元勇者、悪役令嬢になる

白米サイコー

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第一章勇者再誕

第3話可哀想なお嬢様(ノエル視点)

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 ☆☆☆

 私が毒を盛ってから数日間、お嬢様は高熱にうなされることとなった。
 お嬢様を溺愛しているご当主様と奥様は直ぐに私たちの住む国、ブルーム王国でも有数のお医者様をお呼びした。

 このときは流石に、私が毒を盛ったことがばれるのではと内心で冷や汗をかいていたのだけど、幸いお医者様は只の風邪と診断し、風邪薬と解熱剤を処方していった。

 当然だけどお嬢様のお世話は私たちメイドのお仕事。
 私自身、お嬢様のお体を拭きにいったり、薬師様に調合していただいたお薬をお嬢様の部屋に届けに行くことがあったのだけど、熱に苦しむお嬢様はいつものわがままで意地悪な態度はなりを潜めており、それどころか、言葉数が非常に少なく、見ていて痛ましかった。
 良心わたしはなんてことをしてしまったのだろうと、後悔をした。

 だけど、それ以上にその時の悪意わたしはえも言えぬ高揚感に包まれていた。
 言葉にするのも無粋な程の興奮。

 それでも、敢えて、そう、敢えて言葉にするとすれば、今まで自分を見下していた相手を上回り、地に叩きつける快感。
 悪党を人知れず成敗したという達成感。
 バレれば只では済まないのに大義のためにリスクを取り、そして成功させてしまう自分への酔い。

 それらがごちゃ混ぜになり、今まで感じたことのない多幸感を生み出していた。

 私はその多幸感、そしてお嬢様がいない解放感によってそれからの数日は楽しく仕事をすることが出来た。
 ああ、この幸せがずっと続けば良いのに……。

 私は毒の魅力に取り憑かれていた。
 この小瓶には夢が詰まっている。

 この屋敷を私好みの箱庭に変えること出来るのだ。
 私はもう中身の無い小瓶を掲げる。後ろに映る屋敷の扉……お嬢様の部屋の扉が小瓶に反射する。
 ああ、そうだ、この屋敷なんて、この小瓶の中にすっぽりと収まるちっぽけなものなんだ。
 そして、私こそがこの小瓶の主。
 私が一番なんだ。
 お嬢様じゃ無い、私こそが一番だ。


 私はうっとりと小瓶を眺める。

 だけど……小瓶は所詮小瓶、肝心の中身が入っていなければ裸の王様だ。
 それこそ、生まれが良いだけで自分は何も優れていないのに威張り散らかしているお嬢様とおんなじだ。

 ああ、でもお嬢様は容姿がとても優れている。
 今みたいに黙っていればとっても可愛らしい。

 そう、黙っていれば……。
 私は休み時間であることを良いことに私服に着替えて忍び足で屋敷から出る。
 お嬢様がいつ快復するか分からない。
 その前にまた毒を貰いたかったのだ。勿論、あの時出会った初老の男性がどこに居るのか分からないし、ましてや、また会えたとしてもあの時の毒を貰えるかは分からない。

 だけど、それでも行動を起こさずには居られなかった。どうしてもあの毒を手に入れたかった。

 そんな私の願いが届いたのか、はたまたお嬢様の日ごろの行いが悪いからか、私が屋敷を出てすぐにあの時出会った初老の男性と会うことが出来た。
 男性は私と目が合うと門番に気づかれない程度に小さく手招きをする。

 私は当然男性の方へと脚を向けた。

 男性はコリアンダー公爵家から離れた場所、貴族区では珍しく、巡回騎士の視覚になりそうな場所で立ち止まった。

 こんな場所、あったんだ……

「ふぅ、ここまで来れば大丈夫だね。それでどうだい小瓶の中身は使ったのかい?」
「はい、お陰様で今は楽しくお仕事が出来ています」
「ははっ、それは良かったよ」

 男性は満足げに頷いている。
 私は男性に感謝をしている。

 だけど、
 だけど、このままじゃ、駄目なんだ。

「あ、あの!毒を……その、もう一度……」

 そこまで言いかけたところで何故か口が動かなくなる。

 いや……ほんとは分かっているんだ。
 良心わたしだって分かっているんだ。

 既に一線を越えているのだとしても、これ以上罪を、過ちを繰り返すべきでは無いって。
 私は俯き、深呼吸をする。
 あまりにも上手くいきすぎて、あまりにも私に都合が良すぎて、少し有頂天になっていた。
 仕事もあるし、もう帰ろう。
 男性だって見ず知らずの人間にこれ以上頼られても迷惑なだけだろう。
 私はにっこりと笑みを浮かべる。

