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 冒険者ギルド

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 冒険者ギルドに向かっていた訊だったが、大事なことを聞いていなかったことに気付いた。

  『ギルドに行くって言っても、どこにあるかわからんな』

 あまり方向音痴ではないため、一度行った場所や道を教えてさえくれれば迷わない自身があったが、初めてこの町に来たどころか、初めてこの世界に来たのだ。道など分かるはずもない。
 そこである作戦を思い付いた。

  『おっ、あの人の服装というか装備、冒険者っぽいな』

 それは冒険者のような人に付いていくという作戦だ。それらしい人に付いていけばギルドに着くだろうという考えだ。

 そして、着いた先は周りの店や家よりも一回りも二回りも大きな館のようなところだった。

  『おお、ここが冒険者ギルドか、でかいな』

 館の入り口辺りに大きな看板があり、大きな文字で【冒険者ギルド】と書いてあった。

  『それにしても、言葉も日本語だし、来る途中の店でもそうだったが、この世界には日本語が普及しているらしいな。俺と同じで昔に日本人でも来たのか?』

 そんなことを考えながら冒険者ギルドに入っていく。
 そして冒険者ギルドに入り真っ先に一言の言葉が思い浮かんだ。

  『広い』

 入って右側に受付の様な場所があり、反対の左側には酒場と思われる場所がある。今はもう暗くなり始めているため、帰ってくる冒険者が多く、酒場は賑わっていた。

 真正面には依頼のような紙が掲示板に所狭しと張られていた。
 訊は友人に勧められた小説にあったテンプレというものを思い浮かべながら受付に向かった。

  『すいません』

  『はい、何でしょうか』

 肩にかかるくらいの茶髪に眼鏡をした美しい女性が出てきた。

  『お、お金を稼ぎたいのですが、衛兵の人に薦められて冒険者ギルドに来ました』

  『そう言うことですか。それならばまず冒険者ギルドに登録してもらいますが、よろしいですか?』

  『それは、お金がかかったり、何か不都合はありますか?』

  『いえ、手数料などは特にありません。また、ギルドに登録することにより、身分証を発行することもできます。ただし、素行不良者などは除名される場合がございます。それ以外には特に不都合はありません』

 なるほど、身分証を発行出来るのは普通に嬉しい。
 また、登録にデメリットがない所も有難い。

  『説明ありがとうございます。早速ですが登録お願いできますか?』

  『かしこまりました。こちらの紙に記入をお願いします』

 そう言って羽ペンと紙を差し出された。
 紙の内容は、氏名と出身地を書くだけだったが名前はともかく出身地ちついては少し困った。
 出身地の所に日本と書くのも良かったが説明などがめんどくさそうなので街に来る前に寄った集落の名前にした。

  『出来ました』

  『はい……ジンさんですね。このベレーゾンというのは南にある小さな集落でしょうか?』

  『はい、その集落であってると思います』

  『そうですか、とにかく問題が内容なのでこれで登録は完了です。こちらがギルド証です。また、そちらのギルド証は身分証にもなりますので無くさないよう注意してください。再発行の際はお金が発生します』

 そう言って渡されたのが鉄でできたプレートだった。表には大きくEという文字、裏には名前が彫られていた。

  『説明させていただきます。そちらのギルド証にはEと彫られています。その文字はこのギルド内でのランクを示しています。冒険者はランクにあった依頼を受け、成功するとアイテムやお金が貰えます。また、ランクが上がれば受けられる依頼のランクも高くなりより報酬が良くなります』

  『ランクはどうしたら上げられるんですか?』

大体あげる方法は分かるが聞いておいて損はないだろう。

  『ランクは一定数の依頼を成功させれば上がっていく仕組みになっております。また、ランクは下からE、D、C、B、Aときて最高ランクがSランクとなっております』

 ランクだけでいうとXは充分規格外になりそうだな。

  『わかりました、オススメの依頼はありますか?あと、この街で一番安い宿はどれくらいしますか?』

  『オススメの依頼はこの薬草採集がオススメですね。薬草は西の森に生えていて、このような草です。』

 そう言って、草の絵が描いてある紙を見せてきた。

  『これが薬草ですか?』

  『はい。報酬は一束1000Gゴールドです。また、お安い宿については、ウサギの宿という場所がありまして、そこの宿では一泊2000Gです。』

  『わかりました、薬草採集の依頼を受けます』

  『はい、暗くなってきているので気をつけてください』

  『ありがとうございました』

 テンプレは起きなかったな。
 まぁ、フィクションと現実は別物だし周りの人もそんなに暇じゃあないのだろう。

 そんなことを考えながら冒険者登録した訊は、薬草を取りに西の森へ向かっていった。
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