も使うけど」
「運動をやらせるのに、お金を払う、ですか。ひとまず、給金はいくらくらいにして、何人程度の募集にしますか?」
「あー、お金はあ、俺が雇うんだから、アムヌやスウェードの給料と同じくらいで。人数は11人が2チームだから、22人で、補欠も必要だからあ、50人。か、多くて百人。運動ができそうな若い大人を、男女で、できれば分けたいな。叶うなら、男を50人、女を50人。集められる?」
「かなりの数ですね。すぐに集められるかはわかりませんが、やってみましょう」
「話は聞きました」
 ここでヘルがやって来た。
「こんにちは、ヘル」
「こんにちは、ご主人様。ここは、奴隷を買うという手もありますよ」
「奴隷?」
「はい。奴隷ならなんでも言うことを聞かせられますし、お金を払うだけで集められます。なんなら私達も参加してもかまいません」
「バカを言うな。お前たちには仕事があるだろう」
「ご主人様の命令が最優先です。それで、ご主人様。いかがなさいますか?」
 俺はふと考える。
 奴隷を買って命令する。なんて、あまりしたくない。
 でも、奴隷を開放したい。という気持ちはある。
 なので俺は、うなずいた。
「わかった。奴隷を買おう。バトソン。ひとまず男25人、女25人を募集して。俺は残り男25人、女25人程、奴隷を買うという手段を試してみる。それがダメだったら再募集で、百人で」
「わかりました。しかし、それで本当によろしいのでしょうか?」
「更に手が必要なら、また何か考える。あと、バトソン。できるだけ早く、水を溜められるタルやタンクを数個用意してくれないか。お城から、聖水の用意を頼まれたんだ。これから毎日、とはいかないまでも、水属性の皆に出してもらおうと思ってる」
「は、はい。かしこまりました」
「マスター。私達がいちいち聖水を作り出さなくてもいいように、聖水が湧く泉を庭に作ってもいいですか?」
「わかった。それはスウェードと相談して、場所を決めてくれ。火属性の皆は、申し訳ないが待機。けど、後でサッカーチームの指導、監督をしてもらいたい」
「イエスマスター。しかし、一人は護衛が必要でしょう。私がお供いたします」
 カメトル君にそう言われる。
「ああ、ありがとう。カメトル君。とにかく、人をそろえられるなら早い方がいい。バトソン、早速手配を。ヘルは、奴隷がどこで買えるか、案内してくれるか?」
「はい。ご主人様。早速馬車の手配をいたします」
「馬車かあ。それなら、ウェルカムドアの方が良いかもしれないな。ウェルカムドア、ヘルが言った場所まで、送り届けてくれることは可能か?」
「ウェルカーム」
「大丈夫そうだな。あとは、お金かあ。あ、バトソン、やっぱり待って、お金ちょうだい!」
 ここで話し合いの結果、俺がすぐに使えるお金は、自室に用意する宝箱に入れてもらえることになった。足りなくなったらまたそこに、バトソンに足してもらう。
 そして、お金を持った俺は、ウェルカムドアの力によって奴隷の店まで瞬間移動。俺、カメトル君、ウェルカムドア、ヘル、クレバナさん、ロリッチさんの団体で訪問することにした。

「いらっしゃい。どういった奴隷をお望みで?」
 大柄な男がカウンターごしから俺達に言う。
「運動ができる、若い人達が欲しい。男が25人、女が25人。頼めるか?」
「お任せを。丁度いいですよ、旦那。つい先日、いくさ備えから帰ってきた若いのがそろっていて、男はもちろん、女も用意できます」
「早速呼んでくれ」
「まあそう焦らず。じっくり品定めをなさってください。奴隷房は奥です。今案内人を呼びます」
 そう言って男が鈴を鳴らす。
 すると若干高齢の小柄なおじさんが現れて、俺達に笑顔を見せた。
「奴隷をお求めの方々ですね。こちらへおこしください」