「いえ、何でも無いです。すいません、私はもう行きますね」
「いや、君の考えは正しいよ」
「え?」

 私は立ち去ろうと動かしかけた脚を止める。
 つい、男性へと視線を向けてしまう。
 自然と男性へと引き寄せられてしまう。

「一度、痛い目を見た程度で反省するほど真っ当なら今頃この国はもっと良くなっている。
 君を襲おうとした男達がいただろう?彼らのような人間が当たり前のように跋扈しているのは何故か?スラム街のような職にありつけない人間がいるのは何故か?子どもが食べるものに困るのは何故か?
 ああ、そうだ。君は農民の暮らしを知っているかい?」
「えっと、はい。私の家は農業を営んでいるので」
「そうか!なら、不満を感じたことがないかい?何でも言い、話してくれ」

 大仰な仕草と緩急のある話し方をする男性。その姿はいつか観た国王様の演説のようだなと感じた。

 ただ、一人で、独りよがりに言葉を紡ぐのでは無く、私に語りかけて考えさせる男性のやり方に私は上手いこと乗せられてしまう。
 王様の演説の時はぼんやりと難しいことを言っているなと感じていた筈なのに、男性の話に私は聞き入っていた。


「えと、小麦とか頑張って育ててるのにいっぱい持ってかれてしまって食べるものに困ります」
「うん、そうだな。辛いよな。一生懸命育てているのに肝心の自分たちはその恵みを殆ど口に出来ない。おかしいよな」

 私がずっと不満に思っていて、だけど、誰にも打ち明けることが出来なかった言葉を男性は優しく肯定してくれる。

「どうだい、他にはないかい?」
「えっと、小麦を行商人さんが買ってくださることがあるんですけど、その時の値段と、王都などで売られているときの値段が大分違うなと……」
「そうか、確かにそれはおかしい。君たちは一から育てているのに対し、買う側はあくまでお金を出しているだけ、それなのに、そんな人間の方が得をしている」

 そうだ。おかしい。
 私たちはもっと見返りを受けるべきだ。搾取されるばかりの人生なんて嫌だ。搾取する側になりたいとは思わない。
 だけど!せめて働いた分幸せになることの何がいけないんだ!
 何で皆私たちの邪魔をするんだ!!

 私は世界に、怒りをぶつけていた。

「君は今、憤っていると思う。それは正しい感情だ。だけど、考えてほしい。その仕組みを作っているのは一体誰なのか?司っているのは一体誰なのか?」

 男性に言われたとおり、考えてみる。
 私もそこまで詳しいわけでは無いけど、確か、領土内のルール、法律を作っているのは領主様だった筈。
 だから、貴族様?
 だけど、ここ王都に関しては王様が法律を作っているのだろうか?
 ということは王様?

「どうだい?答えは分かったかい?」
「え、えぇと、貴族様とか王様とか?」
「そう!正解だ!」

 どうやら、合っていたようだ。私はほっと胸を撫で下ろす。
 男性は満足げに頷いていた。
 そして、男性は話を次の段階へと進めた。

「考えてみてほしい。ずっと昔からこの国を治める貴族、王族が一度も飢饉を経験したことがないと思うかい?」

 そんな筈はない。
 少なくとも私が生まれてから一度飢饉が起きている。
 あれは……辛かった。お腹が空いて、それでも食べるものが無くて、木の皮を囓って空腹を紛らわせたこともあった。

 私が首を横に振ると男性は頷く。

「そうだ。今まで飢饉が起こったことはある。だが!王侯貴族は一度として私たち民を助けたことはない!民が死ねば、その分、食べ物の供給が衰えるということは分かっている筈なのに、だ!
 奴らは……貴族は学ばない。
 それはきっとそのお嬢様も同じだ」

 男性はポケットからこの前と同じ小瓶を渡してくる。
 全部貴族が悪い。
 その言葉は私の胸にストンと落ちてきて、お嬢様への敵意は今まで以上に膨れ上がっていた。
 やっぱり、お嬢様のことは徹底的に痛めつけなきゃ。
 そう思う悪意わたしに、もう一人の良心わたしはそれでも、と待ったをかける。

 私が小瓶を受け取らずにいると、男は強引に私の手の中に小瓶を押しつける。

「え?あの……」
「なに、前お嬢様に毒を盛ったときもバレなかったんだろう?なら、それを持っている程度さして問題にならないさ!
 いらなければそれこそ下水道にでも捨ててしまえばいい。
 大切なのは持っていること。

 そうだろう?」

 それは……確かに一理ある。
 巡回騎士や警邏隊だって、実際に戦うことが少なくても、十分な効果がある。
 少なくとも彼らが見回りをする場所の事件発生率は極端に少ないって、先輩が教えてくれた。
 きっと、これもそれと同じだ。
 使わなかったとしても持っていれば、お嬢様がまた意地悪になったときに懲らしめることが出来る。

