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一、七月七日(土)⑤
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宵が酔いとともに深まるにつれ、店内の熱気も一段とヒート・アップ。
ノモ君とミチルちゃん、インチョウと石川さん、モト君とヨーコちゃんはカウンター席で、セキトリとマチコ姐さんは座敷席でそれぞれ話に花を咲かせている。漫画家のダイ君は持ち込んだ四コマ漫画をみんなに配っては「意味不明」と不評を買い、ショボくれてもう一つの座敷席の隅でポロンポロンとマンドリンを爪弾いている。そのダイ君を慰めるように、自称「牧野植物園のジョン・レノン」こと南部君が音楽談義を持ち掛けた。南部君は黒っぽい墨染め風の浴衣を着ている。父親から譲ってもらったのだそうだ。「ゆかた祭り」が待ち切れず、浴衣を着たまま会議に出席。ヒンシュクを買ったが意に介さず、終わるや否やスッ飛んで来たという。
ヨーコちゃんが、持参したデジタル・カメラで撮影をし始めた。
ヨーコちゃんはマスターが開いたお客の親睦のためのコンサート「えいぷりるふーるライヴ」の時に撮ったカメラの腕を見込まれ、マスターから「専属カメラマン」に抜擢された。ところが、七月一日の「星合ライヴ」の写真の出来は散々だった。と言うのは、その日のヨーコちゃん、浴衣姿だったのである。浴衣の袖や足元が気になって、自慢のカメラ・ワークが発揮出来なかったらしい。そこで今回はデジカメに機種変更したのだ、とは本人の弁。だが、そのヨーコちゃんの浴衣姿にマスターの酒でふやけた前頭葉が反応、「人生至る所に宝あり」の真っ赤な回転灯が点滅した。それで今夜の「ゆかた祭り」の運びと相成ったのである。《きっかけは何でもよかれまず一歩》
「どれどれ。これがデジカメいうがか。ワシが記念撮影しちゃお」
綺麗どころがいると普段の三倍は機嫌がいいインチョウ、うきうきしながらデジカメを受け取り、ヨーコちゃんから扱い方の指導を受けた。
「ハイ、チーズ」
撮ったばかりの写真がデジカメに映し出される。
「ほおう。写し直しも出来るがか。こりゃあ便利なのぉ」
すっかり気に入ったインチョウ、写真を撮りまくった。
「よおし、こちらさんも。ハイ、チーズ」
みんなカニさんよろしく、両手でVサイン。パチリ! にわか撮影会、ハイ終了。
この後、仕事を終えたミワさんが駆けつけた。
「おう。おまんが来にゃ、宴も盛り上がらんが」と、インチョウ。
「あら。もう充分盛り上がってるやないの。でも嬉しいわ、インチョウにそう言ってもらえたら。ホントおだてるのお上手」と、ミワさん。
後援会長と副会長がめでたく揃い踏みしたところで、セキトリと南部君のギター・モト君のハーモニカ・ダイ君のマンドリンとボンゴによる恒例の「おやかましフォーク・ライヴ」へと突入した。
こうして七夕の宵祭りはいやが上にも盛り上がり、いつ果てるとも無く続くのでありました。
── 了 ──
ノモ君とミチルちゃん、インチョウと石川さん、モト君とヨーコちゃんはカウンター席で、セキトリとマチコ姐さんは座敷席でそれぞれ話に花を咲かせている。漫画家のダイ君は持ち込んだ四コマ漫画をみんなに配っては「意味不明」と不評を買い、ショボくれてもう一つの座敷席の隅でポロンポロンとマンドリンを爪弾いている。そのダイ君を慰めるように、自称「牧野植物園のジョン・レノン」こと南部君が音楽談義を持ち掛けた。南部君は黒っぽい墨染め風の浴衣を着ている。父親から譲ってもらったのだそうだ。「ゆかた祭り」が待ち切れず、浴衣を着たまま会議に出席。ヒンシュクを買ったが意に介さず、終わるや否やスッ飛んで来たという。
ヨーコちゃんが、持参したデジタル・カメラで撮影をし始めた。
ヨーコちゃんはマスターが開いたお客の親睦のためのコンサート「えいぷりるふーるライヴ」の時に撮ったカメラの腕を見込まれ、マスターから「専属カメラマン」に抜擢された。ところが、七月一日の「星合ライヴ」の写真の出来は散々だった。と言うのは、その日のヨーコちゃん、浴衣姿だったのである。浴衣の袖や足元が気になって、自慢のカメラ・ワークが発揮出来なかったらしい。そこで今回はデジカメに機種変更したのだ、とは本人の弁。だが、そのヨーコちゃんの浴衣姿にマスターの酒でふやけた前頭葉が反応、「人生至る所に宝あり」の真っ赤な回転灯が点滅した。それで今夜の「ゆかた祭り」の運びと相成ったのである。《きっかけは何でもよかれまず一歩》
「どれどれ。これがデジカメいうがか。ワシが記念撮影しちゃお」
綺麗どころがいると普段の三倍は機嫌がいいインチョウ、うきうきしながらデジカメを受け取り、ヨーコちゃんから扱い方の指導を受けた。
「ハイ、チーズ」
撮ったばかりの写真がデジカメに映し出される。
「ほおう。写し直しも出来るがか。こりゃあ便利なのぉ」
すっかり気に入ったインチョウ、写真を撮りまくった。
「よおし、こちらさんも。ハイ、チーズ」
みんなカニさんよろしく、両手でVサイン。パチリ! にわか撮影会、ハイ終了。
この後、仕事を終えたミワさんが駆けつけた。
「おう。おまんが来にゃ、宴も盛り上がらんが」と、インチョウ。
「あら。もう充分盛り上がってるやないの。でも嬉しいわ、インチョウにそう言ってもらえたら。ホントおだてるのお上手」と、ミワさん。
後援会長と副会長がめでたく揃い踏みしたところで、セキトリと南部君のギター・モト君のハーモニカ・ダイ君のマンドリンとボンゴによる恒例の「おやかましフォーク・ライヴ」へと突入した。
こうして七夕の宵祭りはいやが上にも盛り上がり、いつ果てるとも無く続くのでありました。
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