 そう言って店の裏口から出て、長屋になっている建物に入った。
 においは、臭い。お世辞にも清潔とは言えなさそうだ。
「芳香炎で浄化しましょう」
 カメトル君がそう言って、香り立つ炎を放つ。
 すると、そこから通じる空間全てに炎が広がり、すぐに消え、一瞬で臭いも0に。見た目も清潔になった。
「ありがとう、カメトル君」
「マスターの従者として当然のことをしたまでです」
「い、今のは一体」
 案内人が驚いて、俺達を見ている。
「ご存じありませんか。バウコン帝国をたった一人で退けた救世主を。この赤毛の少年を従えるこちらのお方こそ、神の使いフダウリサバク様、その人なのですよ」
 ヘルが自慢げに言う。
「か、神の使い様、ははー!」
 男がそこで、おもいきり頭を下げた。
 折角なので、ここで言っておく。
「俺は、奴隷をあまり快く思っていない。人は、皆幸せになるべきだと思っているからだ。
けど、今の俺には全ての奴隷を開放することはできない。だから、ひとまず救える限りの奴隷を買う。本当なら、全員買い上げ、救いたいくらいだ」
「流石、神の使い様でございます。あなた様に買っていただける奴隷は幸せでしょう。さあ、若い奴隷は前の方にそろえています。どうぞ吟味してください」
「それなんだけどさあ」
「はい。何か?」
「男女に分けてから、一斉に皆を走らせて、早かった25人を買うってこと、できる?」

 奴隷店の前は、ちょっとした人だかりができていた。
 まず、道の真ん中を一区間、奴隷達と奴隷商が独占した。通行人は皆従った。この場に俺がいたからだ。
「これから救世主様の手による、選定の儀が始まる!」
 奴隷商にそう言いふらされたら、効果はてきめんだった。一般人の方達も、これから起こるであろう出来事を、しきりに気にしている。
 あと、足が速かった25人を選別するため、とっ君も召喚されていた。クレバナさんとロリッチさんは、二人で立ってゴールラインのかわり。
 遠くで密集し、立っているのは、まず奴隷の男達。皆目つきがギラギラしている。老人も、少年もいる。足や手がない人達もいる。
 幼い子や老人がいることにショックを覚える俺だが、やはりここは、こちらの条件はただ一つ。足が速いこと。そう言っておく。
 足が速いというメリットは、サッカーでの第一条件だ。足が遅い人は、その分不利だ。なのでこれを、雇う条件とする。
 のだが。
 その前に、手や足がない人は、不利すぎるでしょう?
「とっ君、カメトル君。手足が無い人達は、水属性の皆の水でどうにかしてやれない?」
「イエスマスター。彼らならなんとかなると思います」
「では、早速ウェルカムドアに水属性の皆の元まで送ってもらいましょう。私がつれてきます!」
 カメトル君がそう言って、ウェルカムドアを通じて水属性の皆をつれてくる。
 そして彼らが宙に浮かぶ超治癒水の玉を配って、手や足の無い人達の手足を取り戻させた。それ以外の五体満足な皆も、一口飲んで元気になる。
「流石神の使い様だ」
「神の使い様、どうか俺達にもお慈悲を!」
 すると観客や奴隷商達も超治癒水に集まりだしたので、このまま水属性の皆に、道端で超治癒水の水玉を配ってもらう。
 そして俺が駆けっこをうながすと、皆最初の時以上にやる気になった。
「位置について、よーい、どん!」
 案内人がそう言った瞬間、奴隷達が一気に俺の方、奴隷店の前へと駆けだした。
 子供、老人がまず後方へとのまれる。突き飛ばされたり、踏まれたりする人も出る。
 そして血走った目で皆、ただ俺の元へ来るだけというゴールを目指す。
 結果はすぐに出た。
「足の速かった25人を選びました」
「ウェルカーム」
 そう言って俺の仲間達とヘルが、足の速かった奴隷、そうでない奴隷と分けていく。
 選ばれた奴隷達は皆笑顔を浮かべ、選ばれなかった奴隷達はくやしそうにしていた。
