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第三章 〜発展〜

11 たけるから返信がありません

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 きよみ達は明日から学校の三学期に入る。
 冬休みは今日で最後だ。
 その中できよみが一番記憶に残っているのは、クリスマスだ。
 クリスマスにきよみが計画していた事とは、たけると二人でサイターマランドに行くことであった。
 しかし、自分で計画したとはいえ、やはりドキドキしてしまっていた。
 その後、帰る時にたけるの提案で携帯を契約した。その事はきよみにとっては予想外でビックリしてしまっていた。

(あ、そういえば。携帯のお金、どうしたんだろ……)

 きよみはふとそんな疑問を抱いていた。
 そういう時は、携帯でたけるに聞くのが一番早い方法だとこの冬休みの間に思い至った。

 きよみ
 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 ┃おはよう! たける、今時間ある?┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━┛9:34

 ┏━━━━┓
 ┃たける?┃
 ┗━━━━┛10:42

 ┏━━━━━━━━━━━━┓
 ┃(」゚Д゚)」オ────イ!!  ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━┛11:50

(……返ってこない。何かあったのかな?)

 たけるから返信が無いことは今まで何度かあった。
 でも何時間も帰ってこない事は一回もなかった。
 そのことに不安を覚えたきよみ。

(嫌な予感がしてきた……)
 
 嫌な予感がしたきよみはたけるの家に急いで向かった。
 何回たけるの家のインターホンを鳴らしたが誰も出てこない。

(あれ、鍵が空いてる。また泥棒に遭ってそうな予感がするなぁ……)

 玄関のノブを回してみると鍵が開いていた為、嫌な予感はこれなんだろうなときよみは思いながら中に入っていった。
 それから中を回っていると、いつも迎え入れられる部屋の机の上に紙が置いてあった。

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃早めにきよみにバイトしてる事を言わないといけないな ┃
┃どうしよう、ミセドで働いてるなんて言えるわけない……┃  
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

 と言う内容だった。

(バイトしてたのか……しかも私に内緒で。ミセド、なのね。とりあえず探してみよ)

 きよみはポケットからスマポを取り出し、近くのミセドミセスドーナツを探した。
 近くと言ったが、彼女は念を入れて半径一キロで探していた。
 そして彼女は、近くにあるミセドの一店舗目である埼玉南区役所駅前のミセスドーナツへと向かった。

「いらっしゃいませ~。現在開店セールで、ドーナツが二割引です」
「あのー……すいません。ここにたけるさん、いますか?」
「あー……あなたはたけるくんの知り合いなの?」
「はい、そうですけど……?」
「じゃあ、すぐに埼玉市民病院に行ってくれ! たけるくんが大変なんだ!」
「えぇ、本当ですか!? 分かりました! ありがとうございます!」

 彼女はすぐにミセドの人の言っていた病院へと急いで走って向かった。
 病院に着いた彼女は、たけるの事を受付にいた女性に聞いた。
 するとその女性は、彼は救急外来にいるよ、と答えてくれた。きよみは急いで救急外来へと向かった。

「あ。き、きよみ……」
「たける……どうしたの!?」
「ごめん……ちょっとやらかした……」

 ベッドで横になっているたけるがいた。
 たけるの話を聞くと─バイトのし過ぎが原因で疲労が溜まり、体を壊した─という事らしい。

「──どうしてそんなにバイトしたの!? 体を壊す事くらい予想がついたはずだよね? ねえ、どうして!?」

 バイトをしている事なんて一言も聞いていなかったきよみは、たけるの事を酷く責めた。

「こんな事になるくらいだったら……携帯なんて契約しなくても良かった!!」

 そんな中きよみは感極まってしまい、ついそんな言葉を口走ってしまった。

「ごめん……」

 たけるは、明らかに落ち込んでしまった。
 その目には後悔が垣間見えた。

「あ、あのね? 私が言いたいのは、そこまで切り詰めてまでしてバイトをしないでほしい、って言いたいの……分かる?」
「あ……うん。一応、分かってるよ」
「そう……? なら良かったけど」

 きよみは自分の思っていることをたけるにぶつけた。
 彼にその気持ちが伝わっていたことで、彼女は安心していた。

 それからきよみはたけるを診察した医師に彼がどの位の期間で退院が出来るかを聞いた。
 医師によると”調だから、点滴をしたら帰れる”という事を聞くことが出来た。
 点滴が終わるのがおよそ一時間後らしい。それを聞いた彼女は点滴が終わるまでの間、側に付いている事にした。
 そこで彼女は、たけるにバイトについての詳細を聞いた。

 ~詳細~
 ・バイトはほぼ毎日入っている。
 ・平日は17時から21時の4時間、土日祝は9時から15時30分の6時間と30分の休憩で働いている。
 ・時給は平日:900円 ・土日祝:950円

 このように、たけるは毎日のように働いていた事と、ご飯をまともに食べずに体を壊してしまったらしい。
 きよみはちゃんとご飯食べてよ……と呆れた様子だった。
 バイトの話だけであっという間に小一時間が過ぎてしまっていたらしく、医師がやってきて点滴を外した後、”もう帰っていいよ”と帰宅の許可が出た。

「もう……こんな無理なことはやめてね?」
「分かった。本当に心配かけてごめんな」
「ホントだよー。たけるが無事なだけ良かったよ……」

 きよみはたけるを家まで送る事にした。
 そう言えば、たけるの家の施錠がされていなかった事を伝えるのをすっかり忘れてしまっていた。

「たける」
「ん……何だ?」
「たけるの部屋の鍵が開いてたこと伝えるのすっかり忘れてた」
「何だって!? 大変じゃないか。急いで帰るぞ!!」

 そう思った彼女はすぐにたけるに伝える。するとたけるが急に走り出したので、きよみは後を追うように走った。
 行先は当然ながらたけるの家だった。きよみはたけるに施錠をしっかりするよう約束をした後、二人は別れた。

(とりあえず一安心ってところかな?)

 きよみは安心しながら家路についた。
 しかしこの後、たけるが再び同じような出来事を起こすとはこの時の彼女には知る由もしなかったのであった……
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