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第二章 〜情動〜

06 ゆなからのイタズラ

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 ──前回(九話目)の続き

 たけるにきちんと食事を摂ることを約束させたきよみ。
 そして、きよみの家で食事をする可能性が高くなっていく……

「そうだ、学校に行く準備をしましょうよ」
「そうだね」

 そんな二人は、きよみの一言で学校へ行く準備を始めた。
 きよみは自室へ向かい、学用品を揃えた。
 たけるは制服を着て来ただけのようで自宅へ一旦帰った。
 しばらくすると鞄を持って戻ってきた。
 それから二人は学校へと向かった。

「「いってきまーす!」」

 二人が一緒にそう言うと、

「いってらっしゃい」

 ときよみの母がそう返した。
 いつもと違う登校方法で、きよみは少し恥ずかしいのか、無言で歩みを進めていた。

 ──それから、結局何も話さず学校に到着してしまった二人……

「はぁ……」
「きよみ、どうしたの? ……ってか昨日の告白はどうだったー?」

 教室できよみがため息をいていると、友人であるあるゆながやってきてどうしたのか、と一言。
 そして、大事な事を思い出したかのようにはっとなり、ニヤニヤしながら告白について聞いた。

「えっとね……まぁ、告白は成功し……」
「よかったじゃん!!」
「それでね、今日一緒に学校に来た……」
「おぉ!?」
「でも、何も話さずに来ちゃった……」
「えー!! そうなんだ……何か勿体ないなぁ……せっかくなら何か話せばいいのに」

 途中、ゆなは話を途中で切って相槌を打ったのち、助言した。

「うーん……」

 すると、ゆなは何かを考え込んでしまった。
 そしてしばらくすると

「そうだ! いい事思いついた!」
「え、なになに?」
「それは秘密っ」
「えぇ……」

 ゆなはいい案が出たらしい。
 きよみが何かと聞くがゆなはいたずらっ子のように満面の笑みでどこかへ去っていった。
 きよみはその後ろ姿を見て残念だと言わんばかりに落ち込んだ。

 それから、きよみ達はその日の授業を受け、夕方近くにその日の最後の授業が終わった。

 コンコン……と言う音にきよみが顔を上げると……

「あっ……たけるさん……」
「さぁ、言った時間になったよ、帰ろ」
「えっ?」

 そこにはたけるがいた。
 そして、たけるの言った言葉にきよみは驚愕を隠せなかった。
 まさか、とゆなの方を見ると、作戦が成功したとばかりにニコニコしながらガッツをしていた。

(やられた……)

 きよみの心の声を表すならばこんな感じだろうか。

「やっぱりダメだったかな?」
「い、いえいえ! 大丈夫です……よ?」

 たけるが不安気に確認をしてきたので、きよみは慌てて返事をした。
 きよみは急いで荷物をまとめた。

「お待たせしました、帰りましょう」
「おぅ」

 そして、帰路へ着いた。
 また、きよみは今度こそ話す、と心に決めていた。

「あ、あの……」
「どうした?」
「たけるさんのご両親って、共働きなんですか?」
「…………いや。なんで?」
「今朝来た時、バナナしか食べてこなかったじゃないですか。何でかなーって思って」

 きよみはふと思った疑問をたけるに投げかけた。

「……あのさ」
「はい」
「付き合ってすぐに言うことじゃないと思うけどさ……実を言うと、俺の両親、小学ん時に事故で死んじままったんだ……」
「……え、えっ!?」

 たけるの口から両親が死んだという事を聞いたきよみは驚きのあまり口に手を当てた。

「実は……私の父も小学の時に亡くなっちゃったんです……」
「そうだったんだな……びっくり……するよな。身内……というか、家族、それも親が死ぬ……なんて」
「はい……私、父が死んだと聞いた時、はじめは嘘だと思っていたんです。そんなに早くに父が死ぬなんて思っても居なかったから……」

 きよみもたけるに釣られて父親の事を話した。
 今のきよみには、たけるの心がポッカリと穴が空いてるように見えた。
 たけるの力ない言葉にきよみも同じ様にしか返せなかった。
 きよみは、たけるの感情に同調しなければ、と父親の話を詳しく話し始めた。
 互いに親を亡くしている事で、周りに手助けをして貰わなければ生きていけなかった。
 幸い、きよみには母親が居ることによって、家事などの事だけは教えてもらい、今は母親に仕事を頑張ってもらって、しっかりと生活を立て直すべく家事に力を尽くして行っていた。
 今朝きよみがたけるに朝食を作った時、きよみはいつも母に作っている朝食を作った。それがきよみにとっての最上級な愛情表現なのだから。

 ──結局、きよみの決意は親の死の話によって暗く、且つ儚く打ち砕かれてしまうのであった……
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