「ひとまず、この25人を買う。ただ、その前に倒れた者、ケガをした者に、もう一度水を与える。そしてやはり、俺は奴隷を開放する政策を後日発表する。皆、その日をどうか待っていてほしい」
 そう言って、次は女奴隷の駆けっこ。こちらも無事、25人決まる。
「お金はこれで足りる?」
「もちろんです。毎度ありがとうございました!」
 ひとまず俺は、50人の奴隷をつれてサッカーコートまで戻った。

 サッカーコートに50人集めて、カメトル君にすぐ他の火属性のメンバーを呼んでもらった。
あと、水属性の皆は、庭の泉作りも終わったとのことで、また先程のような急な要請があるかもしれないと、俺と共に行動してくれるらしい。
俺は奴隷達に言う。
「皆。皆のごはんと家は、後で用意する。今はひとまず、彼ら火属性の皆からサッカーの知識を学び、サッカーの練習をしてほしい。このサッカーが上手くいけば、君達の何人かには大金がまいこみ、暮らしが豊かになるはずだ。それまでどうか、俺を信じて頑張ってくれ!」
「俺達は、救世主様を信じます!」
「救世主様に従っていれば、俺達の未来は明るい!」
「どこまでもついていきます、救世主様!」
 皆の俺を見る目はともかく、やる気はみなぎっている。ここは、このまま火属性の皆に任せよう。
「それじゃあ火属性の皆、頼んだぞ!」
「イエスマスター!」
「では、次だ。ヘル。お金のチャージが済んだら、今度はボールを売っている店を教えてほしい。足でけるのに適したボールだ。知ってるか?」
「はい。ご主人様。それでしたら一つ、心当たりがあります」
 そのヘルの心当たりで、俺はサッカー用のボールを買い、更にパンや干し肉等も買い、それらを奴隷達に配った。
 火属性の皆のやる気も十分。本格的なサッカーの指導が始まった。

 夕暮れ時になったので、木属性と土属性の皆が戻ってくる。
 働き終わったばかりで悪いとも思ったが、俺は彼らにサッカーコート隣の寮の建造を頼んだ。
 すると四属性がパパッと寮や井戸を作ってしまい、夜の真っ暗になる前に、30人くらいが住める寮が二つ完成。それに男奴隷、女奴隷が分かれて入る。
 簡単な部屋決めをした後、余ったパンや、干し肉、木属性の皆が出してくれた果物を食堂で食べさせる。すると奴隷達は、涙を流して喜んでくれた。
「寮の管理人も必要だな。毎日ごはんを届けてくれる係も必要だし、更に雇用が増える」
「今なら、私達がお世話できますよ」
 皆がそう言ってくれるが、このサッカープロジェクトはなんとしても続けていきたい。更に人を雇うべきだろう。
「まず屋敷に戻ったら、バトソンと相談してみるよ」
 そう言って、バトソンをつかまえる。するとバトソンも、俺に報告があった。
「サバク様。雇う人員の件なのですが、どうやらすぐに集まりそうです。戦争が終わったばかりで後は報酬を受け取るだけの傭兵が、かなりの人数いました。彼ら彼女らを雇えそうです」
「ありがとう、バトソン。それと、更に追加の人員なんだが、サッカーチームの食事を作ったり、住む寮を管理してくれる人も募集したいんだ。頼めるか?」
「はい。では何人雇いましょうか?」
「コックと管理人、それぞれ最低四人。いや、休日交代も考えるとコックは八人か。あと、食料の買い付けも任せる人がほしい」
「かしこまりました。では、雇用を募集する前に俺にもその寮となる場所を確認させてもらってよろしいでしょうか?」
「ああ、いいよ。ちゃんと寮があって、どんな寮かもわかっててもらってないと、雇いづらいもんな。明日の朝、一緒に寮へ行こう。バトソンはそれでいいか?」
「はい。承知いたしました」
「ああ、そうだ。寮の分も含めて、麦や米を作ってもらうのもいいな。明日木属性の皆と相談してみよう。あああと、王主国の平和活動として、平和活動の要望と、必要なら人員も募りたい。これは王様にも言っておこう」
