幕末・浪漫千香 〜どんな時代でも、幸せになれる〜

秋藤冨美

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心を尽くして

芹沢鴨かも!

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千香は昼餉の支度をしようと台所へ向かった。しかし、初めて来た場所なので台所の場所が分からず。おまけに部屋に戻ると、また質問攻めにあいそうな予感もするので戻れないしで立ち往生していた。

「どうしよ。 」

キョロキョロと辺りを見回してみる。すると、前方から誰かがドカドカと歩いてくるのが見えて、救世主だ!と思い声をかけてしまった。

「すみません!厨房はどちらでしょうか? 」

誰に聞いたか確認しなかったので頭を深く下げる。仮に、芹沢などに声を掛けてしまえば、どうなるか想像もつかなかったからである。しばらく経っても返事が聞こえないので、恐る恐る顔を上げると千香は息を呑んだ。

「見かけぬ顔だが、新入りか? 」

その男は右手に鉄扇を持っていて。新選組で鉄扇と言えば、あの人物しかいない。不味い...と動悸が激しくなった。

「はい。本日よりこちらで皆様のお世話をさせていただくことになりました。森宮千香と申します。 」

「その新入りに、仕事場の説明もないとは、随分不親切だな。儂は芹沢鴨と申す。誠忠浪士組筆頭局長である。 」

千香の予想は当たってしまった。芹沢には史料本を読んでいてもいい印象を抱いていなかったので、目をつけられない様に気を付けなきゃ、と千香は心の中で注意喚起した。

「先程の無礼お許し下さいませ。 」

何事も無くこの場を終えるため、千香は再び頭を下げた。

「良い良い。何の説明もせぬ近藤らが悪いのだ。どれ、案内してやろう。 」

拍子抜けしてその言葉で頭を上げると、強張った顔を何とか動かし、笑顔を作った。

「有り難う御座います。 」

千香は芹沢の斜め後ろをついて行く。芹沢鴨って結構いい人かも!ってコレ駄洒落か?などと考えていると、芹沢が足を止めた。厨房へ到着したらしい。

「此処だ。今日の昼餉期待しておるぞ! 」

バッと鉄扇を開き仰ぎながら、芹沢は去っていく。

「有り難う御座います。 」

芹沢の後ろ背に声を投げる。厨房の方へ向きを変えると、置いてあったつっかけに足を通し、たすき掛けを済ませた。

「さあーて、何作ろうかな! 」

腕捲りをして気合いを入れる。厨房に置いてあった材料を確認すると、何か思いついた様で。

「この時代じゃちょっと珍しいモノ作っちゃお! 」

厨房にふふふと怪しい笑いが響いた。暫くして昼餉の時間になり、膳を運ぼうとしていたところに丁度永倉がひょっこり顔を出す。

「すまねえ。厨房の場所教えてなかった!って、もう昼餉出来てんのか。お前結構、方向感覚があるんだな!何にも言ってないのに! 」

永倉は大したもんだ、と腕を組み大きく頷く。

「永倉様!いえ。芹沢様に教えていただきましたので。」

千香はくるくると表情を変える永倉に内心驚いた。手記を読んだ限りでは、もっと知的でクールな印象を持っていたからだ。まさに百聞は一見にしかずと言った風で、此方の方が人間らしくて親しみやすいなと、千香は嬉しくなった。

「芹沢!?珍しいこともあんだな!ああそれと、これから毎日顔を合わせるんだ、様なんて堅っ苦しいのやめてくれよ! 」

ハハッと笑う永倉を見て千香はやっぱり芹沢鴨って嫌われてるのか、と納得する。

「はい。では、永倉さん、で宜しいですか? 」

「ああ!皆のことも様を付けなくてもいいだろう。主従関係でもあるまいし。 」

千香は永倉の言葉に、そうですねと相槌を打つ。

「ええと、永倉さん。申し訳ないのですが、昼餉運ぶの手伝って頂いてもいいですか?結構多いので...。 」

「勿論御安い御用だ!力仕事は男に任せな! 」

此処に何故永倉が来たのかは謎に包まれているが、千香は彼の男らしい優しさに甘えてみることにした。
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