2 / 4
side:ノア
しおりを挟む
お父様が、見たことないくらいきれいな男のひとをつれてきた。最近は、お父様ってよぶだけで叩かれるようになったけど。
そのひとは、ミカエルと言った。
サラサラの雪みたいに白い髪に、血の気のない肌。冬の湖のような瞳。けぶる白いまつげ。使用人の服を着ていたけど、ミカエルのもつ独特のふんいきは、隠せていなかった。ひとつひとつのパーツがお人形のように整っていて、なんの表情もないのも相まって、少しこわかった。
だけど、ミカエルは優しかった。これまでの使用人みたいに叩いたり、どなったりしないし、わざわざひざをついて、僕の目を見て話してくれたんだ。
ミカエルは、じぶんは僕専用の人形だと言った。すんなり納得してしまった。あんまり白いから、本当にひとなのか心配になっていたから。お人形なら、このへやでも寒くないよね。
ミカエルは、お人形なのに魔法が使えた。前の使用人に消された、へやのあかりを点けてくれた。ひさしぶりにみた炎は、とてもあたたかかった。でもミカエルは、炎をみている僕をみて、少しだけかなしそうな顔をした。なぜか、ぐっとむねが痛くなった。
手を引いてくれた。はじめてだった。白い手袋ごしのだし、ミカエルはお人形だから、とても冷たかったけれど、泣きたくなるくらいうれしかったんだ。だけどいきなり泣いたりしたら、ミカエルにきらわれるかもしれないから、我慢した。
ミカエルは、ゴミやほこりでよごれた僕のベッドを、魔法で綺麗にしてくれた。新品みたいにまっしろになったベッドをみて、ミカエルはまんぞくそうにくちびるをにまにまさせた。どうやらミカエルは、なにかうれしいことがあると、かおには出ないけど、くちびるがうごくみたい。
よこになったベッドは、やっぱり薄っぺらで冷たかったけど、ミカエルが握ってくれた手はそのままで、僕はちっともかなしくなかった。目をつむって、つぎに目がさめたらミカエルがいなかったらどうしようって思った。
だから、ちょっと寝たふりをして、ミカエルがいなくならないか、手を握ってた。そうしたらミカエルは、僕がねむったと思って、やっぱり手をはなそうとしてた。だから、ぎゅっと手をにぎった。ミカエルは、ハッとしたみたいに、また手をにぎりかえしてくれた。
なにかぶつぶつとつぶやくと、僕の顔をのぞき込んで、「守る」って言ってくれた。信じられなかった。はじめてだ。手を引いてもらうのも、守るって言ってもらうのも。むねがぽかぽかしてくる。
ミカエルがいるなら、僕は大丈夫になるかもしれない。バケモノだって、いみごだっていわれても、ミカエルがこれからもいっしょにいてくれるなら、大丈夫かもしれない。目をつむったミカエルは、もっとお人形らしく見えた。だけど、手は握ったまま。
僕はその手にほおをよせて、ほんとうにひさしぶりに、あんしんしてねむった。
そのひとは、ミカエルと言った。
サラサラの雪みたいに白い髪に、血の気のない肌。冬の湖のような瞳。けぶる白いまつげ。使用人の服を着ていたけど、ミカエルのもつ独特のふんいきは、隠せていなかった。ひとつひとつのパーツがお人形のように整っていて、なんの表情もないのも相まって、少しこわかった。
だけど、ミカエルは優しかった。これまでの使用人みたいに叩いたり、どなったりしないし、わざわざひざをついて、僕の目を見て話してくれたんだ。
ミカエルは、じぶんは僕専用の人形だと言った。すんなり納得してしまった。あんまり白いから、本当にひとなのか心配になっていたから。お人形なら、このへやでも寒くないよね。
ミカエルは、お人形なのに魔法が使えた。前の使用人に消された、へやのあかりを点けてくれた。ひさしぶりにみた炎は、とてもあたたかかった。でもミカエルは、炎をみている僕をみて、少しだけかなしそうな顔をした。なぜか、ぐっとむねが痛くなった。
手を引いてくれた。はじめてだった。白い手袋ごしのだし、ミカエルはお人形だから、とても冷たかったけれど、泣きたくなるくらいうれしかったんだ。だけどいきなり泣いたりしたら、ミカエルにきらわれるかもしれないから、我慢した。
ミカエルは、ゴミやほこりでよごれた僕のベッドを、魔法で綺麗にしてくれた。新品みたいにまっしろになったベッドをみて、ミカエルはまんぞくそうにくちびるをにまにまさせた。どうやらミカエルは、なにかうれしいことがあると、かおには出ないけど、くちびるがうごくみたい。
よこになったベッドは、やっぱり薄っぺらで冷たかったけど、ミカエルが握ってくれた手はそのままで、僕はちっともかなしくなかった。目をつむって、つぎに目がさめたらミカエルがいなかったらどうしようって思った。
だから、ちょっと寝たふりをして、ミカエルがいなくならないか、手を握ってた。そうしたらミカエルは、僕がねむったと思って、やっぱり手をはなそうとしてた。だから、ぎゅっと手をにぎった。ミカエルは、ハッとしたみたいに、また手をにぎりかえしてくれた。
なにかぶつぶつとつぶやくと、僕の顔をのぞき込んで、「守る」って言ってくれた。信じられなかった。はじめてだ。手を引いてもらうのも、守るって言ってもらうのも。むねがぽかぽかしてくる。
ミカエルがいるなら、僕は大丈夫になるかもしれない。バケモノだって、いみごだっていわれても、ミカエルがこれからもいっしょにいてくれるなら、大丈夫かもしれない。目をつむったミカエルは、もっとお人形らしく見えた。だけど、手は握ったまま。
僕はその手にほおをよせて、ほんとうにひさしぶりに、あんしんしてねむった。
9
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した
あと
BL
「また物が置かれてる!」
最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…?
⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。
攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。
ちょっと怖い場面が含まれています。
ミステリー要素があります。
一応ハピエンです。
主人公:七瀬明
幼馴染:月城颯
ストーカー:不明
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる