上 下
37 / 37

37 サッカーその8

しおりを挟む
 25 サッカーの行方

 モノウームを創造して十日経ったので、新しくなんでも教えてくれるクリーチャー、教えティーチャーを創造した。
 けれど、創造はしても召喚はしていない。皆もう、それぞれ役目があるからだ。今の所クリーチャーチェンジの予定は、サッカーの試合が終わってから、火属性クリーチャーの二人を交換しようと思っている。
 サッカーの指導役は、サッカーを経験した人達の中から選ぼうという考えだ。この考えは、無事サッカーの試合が終わってから、選手達に伝えよう。
 というわけで、日が経って、サッカー試合開催日となった。
 俺は当日早朝、まず最初に配るビール、ジュース、串焼きの準備具合を確かめ、各サッカーチームに激励の言葉を伝えてから、丁度いい時間帯に帝国の城へ行って、バラックス達を迎える。
 バラックス達は、ウェルカムドアで移動。王様達は、割と近い距離にいるので、自分達で来てもらう。ただ、一般客は商業ギルド、レイドサークルから辻馬車を用意してもらい、少しずつ会場に入ってもらう。
 一般の方達には、入場と共に飲み物と串焼きを受け取ってもらい、後は誘導に従って観客席に入ってもらう。チケットには席の番号が書いてあるため、そこに行ってもらう。
 アッファルト王国の王様達も来て、バラックス達と近くに座る。そしてそのまま、サッカーの開催を待ってもらった。俺も、バトソン達皆と観客席に座る。バトソン達は、折角なのでつれてきていた。
 時間が来たら、フレイムピラージャイアントがサッカー場中央に現れ、司会進行を努めた。
「皆さん、大変お待たせいたしました。これより、サーバークファイアズ対サーバークサンダーズ。サーバークウォーターズ対サーバークウィンドズの試合を行います!」
 しーん。となる会場。ま、まあ、まだ盛りあがれないよな。初めてだし、こればかりは仕方ない。
「ではこれより、サーバークファイアズ対、サーバークサンダーズの選手が入場します。両チーム、入場!」
 こうして、サッカーが始まった。
 サッカーは順調に行われる。それも、接戦で。
 やっぱりどっちも勝ちに燃えている。だが先に、サーバークファイアズが一点入れた。
すると、その時小さいが、歓声があがった。それからどんどん応援の声が増えていき、どちらも点を入れると、観客がわくようになる。
結果、試合はサーバークファイアズが勝利。その時、観客たちは大歓声。優勝トロフィーをもらったサーバークファイアズも、嬉しそうだった。もはや、サッカーは成功といえる盛況ぶりだった。
その後、観客全員にお弁当を配り、お昼休憩をとったらサーバークウォーターズ対サーバークウィンドズの試合が始まる。女性達のサッカー対決だ。これも盛り上がる。
サッカーが終わった後は、俺、王様バラックスとで、三人で話し合って、二か国でもサッカーを行うことを宣言。こうして、スポーツの社会浸透が始まることとなった。
昨日の内から、バラックスに贈るユーフォーを用意しておいたので、バラックス達はそれで帰還。王様達も観客も、王都へと戻っていった。そしてサッカー選手達は、勝った方は盛りあがり続け、負けた方は非情にくやしくしていた。俺は全てのチームにねぎらいの声をかけた。

 それから数日後、俺の元に結婚式の予定表が届いた。
 差出人は、リキュア王女様とサバク教徒を名乗る者からの、連名だった。
 手紙の内容から察すると、ファルコン町の教会で、サバク教徒が俺とリキュア王女様の結婚を見届け、司会進行もするとのこと。
 これには少し首をかしげたが、リキュア王女様と話し合うと、なんでもサーバーク国ではサバク教を一大派閥にしたいとのこと。そしてこの結婚式でサバク教の力を各参列者に知らしめたいとのこと。
 俺にはそんな思惑考えもしなかったが、しかしサバク教なんかを信じてくれる人達をむげにするのも忍びない。まあ、俺に御利益なんてないとわかればその内自然消滅するだろう。俺はそのまま自由にさせることにした。
 そして、結婚式は決定し、俺とリキュア王女様は結婚した。
 その後、俺は夫婦生活を頑張りながら、王主国サーバークを少しずつ作りあげていき、できるだけ多くの人達を幸せにするのだった。

 26 別れ

 それから、何十年も時が過ぎて。
 今日、召喚した教えティーチャーの教え、というか予言を聞いて、あることが判明した。
 どうも、そろそろ父が息をひきとるらしい。
 考えた結果、俺はウェルカムドアの力を借りて、元の世界に戻ることにした。
 久しぶりに見た父さんは、すっかり老けて、部屋で横になっていた。
「父さん」
「なんだ。沙漠か。昔のままだな」
「俺、実は生きてたんだ。神様に助けられて。おかげで良いことばかりあった」
 それと同じくらい、大変なこともあったけど、それも大切な思い出だ。
「沙漠。お前は、後悔してはいないか?」
「後悔は、してないよ」
「そうか。俺も、していない。悲しいことは、あったがな。長い間、お前が行方不明になっていたことだ」
「今まで連絡しなくて、ごめん」
「人生の最後に、子供の顔が見れた。俺の人生は、なかなか悪くはなかったな。悪くはなかった」
 父さんが眠った。俺は、話すことはもう話し終えた気がして、もう帰ることにした。
「父さん、ゆっくり眠って」
 母さんには、手紙を残しておこう。一日考えて書いた手紙だ。読んでもらえたらうれしいな。
「ウェルカムドア、もう、城に帰ろう」
「イエスマスター」
 考え事をしていたら帰りづらくなる気がしたので、すぐに実家を去る。
 いつの間にか、長い時間が経ったんだなと、そう思った。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...