 狩られるだけの小動物では無くなるのだ。
 私が見定め、私が裁く。
 貴族を貴族たらしめているのはその生まれでは無く、私たち民なんだと分からせてやる。

「ありがとうございます。これは大切に保管させていただきます」
「ああ、勿論だ。……あ、ただ、もし使ったら瓶は返してくれないかい?その瓶は少し貴重なものでね。出来れば回収したいんだ。僕は……そうだな。前に連れて行ったベンチが1つだけおいている広場にいるからさ」

 男性はそう言うとその場を後にする。
 私は何の気なしに今貰った瓶を眺める。
 一見、前貰ったものと同じものに見えるのだが、一体何が違うのだろう?
 まぁ、でもこういうのは私のような学の無い人間には分からないのかもしれない。

 私は休憩時間が終わる前に急いで屋敷へと戻った。

 ☆☆☆

 毒を貰った日から数日が経った。
 結局、私はお嬢様に毒を盛ることはせずに日々、メイドとしてお仕事をこなしていた。
 というのも、まだ、お嬢様は快復される兆しが無く、この状態で再度毒を盛るのは流石に可哀想だと思ったのだ。

 きっと、今日だって、ベッドに寝込んでいることだろう。
 私は昼食の配膳ワゴンをお嬢様の部屋の前まで持っていき、扉を一度ノックする。

 どうせ、返事なんて無いけど、一応、メイドとして形だけはやっておく必要があるのだ。
 しかし、予想外のことに部屋の中、お嬢様の声で入室の許可が出される。

 私は恐る恐る部屋へと入る。
 すると、こちらを見つめるお嬢様の姿があった。
 その姿を見た瞬間、私の体が無意識に跳ねるのが分かった。

 ただ、お嬢様自身、まだ本調子では無いのか、直ぐに絨毯に手をついてしまう。
 あまり無理しなければ良いのに。

 良心わたしはお嬢様を心配していたけど、悪意わたしは無理をして絨毯に手をついているお嬢様を冷めた目で見つめる。

 そんな私の気持ちを察したわけではないのだろう。

 ただ……お嬢様はいつも通りに接しているだけ、そういつも通りに。

「ごめんなさい、私あなたとおんなじ空気を吸いたくないのよ。だから出てってもらっても良いかしら。ああ、食事に関してはそこに置いておいてくれれば良いわよ。自分で運ぶから」

 意地悪なお嬢様。
 やっぱり、男性が言ったとおりだった。
 貴族は失敗から学ばない。
 もっと、もっと、痛めつける必要がある。
 私はスプーンやグラスを手に持ち、テーブルに向かうお嬢様を警戒しながらも小瓶の毒を料理に盛る。

 これで、お嬢様もちょっとは反省してくださるだろう。
 私は内心でほくそ笑む。

 だが、次の瞬間お嬢様は後ろを振り向いた。
 私はバレたのかと思い、呼吸を忘れてしまう。

「ふんっ、あなたが余りにも遅いから自分で取りに行く羽目になってしまいましたわ。はぁ~高貴な私にこんな下賤の者の仕事をさせるとは…………あなた随分偉くなったものね?」

 良かった。どうやら、私が毒を盛ったのがバレたわけではないようだ。
 お嬢様にバレないように安堵の息を吐く。
 だけど、ここで、お嬢様に謝罪を述べていないのを思い出し、私は急いで頭を下げる。

「あ、あの申し訳ございません。お嬢様」

 大丈夫か?怪しまれていないか?
 バレれば極刑は免れない。そんな命の危機の中で私の思考は急速に加速し、結果として時間が引き延ばされるような不思議な感覚に陥る。

 ただ、警鐘を鳴らす自分の生存本能とは別に悪意わたしはどうせお嬢様のことだから気づいているはずがないと高を括っていた。

 実際、お嬢様は首を横に振り、手出お手上げポーズを作ると

「はぁ、分かればいいのよ。分かれば」

 とだけ言って席に着く。
 本当に馬鹿な人。

 私はニヤけそうな顔を見られまいと、顔を下げる。
 ただ、頭を下げただけだと、不信感を抱かれてしまうかもしれないから、もう一度小さく「申し訳ありません」と告げた。

 小さい声で言ったのは別に悔しいわけでも、悲しいわけでも無かったのだけど、笑いが、これ以上大きな声を出してしまえば、笑いを我慢できなくなってしまうと思い声を出せなかったのだ。

 本当に馬鹿で……可哀想な人。
 全ての人間から無条件に敬われて、必要とされていると信じて疑わないその無知には同情を禁じ得ない。

 ああ、どうしよう。
 このままお嬢様と一緒にいたら我慢できずに噴き出してしまいそうだ。
 あまりのおかしさに肩が震えてしまっている。
 駄目だ、だめだ。
 もうちょっと我慢…。