 こうしてその日は過ぎていった。

 そして翌朝。
 まずバトソンに、男子寮、女子寮を見てもらう。木属性の皆が食事のフルーツを出してあげていて、火属性の皆は早速コーチ役をこなそうとはりきっている。
「これは、凄いですね。建物もそうですが、サッカーコートも、果樹園も。これら全て、サバク様がご用意されたのですか?」
「まあ、皆のおかげだよ。今日は更に、もう一個サッカーコートを作って、もう50人分の寮も建ててもらう予定だ」
「なるほど」
「あ、でも、奴隷じゃない人を雇うなら、もう寮は必要ないかな?」
「いいえ、ここまで来るのに距離がありますし、寮住まいになった方が良いでしょう。まあ、雇った者からの要望があれば、王都からの行き交いにしてもいいですが、この立地条件なら全員寮住まいの方が断然良いとなるはずです」
「ありがとう、バトソン。そう言ってもらえると安心するよ」
「はい。しかし、こうなるとサッカー選手より寮の管理人やコックの方が先ですね。すぐ手配します」
「よろしく頼むよ、バトソン」
 バトソンはここで屋敷に戻る。そこで入れ違いにクレバナさんとロリッチさんが俺を見て言った。
「サバクさん。このサッカーの試合をする時、帝国の者も招待してください」
「ああ、確かに。いいよ」
「そうなるとだ。こちらとしては、試合の開催日を早く知りたい。人を招くにしても、準備があるからな」
「わかった。試合ができそうだと判断したら、すぐに二人を帝国まで送るよ。それとも、今もう帝国へ行く?」
「そうですね。このサッカーなるものをすぐに伝えた方が良い気もします。できるなら、今日も帝国へ送ってください」
「わかった。すぐに送ろう」
「ということでロリッチ、あなただけでも行ってくださいますか?」
「なんだ、クレバナ。お前は行かないのか?」
「報告は一人でも良いと思いまして。実は昨日の夜の間に、家族あての手紙をしたためておきました。これを届けてもらえれば、私は十分です。ロリッチは今日の日中中、帝国にいてもよいと思います」
「ふむ、そうか。気を利かせてもらってすまないな、クレバナ」
「いいえ。この任務は急なものでしたからね。できる時に、可能な限り私用の時間を作っておくべきです。それに、なぜだかこれから、もっと忙しくなるような気もしますからね」
「確かにそれは言えている」
「あの、それじゃあロリッチさんだけ、送るよ。ウェルカムドア、お願い」
「ウェルカーム」
 こうして今日、ロリッチさんは俺の元を離れた。

 四属性の皆がまたもや速攻で、サッカーコートと寮二つを作ってしまう。
 今回のサッカーコートは、ちゃんと芝生だ。白線は水属性が色付きの水を使って生みだし、ゴールは木属性の皆が作った。
 その後は、土属性の皆が石製の階段状観客席を作り、木属性の皆がベンチと屋根を作る。二つのコートが観客席によって覆われた時、奴隷達は練習をしながらも普通に驚いた。
 そして、それでも時間帯はまだ日中。木属性と土属性の皆は、また新たに畑制作をしに行った。今度のは小麦、大麦、米の植え付けだ。
 水属性の皆は、俺の護衛。さて、それじゃあ俺は、あとどうするか。
「ウェルカムドア、昨日行ったおもちゃ屋にまた行ってくれるか?」
「ウェルカーム」
 俺は皆を引き連れて、おもちゃ屋で再びボールを吟味する。
 けって遊べるサッカーボールの代用品は見つけられたのだから、他の競技に使えそうなボールもないかと考えたのだ。
 するとすぐに、よく弾むバスケットボールと、野球に使える硬球を見つけた。これも買っておく。
 けど次の競技案は、サッカーのプレゼンが無事終わってからだ。あとは、そうだな。バトソンの様子でも見てくるか?
