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 初依頼

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 西の森に着いた訊は、受付嬢から貰った絵を頼りに薬草を探していた。

  『他の雑草とあんまり見分けがつかないな』

 どの雑草も似たり寄ったりな感じで分かりにくい。
 そして、探すこと約一時間…

  『ふぅ~、やっと10束か、1束20個だからかなり疲れた。だがこれで5泊、飯をいれると4泊程泊まれる計算だな。しっかしこの作業"操作"がなかったらかなりえらいな』

 一時間の間にどのようにして集めたのかというと…
 実は探し始めて20分ほどの時には訊はもう薬草採集に飽きていたのだ。
 見つけたと思いきや雑草だったりと今日1日なにも食べていない体ではとても大変で、休憩しながら"操作"の練習をしているときだった。

  『このスキル強力な割に今までデメリットが出たことがないんだよな。まあ、ないならないで有り難いんだが。よし、もっと大きなものでも操ってみるか』

 と興味本意で辺りの空間自体を操作してみたのだ。
 すると…

  『うぉ、すげぇ』

 空間操作をしている範囲にどこに何があるのか、隅から隅まで詳細に描いてあるマップのようなものが頭のなかに入ってきたのだ。

  『痛っ!』

 しかし、脳では処理ができないほど情報量が多く、頭に激痛が走った。

  『これ使えたとしても数秒だけだな。』

 いや、……待てよ。
 こんな操作が出来るなら取得情報量の操作もできるんじゃないか?
 思い立ったが吉日。

 俺は空間操作で空間を把握する。それと同時に取得情報量を操作して、薬草の特徴がある草以外を全てカットする。

 さらに、ここで器用なことが幸いした。

 二つの力を同時に使うのはとても難しいのである。
 初めて行う場合の難しさは、右手で英語、左手で日本語を書いているようなものだ。

 慣れれば出来るだろうが、それを練習することなくものにすることが出来たのは単に訊の器用さ故だろう。

 また、訊は自身が天才ではなく、ただ器用なだけと思っているが、もとの世界で回りから言われた通り訊は完全に天才である。

 ピコン!

  『ん?なんか変な音が聞こえたぞ。まぁいいか。しっかし今度は頭が痛くならないな、しかも薬草がどこにあるかまで分かるぞ』

 そんなこんなで能力を使い薬草を探し回った為、多く集めることができたのだ。

  『もう暗いし帰るか!』

 腹が減り、一日中動き回っていたせいか、変なテンションになってきた訊は帰ることに決めた。


 冒険者ギルドに着いた訊は早速依頼達成報告をしに行った。

  『すいません、薬草もって来ました』

 先程登録してくれた受付嬢の所へいく。

  『お疲れ様です。薬草は雑草と区別が付きにくいので大丈夫でしたか?』

  『はい、あなたが渡してくれた絵を頼りに探しました。』

  『すいません、まだ名前言ってませんでしたか?私はミリー・ガンランドといいます。』

  『よろしくお願いします。えぇーと、ガンランドさん?』

  『ミリーで大丈夫ですよ、ジンさん』

  『判りましたミリーさん、それで薬草を持ってきたので依頼達成を報告しようと』

  『はい、薬草を出してください』

 依頼を受ける前にミリーさんから貰った袋から薬草を取り出す。
 この袋は冒険者になった人に無料で配布されるらしい。

  『どうぞ』

  『10束ですね…初めての方は見分けができずにかなり時間が掛かるのですが、慣れている人より速かったですね。こちらが報酬の10000Gになります。お疲れさまでした』

  『はい、有り難う御座います』

 お金を受け取った訊はミリーさんから聞いたウサギの宿に向かった。

 カランカランと音をたて扉を開ける。

  『いらっしゃい、ひとりかい?』

 おばちゃんが奥から顔をだしながら聞いてきた。

  『はい、一人です』

  『一泊2000Gで朝と夜の食事をつけると、2500Gだよ』

  『じゃあ、食事付きで四泊お願いします』

  『わかったよ。今から夜ご飯を食べるかい?』

  『よろしくお願いします!』

 今日初めての食事にありつけるとテンションが上がる訊。

  『そこの席に座りな今から持ってくよ』

 言われた通り席に座る。

  『はい、お待ちどう』

  『ありがとうございます、ちなみに今の時間は?』

 この世界の街は中世ヨーロッパの様な作りで時計があまり普及していない為時間がわからなかったのだ

  『今は21の刻だよ』

  『判りました』

 夕食はパンとスープだけだったが一日中動き回ってなにも食べていなかった空腹の身には何よりも美味しく感じた。

 その後、部屋に行き、前の世界のように柔らかいベッドではなかったが、横になると急速に夢の中に落ちていった。
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