 私自身そろそろ限界だと思った時、助け船は意外にもお嬢様から出された。

「はぁ、いいわ。下がりなさい」

 お嬢様は煩わしく羽虫でも払うかのごとく、手を動かす。
 いつもなら、その態度に悲しくなったり、苦しくなったり、悔しくなったりするのだが、このときの私は助かったという気持ちで一杯だった。

 ああ、後はお嬢様がまた倒れるのを待つだけだ。
 私はお嬢様とは関わりの無いお屋敷の業務に勤しみながら、まだか、まだかとその時を待ちわびる。

 そんな私の楽しい気持ちが一気に失せたのはそれから間もなくのことだった。
 屋敷中が慌ただしくなる。
 初めはお嬢様がまた、体調を崩したとか、その程度でしょう?と思っていた。

 思って、いたのだ。

 だって、私が混ぜた薬はあくまでもちょっと体調を崩すだけのものの筈だから。

「お嬢様が、お嬢様が血を吐かれた!!」

 屋敷の誰か、薬師か、はたまた執事長だったかもしれない。
 私はその声が誰かすらどうでもよくなるほどに、いや気にすることが出来ない程に頭が真っ白になる。

 おかしい、そんな筈はない。
 だって、前の薬は体調を崩すだけのものだったじゃ無いか。

 私は屋敷の混乱に乗じて、外へと出た。
 あの男性に会いに、約束の場所へと向かった。

 前に男性とパンを食べた1つだけおかれたベンチのある広場だ。
 男性は確かにあそこで待っていると言っていた。

 正直、何故男性の場所に向かったのか……明確な答えを私は持ち合わせていなかった。

 ただ、どういうことだと糾弾したかったのかもしれないし、現実逃避であったのかもしれない。私の生存本能が逃げろと訴えていたのかもしれない。

 はたまた、男性ならこの状況でも助けの手を差し伸べてくれるかもしれなと思ったのかもしれない。

 ただ、私は頭を真っ白にしながらも走る。

 走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、
 走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る、走る!!


 そして、上手く呼吸が出来ず、脚も子鹿のようにガクガクさせ、ふくらはぎがパンパンに膨れ上がった頃にはあの広場へとついていた。
 私はもう一歩も動けないと訴えるようにガクガク震える脚を、それでも綯い交ぜになった感情を動力に動かし、男性に詰め寄った。

「おお!良かった。無事に混乱に乗じて屋敷を抜け出せたようだね。」
「ど、どういうことですか!?少し体調を崩すだけの薬の筈でしたよね!」

 私ができる限り大きな声で、出来るだけ、威圧するように言葉を発しているにもかかわらず、男性は大して気にも止めず、それどころか懐から小さい短刀を取り出す。

「これはね、マジックブレードと呼ばれる魔法道具の1つなんだ。能力は非常にシンプルで魔力を込めれば魔法の刃がこの短刀を覆うように延びてくる。しかも、最大3メートルまで刃を延長できるんだ。」

 男性は私の声が聞こえていないように話し出す。
 まるでお気に入りのお人形に自分の大切な宝物を自慢しているようだった。
 男は更に続ける。

「さて、では、この魔法道具の利点は何だと思う?」
「え、あっと……」

 急に話を振られて、私は咄嗟にあの魔法道具の利点を考えてしまう。
 持ち運びの良さ?
 切れ味?
 強度?
 耐久性?

 しかし、男は私の答えなんて初めからどうでも良いとでも言うようにどんどんと話を続けていく。

「正解は刃に血がつかないことと、可変する刃渡りにあると僕は思っている。
 血が付かず、死体の傷と短剣でつけられる傷に乖離があれば犯人候補から外されることも珍しくない。なんせ、深々と人を傷つけられる剣となれば本来は嫌でも目立つからね。
 まあ、それも、被害者が一般市民の場合に限るんだけどね。

 ……ああ、それと3メートルまで刃を延長させれば返り血もかかりづらいんだ。これも素晴らしい。人を殺す度に服を着替えるのは手間だからね」

 男性はマジックブレードの刃を伸ばしていき、3メートルまで伸びたところでマジックブレードを振り下ろしてくる。

 ここで、私は初めて気づいた。
 お嬢様の考えを、全ての人間から無条件に敬われて、必要とされていると信じて疑わないその無知を馬鹿にしていたけれど…………本当に何の根拠も無く、男性のことをいつでも助けてくれる救世主だと勘違いしていた自分の方がよっぽど馬鹿だったんだと、貴族でも、豪商でもない、只の町娘を助けてくれると本気で思っていた私は誰よりも道化だったんだと、初めて気がついた。

 悪意わたしは泣いていた。
 良心わたしは笑っていた。


 ここで私の人生は終わるのか、でも、最後に気がつけて良かった。これ以上間違いを繰り返さずに終われて、誰かを傷つけずに終われて良かった。







「待ちなさい!!」
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