「ウェルカムドア、バトソンのところへ」
「ウェルカーム」
 ウェルカムドアの力を借りてバトソンの元まで行くと、バトソンはどこかの部屋で、長テーブルに置かれたいくつものスープを飲んでいるところだった。
 そして向かい側には、スープの皿の数と同じ人数の人が並んでいる。
「これでは味が薄い。旨味が全く感じられない」
 バトソンがそう言うと、誰か一人が落胆する。
「野菜がふぞろいだ。これでは火の通りが悪い」
「バ、バトソン。つい来ちゃったんだけど」
「こ、これはサバク様。来ていらっしゃることに気づかず申し訳ありません。今、コックの審査をしているところです」
「なるほど。で、バトソンが判断するには、皆きびしいと」
「はい。今のところ、合格者は二名だけです。あと、残る雇用希望者はこの6名だけなのですが、これでは採用いたしかねます」
「それは困る。うーん」
 料理人が二名だけというのは、よくない。寮は四つフル稼働する予定。それに休日も無しのスケジュールじゃブラック企業同然だ。世界平和なんて程遠い。
 見る限り、来てくれている人達は皆くやしそうで、まっすぐな気持ちでスープを作ってくれていたみたいだ。
 だったら、もしかしたらこの人達を雇ってもいいかもしれない。
「ねえバトソン。一度この人達全員を雇ってみて、そのうえで出来る限り、プロが料理の指導をするって形はどうかな?」
「サ、サバク様。よろしいのですか?」
 驚くバトソン。
「うん。今は人手が一刻でも早く欲しい時だし、それに、研修期間を設けて実力がつけば、それで良いと思うんだ。どうだろう、そうしてみないか?」
「サバク様がそれでよいのなら、俺もそれでかまいません。ですが、審査した通りではこの場にいる者は皆未熟。それでもよろしいのですね?」
「うん。最悪の場合、寮の皆からごはんがまずいって苦情が来た時は、その時新たに雇用状況を考えるということで。俺はそれでいいと思う」
 口で言うのは簡単だけど、きっと俺が自分で食べないから言えるんだろうな。
 でも、俺の言葉で皆顔を明るくしてくれている。きっとこの人達がこの先も一生懸命頑張って、料理の腕を磨いていけば、大丈夫だ。
「わかりました。では、諸君。運が良かったな。サバク様が雇ってくださるそうだ。皆、至急荷物をまとめて馬車へ乗ってくれ」
 こうして、料理人もなんとかなったのだった。たぶん。

 ここでバトソンに、更なる意見を言われた。
「寮の場所は王都の外ですが、警備の状態は万全なのですか?」
 そんなこと全然考えてなかった。
 なので至急、サッカー場エリアの警備のことを考える。
「申し訳ありません、サバクさん。このような事、本来ならば補佐役の私がもっと早く言えれば良かったのですが」
「クレバナさんはよくやってくれてるよ。こういう時は、どうすればいいんだろう?」
「城の兵士を頼るか、冒険者を雇うかですね。サバク様は王主様なのですから、兵を動員してもよろしいのではないでしょうか?」
「確かにそうかもしれないけど、荒野地帯は王主国っていう名目になってるからなあ。うーん。ちなみに、この辺りに現れる危険なモンスターはどんなのなの?」
「スライやカマキー等、一般的に弱いと分類されるモンスター達ばかりです。荒野ならスズムーでしょうか?」
「それって砂の中に隠れている虫のこと?」
「はい。スズムーはスライやカマキーよりは強いので、大の大人でも危険です。初心者卒業冒険者レベルなら簡単に倒せるでしょうが、常人には脅威です」
「なるほど」
「あと、盗賊はそれらのモンスターよりも脅威でしょう。なのでレベルとしては、最低でも20レベルの者が十名以上欲しいです」
「そうか。レベルも大切なんだな」
 そう言って、ふと思い当たる。
「ねえ、バトソン。サッカー選手は、もう決まった?」
「いいえ、これから決めるところです。南側の兵士訓練場で待ち合わせしています」
「もし彼らがいっぱいいたらさ、その中からレベルの高い人を、新たに雇う。でよくない?」
「確かに、それでもいいですね」
「それじゃあ、そういうことで」
 こうして俺達は、もう少しバトソンと共にいることにした。

 ウェルカムドアの力を借りて、兵士訓練場にやってきました。
