頭のイカれた奴らとバンド活動?ふざけるな

雨宮零

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憂鬱な入学式

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鬱だ……。
恐る恐る、左隣の席を見てみる。
「うっ……。」
やめておこう。
慌てて視線を正面へと戻す。
あんな満面の笑みでこちらを見続けているなんて、ただの変態としか思えない。この調子だとずっと見てきそうだからここいらで力を使っておくか。

「……マインドコントロール。」

すると、左側から椅子を引き、立ち上がる音が聞こえてきた。どうやら、作戦は上手くいったようだ。
まさかあいつと同じクラスになるなんて。高校生活、始まりからこれだ。
……最悪である。

.☆.。.:.+*:゚+。 .゚・*..☆.。.:*・°.*・゚ .゚・*.

こうなった経緯を簡単に説明しておこう。

昨日、華の高校生デビューを果たした私は、入学式直前に、木の下でぶっ倒れている、顔面偏差値がそこそこいい男子生徒を見かけた。大丈夫なのかと心配になったが、みんなも見て見ぬふりをして通り過ぎていったので気にしないで会場に向かうことにした。
しかし……。
「た、助けてくれぇ……。」
明らかに私へ訴えているだろう瞳で言ってきたので、ここで無視するのは人間性が問われると思い、仕方なく彼の方へと近づいていった。
「大丈夫ですか?」
彼の前でしゃがみこんで聞いてみる。
彼の制服は、まだ真新しいというのに砂と泥で汚くなっていた。
「き、君……僕を助けてくれるんだね……っ!愛のキスで目覚めさせてくれよ……。」
「……。」
何が愛のキスだ。もう目覚めているじゃないか。それになんだその口は。あぁわかった。たこの真似か。……気持ち悪い。
そう思って立ち上がり、彼を無視して行こうとする。
「まま待ってよ!!ほんとに動けないんだよ!さっきのは冗談だから行かないで!」
私の足首をガシッと掴まれる。
「キャッ!きもいから触んな。変態!クズ!たこ!!」
その手を無理やり振りほどき、今度はバンバンと彼の腹部を踏みつける。
「痛い!痛い!痛い!」
だが、周りの視線が気になったので何事も無かったようにそのまま通り過ぎようとした。
「行かないで!一生のお願いだから!」
涙を流しながら精一杯彼は手を伸ばしている。
一生のお願い?そんなこと言うやつは大抵何回も何回も一生のお願いをしてくるアホだ。
ふん。だがまぁこれはまだ1回目のお願いに過ぎないのだから、助けてやらんこともない。
「……。」
「あ!戻ってきてくれたんだね……っ!」
じーと睨みつける。
「一生のお願いだな?」
「ああもちろん!だからそんな怖い顔しなくても……」
「一生のお願いは一回しか使えないだぞ。それでも使うのか……?」
「う、うん……。」
「次もし一生のお願いだとか言って頼んできたらその時点でお前の人生終わらせてやるからな?それでもいいか?」
「ヒィィィィィィィィィィィィ!!!」
「さあ、どうする?」
そらさずにじっと見開いた目で見つめ続ける。
「わ、わかった!これっきりにするから!本当に今は困ってるんだ!だから助けてくれ!」
まあ、こいつを助けて入学式サボるのは嫌な気がしない。こちらとしても好都合だ。
「じゃあ保健室に連れて行く。立てるか?」
「い、いや、それが足が痛くて立てないんだ。」
「はぁ……。お前はこの木の下で何してたんだ?」
「えっと……。少しはしゃいでたら、僕のカバンがこの木にひっかっちゃって。それでのぼってとってたら、足滑らせて落ちちゃったんだ。てへっ☆」
いや、てへっ☆じゃないだろてへじゃ。
まず第一に、はしゃいでても、カバンをこの背の高い木に引っ掛けられる奴がいるか??相当の腕力の持ち主だな、こいつは。
バカだけど。
「わかった。じゃあ保健室まで引きずっていく。」
幸いもうすぐ入学式が始まるのか、ここを通る生徒はいなくなっていた。
それなら人目を気にせずに引きずれるだろう。
「いやいやいや!それはやだよ!肩を貸してくれよっ!」
「……は?」
こいつの汚(けが)れた腕が私の肩に乗っかるのか……?んなことするわけないだろ。こっちまで汚れる。
「お願い!ね?」
そこそこイケメンなやつなのに、こんなバカっぽいと凄い呆れる。まあしょうがない。一生のお願いで助けると言ったのだからそれくらいは我慢してやろう。
「じゃあブレザー脱いで。」
「……え?ダメだよこんなところで!夜のお誘いはまた今度ね?」
「……。今すぐ殺してやってもいいんだぞ?」
「わかったわかった!脱ぐから!頭から足どけて!」
グリグリと押しつぶしていた彼の頭を解放してやる。
「やっと少しはマシになった。」
ワイシャツはあまり汚れていないようだ。そのまま汚れる前に彼の腕を取り、立ち上がらせる。
「あ、ありがとう……。」
「勘違いするな。自分がサボりたいだけだけだ。」
どうしてこいつはなんでも自分にとって好都合な解釈をしてしまうのだろうか。
バカのことを考えても仕方ないか。
「入学式嫌なの?」
「だるい」
即答した。
少し彼の腕が重かったが、我慢して昇降口へと向かう。
「もったいないよ。高校の入学式はこれっきりなんだぞ?」
「いや、お前が言うな。お前がその1度きりの私の入学式を行かせないようにしたんだろ。」
「あは、確かに。」
そのまま、彼を支えて保健室へと向かった。

「あら、その汚れどうしたの?」
保健室に入ると、眼鏡をかけた巨乳、ロン毛の若い先生がいた。白衣を着ていることから、どうやらこの人が保健室の先生らしい。
「このバカが、木から落ちて足が動かなくったそうです。」
「バカっておい!」
「あなた達新入生よね?」
こいつの言葉なんぞ誰も気にせず話を進めていく。先生も私の言葉で伝わったのだろう。こいつが馬鹿だって言うことが。
「そうです。」
「僕は田中祐介。ギターを弾くのが得意なんだ。良かったら先生のために愛の歌をプレゼントするよ☆」
「あなたは?」
「いや、なんで無視すんだよぉ!」
「私は凛來 善(りんくう ぜん)です。」
「凛來さんと……田中くんね?じゃあここに座って。」
「あんた一瞬俺の名前忘れかけてただろ?!」

こいつを無視し続けると、余計にうるさくなりそうだ。
マインドコントロール……。
だまれ。

すると、田中とかいう奴の喋り声が聞こえなくなった。
やっと黙ったか。
先生はキョトンとした顔をしている。
「あ、私の自己紹介がまだだったわね。私は岡田 明子。保険教師よ。よろしくね。」
見ればわかる。
それよりもお前が保険教師だとたくさんの男子生徒が鼻血を垂らしてぶっ倒れると思うのだが。……現に隣の田中が黙ったまま鼻血を垂らしている。
「……。」
あえてよろしくとは返さない。ここで勘違いしないでほしい。別にこれは反抗期ではない。興味のない奴とは最小限の言葉数で済ましたいだけだ。
「えっと……。じゃあ田中君、まずは鼻血止めないとね。」
さすがの先生でも戸惑ったか。真顔で見つめられたらそうなるだろうな。
まあ何やかんやで入学式はサボれたわけだ。良かった。
「あ、凛來さん、あなたはもう行っていいわよ。ここまで田中くんに付き添ってくれてありがとうね。」
……超ベリーバットだ。


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