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 優しい村人

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  しばらく歩いていると遠くに人が住んでいそうな集落が見えた。

  『やっと人里が見えてきたぞ』

 と思ったのもつかの間、俺は言葉が通じるのか不安になった。

  『日本語が通じなかったらどうしようもないよな。最悪の場合はなんとか身振り手振りで頑張ってみるか』

 ゲームや小説のように補正があったら楽なんだがと考えていたら、集落に着いたようだ。
 入り口近くの作業している男性に声を掛けた。

  『あのー、すいません』

  『お?、見ねー顔だな。どうした?』

 一瞬、言葉が通じたのを喜んだが、話の途中だった為、話を続ける。

  『服や靴が売ってるところはありますか?』

 さすがにこの服と裸足のままじゃ変人だと思われるのて男性に聞く。

  『あー、それならあの家を右に曲がれば直ぐだ』

  『ありがとうございます』

  『おうよ』

 優しい人で良かったと思いながら言われた場所を目指す。
 そして着いた先は服や靴、農作業の器具等が置いてある場所だった。

  『すいませーん』

 家のなかに声をかける。

  『なんだい?』

 お?優しそうなおばあちゃんだ。

  『服と履くものが欲しいんですけど』

  『見ない顔だねぇ、見たところ何も持ってなさそうだけど、って
けがをしてるじゃないか中に入りな。薬持ってくるから。』

 そう言って店の奥に消えてった。

  『お邪魔します』

 店の中の部屋に入った所でおばあちゃんが戻ってきた。

  『ほら、そこに座りな』

 そう言われて座布団に座った訊は、おばあちゃんが手に持っているものが気になった。

  『それは何ですか?』

  『これかい?これは綺麗な水とやくそうをすり潰した物を混ぜた薬だね』

おばあちゃんは緑色の液体を見せてくれた。

  『ほら、腕見せな。薬塗るよ』

  『は、はい』

 そう言われたので腕を出すと薬を傷口に塗り始めた。

  『痛っ』

  『男なんだから、我慢しな』

 薬を塗り終わり、包帯を巻いてもらいながらおばあちゃんが聞いてきた。

  『手持ちはあるのかい?』

  『………あっ!!』

 訊は部屋着で持ち物が何もないのを忘れていた。

  『すいません、何もないです』

  『ったく世話の掛かる子だねぇ、ちょっと待ってな』

 と言いおばあちゃんはまたもどこかへ行ってしまい、数分後、帰ってきた。

  『ほら、これでどうだい。これはもう使わなくなったものだからあげるよ』

 そう言って靴と上下の衣服を渡してくれた。

  『ありがとうございます!』

 服はドラ○エのたび○との服のような上下で靴は、少しかかとが高いブーツのようだが、運動靴の様に見えなくもない。

  『大丈夫かい?』

  『はい、何から何までありがとうございます』

  『いやいや、良いんだよ』

  『あと、ここから近くの町は分かりますか?』

  『それならここから北へ進んでくとあるよ』

  『わかりました、本当にありがとうございました』

  『元気でね』

 見た目通り…いや、見た目以上の優しいおばあちゃんだった。
 そして、店を出た訊は北へ向かい歩き出した。
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