 そこに集まっていた人達は、俺達の登場シーンを見てビビる。まあ、目の前に瞬間移動されたら、誰だって驚くよね。
「時間はまだ少し早いですが、もう何人か集まっていますね。サバク様。もう少し人が集まる予定ですので、しばらくお待ちください」
「うん」
 それからしばらくして俺達の前に、男三百人くらい、女30人くらいの集まりができた。
 男三百人は多いなあ。ひとまず女を先に25人決めてしまい、男は百人ずつ走ってもらい、勝ちぬいた十人ずつ、30人に再びかけっこをしてもらう。これで男女50人決める。
 その後、おちこむ人たちに警備員、警備員宿舎の管理人の仕事を急遽依頼。そこから更に模擬戦試験を行い、60人程度を確保。
 ということで、警備員宿舎も建てないといけないなあ。そして料理人も急遽再雇用か。

 夕方に木属性、土属性の皆が戻ってきたので、警備員宿舎の作成を要請。あと木属性の皆に、サッカー選手の練習服を作ってもらう。正式なユニフォームは後日決める。
 一般人のサッカー選手は、いろいろ準備があるということで、入寮、訓練開始が明日からになった。こちらのコーチも、火属性の皆で事足りるとのこと。そして水属性の数人も、サッカー場や寮の不備不満の声を調査するために、残るとのこと。
 あと、ロリッチさんを迎えに行った。半日ぶりに見たロリッチさんは上機嫌そうだったけど、俺の顔を見た途端にいかめしい顔になった。なんか、嫌われてたりする?
 もう少し、クレバナさんとロリッチさんの待遇を改善した方がいいのかもしれない。
 そう思うと、ふと、明日はお休みの日にしようかと提案。パーティーやってから日はまだ浅いけど、その間忙しかったし、いいよね。
「まあ、政策がひと段落ついたのなら、かまいませんが」
 クレバナさんの意見に、ロリッチさんもうなずく。
「私達は毎日がマスターのために働く日なので、明日も仕事をしてもかまいませんよ。マスターが私達をかまってくれるなら別ですが」
 仲間の皆からはこういう意見。
 ああ、もちろんかまってやるとも。と言いたかったが、金属性の皆無しでぞろぞろ動くのもどうかと思う。それに俺は、折角なので王都の詳しい様子、街並みを見てみたい。
なので、皆の中から休み扱いの人を決める。まずはネズット君、バートリー君、イルフィン君の三人が護衛兼俺とお休みする当番となった。あとウェルカムドアはいつでも一緒にいてほしいので、彼も一緒。
 一応ここで、皆、現状に不満はないかと訊いておく。すると皆、問題なしとのこと。そう言われると、逆にこっちが申し訳なく思った。あと、屋敷に戻ったら忘れない内にクレバナさんとロリッチさんに、今月の給料を先に渡しておく。流石にお金を持たせないで休日を過ごせというのもどうかと思うからね。
ただ給料の額については、少なすぎても渡しすぎてもいけないと思うので、クレバナさん、ロリッチさん、バトソンと顔をつき合わせて、相談しよう。
 そういえば、バトソン達はお休み、どうなっているんだろう。ちょっと気になったので、集まったついでに聞いてみることにした。

「お休みですか。暇を見つけてもらっていますよ。サバク様、ご安心を」
「そう。でも、休憩と休日は違うよ?」
「と言われましても、毎日仕事がありますからね。しかし、俺達使用人は皆、現在の職場環境に満足しています。そう気をかけてくださらなくても問題なしです」
「そう言われてもなあ。あ、それじゃあ、今度皆の都合が良い時に、俺が旅行に行ったり、皆でバカンスに行ったりして休もうよ」
「はあ、バカンスですか。まあ、それは当分先のことで結構ですよ。サバク様は現在お忙しいようですし、そちらを重視してもらってかまいません」
「そうか。でも、プレゼントとか、またパーティーしたいとか、皆から要望があったら叶えたいと思ってるから、何かあったら言ってね」
「かしこまりました」
「それじゃあ、これからクレバナさん、ロリッチさんの、給与についての話し合いを始めよう」
「はい」
 仕事も大事だけど、休みも大事だよね。
 平和はまず身近なところから。それを心がけよう。
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